事業所名

株式会社DTSパレット

所在地

東京都港区

事業内容

印刷業務、PCオペレーション業務、メール業務、文書管理業務等

従業員数

20名

うち障害者数

18名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害	1	電話受付業務、HTMLコーディング
聴覚・言語障害	1	データ入力・庶務支援
肢体不自由	1	各種印刷・デザイン制作
内部障害	6	当社業務全般
知的障害	4	メール便、文書の印刷・PDF化作業
精神障害	3	名刺作成、文書の印刷・PDF化作業
発達障害	2	当社業務全般
高次脳機能障害
難病等その他の障害

その他

特例子会社、障害者職業生活相談員

目次

1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯
2. 取組の内容
3. 取組の効果、今後の課題

事業所外観

1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯

（1）事業所の概要

• ア．会社発足：平成23(2011)年10月27日 株式会社DTSの100％子会社として設立
  （同年12月に株式会社DTSの特例子会社として認定される。）
• イ．資本金：30百万円（株式会社DTS100％出資）
• ウ．株式会社DTSパレット（以下「当社」という。）は、株式会社DTSの特例子会社として企業の社会的責任である障害者雇用の創出を行い、障害のある方々がいきいきと働く環境作りを目的に、平成23（2011）年12月「障害者の雇用の促進等に関する法律」に基づく特例子会社として認定を取得し、今年3年目を迎えた。

（2）障害者雇用の経緯

• ア．特例子会社設立以前の障害者雇用についての取組等
  親会社である株式会社DTSはシステムインテグレーション事業を生業としているため、システムエンジニア（以下「SE」）としての採用を中心に行っていた。しかし、SE中心の採用だけでは法定雇用率の達成には至っていなかった。
• イ．特例子会社設立の趣旨・目的等
  法定雇用率の達成はもとより、さらなる障害者の雇用拡大は社会的責任として必要と認識し、従来の採用活動の延長では雇用率達成すらできないと判断し、特例子会社を設立することを決定した。
• ウ．募集・採用
  • （ア）募集は、特別支援学校や職業能力開発校、就労支援機関、障害者職業センターとの連携等により行っている。
  • （イ）採用は、ハローワークの紹介が中心で、その他障害者就職フェアにおける面接会等もある。
  • （ウ）現在、新卒採用はなく、中途採用のみである。
• エ．採用後の指導・訓練、業務管理・人事管理等
  入社後の担当作業は障害特性に囚われず、すべての業務を一度経験してもらい、その結果を本人へフィードバックし、本人の能力や特性を認識した上で、OJTへと進めている。一人ひとりが自分の担当する業務に責任を持って仕事ができるよう、業務日報を付け、それぞれの担当業務への意識を強めている。また、各種業務ごとにマニュアルを整備して全員に配布し、いつでも手順の確認ができるようにしている。

2. 取組の内容

「パレット」という社名には、社員それぞれのカラーを生かし、新しいカラーを創り出すパレットのような会社にしたいという思いが込められている。現在、当社では精神、知的、肢体、内部、視覚、聴覚などさまざまな障害を持つ社員が働いており、紙媒体のPDF化作業、名刺作成やパンフレットなど各種資料の印刷、社内メール便やビジネスサポート業務を提供しており、また最近ではグループ会社への各種印刷や紙媒体のPDF化作業、会議室の会場設営など多岐にわたる業務拡大を行っている。

（1）具体的な業務内容

• ア. 印刷業務
  親会社各部署が発行する商品やソリューションサービスに関するチラシ、会社案内等のオンデマンド印刷を行っている。印刷は多岐にわたり、ポスター印刷や冊子、パンフレットのみならず、卓上カレンダーや封筒の作成、名刺印刷も手掛けており、名刺印刷は親会社本体だけでなく、グループ会社からも受注している。
• イ. PCオペレーション業務
  お客様から依頼された紙媒体の文書を、ExcelやWord等に入力し電子化を行っている。最近では展示会や社内で実施された各行事において配布したアンケートの集計を主に行っている。指定されたフォーマットへの入力のみならず、フォーマット作成から集計までの一連の流れを受注することもある。各社員とも正確性を第一に、責任を持って作業を遂行しており、入力完了後のデータはすべて複数回の検品処理を実施し、入力漏れや入力ミスのまま納品することのない体制を確立している。入力した成果物はメディアへの焼き込みやメールでの納品など、顧客のニーズに合わせた対応を実施している。
• ウ. メール業務
  親会社内の郵便物の管理発送業務や、社内メール便の集荷・配送業務を次のように行っている。
  
  • 郵便物発送業務
    親会社各部署から出された郵便物について郵便料金等を集計し、郵便局へ提出する作業を行う。一口に郵便物と言っても、配達記録や書留、国際郵便等種類も多数あり、親会社各部署への発送経費の割り振りの基本となることから、重要な作業となっている。
  • 社内メール便集荷・配送業務
    親会社の各部署を巡回し、社内メール便を集荷・配送する業務を行っている。
• エ. 文書管理業務
  紙媒体の書類をPDF加工し、所定の形式で納品するサービスを行っている（メール納品、CD-R・DVD-R、宅ファイル便等のクラウドサービスによるデータ納品）。保管場所の削減やデジタルデータへの変換による媒体の劣化防止対策として様々な案件を受注している。
  ※メール納品の際はZIP形式での納品を行い、ファイルには暗号化を施し、情報セキュリティ対策にも日頃から意識付けを行うよう各社員に周知徹底をしている。
• オ．その他の業務
  • 資料のファイリング等の庶務作業
  • 購読紙の仕分けと各部署への配布
  • 社内に設置されている観葉植物の管理
  • ウェブページの製作・管理
  • 社内掲示物の張り替え作業
  • 給茶機メンテナンス作業
  • 業務用パソコンのハードディスク初期化作業
  • OA機器の印刷用紙補充作業
  • 会議室備品の管理
  • 会場設営（会議や各種面接、研修等に合わせたレイアウト作成）
  • 寮管理

など。

（2）職場づくりの工夫

「誰でも働きやすい職場環境づくり」のために行ったハード面・ソフト面の工夫などは次のとおりである。

職場風景

• ア. ハード面の工夫
  • （ア）聴覚障害者向けの配慮
    筆談ボード及び「ポメラ（携帯小型ワープロ）」の貸出などのコミュニケーションツールの確保。
  • （イ）視覚障害者向けの配慮
    点字ディスプレイ及び音声読み上げソフトの整備、点字テプラによるエレベータ・自動販売機等への点字表示。
• イ. ソフト面の工夫
  • （ア）免疫機能障害者の職場での理解向上のために
    現在5名の免疫機能障害者（内部障害者）が勤務しているが、採用に当たり、感染経路を質問しない、病歴を質問しない等を徹底している。また、同障害の特性を十分に理解するため、ハローワークから障害者雇用指導官と国立国際医療研究センター病院エイズ治療・研究開発センターからコーディネーター（患者支援調整官）を招き、勉強会を実施した。同時に、同社員の配属する部署で働く社員及び周辺関連部署の社員向けにHIVに関する基礎知識をベースにした勉強会を併せて実施し、HIV陽性者への理解ある職場環境を実現させている。
  • （イ）通院休暇制度
    当社では月に2回まで通院休暇の取得を可能とし、本人の健康管理向上に役立てている（通院休暇は欠勤扱いとしない）。
  • （ウ）障害者職業生活相談員によるヒアリングの実施
    当社には現在5名の障害者職業生活相談員を配置しており、うち4名が障害のある社員である。障害のない社員がなる相談員とは異なり、同じ立場で相談者に寄り添った相談を実施している。
  • （エ）就労支援機関との連携
    精神・知的障害者の就労支援機関担当者と定期的な情報交換及び本人への面談を実施している。
  • （オ）知的障害者向けの配慮
    家族との面談や社内見学の実施及び連絡ノートを使用した家族との連携強化を図っている。

（3）研修・レクリエーション等

• ア. コンプライアンス研修の実施
  入社翌日と年数回、テキスト及びeラーニングによるコンプライアンス（法令順守）研修を全員に対して実施している。
• イ. 懇親会の実施
  年数回懇親会を実施している。居酒屋など移動を伴う席ではなく、社内の会議室や執務室を利用し、役員を交えて和気藹々とした雰囲気で実施されている。時には親会社社員やグループ会社からの参加を募り、親睦を深めるのに役立っている。

懇親会風景

3. 取組の効果、今後の課題

（1）取組の効果

特例子会社の設立による障害者雇用の取組の効果として、次のようなことがあげられる。

• ア．障害特性に拘らない、本人の能力に応じた作業を割り当てることが可能となり、職域の拡大につながっている。
• イ．採用からフォローまで一貫した体制がとれる。
• ウ．行政や支援機関からの支援を有効的に活用することができ、連携を図ることが可能となったため、より手厚いサポートが可能となっている。
• エ．親会社及びグループ会社全体の事業推進
  • （ア）各種の付帯作業などを当社に切り出すことにより、親会社社員が本業に専念することが可能となり、生産性向上に寄与している。
  • （イ）グループ会社全体からも作業の切り出しが進められており、当社の職域拡大及びグループ会社全体の生産性向上に寄与する体制が構築できた。

（2）今後の課題

各社員の個性によっては、複雑かつ自己判断が必要な業務が苦手な社員もいるため、単純で繰り返しの動作が可能な業務が量的に必要となる。