経営者の創業時からの変わらぬ理念が、障害者の高い定着率を可能とした
- 事業所名
- 金谷商事株式会社
- 所在地
- 秋田県大仙市
- 事業内容
- 宿泊業、飲食サービス業
- 従業員数
- 61名
- うち障害者数
- 5名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚・言語障害 肢体不自由 内部障害 2 管理職 知的障害 3 調理補助業務、宴会部バックヤード業務 精神障害 発達障害 高次脳機能障害 難病等その他の障害 - 目次
![]() 事業所外観 |
1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯
(1)事業所の概要
金谷商事株式会社は、昭和51(1976)年に飲食サービスの営業を目的として、大曲グランドホテル内に飲食・宴会部門を立ち上げた。翌昭和52(1977)年には、本荘グランドホテルに宴会部門を設立、その後昭和61(1986)年に大曲エンパイヤホテルをオープン。平成5(1993)年には大曲市役所(現大仙市役所)で食堂・売店部の営業を開始し、現在に至っている。
障害者の雇用については、地元の特別支援学校の協力企業として、職場実習生を毎年度受け入れたり、秋田県南障害者就業・生活支援センターの設立時から企業側運営委員を務めるなど障害者雇用の関係では地域の模範的な事業所であり、障害者の定着率は非常に高いものとなっている。
こうした活動により、当社は障害者雇用優良事業所として、平成13(2001)年に社団法人秋田県障害者雇用促進協会長表彰、平成17(2005)年に秋田県知事表彰、平成24(2012)年に独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長表彰を受賞している。
また、障害者と同様に高年齢者雇用においても「経験を活かして意欲を持って仕事をしてもらう」ことが、創業当時から経営者の変わらぬ理念として定着しており、定年後の60歳以上の従業員の雇用割合は、常態的に全従業員の25%以上である。こうした経営者の理念に基づき、制度的にも様々な配慮を実施することにより、高齢者・障害者ともに安心して働ける職場となって高い定着率と継続雇用を可能にしている。
(2)障害者雇用の経緯
雇用のきっかけは、ちょうど経営が軌道に乗ってきた頃の平成2(1990)年に、ハローワークからの紹介を受けたことによる。当社にとって初めての雇用となる知的障害者のAさんは他の職場での勤務経験もあり、真面目に仕事に取り組む姿勢や素直で明るい性格がセールスポイントということで、是非雇用をお願いしたいと熱心に勧められ、経営者の「会社があるのも地域のみなさんに喜んでもらってこそ」という意見によって、不安はあったものの採用に踏切ることとなった。
Aさんの雇用がきっかけとなって、平成11(1999)年には、当社スタッフの知人の紹介により知的障害者のBさん、平成13(2001)年には特別支援学校からの紹介を受け知的障害者のCさん、以上3名の知的障害者を雇用し現在に至っている。
2. 障害者の従事業務と取組の内容
(1)初めての雇用(Aさん)
ア.Aさんの雇用まで
平成2(1990)年の初めての雇用となったAさんは、障害児施設を退所後に伝統工芸品である「まげわっぱ」製造の会社に就職した。10年間勤めたが会社都合により退職し、その後、当社本荘グランドホテルへ採用された。一般就労の経験があるといっても、当社にとっては初めての雇用である。担当する業務は決まっているものの、どこまでできるのか、どんなことができるのかはまったく未知数であった。また、上司や同僚も全く初めてということもあり、まずは、障害者ということで特別扱いせず、実際に業務をさせながら対応していくこととした。
イ.Aさんの従事業務
業務は調理の補助で、勤務時間は午前9時から午後4時までとなっている。当初は、職場から近い施設の通勤寮からの通勤であったが、現在は少し離れたグループホームから通勤している。徒歩でも数十分の距離であるが、天気が良い日は自転車で通勤している。朝出勤すれば、前日の宴会で使用された皿や容器等を専用の業務用大型洗浄機での洗浄作業、その後はお昼のお弁当の調理補助がメインで、午後からは宴会での調理の準備や補助等の作業、というのが1日のパターンである。
サービス業という関係で、週休2日制にはなっているが決まった日にはなかなか休むことはできない。それでも月8日から9日は休日を取っている。
ウ.優秀勤労障害者として表彰されたAさんの成長
Aさんは、とても素直な性格ということもあり、教えられたことは指示通りにできるため、程なくして自分の業務全般をカバーできるようになった。細かいところなどは、その時々に注意する必要があったが、一年もかからない期間で、決まっている通常の作業は大体一人でできるようになっていった。数の計算はしっかりできるため、数十人分の皿をセットしその人数分の料理の盛付けもこなしている。
ただ、食欲が旺盛なこともあり時々おなかをこわして休んだりすることがあったが、真面目で素直な性格ということもあり、話し合うことによって問題なく解決されている。通常の業務は一通り全部本人自身で動くことができ、指示されたことはそのとおりに動いてくれている。スタッフとも和気あいあいと、みんなにかわいがられながら、コミュニケーションをとりながら作業を頑張っている。そうしたことから、Aさんは平成20(2008)年に優秀勤労障害者として社団法人秋田県雇用開発協会長表彰を平成26(2014)年には秋田県知事表彰を授賞されている。
(2)Bさんの雇用
Aさんの雇用後に採用されたBさんは知人の紹介により平成11(1999)年に入社した。自宅から、天気の良い日は自転車で通勤している。大曲グランドホテル宴会部門の業務についており、バックヤードでの清掃や食器等の洗い物が主な作業である。勤務時間は午前9時から午後4時までで、月8日から9日の休日である。Aさん同様、真面目で素直な性格ということもあり、程なくして作業は一通りできるようになった。細かい部分については、その都度指示するものの、通常の決まった作業については一人でできている。
(3)Cさんの雇用
平成13(2001)年に雇用のCさんは、特別支援学校の紹介により採用された。勤務場所はAさんと同じ本荘グランドホテルだが、配属は宴会部門である。宴会のバックヤードの配膳室での業務を担当、勤務時間はAさんBさん同様、午前9時から午後4時までである。近くのグループホームから通勤している。徒歩で20分位であるが、可能な時は自転車で通勤している。
作業内容は、朝の出勤時に配膳室に集められた前日の宴会で使用されたグラス関係の洗浄、洗浄作業は専用の洗浄機を使っての作業、その後宴会部門の清掃と整理作業、グラス以外の洗い物の作業、その後宴会部門の手伝い等の補助的作業をこなしている。
生活面等全体的な指導は、Aさんと同様に総支配人が見守っているが、業務に関する指示等は部門の担当上司が行なっている。
作業自体は、一通りこなす事ができて問題はなかったものの、一年位して仕事に慣れてきた頃、お酒が好きなこともあり、仕事帰りに寄道してお酒を飲みすぎて、転んで怪我したり、トラブルに巻き込まれたりということがちょくちょくあった。仕事が終わった後の生活面での問題ということもあり、特別支援学校の先生や障害者職業センター並びにグループホームの担当者へ生活面での指導を依頼してからはほぼ解決されているが、何か問題があった場合には常にグループホームと連携を取れる体制を組んでいる。
また、周りにスタッフが誰もいなくなると、その場を離れていなくなったり、休んでいたりすることがあるため、そうした場合はすぐに指導することも必要であるが、常にスタッフ全員で見守っていくことで、改善されてきている。
3. 今後の展望
AさんBさんCさんの勤務年数は、14年以上であり特に初めての雇用となったAさんは24年の長きに及んでいる。これもひとえに直接指導に携わって来た総支配人や調理部長が相手の立場に立った薫陶の賜物であると思われる。それは、お二人とも会社の草創期から立上げに貢献されてこられた方々であると同時に、中途で内部障害者となられたこともあり、障害者に対しての様々な思い入れがあればこそ3人の知的障害者をここまで育て、雇用継続されてこられたものとの思いがする。
いずれも、3人の知的障害者の定年退職までには、まだ先のことではあるが、それぞれ一社員として十分な力があり戦力となっており、まだまだ元気に頑張っていることから、今後においても期待するとともに仕事が続けられるよう見守っていきたい。
関係機関との連携については、地元の特別支援学校から職場実習を年2回受け入れている。また、アビリンピックの喫茶サービス競技については、要請に応じて実技指導や、審査員の派遣、競技で使用するお盆の貸出しなど、常に連携協力を密にしている。今後とも関係機関とは連携協力を図りながら、障害者の雇用、継続を進めていきたいと考えている。
支援・窓口サービス業務リーダー 池田 徹
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