障がい者雇用を通じた地域社会への貢献
- 事業所名
- 小林製薬チャレンジド株式会社
- 所在地
- 富山県富山市(宮城県黒川郡)
- 事業内容
- 富山小林製薬株式会社の館内清掃・洗浄、廃棄物処理他
- 従業員数
- 12名(富山) 6名(仙台)
- うち障害者数
- 12名(富山) 6名(仙台)
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚・言語障害 肢体不自由 内部障害 知的障害 10 館内清掃、廃棄物回収・処理、作業服管理 精神障害 1 発達障害 1 高次脳機能障害 難病等その他の障害 - 目次
![]() 事業所外観 |
1. 事業所の概要、特例子会社の設立
(1)事業所の概要
小林製薬グループは医薬品、芳香消臭剤、栄養補助食品(サプリメント)、日用雑貨品などの分野で、さまざまな製品を提供し人と社会に素晴らしい「快」を提供している。そのための「行動規範」として「社員一人ひとりが主役」、「社会的責任の遂行」といった価値観、「自考、自決、自実、自責」、「チャレンジ精神」などの行動原則を掲げ、全社で実践している。
小林製薬チャレンジド株式会社のある富山小林製薬株式会社は、昭和57(1982)年に富山県富山市で設立され小林製薬グループの一員として医薬品・医薬部外品、日用雑貨品など200アイテムを超える様々な製品を製造している。
小林製薬チャレンジド株式会社 概要
設立 | 平成23(2011)年11月1日 | ||
業務 | 清掃業 | 資本金 | 1,000万円 |
所在地 | 富山市中大久保 富山小林製薬株式会社内 | ||
従業員 | 社員 | 富山(12名) 仙台(6名) |
知的障害 軽度4名 重度11名 精神3名 |
支援者(班長) | 富山(6名) 仙台(4名) |
出向社員 2名 パート 8名 |
|
勤務時間 | 9:00~16:00 休憩45分間 | ||
給与 | 時給制 | ||
賞与 | あり | 退職金 | なし |
(2)設立の経緯
当社は障がい者の雇用の促進ならびに障がい者が安心して就労できる職場の提供を目的に平成23(2011)年11月に設立、平成24(2012)年2月に特例子会社として認定された。社名にある「チャレンジド」は“挑戦という使命や課題、挑戦するチャンスや資格を与えられた人”という語源から、米国を中心に障がい者を表す言葉として使用されている。
特例子会社の設立の検討が始まったころ、小林製薬株式会社単体では法定雇用率をほぼ達成していたものの、関係会社はそれぞれ100人から300人規模ということもあり、独自で法定雇用率を満足することは困難な状況であった。しかし、小林製薬グループとしての「社会的責任の遂行」のためにも法定雇用率を満足させる必要があり、特例子会社を設立することとなった。特例子会社とはどのようなものなのか、他社の事例をヒアリング・見学した。
他社見学で学んだこと
他社見学のポイント | 学んだこと | 方向性 |
業務内容 | 少しの工夫でできる仕事は沢山ある | 業務量が安定的で工夫しやすい業務 |
作業環境 | ハードだけでなくソフトも重要 | 障がい者のサポート専任者を配置(班長) |
雇用形態 | 特性に見合った形態を | 障がい者は正社員で班長はパートで |
考慮すべき点 | 関係機関や社内外の支援も重要 | 設立場所の選定を慎重に |
これをもとに、「安定性」、「難易度」、「設備投資」、「拡張性」の観点から主業務を「清掃業務」とし「業務量の確保」「採用の見込み」、「関係機関との連携」のし易さを考慮し所在地を富山県とした。更に、平成26(2014)年1月から宮城県でも同様に障がい者雇用を行っている。今後は兵庫県にも展開する計画である。
2. 障がい者の従事業務
(1)業務の進め方
設立から3年が経過し当初の清掃業務に洗浄・洗濯、廃棄物処理、作業服管理業務等を加え、社員数も増加し12名(富山)となった。現在は12名を4つの班に、業務をAからIまでの9のコースにそれぞれ分けて業務内容を決めている。
・コースの担当を毎日変えている
・担当スケジュールは事前に知らせている
・それぞれの班は班長がサポートする
をルールとして運用している。
(2)労務管理上の問題と改善
(ア)労務管理上の問題
設立当初は障がい者雇用についての経験や知識が不足している段階であったため社員の行動に対し指導、教育ができるのか、といった不安があった。実際には
・泣いてしまい就業ができない
・座り込んだまま動かなくなる
・昨日できたことが今日はできない
といったことがあった。
そこで、設立当初より相談している障害者就業・生活支援センター、富山障害者職業センター、ハローワーク富山などの関係機関から様々な支援・アドバイスをいただきこのような事象は不安感・不公平感・障がい特性等からくるものでそれぞれ対応策が異なる、ということがわかった。
(イ)改善内容
・就業に対しての不安感を持たせない
スケジュールを明確にし、事前に知らせる
・不公平感を持たせない
担当するコースはローテーション形式とし毎日変える
・疑問をそのままにしない
ルールは「暗黙知」ではなく「明示」し、疑問点は班長が答える(班長は実務をしない)
といった工夫を行い改善を進めた。
また、コミュニケーションを図ることを目的に3ヶ月に一度、15分ほど社長が社員と個別に面談を行っている。期の初めでは「今期の目標」をどの様にするかや、その進み具合などを話し合っている。
(3)障がい者の従事業務
(ア)Aさんの話
Aさんは平成23(2011)年12月に採用され現在4年目である。この日は館内での薬品の運搬作業を行った。食事や睡眠に気をつけて体調を管理している。毎日、公共交通機関(JRとバス)を利用し通勤している。今期の目標は「毎日、落ち着いて仕事に取組む」である。
![]() 薬品の運搬作業をしているAさん |
(イ)Bさんの話
Bさんは平成25(2013)年4月に採用され現在2年目である。この日の作業は廃棄と回収品の分別で、4人で作業した。バスで通勤していて30分ほどかかる。「ジグソーパズル」が趣味である。今期の目標は「班の仕事を覚える」である。
![]() 分別作業をしているBさん |
(ウ)班長 伊勢 恵子さんの話
富山小林製薬株式会社を定年退職し、平成23(2011)年11月の会社設立から班長をしている。これまで、障がい者と一緒に仕事をした経験はなかったので当初は戸惑いの連続だったが、ジョブコーチからは障がい者をそれぞれ見てその人に応じて対応する、とのアドバイスを貰い、終業後に班長が集まって対応方法を話し合うことを毎日行った。障がい者と一緒に仕事をし、班長同士で話し合ううちに徐々にお互いが分かり合うようになってきた。今では自分の子供のように思える。
![]() 伊勢恵子さん |
3. 今後の方針
(1)仕事創出の工夫
小林製薬株式会社は小林製薬チャレンジド株式会社を設立することで、障がい者の雇用の創出を実現することができた。設立当初は、工場内の構内清掃業務を中心に行っていたが、これだけでは当然「赤字」だった。設立目的である「障がい者の雇用の促進ならびに障がい者が安心して就労できる職場の提供」を考えても、「赤字」を放置せず仕事を創出し売上げを増やす必要があった。
次第に「特例子会社」の理解が得られ、富山小林製薬株式会社の社員とミーティングを行い現場で手間がかかるが無くすことができない業務や、効率化したいけれどなかなか実現できない業務など、現場で困っていることは何か、を検討するようになった。また、障がい者と一緒に仕事をして仕事の流れを教えてもらったり、安全に作業を行えるように、区画整備や備品の準備を行ったりして、誰でもがわかる作業環境を整えていった。様々な仕事を取り込んでいった結果、赤字も解消され社員数を増やすこともできた。
(2)今後の方針
小林製薬チャレンジド株式会社は多くの方のご支援をいただきながら社員12名(富山)で日々頑張っている。障がい者であるという大前提とそれに対する配慮を忘れてはいけないが、それ以外は全く障がいのない者と変わらない。4月からは小林製薬グループの経営理念や行動規範なども唱和している。小林製薬グループの一員としてさらなる信頼を獲得し、さらなる業務拡大の可能性を探りながら、富山小林製薬株式会社だけでなく他の製造工場へも小林製薬チャレンジド株式会社の取り組みを拡大していければと考えている。
![]() 小林製薬チャレンジド株式会社
社長 佐伯 貴範さん |
執筆者: | 富山高齢・障害者雇用支援センター 窓口サービス業務 久保 正春 |
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