2014年度作成

事業所名

株式会社PFU

所在地

石川県かほく市

事業内容

ドキュメントスキャナビジネス、情報KIOSK端末等の開発製造サービス、ITソリューションサービス、マルチベンダー保守サービス

従業員数

4,514名（PFUグループ、平成26（2014）年11月末現在）

うち障害者数

47名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害	2	事務補助
聴覚・言語障害	3	事務補助
肢体不自由	23	開発、営業サポート
内部障害	6	事務補助、開発
知的障害	4	清掃、メール配布
精神障害
発達障害	8	事務補助、製造
高次脳機能障害	1	施設管理
難病等その他の障害

目次

1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯
2. 取組の内容
3. 取組の効果、今後の展望と課題

事業所外観

1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯

（1）事業所の概要

昭和35（1960）年にウノケ電子工業として創業した。現在は、世界No.1シェアのドキュメントスキャナ、多くの出荷実績を誇る情報KIOSK端末、組込みコンピュータなど、お客様のご要望にお応えするハードウェアを提供するとともに、紙文書の効率的な電子化と活用を実現するドキュメントソリューションや、セキュリティ・文書管理などのソフトウェア、ITインフラ構築や他企業と提携したマルチベンダーサービスなど、ICTに関連する事業をトータルに手がけている。

本社及び主要開発拠点は石川県かほく市に構えており、特にかほく市高松に所在する「ProDeS（プロデス）センター」は、製品開発から評価・試験、製造までを一体化したモノづくりの中核拠点となっている。

（2）障害者雇用の経緯

PFUの障害者雇用は「一人でも多くの障害のある方に、働く喜びを得る機会を提供する」という考えの下、特別支援学校やハローワーク等と連携を取りながら取り組んできており、PFUグループ会社4，514名のうち障害者雇用数は47名になっている。

本事例で紹介する障害者Aさんが本社人事総務部門で雇用されるまでには、私（執筆者）が所属する特別支援学校在籍中2年間をかけて計5回の職場実習が行われた。

この職場実習を通じ、当学校としては本人の特性理解（障害特性、コミュニケーション能力、理解力、継続力、得意不得意、性格等）、適正業務の選定、効果的な支援方法について会社との相互理解を図った。会社としては当校とも連携し、仕事内容・コミュニケーション・通勤方法等についてスモールステップで目標を設定し、それをクリアすることで本人が自信を持ち、意欲的に参加できる環境を整備した。また、ハローワークとも連携を図り、会社が障害者を雇用する上での留意点や手続き上の準備をサポートしていただいた。

2. 取組の内容

以下Aさんの職場実習から採用までの取組について述べる。

（1）募集・採用

会社と学校、そしてハローワークが連携し、採用までの見通しと職場実習実施にあたっての計画・準備について話合いの場を設定し、共通理解を図った。また、採用にあたり、手続きの面では学校の進路担当、生徒の実態や支援内容については学級担任が中心となって会社への説明とサポートに入った。

（2）職場実習の実施

【職場実習期間内の業務・職場配置】

2年前期：人事総務部門（事務作業、軽作業、社内メール便の仕分け、独身寮の清掃）10日間

2年後期：人事総務部門（事務作業、軽作業）10日間

2年冬期：人事総務部門（事務作業、軽作業）10日間

3年前期：人事総務部門（事務作業、軽作業）20日間

3年後期：人事総務部門（事務作業、軽作業）10日間  ※定着実習

職場実習を通して、社会人としての振る舞いやコミュニケーションの取り方、また、実際の業務を体験する中で、卒業後を見据えた本人に合った業務の選定等を目的として、様々な作業を設定してもらった。実習期間については、2年時は各回2週間（実働10日）、3年時は4週間（実働20日）と段階的に期間も長くし、授業の一環というよりは働くことを意識し、本人も働き続けるイメージが持てるように取り組んだ。

業務内容としては、当学校での職業教育では清掃作業班に所属していたこともあり社員寮での清掃作業の補助、パソコンが得意な本人の特性を生かして事務作業の仕事内容等を組み込んでもらった。その他様々な業務を体験できるように、会社側と相談しながら業務内容を決定していった。

職場実習では、コミュニケーション面にやや不安があった。しかし、元来、友達を気遣ったりするなど優しい性格で、責任感もあり、就労に対する意欲は十分に持っていると考えられた。実習当初は慎重な性格もあり、初めての作業では時間がかかることもあったが、実習の回数を重ねるうちに作業スピードも上がり、分からないことは確認しながら業務に取り組むことができた。一方で、業務にあたる際の課題としては次のような点があげられた。

ア．職場の方の名前を覚えることが難しい

イ．職場の方とコミュニケーションを取る際に、自分の思いを優先して伝えてしまうことがある

ウ．作業の手順を覚えるのが苦手

これらの課題に対しては、職場の方の名前が分かるように座席表を作ってもらう、ソーシャルスキルトレーニングを継続して行う、手順書を作成する等の会社・学校双方の支援もあり、課題の克服につながっていった。また、実習が進むに従って職場の雰囲気にはすっかり慣れて表情も明るくなり、より積極的に業務に取り組む姿が見られた。

このように特別支援学校の職場実習では、就労と同時に即戦力となることを意識し、会社との打合せや実習後の振り返り、相談を中心に各関係機関との連携を取りながら、業務への適応を支援している。

（3）職場内の構造化

職場内の机の配置（誰がどこに座っているか分かるように座席表の活用）、道具の置き場所（道具によって置き場所・置き方を固定する）、ロッカーの施錠の状態や仕事内容等が視覚的に分かるように配慮された。

（4）職場実習後の連携会議（振り返り活動）

職場実習の事前準備において、学校は会社側のニーズを把握し、授業等を通して必要な準備と課題の克服に取り組んでいった。また、実習中に出た課題については実習後に連携会議を設定し、会社から実習での成果と課題を話してもらった。生徒と教師だけが会社の思いを聞くのではなく、保護者も同席することで、わが子のアピールポイントと課題を知る機会となり、家庭の協力を得ながらその課題の克服に取り組むことができた。

3. 取組の効果、今後の展望と課題

（1）取組の効果

在学中の2年時から3年時の間に行った5回に及ぶ職場実習によって、Aさんは会社のことを深く理解し、人間関係の作り方を学んだり、業務内容等を把握したりすることができた。

職場実習終了時には振り返りの場を設定し、本人、保護者、学校の学級担任・進路担当、会社の現場担当・人事担当で成果と課題について話し合った。会社から成果と課題を話してもらうことによって、担当教員の話だけでは伝わりにくい会社側が求めるニーズを生徒自身が認識する良い機会となった。職場実習における課題についても、会社の生の声が聞けることは大変貴重で、本人・保護者ともに実習後に学校・家庭生活で課題を克服する良いモチベーションとなった。また、職場実習中は前回の様子と比べて良くなった所を評価してもらいながら行えた点は、本人にとって努力したことが実ったという喜びと自信につながり、より主体的に仕事に取り組むことができた要因になったと感じる。さらに、実習しながら生徒の実態や成長していく過程を会社が確認できることは、安心・納得した上での雇用につながるのではないかと考える。

（2）今後の展望と課題

入社後は、仕事の幅を広げるため、隙間時間を利用して本人が苦手とする漢字の学習を行いレベルアップに努めている。今後の展望としては、与えられた業務を正確にできることが第一であるが、そのほかに仕事へのモチベーションの維持、業務内容の変化への対応、対人コミュニケーション面、業務に対する慣れにいかに対処していくかが長く働き続けるためのポイントになるのではないかと考えている。中でも困ったことがあれば職場の方に相談し、働きやすい環境をいかに自分で構築できるかが重要になるのではないかと思われる。その際、会社が本人と密に連絡を取り合える「人」と「場」を設定し、部署が変わっても会社内でスムーズに引き継ぎができる体制を整えていくことも大切になってくる。また、会社だけで対応しきれないことは金沢障害者就業・生活支援センターの就労支援担当（ジョブコーチ）と連携を取りながら、必要があれば学校側も話合いに加わり課題の早期解決に取り組んでいく。

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