みんな、戦力です
- 事業所名
- 株式会社一小イチコ
- 所在地
- 新潟県上越市
- 事業内容
- スーパーマーケット
- 従業員数
- 407名
- うち障害者数
- 10名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚・言語障害 肢体不自由 2 青果、総菜部門での商品の製造・加工及び店内での品出し 内部障害 知的障害 精神障害 8 鮮魚、青果、グロサリー部門及び惣菜工場での製造・加工及び店内での品出し 発達障害 高次脳機能障害 難病等その他の障害 - 目次
![]() 事業所外観 |
1. 事業概要、障害者雇用の経緯
(1)事業概要
- ア.事業内容
明治4(1871)年上越市高田で鮮魚商として創業し、昭和36(1961)年に食品スーパーマーケットに業態転向後、チェーン展開を行い、近年はスクラップ&ビルドによる店舗の大型化と、ショッピングセンター化を進めている。 - イ.経営理念
「商品」にこだわり、「本当にいいもの」をお客様の食卓にお届けすること、そしてそれに相応しい「サービス」をすることを、営業政策上の大きな柱とし、会社方針として次の4点を掲げている。- (ア)毎日がもっと楽しくなる「安・心・食・品・生・活」
- (イ)おいしくないものは取り扱わない
- (ウ)毎日のお買い物を通じて生活を豊かに彩る
- (エ)「本当にいいもの」とは何かを知り見極める
(2)障害者雇用の経緯
- ア.障害者雇用のスタート
障害者手帳を所持している従業員の雇用については、初めは法定雇用率達成のためハローワークからの指導をきっかけに取り組んだ。障害者雇用はとにかく初めてのことで、身体障害者の方が配慮する点等も分かりやすく不安が少ないということで、地域にある主に身体に障害のある生徒が通学している特別支援学校に相談した結果、上下肢に軽度の麻痺があり手帳を所持している生徒を雇用することになった。
担当業務は、店舗の青果部門で袋詰めや品出しをすることからスタートした。年月の経過に伴い多少の障害の進行はあったが、現在も働き続けている。
その後の雇用も前向きに検討はしていたが、対象の障害者を軽度の身体障害者で考えていたことと、採用予定部署が立ったままで両手を使うことの多い品出しやバックヤードでの作業だったため、なかなかマッチする方が見つからないまま数年が経過してしまった。 - イ.精神障害者の雇用の始まり
今から10年前の平成16(2004)年、なかなか2人目の障害者雇用が進まないまま数年が経過した頃、ハローワークから障害者雇用合同面接会への参加を勧められた。その際、ハローワークからは特に精神障害者の雇用を推進しているという話があり、数名と面接することとした。
- (ア)障害者合同面接会での面接
平成16(2004)年、障害者雇用合同面接会で、精神障害のある方数名と面接する機会を得た。その時に面接をした精神障害のある方は、とても印象が良かったため多少の不安はあったが、雇用することに決めた。
【その時の印象】・障害のない方と全く変わらない印象の方であった ・とにかく、当社で働きたいという気持ちが強く感じられた など - (イ)現場の不安
通勤距離等も考え、最も住居と近い店舗での雇用で調整をした。店舗からは鮮魚部門での作業をしてもらいたいということで配置業務の検討を始めた。
しかし、精神障害者保健福祉手帳(以下「精神保健福祉手帳」)を所持している人を雇用するということが会社としても店舗としても初めてであり、現場から次のような不安の声が上がった。
【現場からの不安な声】・一般的には「頑張れ」と言ってはいけないなどの情報はあるが、どのように声掛けをすればよいのか? ・どのように接すれば良いのか分からない
- (ア)障害者合同面接会での面接
2. 取組内容
(1)不安を取り除くためのジョブコーチ支援
現場からの不安の声があったことや、ハローワークからの勧めもあったこと、また障害者本人も不安があると思われることなどから、トライアル雇用制度を活用することと、同時に新潟障害者職業センターのジョブコーチ支援をお願いすることとした。ジョブコーチ支援で、少しでも現場と本人、双方の不安が軽減できればということと、ジョブコーチ支援は、トライアル雇用を開始し実際に働き出してからも支援をしてもらえるということから、支援をお願いした。
しかし、もうすぐトライアル雇用初日という時になって、中越地震が発生した。このため新潟障害者職業センターの障害者職業カウンセラーが支援のための話合いに新潟市から来られず、トライアル雇用の開始にジョブコーチ支援の調整が間に合わないという事態が発生した。本人も現場も働きだすという準備が整っていたため、トライアル雇用の開始日を伸ばすこととし、その間を「職務試行法」という職場実習の制度を利用することを勧められ、結果、予定通りに担当業務をスタートすることができた。
2週間程度の「職務試行法」をはさみ、トライアル雇用の開始と同時にジョブコーチ支援を開始した。この際、次のことなどをポイントにして支援が進められた。その結果、3ヶ月のトライアル雇用の期間終了に引き続いて正式雇用となり、その後もジョブコーチによるフォローアップが継続された。
【支援のポイント】
・障害の特性を現場の従業員へ伝え、適切な声掛けや作業の指示をしていく |
・本人の不安を軽減していき、現場で安心した出勤状況と作業能力を発揮できるように支援をしていく |
・訓練をしていた福祉施設と連携し、生活面での安定も図る |
(2)2年かけて、無くてはならない従業員に
ジョブコーチ支援も集中支援から移行支援になり、フォローアップとなった。集中支援・移行支援と段階を踏まえ、一つ一つ課題を解決していく中で、徐々にジョブコーチ支援がフェードアウトしていった。その頃には、現場の不安も本人の不安もほとんどなくなっていた。概ね2年程度の期間が必要であったが、2年が経過したころには現場にとって、無くてはならない従業員に成長していた。
(3)広がる精神障害者の雇用
その後は、精神保健福祉手帳を所持している方についても、安心して雇用していけるようになった。
- ア.店舗での雇用
体調不良により継続勤務が困難になり退職してしまった方もいるが、精神保健福祉手帳を所持している人を各店舗で積極的に雇用し、不安がある場合にはジョブコーチ支援を利用した。勤務時間については、以前は1日7時間という雇用の仕方もしていたが、現在は他の従業員との関係もあり、特別なケースを除いて1日4時間(週20時間)勤務で雇用している。 - イ.惣菜センターでの雇用
各店舗での雇用がある程度進んでいくと、1店舗に2名3名と雇用することは、作業の切り出しの中で限界が出てくるようになった。そこで、新たに雇用の場を広げていくことを検討した。
当社では、各店舗で販売している惣菜類を自社の惣菜センターで製造している。惣菜センターは午前の4時間が特に忙しいため、その勤務時間帯での雇用を検討することにした。
今まで雇用した中の数名が、同じ福祉施設で訓練を受けていた方ということもあり、その施設で訓練を受けている方の中から、店舗で面接・実習を行い、惣菜センターで雇用を進めていくこととなった。
惣菜センターでは、野菜の下準備や盛り付けなどをしている。惣菜センターでの雇用は、平成22(2010)年から始まり、段階的ではあるが今年度(平成26(2014)年)までに4名の精神障害のある方を雇用し続けることができている。その後も、障害のある方の実習の場として利用してもらい、評価によっては雇用していくということを進めている。そして、今年度も店舗ではあるが雇用することができた。
![]() 店舗鮮魚部門(下処理) |
![]() 野菜の下準備 |
![]() 惣菜の盛り付け |
![]() 惣菜(卵焼き)作り |
3. 課題 ~現在そしてこれから~、最後に
(1)課題 ~現在そしてこれから~
- ア.初めは身体障害者の雇用、その後は精神障害者の雇用をしている。初めは、不安ばかりだったので分かりやすい身体障害者からスタートしたが、今では、どのような障害があっても仕事とのマッチングを第一に考えて雇用をしている。しかし、特に精神障害のある方は、それぞれ特性が大きく異なり、大丈夫と思い雇用してもどうしても継続雇用が困難で、1年程度で退職した方もいる。その点では、やはり安定するまでには配慮と時間がかかる方が多いため、現場の障害理解は不可欠となる。
- イ.今までに知的障害者も何名か雇用したが、他の従業員と同じように4時間の勤務時間で雇用したため、余った体力や時間をうまく使えず、継続勤務できないケースもあった。
- ウ.精神障害者が長く働き続けるためには、なんと言っても現場の理解が必須である。そのためには以下のことが必要であり、大切なポイントではないだろうか。
- (ア)特性を現場に伝えていくこと
- (イ)少しでも現場の負担を軽減するために、第三者(各支援者)への相談窓口をオープンにしていくこと
- (ウ)何らかの課題が発生した場合、すぐに退職を考えるのではなく、本人や現場や支援者などとみんなで話合いを持ち、少しでも働き続けられる方法を検討する
- (エ)長時間の勤務を期待する方については、4時間からスタートしつつ、評価方法について工夫し、また短時間の労働者には家族や団体の行事や福祉等の支援を組み入れ、余暇を充実させる
(2)最後に
新潟県は県の実習制度が充実しており、当事業所へも福祉施設や障害者就業・生活支援センターなどから実習の依頼が随時ある。雇用が前提ではない職場体験的な実習の場としても多くの障害者を受け入れ、事業所全体で協力をしている。実習を積極的に受け入れ、現場の評価と本人の気持ちが合えば障害者雇用もその都度行っている。
当事業所は、今日までに数名の退職者はいるが、会社全体で精神障害という障害を理解し、それぞれの現場と障害のある方、そして支援者が協力しあうことで、笑顔で10年以上継続して働き続けている精神障害者がいる。そして、長く働き続けることが困難な精神障害のある方たちが、その方に続けと、10年・6年・5年という長い期間働き続けることができている。
執筆者: | 障害者就業・生活支援センターさくら 就業支援ワーカー 大庭 淑子 |
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