関係機関との連携した支援による雇用の推進
- 事業所名
- 社会福祉法人秋田県社会福祉事業団 秋田県高清水園
- 所在地
- 秋田県秋田市
- 事業内容
- 指定障害者支援施設、知的障害児施設
- 従業員数
- 93名(秋田県高清水園)
- うち障害者数
- 2名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚・言語障害 肢体不自由 1 庁務 内部障害 知的障害 1 清掃業務 精神障害 発達障害 高次脳機能障害 難病等その他の障害 - 目次
![]() 事業所外観 |
1. 事業所の概要
秋田県高清水園は、社会福祉法人秋田県社会福祉事業団が管理運営している施設の一つであり、同法人は、秋田県高清水園(以下「当園」)のほか高齢者施設、障害児・者施設、共同生活援助事業・介護支援事業等の施設など10施設の経営・管理運営を行っている。
同法人全体では、雇用労働者は686人で雇用障害者数は12名、うち身体障害者8名、知的障害者2名、精神障害者2名で雇用率は2.18%となっており、各施設に障害者雇用が進められている。
当園は、指定障害者支援施設・知的障害児施設として入所・利用する障害者の能力・適性に応じ、必要とする介護・訓練及び支援等の障害福祉サービスを提供し、障害者の自立と社会経済活動への参加の促進を目的とした業務や入所されている知的障害児への保護とともに、独立自活に必要な知的技能の付与等のサービスを目的とした業務を行っている。
2. 障害者雇用の経緯
当園においては、身体障害者1名と知的障害者1名が働いている。身体障害のあるAさんは、同施設の前身である知的障害児施設「秋田県高清水学園」の時の採用であり、「秋田県高清水学園」は平成9(1997)年に現在地に新築移転の際、社会福祉法人秋田県社会福祉事業団が運営することとなり、知的障害者施設も併設したことにより「高清水園」として新たに出発した。Aさんは、通算すると30年近い勤続年数になる。
知的障害のあるBさんは、関係機関の協力を得ながら平成25(2013)年9月にトライアル雇用で業務に対する適性や作業能力の可能性を見極めた後、同年12月に本採用された。
(1)採用前のBさんの状況
Bさんは、知的障害(等級A)と聴覚障害(軽度)がある女性で、縫製会社に勤務していた時もあったが、秋田市内にある障害者通所授産施設に長く通い、その授産施設の作業所が移転しても同じメンバーと一緒に毎日通所し作業に従事していた。障害者自立支援法施行後は、障害福祉サービスの就労移行支援事業所を利用し、企業就労に向けて、日々の作業を行いながら、定期的に職員と一緒にハローワークに行ったり、面接会に積極的に参加したりして一般就労を目指していた。しかし、なかなかチャンスに恵まれず、就労移行支援サービスを1年更新して、計3年間頑張ったが、結果的に期間内の一般就労が叶わず、就労継続B型事業所に移行することになった。
(2)就職前の職場実習状況
就労継続B型事業所(以下「B型事業所」)に移ってからも毎日休まず通っていたところ、当園の求人をB型事業所の支援員から聞き、企業就労への意欲が再燃した。作業内容は、施設内の清掃ということで、日々行っている作業と比較的同じ作業の内容と環境だったことも後押しになった。
まずは当園をB型事業所の支援員と一緒に現場の環境や作業内容を見てもらった上で、最終的に当園での職場実習の意向を本人に確認したところ、やってみたいということであった。
職場実習は執筆者が所属する障害者就業・生活支援センター(以下「就業・生活支援センター」)に相談があり、同センターが間に入って秋田県の職場実習制度を利用した。8日間の職場実習期間中は、同センターの就業支援員が定期的に当園を訪問し、作業内容や作業環境についてBさんや当園の担当者と相談して調整を行なった。
職場実習終了後にBさんや当園の担当者、B型事業所の支援員、就業・生活支援センターの就業支援員と合同で振り返りを行い、もう少し時間をかければ改善できることがいくつかあったため、もう7日間の職場実習を行なうこととした。その実習の際に障害者職業センター(以下「職業センター」)のジョブコーチ支援を利用し、職業センターの職業カウンセラーやジョブコーチと一緒に作業状況確認やサポートを行い、改善点の見通しが立ったことから採用に至った。
(3)就職前後の就業・生活支援センターの支援
元々、Bさんは当就業・生活支援センターに登録しており、同センターの就業支援員との面識もあったので関係形成はスムーズに行うことができた。またBさんが利用しているB型事業所の支援員と実習前から連携し、見学に同行、職場実習制度の手続き、実習中に関係機関との同行訪問、職業センターへの橋渡しなどを行い関係機関と連携をとりながら進めていった。
3. 障害者の従事業務と取組の内容
現在、当園では、2名の障害者が働いているが、身体障害のあるAさんは、庁務員としてボイラーの管理や施設外の清掃、除草などの環境整備、電気が切れた場合の照明器具の交換や点検などの設備備品の補修管理などの業務を行っている。
知的障害のあるBさんは、就職前に関係機関からの手厚い支援を受けながら就職を勝ち取ることができた。Bさんの雇用後の取組、指導等は次のようであった。
(1)職業センターのジョブコーチ支援
Bさんは基本的な作業工程は習得したが、作業をスムーズにするために、職業センターのジョブコーチは、職業センターの職業カウンセラーや就業・生活支援センターの就業支援員、当園の担当者と相談し、作業面で清掃道具を入れるカートの準備や曜日毎の作業箇所を記載したカードを作成した。
具体的なジョブコーチ支援は、主に次の3点について、重点的に行った。
ア.休憩のタイミングの助言
スケジュール表にある休憩時間に休憩せずに作業をしており、休憩のタイミングが上手くとれていないことが判明したため、休憩のタイミングについての助言を実施した。
イ.作業動線の確認
広い廊下掃除では、どこまで作業したかわからなくなっていることから、作業動線を確認して効率的な動きの指導を実施した。
ウ.用具リストの作成と携帯の助言
用具の置き忘れをなくすため、用具リストを携帯することを提案し、自身でチェックできるよう指導を実施した。
以上の支援実施の結果、Bさんは、休憩等のタイミングが分からず、休憩時間外に休憩したり勤務時間終了後も作業をすることがあったが、Bさんは時計を正確に読み取ることができたこともあり、支援後はスケジュール表に沿った作業をほぼ間違いなくこなすことができるようになった。
また、生活面では少し忘れ物をすることがあったため、Bさんと相談して出勤前の持ち物チェック表の作成をするなどのサポートを行うことによって、徐々にスムーズな作業に移行でき、また生活面での忘れ物をすることは解消されていった。
(2)トライアル雇用の実施
Bさんと当園担当者の意向を確認し、採用前後からジョブコーチ支援事業を利用しながら、トライアル雇用制度を約3ヶ月利用した。
(3)Bさんの就労の様子
体調不良や自己都合で休むこともなく、真面目に作業に取組んでいる。Bさんのそういった仕事への姿勢は職場のスタッフからの評判も上々である。事業所のBさんの障害特性に対する理解の下、作業がスムーズにできるための用具は可能な限り準備して貰った。スタッフから気軽にBさんに声を掛けたり、体調を気遣ってくれるので安心して作業できる職場環境となっている。
Bさん自身も自ら用具の使い方を工夫し、職場の配慮に応えるよう努めている。また、年齢的に体調不良(更年期)の訴えはあるものの、事前の欠勤の連絡や医療機関受診もBさん自身が行っている。
![]() フロアーの清掃作業 |
![]() 入り口の清掃作業 |
![]() トイレの清掃作業 |
4. 今後の展望
障害者の法定雇用率引き上げに伴い、社会貢献という観点からも法人として全施設に障害者雇用を進めようということになった。当園においても、Bさんの雇用を契機とし、個人の特性にあった仕事であれば知的障害があっても、十分戦力となって働けることが分かった。幸いに、当園では施設利用者へ食事を提供しており、食堂部門で人材が必要になっている。この部門へ2人目となる知的障害者を雇用しようと考えている。その際にも、関係機関からの支援を受けながら進めて行く方向で検討している。
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