障害者の雇用環境の整備と生き甲斐を感じられる職場つくりへの支援体制
- 事業所名
- 株式会社 津山商店
- 所在地
- 新潟県南魚沼市
- 事業内容
- 給食受託及び各種イベントプロデュース等
- 従業員数
- 490名(平成26(2014)年12月1日現在)
- うち障害者数
- 17名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚・言語障害 肢体不自由 4 事務補助1、調理補助他3 内部障害 知的障害 8 調理補助他8 精神障害 4 事務補助1、調理補助他3 発達障害 高次脳機能障害 難病等その他の障害 1 調理補助他 - 目次
![]() 津山商店新社屋 |
1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯
(1)事業所の概要
- ア.事業所の概要
設立 昭和59(1984)年3月
資本金 17,000万円(津山グループ) - イ.経営理念
- (ア)お客様への良質なサービスの提供。
- (イ)「お客様の命を預かる」産業の一躍を担う会社であること。
- (ウ)社会規範の手本となるような会社づくり。
(2)障害者雇用の経緯
- ア.障害者雇用の理念
- (ア)企業のCSR活動の一環として、障害者の職業的自立と社会貢献への参加の場を提供し絆の輪をつくる。
- (イ)社会から必要とされることで、社会人として生きがいのある人生設計をつくる。
- イ.障害者の従事業務の内容
- (ア)事務補助
- タイムカード管理
- 郵便物管理
- 人事書類のファイリング等
- 事務所内のごみ捨て等
- (イ)調理補助他
- 前処理:調理加工前の食材の下準備
- 盛付:調理されたものを容器に盛付ける
- 洗浄:調理に使用した器具類、食後の食器等の洗浄及び乾燥後の片付け
- 掃除:休憩室などの清掃並びに整理整頓
ドライブが趣味のいつも明るい
S君 - (ア)事務補助
- ウ.障害者の安定した就業への取組
当社で雇用している障害者をサポートするため、各支店や現場だけでなく本社管理部においても常に障害者の変化に関心を持ち、小さな変化でも現場からの「報告・連絡・相談」をタイムリーに受け、必要に応じ各事業所・店舗を巡回し、障害者及び責任者と面談をし、「『必要としている』『必要とされている』という思い」をお互いに意思疎通を図り、全社一丸となって応援をしている。
労働条件(勤務時間)を決定する際も、障害者の生活に支障が出ないよう、短時間勤務から始め、様子を見ながら定期的なヒアリングを行い、就業可能時間を決定している。
2. 取組の内容と効果
(1)取組の内容
- ア.採用面接
採用に関してはハローワーク主催の合同面接会へ積極的に参加している。
人事課での面接で通勤距離、通勤時間、冬場の通勤難易度を含め就労可能かどうかの判断をする(通勤は公共交通機関の利用が主であるが、自力通勤の場合は安全に通うことができるかを確認する。)。実際の作業面においては、事務補助は本社社屋内での事務作業であり、コミュニケーション能力が必要である。また、調理補助他の業務も作業的にはルーティンワークが中心となるので、正確に時間内に完了させることが求められる。 - イ.説明会
当社は県下に多くの事業所を展開しているが、実際に障害者を受け入れたことが無い事業所(厨房)もある。障害者の配属に関して不安や偏見などが先行しないよう、各管轄の支店を中心に事業所の従業員に対して障害者就業・生活支援センターの支援ワーカーやジョブコーチ等から障害の特性についての説明会を開催し、その後のフォローアップをいただき、障害者の安定した就業に取り組んでいる。 - ウ.出勤初日
出勤初日は支店の担当者、支援ワーカーやジョブコーチの同席の下、職場のルールや担当する仕事の内容などを説明している。 - エ.トレーニング(作業が安定してできるようになるまで)
指示内容への理解に時間がかかる場合、入社後暫くは支援ワーカーやジョブコーチからの全面的なフォローをいただいている。指示については、毎日同じことを指示する習慣を持つことを重視しており、毎日のことが、日常になるまで支援ワーカーやジョブコーチからもご協力をいただいている。
毎日のことでも失敗はあるが、障害者には「必要としている」「必要とされている」「あなたは欠かせない存在である」ことを内面から理解していただけるように、繰り返し丁寧な指導を心掛けている。 - オ.衛生教育
当社にとって衛生管理は最も重要なことであり、専門で学んできた者以外は、衛生管理に対しての意識が弱い傾向にあり、その都度確認をしなければ簡単に済ませようとしてしまう。この点は、衛生面の重要性をジョブコーチや支援ワーカーの協力を得て、繰り返し指導する。
1人でできるようになっても失敗することがある。その時はしっかりと叱ることで、反省をしてもらい、ルールを守らないことは悪いことだということを意識してもらうように指導をしている。 - カ.職場定着
複数の仕事をさせるのではなく、1セクションに1個程度の作業に取り組ませると定着性も高くなる。今ではすべての障害者に安心して仕事を任せられている。
周りが、障害者からの不安定・不調サインを感じ取れず、一方で気づいてもらえないことに障害者が不安を感じ過度のストレス状態に陥り、退職に追い込まれないように注意を払っている。また、季節の変わり目や天候不順により体調が不安定になるケースもあったため、次のことなどを取り決めて、情報を共有し当社と支援機関、現場の三位一体で対策を行なっている。- (ア)一人ひとり日頃から障害者の変化に関心を示すこと
- (イ)不安定な傾向がある場合は、速やかに各支店へ報告をし、本社から就業・生活支援センターに連絡をとること
(2)取組の効果
- ア.支店や現場からの声
支店や現場から、必要とされている人材になっているという以下のような声が寄せられている。- ○ 指示に対して、失敗をしたり、分からなくなったりする時があるため、時には繰り返したり、言い方を変えたりして伝える場合もあるが、本当に一生懸命仕事をしてくれる。
- ○ 普段管理が行き届き難い休憩室等もきれいにしてくれて、皆が気持ちよく休憩を取ることができている。
- ○ 挨拶や返事もしっかりしてくれる。私たちも見習わなければなりませんね(笑)
- ○ 最初は質問も中々してくれなかったが、現在は分からない時などは聞いてきてくれるようになった。
- ○ 障害者としてではなく同じ仲間として接している。
- イ.支援担当者や家族からの声
- ○ 食器の洗浄作業の一員としてなくてはならない存在で「ありがとう」と言われることが嬉しいようだ。
- ○ 失敗したり注意された時は様子が変な期間もありましたが、頑張って仕事に行っているうちにまた褒められ、現在では仕事に行くのを楽しみにしているようだ。
- ○ 以前は体も弱く、籠りがちだったのですが外に出るようになり、体も丈夫になりました。
- ○ 体調を崩して休んだ時、職場の皆さんが本当に心配してくれて感動した。
- ○ 大雪、大雨等、悪天候で出勤が困難な時、安全を最優先して連絡をいただいたりするが、本人は職場に行きたかったようだ。
- ○ 休憩時間も孤立することなく、お話に入れてもらったり、食事をしたり笑顔が絶えず明るく振る舞っている。
- ○ 職場の皆さんが本当に良くしてくれているので、家で職場の話を嬉しそうに話してくれる。
- ○ 親として高齢になってきたので、一人になった時のことを考えると心配だったが、今では、自分で何でもできるようになり安心しています。
3. 今後の課題と展望
今後、より一層高齢化社会が進む中、労働世代不足という深刻な問題に直面してくることが想定される。当社は福祉の一環として給食を調理提供しているわけだが、やはり近い将来、労働者不足の問題が大きく圧し掛かって来た時に労働力確保という点で、障害者雇用、育成はキーポイントになると考える。
当社の業務内容的に、障害者に対しては、ある程度作業範囲が限られることとなるが、理想としては県内全ての事業所に障害者雇用の場を提供し、社会に貢献していくことで、生き甲斐を感じて欲しいと考えている。
それには障害者の受入環境を更に整備し、障害のない者と障害者が力を合わせて、協同でこの将来の重大な問題に取り組んでいこうという意識が大切である。
私たちは「仲間」として障害者を迎え入れるにあたり、当たり前のことだが誰もが自然に行動できるということを目指したいと思う。日常的に人として助け合うという気持ちは、障害者の皆さんが居なければ、なかなか息吹くことが無いだろう。
現代社会において「助け合う」という意識が薄いと感じられる昨今、障害者の存在から、私たちはそれを学ばさせていただいている。
また障害者との懇親の場を積極的に設けることで、当社に勤務する全ての従業員が輪になり、何気ない会話でも相手を尊重し理解し心を通い合わせることで、より良い職場環境が整い、より良い仕事に繋がっていくと考える。
同じ社会人の仲間として将来の人生設計に喜びを感じられるよう、一緒に頑張っていきましょう。
![]() 勤務時間を少しずつ伸ばし
頑張る Sさん |
![]() 細かいことに気がつく責任感の
強い Kさん |
執筆者: | 株式会社津山商店 管理部人事課長 髙橋 貴幸 |
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