「労働生産性を作り出す人材」を育てる
- 事業所名
- ウエルシアオアシス株式会社高崎センター
(ウエルシアオアシス株式会社:ウエルシア薬局株式会社グループの特例子会社) - 所在地
- ウエルシア薬局株式会社:東京都千代田区
ウエルシアオアシス株式会社本社:埼玉県さいたま市
ウエルシアオアシス株式会社高崎センター:群馬県高崎市(高崎上佐野店内) - 事業内容
- 全国展開ドラックストア(ウエルシア薬局株式会社)
- 従業員数
- ウエルシア薬局株式会社グループ全体
22,000名(雇用保険・社会保険加入者:10,000名) - うち障害者数
- 同グループ全体
150名(重度障害者:51名) 障害 人数 従事業務 視覚障害 2 事務業務 聴覚・言語障害 3 事務業務 肢体不自由 32 事務・店舗における品出し・清掃 内部障害 1 調剤業務 知的障害 61 店舗における品出し・清掃 精神障害 24 事務・店舗における品出し・清掃 発達障害 24 店舗における品出し・清掃 高次脳機能障害 2 店舗における品出し・清掃 難病等その他の障害 1 医療事務 - この事例の対象となる障害
- 知的障害
- 目次
![]() 事業所外観 |
1. 会社概要と障害者雇用の背景・経緯
(1)事業の概要
ウエルシア薬局株式会社は昭和49(1974)年、東京都府中市に【株式会社十字薬局】を設立した。複数社の合併や業務・資本提携等により業務を拡大し、平成26(2014)年4月14日、ウエルシア関東(埼玉)・高田薬局(静岡)・ウエルシア関西(大阪)・ウエルシア京都(京都)が合併し、平成26(2014)年9月、社名を【ウエルシア薬局株式会社】に変更した。
社名の‘Welcia’は、健康を意味する‘Well’と、国を表す‘Cia’の造語で、『地域のお客様の健康をサポートする拠点』になりたいとの願いが込められている。
現在、主な事業内容は、調剤併設型ドラッグストア・チェーンの全国展開であり、平成27(2015)年1月末現在、東北・関東・中部・関西と23都府県で1,000店舗(ウエルシア薬局の店舗数)に達している。
また、ウエルシアオアシス株式会社(以下「当社」という。)はウエルシア薬局株式会社(以下「親会社」という。)の100%出資子会社として、また、『障害者の雇用の促進等に関する法律』に基づく特例子会社として、平成23年(2011)年3月に設立した。~障害者の明るさ・誠実さを活かせる職場環境の創造~ を理念として活動している。
平成26(2014)年12月現在、当社の従業員数は141名で、そのうち雇用障害者数は129名(高崎センター管轄19名)となっている。
(2)障害者雇用の背景
親会社の故・名誉会長鈴木孝之、現会長池野隆光は地域社会への健康支援という分野で、調剤併設のドラッグストアウエルシア薬局を継続運営し、社会に安心を提供し、信頼されることが当社の社会的使命、社会的責任であると考えた。
この理念は、障害者雇用において、すべての障害者が一般社員と同じように違和感なく仕事ができるように自立の道を支援することが、当社の基礎であり背景となっている。
(3)障害者雇用の経緯
平成23年(2011)年3月の当社設立に至るまでに2年の時があり、その間に失敗があった。平成20(2008)年、今から6年前の新卒採用者2名の障害のある学生のうち、1名は千葉、もう1名は埼玉配属になった。この2名は優れた倫理観、道徳観のある店舗責任者に預けることになった。
現在と違い、社員教育指導がなされないままに配属されたが、彼らは努力し、でも苦しんだであろう。その後1名は現在も千葉の店舗で元気に働いているが、1名は残念ながら退社した。この退社した者に関しては、特別支援学校の先生の多大なる協力を頂いた。入社時は、先生のご主人のスーツを着用させていただいたのを覚えている。そして、彼が言った「一生懸命働き、お母さんに楽をさせたい」の言葉はいまだに鮮明に私達の記憶に残っている。彼は努力をしたが、その頃は会社に障害者理解の風土がなかった。
平成23(2011)年、東日本大震災の年の2月21日、埼玉労働局長に鈴木会長・池野社長・担当者とで面談し、特例子会社設立を約束した。この時点で、担当者から国へ1つお願いをさせてもらった。特例子会社は、社員の教育・定年までの雇用について最大限努力する。ただし、労働が難しい時は、当社と国が協力して障害者の生活においての責任を最後まで負う。そして当社は採用した者すべてを店舗に配属できるように違和感のないように指導し、各店舗への配属を促すよう最大限、努力をすると。
このような失敗と経緯があり、当社の本社に併設された研修センターでの実習を繰り返しての雇用が開始された。これは、定年までの雇用には、障害者と仕事のマッチング確認作業が重要であると考えたためである。新卒採用者の場合は特別支援学校との連携、中途採用者は障害者就業・生活支援センターとの連携、また、両者ともハローワークの協力なしでは、採用にはつながらない。
特例子会社設立に当たっては、障害者指導専門家に協力を頂いた。また、各県に営業所(センター)を設立する際は国立大学附属特別支援学校や地元の特別支援学校、障害者就業・生活支援センターの協力を頂き親会社の店舗での職場実習を行う。実習時には指導員へのアドバイスもお願いしている。これらによって継続雇用に繋がり、生産性を生む人材を育てることができるのではないかと考えている。
2. 障害者雇用の進め方と従事業務
(1)障害者雇用の進め方
障害者求人は全てハローワークを経由して行っている。募集の方法は2種類あり、一つは地域の特別支援学校からの新卒採用で、もう一つはハローワークにおいて求人を公開して採用選考を行う中途採用である。 特に、複数の特別支援学校と連携して、1年生から学生の実習(※)を受け入れており、毎年多数の新卒者の入社につなげている。
※ 1年生:店舗見学 ⇒ 2年生:店舗体験実習 ⇒ 3年生:実習の取組状況を踏まえた選考
(参考)新卒の採用年度別人数(当社全数)
平成23(2011)年 7名 平成26(2014)年 10名
平成24(2012)年 11名 平成27(2015)年 17名(予定)
平成25(2013)年 9名 ※ 中途採用は年間20名
なお、中途採用については、障害者就業・生活支援センター登録者を前提条件として実習を実施し、各地域にあるハローワークの紹介、あるいは、各県にある職業訓練校からの受託訓練により実施している(企業の努力と各行政の協力無しでは継続雇用はないであろう。)。
(2)従事業務
障害者メンバー(以下、「メンバー」という。)は当社では129名になる。メンバーは次のように、店舗業務・清掃業務を中心に活動しており、店舗の戦力として一翼を担える人材になっている。店舗業務への配属については、個人の特性と、適性を引き出してくれる店舗の環境で決定している。
以下、メンバーが従事している業務について紹介する。
- ア 親会社「ウエルシア薬局」の店舗における業務
メンバー129名中115名のメンバーが携わっている作業内容で、当社の中核をなしている業務である。当社全数で98店舗に配置している。高崎センター管轄では群馬県内の12店舗において19名(高崎センターのある高崎上佐野店直属5名(品出し、店舗清掃、消費期限のチェック等担当))、同センター清掃チーム(後述)所属2名、同センター管轄他店舗所属12名)のメンバーが活躍している。- (ア)店舗における品出し
開店前後に、バックヤードに店舗が用意した陳列する商品の折りたたみ式コンテナ又はダンボールを開梱し、店頭にて陳列作業を行う。原則、月曜日以外は毎日品出しがある。その際、(a)日配品(豆腐・納豆・牛乳等)などのように消費期限に注意を払う必要があるもの、(b)トイレットペーパー、ペットボトル類やカップラーメン類などのように、積み方に注意を払う必要があるもの、(c)アルコール類のように、重さを伴うものなど、メンバーにより、個々の配慮を要するものがある。店舗における品出し
- (イ)店舗清掃
開店前後に、フロアの清掃、トイレの清掃等を行う。清掃の仕方等、当社の指導員が巡回した際に適宜、指導を行っている。 - (ウ)前だし・棚ふき
品出し・清掃後(主に午後の作業)の業務として、商品の補充、売れた商品で空間ができた箇所に詰める作業、陳列棚を順番に拭き上げていく作業がある。店舗清掃
- (ア)店舗における品出し
- イ 親会社「ウエルシア薬局」店舗への巡回清掃業務
現在、9名のメンバーが従事している作業である。指導員4名が引率し、さいたま市に2チーム、高崎センターでは高崎市に1チームが活動している。内容を紹介する。- (ア)店舗外周の除草及び樹木の剪定※ 特に、夏場は草木が繁茂しやすく、かつ、炎天下の作業となるため、配慮を要する。店舗外周の除草及び樹木の剪定※ 店舗内の作業であるため、お客様に注意を払う必要性等の指導を行っている。売り場、冷凍ケースの清掃・フィルター清掃
- (イ)店舗清掃(巡回チーム)作業風景ガラス清掃作業・ポリッシャー清掃風景
- (ア)店舗外周の除草及び樹木の剪定
- ウ 事務業務
7名(うち4名が出向者)で行っている。多くは当社のさいたま市にある本社で行う業務である。- (ア)名刺・社名入封筒作成業務
親会社社員の名刺を一手に引き受けて印刷し、各店舗に発送している。受注量が多い時は、メンバー1名+指導員1名で実施している。 - (イ)総務業務・経理業務・給与計算業務
メンバー1名+外部専門家(社会保険労務士・税理士)を入れて対応し、親会社にも担当窓口を設けてもらい、チェック体制を強化している。 - (ウ)静岡事務所
メンバー4名が、行政窓口:本社の申請関係業務に携わっている。
- (ア)名刺・社名入封筒作成業務
3. 当社の成功要因とメンバーの声
(1)当社の成功要因
当社は、障害者の指導員(障害者職業生活相談員)を置いているが、設立当初は、専門家がいたわけではなく、素人集団が手探りで始めたものであった。
あえて挙げれば、次のような特色がある。
- ア バックヤードに置かず、店舗の中で勤務させる。
メンバーの業務は店舗の中での作業である。問題があれば、指導員が一緒に作業をしながら、マンツーマンで仕事の流れの確認作業を行っていく。また、月1回、巡回指導員が各店舗を巡回し、メンバーの状況を把握・確認している。 - イ 店舗での業務は親会社「ウエルシア薬局」の店長が事前に用意した商品の品出し等の定型業務を行うこととなるが、店長からも業務遂行に当たって支援をしてもらうこともある。このように親会社を巻き込みグループ全体で指導体制を整え障害者の職場定着を図っている。
- ウ 障害者就業・生活支援センターとの提携
入社するメンバーに対しては、極力、障害者就業・生活支援センターとの連携を取るようにしている。これは、本人が仕事を続けていくに当たって、不安や日常の相談等の解決につなげるためである。
これら3点の取組みから、雇止めゼロを実現している。まず、アの店舗内での労働という取組みは、メンバーのノーマライゼーションに寄与している。障害のない者同様、週5日:8時間働いているメンバーが多数おり、自活・納税しているメンバーもいるほどである。毎年、5名前後の正社員登用を進めている。働く環境の差別化をしないことによって、メンバーにとっては良い環境になっているのではないか。設立以来、職場環境が理由で退職をした障害者はいない。
毎月、全店舗のメンバーを巡回指導しているA指導員は次のように語っている。
「訪店すると、今日は元気か?困っていることはないか?と必ずメンバーの話を聞き、店長の話も聞きます。問題があれば、本部にフィードバックをし、巡回報告書を毎日書いています。毎月、会いに来るのを楽しみにしているメンバーもいるので、配属店舗全店の毎月の訪問を心掛けています。」
また、全社で打刻システムを導入し、各店舗で出退勤時に打刻することにより、リアルタイムで出退勤情報が把握できる体制を取っている。(ア)指導員巡回によるケアフォロー、(イ)システムメンバーの勤怠情報を管理することができるため、一括拠点採用ではなく、各店舗に配属をする方式での雇用を実現している。
(2)メンバーの声
ここで、高崎センター従業員Bさん(知的障害者、群馬県・高崎上佐野店勤務)の声を紹介する。
「入社4年目になります。業務内容は午前中、品出しが中心です。午後は、清掃・陳列・前出しです。時々、実習生がお店に来ていると、模範を見せたりします。仕事は楽しいです。運転免許を取得し、車を購入しました。将来の夢は、一人暮らしをすることです。」
4. 当社の障害者雇用の効果と課題
メンバーが店舗で一生懸命働く姿が、親会社にも少しずつではあるが受け入れられ、障害者雇用・配属への理解が広まってきた。ただ、ウエルシア薬局の成長拡大が急速に進んでいるため、今後、障害者雇用率2%の維持が最大の課題となるであろう。
茨城・静岡・大阪にもセンターを構え、親会社の企業拡大に対応していく計画である。
しかし、ただ闇雲に採用し、送り込んでいくことが目的なのではなく、永く勤めてもらうことを第一に考えて育てていくことが、障害者の採用・定着にとって重要となる。障害者の持ち得ない能力ではなく、持ち得る能力を最大限に活かし、成長させることに力を注ぎたい。
新たな取り組みとして、今一歩で雇用に繋がらない障害者に「1+1=1:障害者+高齢者」での雇用形態を採用している(いつか1+1=1は1-1=1になり、障害者一人での就労が可能になる。)。また、現在、高崎センターでは高齢化地域への対応策として、限界集落・買い物難民をサポートするため、高齢者と障害者で配達業務を該当店舗から委託を受ける形で行っている(将来、高齢者と障害者の社会参加なくして社会の維持はできないのではないか。)。
今後、これらの課題を克服し、社員が生き生きとして自立した人生を送ることができるように、夢を持って育つ環境を保障すること。これは我々の責任であり、社員が「この会社のメンバーになれて良かった」、家族が「この会社に入社させて良かった」と思い、すべての社員が「みんなに出会えて良かった」と思えるような会社を皆の力で築いていきたい。
代表取締役社長 折原 直道
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