業務内容、勤務時間、雇用管理体制等に配慮し、
精神障害者の雇用を積極的に進めている企業
- 事業所名
- 富士フイルムイメージングプロテック株式会社
- 所在地
- 東京都調布市
- 事業内容
- 写真現像、焼付け、その他の生活関連サービス業
- 従業員数
- 548名(平成26(2014)年6月1日現在)
- うち障害者数
- 11名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚・言語障害 肢体不自由 内部障害 2 プリント製作補助業務、商品受注業務 知的障害 1 廃棄物の分別作業 精神障害 8 プリント製作補助業務、商品受注業務 発達障害 高次脳機能障害 難病等その他の障害 - 目次
1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯と推移
(1)事業所の概要
- ア.会社発足
平成25(2013)年2月1日、富士フイルムグループ関係会社の統合により発足 - イ.企業理念、障害者雇用の基本方針
- (ア)「基本理念」
会社の使命(社会的責任)
お客様、地域の方々、株主など社会の様々な人とコミュニケーションを取り、企業情報を適切かつ公正に開示するとともに、法令をはじめとする各種ルールを守り、公序良俗に反しないこと。
また、良き企業市民として地域の文化・慣習を正しく理解し敬意を払うとともに、地域発展への貢献をはじめ積極的に社会貢献活動を行うこと。 - (イ)障害者雇用の基本方針
トップダウンで採用・定着支援に取り組み、担当部門では職制の裁量で本人の特性や適性を見ながら作業の内容を決め、のびのびと作業ができる職場環境を確保する。職務については、障害を克服させるのではなく、障害のない部分で職域を開発できるよう課題を与え指導していく。
- (ア)「基本理念」
- ウ.事業内容
ポストカード・フォトブックなどのコンシューマープリントや営業写真館のプロプリントの製作、大型の広告媒体(ディスプレイ)や法人向けのIDカードなどの製作、データコンバージョンサービス、富士フイルム商品の受注・問合せ業務等
(2)障害者雇用の取組と推移
平成20(2008)年:
ハローワークの指導により経営トップが担当部門に指示し、障害者雇用率達成に向け受入れ体制の整備(社員に対する精神障害者雇用についての理解・啓発活動、障害者の職務内容の検討など)を行った。
平成22(2010)年:
精神障害者雇用企業の見学、ハローワークの協力・連携により精神障害者採用の積極的推進を開始。当年度は3名を採用し、実雇用率は1.8%で法定雇用率達成
平成23(2011)~24(2012)年:
ハローワークの紹介により、さらに2名の精神障害者を採用し、実雇用率は、2.2%と法定雇用率を上回る。
平成25(2013)年:
ハローワークが主催する「多摩地区障害者雇用促進セミナー」にて雇用定着化に向けた取組の発表を行った。
障害者雇用の推移各年6月1日現在
平成24(2012)年 | 平成25(2013)年 | 平成26(2014)年 | |
常用労働者:人 | 413(394) | 471(456) | 548(529) |
障害者数:人 | 10(9) | 9(8.5) | 11(9.5) |
実雇用率 | 2.2% | 1.9% | 1.8% |
*上表( )は、短時間勤務を含む換算人数、平成25(2013)年は、雇用障害者がグループ企業に移籍し、実雇用率が減少し、法定雇用率(2.0%)を下回った。平成26(2014)年は関係会社の統合により従業員数が増加し、法定雇用率を下回った状態が継続中。年度内に2名の障害者(短時間労働者)を雇用し法定雇用率を達成の見込み。
2. 取組の内容
(1)障害者雇用
- ア.実習の受入れ
ハローワーク、地域就労支援機関、就職相談会等を通じて応募してきた障害者について、入社前に職場の見学を行うと同時に職場実習(1時間程度)を行っている。職場実習では製品検査や梱包など入社後に実際に担当する業務と職場の雰囲気を体験させている。 - イ.採用
面接及び実習の結果により採用を決定しているが、精神障害者の採用に当たっては実習よりも面接を重視している。
採用の基準としては以下の3点に重点を置いている。- 一緒に働きたいと思えるか
- 自分の障害特性をしっかり伝えられるか
- 質問に的確に返答できるか
- ウ.雇用形態及び労働時間
主としてパートタイマー(非正規雇用、有期限雇用)としての雇用である。受障後初めての就労又は前職からブランクがある場合は、本人と話し合い週20時間の短時間からスタートするケースもある。 - エ.障害者の業務内容
- プリント機器オペレーション
大型プリンターに写真印画紙(ロール紙)をセットし、プリントする作業 - プリント製作補助(加工・検品・出荷)
写真のキズ・ゴミ付着の検査、アルバム・フォトブック等への加工、値付け・梱包作業 - 商品の受注業務(パソコン入力・伝票整理)
取引先から送られてくるFAXを見ながら、専用ソフトを使って商品の出荷指示をする作業 - 廃棄物の計量・分別・破砕
生産現場から送られてくる廃棄物(ミスプリント等)を計量し、大型シュレッターで破砕する作業
- プリント機器オペレーション
- オ.業務とのマッチングと担当業務の拡大
当初は複雑な判断を要しない軽作業から担当するようにし、出勤状況や職場の人間関係等を考慮しながら、OJTにより担当できる作業を増やしていく。基本的に他部署への配置転換は行わず、担当製品内での多能工化を育成目標としている。 - カ.組織全体での指導
配属先の担当者が障害特性を十分に理解し、OJTによるわかりやすい情報伝達を心がけ指導を行っている。特に入社時は本人の緊張や不安が強いため、定期的に本人との話し合いを行い、心身の状態に配慮した適切な指導を心掛けている。
また、配属先の担当者の負担を軽減するため、管理・監督者との定期的な情報交換を行い、担当者に対し指導上のアドバイスを行うとともに、場合によっては支援機関との連携を行うなど組織全体でフォローしている。さらに、配属先以外の従業員も本人の障害状況等を理解し配慮した行動ができる体制をとっている。 - キ.支援機関等と連携した定着支援
入社前の職場見学、職場実習については、入社後に一緒に作業するパートタイマーの従業員が作業方法を説明・指導している。
就労にあたっては、障害者本人、支援機関、会社の三者で勤務時間や勤務日数、職場内での障害のオープン・クローズの確認、障害特性の情報共有等の配慮事項について予め明確にしている。初回の雇用契約満了前(入社2ヶ月前後)に、障害者本人、支援機関、会社の三者による面談を実施している。面談実施前には障害者本人が会社内での悩みごとを支援機関だけに相談しているケースもあるので、会社と支援機関による情報共有を行っている。また、産業医による個別面談を年1回実施している。 - ク.目標管理制度によるキャリアアップの推進
目標管理制度により年1回の昇給を以下の基準により総合的に判断し実施している。- 仕事の成績 「目標に対する達成度」「正確性」「スピード」
- 仕事への意欲 「勤務態度」「積極性」
- 仕事の能力 「業務知識」「理解力・判断力」
(2)雇用管理上の課題と対応(主に精神障害者に対する内容)
- ア.短期欠勤が連続して発生する場合、支援機関(主治医)および産業医と連携しながら回復状況を正確に把握するように努めている。回復が思わしくない場合は就業規則に従い雇用契約の満了を以って契約を打ち切る場合もある。
- イ.パート従業員がメンタルの不調により長期欠勤した場合、欠勤中に雇用契約期間の満了を迎えるケースがある。この場合主治医の診断書を提出してもらい、産業医の判断を仰ぎながら支援機関と連携して雇用継続の可否を判断している。
- ウ.体調悪化や業務遂行能力の不足によりやむを得ず退職を勧告しなければならない場合は、事前に十分な面接を行い、支援機関やハローワークとも情報交換を行いながら本人や家族とトラブルが生じないように対応している。
(3)家族、支援機関との連携
- ア.精神障害者については、6ヶ月~1年に1回程度の三者面談(障害者本人・支援機関・会社)を実施し、現状の課題(勤怠・職務内容・人間関係等)や今後の勤務体制等について情報共有を行っている。
- イ.知的障害者の場合は家族と定期的な連絡を取り、家庭での様子も把握している。
(4)余暇活動
2月に全社ボーリング大会、8月に納涼会を実施して職場の従業員との交流を図っている。
3. 取組の効果、現状の課題と今後の展望
(1)取組の効果
この2年間で退職者は1名(精神障害:病状悪化のため)にとどまり、高い定着率を維持している。これは、配属にあたって特定の職場に集中させないことで担当者(社員)の負担を軽減していることや、障害者の人件費は本部で負担することで受入れ側の経済的負担を解消し、障害者を戦力として雇用できるということが大きく影響しているものと判断している。定期的に精神障害者の雇用を進める中で、職場の障害者に対する理解・啓発が浸透し、受入れがスムーズに行われている。
(2)現状の課題と今後の展望
- ア.現状の課題
季節により受注量の繁閑差が大きく、職場の戦力となっている障害者には繁忙期に残業を依頼することもあるが、事後メンタル的な疲労を訴える障害者もいることから、本人が大丈夫と言っても、残業は極力させないように心掛けている。その分、他の従業員の作業負荷となることが繁忙期の課題となっている。 - イ.今後の展望
障害者職業生活相談員を社内に配置し、支援機関だけでなく、社内でも仕事の教え方に対する不満や疲れたので休みたいなど自分の要求を遠慮せず言えるような環境整備(例:障害者職業生活相談員による定期的なカウンセリングの機会を設ける)を行い、障害者と会社間の信頼関係の強化に努める。
GreenWork21 副理事長 小林 幸夫
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