事業所名

社会福祉法人恩賜財団済生会支部  福井県済生会病院

所在地

福井県福井市

事業内容

病院（内科、呼吸器内科、外科、整形外科、脳神経外科、産婦人科、小児科、泌尿器科、循環器内科ほか14科）

従業員数

1,281名

うち障害者数

13名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害	1	理療士
聴覚・言語障害
肢体不自由	6	臨床工学技士・放射線技師・SE事務・販売員
内部障害	3	事務・用務員
知的障害
精神障害	2	施設課員・販売員
発達障害	1	事務
高次脳機能障害
難病等その他の障害

目次

1. 組織概要
2. 現状とこれまでの取組
3. 当院で活躍する障害者の紹介
4. 済生会病院の障害者雇用の展望と課題

事業所外観

1. 組織概要

（1）設立

「恩賜財団済生会」は明治44（1911）年、生活困窮者の医療支援のため、明治天皇から賜ったお言葉（済生勅語）により創立され、昭和27（1952）年5月、恩賜財団済生会は社会福祉法人として認可を受け「社会福祉法人恩賜財団済生会」となった。

当院は昭和16（1941）年8月に恩賜財団済生会福井診療所として福井県福井市に開設された。昭和25（1950）年9月には恩賜財団済生会福井県済生会病院と改称され、昭和27（1952）年5月「社会福祉法人恩賜財団済生会支部　福井県済生会病院」となる。現在、許可病床数は460床である。

（2）沿革

当院は、昭和52（1977）年5月に、日本では2番目、北陸ではいち早く全身CTスキャンを導入するなど、県内で1番、北陸や全国でも早い段階での取組が多数を占めている。平成15（2003）年8月には、「がん診療拠点病院」に指定、平成16（2004）年3月には、北陸で初めて「地域医療支援病院」に指定され、その後もさまざまなことに挑戦を続けている。平成21（2009）年3月にトモセラピーを北陸で初めて設置し、現在では2台体制とするなど、地方でも最新の医療サービスを安心して受けられる体制を整備している。

また、平成23（2011）年3月には福井県経営品質賞（知事賞）を受賞し、同年11月には第5回ワーク・ライフ・バランス大賞優秀賞を受賞、さらに平成24（2012）年10月には日本経営品質賞（大規模部門）を受賞した。

（3）使命

当院には二つの大きな使命がある。一つは、社会福祉法人として生活困窮者の方々に対して医療費減免や減額、さまざまな支援活動（社会貢献）を行うことである。当院での障害者雇用もその一環である。もう一つは、地域の拠点病院として、地域住民に質の高い医療を提供することである。

2. 現状とこれまでの取組

社会福祉法人としての当院の社会的使命は、障害者雇用を率先して進めていくことである。そのために、ただ雇用するだけでなく、地域社会の中で障害者が働き甲斐をもって働ける障害者雇用のモデルケースをめざして、さまざまな取組を行っている。

（1）当院の障害者雇用

職員の採用については基本的にハローワークと当院のホームページを活用している。

障害者を採用する場合は、福井障害者職業センターのジョブコーチ支援制度を活用しており、採用時の障害者のフォローを、ジョブコーチに重点的に行ってもらうことで、雇用の定着につなげている。常にジョブコーチと連携を取りながら、障害の特性や程度、どのような配慮をすれば個々の力を発揮できるのか等、聞き取りや指導を受けている。また採用に関する本人の希望や適性なども鑑みて、配属や業務内容も随時検討している。

継続雇用についても同様に、ジョブコーチの協力のもと、個々の特性に配慮した上で仕事のやり方への理解や困ったことはないかなどについて確認を行っている。その中で、課題や問題が生じている場合には、人事室担当者、ジョブコーチ、本人の3者で情報を共有しながら、問題改善をめざしている。

また、患者の個人情報保護や感染対策も含めた安全性の確保に対しても、ジョブコーチを通じきめ細やかな指導を実施するなど、留意している。

（2）障害者の配置・業務内容

当院では、専門職（理療士・臨床工学技士・放射線技師）、事務職、システムエンジニア、販売員、及び用務員など幅広い職種において障害者を雇用している。また、障害者の中には、定年後の再雇用制度を利用している職員もいる。

配属先での業務は採用時に本人に伝えるが、本人の特性に合わせて業務内容の変更・追加を行うこともある。また、労働条件についても本人の希望等を含め総合的に判断し、必要に応じて変更するなどの対応をしている。

3. 当院で活躍する障害者の紹介

今回は、医療情報課・システム管理室で従事しているAさんの例を紹介する。

（1）採用までの経緯

医療情報課・システム管理室で勤務するAさん（24歳）は発達障害と睡眠障害がある。当院の求人に対し、ハローワークから問合せがあり、当初は別の職種での求人であったが、定時で仕事が終了し、対人関係が少ない業務という希望と、大学の情報学科でプログラミングを学び知識を持っているという特性から、システム管理室への配属をAさんに提案し、採用するに至った。

（2）業務内容

パソコンを使った業務が得意であるため、病床利用率や入退院数、小児救急患者数といった看護部に関わるデータの整理をはじめ、会議の議事録をまとめる作業や、研修アンケートの集計など、数多くの業務をこなしている。また、プログラミング言語を使い、病棟など現場で使用する検索システム等のアプリケーション作成も行う。最近では連携医の検索を行うことのできるアプリケーションを作成し、かかりつけ医窓口（かかりつけ医を見つけたいという方のための相談窓口）で活用されている。また、患者図書館の本のカバーかけや紙カルテの裏表紙作りなどの単純作業も率先して行っている。

連携医検索アプリケーション （かかりつけ医窓口）

（3）障害の特性

Aさんは、障害の特性として聞いた内容を記憶することが不得意であるため、現在は説明や指示を受けたらその都度、メモを取るようにしている。また、電話での対応が難しいので、業務上の伝達事項や連絡のやり取りには、電子メールを活用している。苦手な対人関係については、周囲の職員の配慮もあり、仕事の指示は課長若しくは主任を通して受けられるよう、体制を整備している。

また、いくつかの仕事を同時並行で進めることが苦手であるため、これまでは一つの仕事を早くに終わらせて次の仕事に移るようにしていたが、各業務の合間に空き時間が生じてしまうことが判明したため、現在は一つの仕事をやり終える前に、次の仕事の段取りをしておき、効率的に時間を使うなど、自分でより効率の良い方法を見つけて工夫している。

システム管理室で働く障害のない職員と同様の業務をこなすことは難しいが、自分でできることを見つけ、積極的に取り組むAさんの姿勢は、周りの職員の刺激になり、信頼感・安心感にも繋がっている。

（4）Aさんの思い

「プログラムを組むのは楽しいので、自分の作ったアプリケーションが役に立つといいなと思いながら仕事をしている」と話すAさん。現在は契約職員だが、「できることを増やしていって、正職員になれるようがんばりたい」と意欲を口にしている。

4. 済生会病院の障害者雇用の展望と課題

（1）医療の現場と障害者雇用の理想

病院は人の命を扱う職場であるため、安全面での配慮や秘密保持が重要となり、障害者が働く職場としては他業種に比べて困難な面が多い。であるからこそ、当院としては、障害者への理解を深め、障害者と協力して仕事を行うことに努めている。

またAさんの例にもあるように、障害者が働きやすい職場環境を整備するため、一人一人の障害特性や性格を理解し、いかに配慮・対応できるかに重点を置いている。業務上、部や課、そして係ごとの業務分担はあるが、既存の業務分担に障害者を当てはめるのではなく、その障害者にあった働き方をつくっていくことが継続雇用していく上で最も重要である。Aさんの場合も、所属長や職場の同僚の理解と配慮により、職場の業務分担にあてはめるのではなく、本人ができる仕事に取り組んでもらっている。障害者本人の働きたいという意欲を尊重し、その人にあった職場環境を整えることが重要である。

（2）障害者に対するケア・フォローなど

障害者の継続雇用には周りの理解・協力の他にもう一点重要なポイントがある。それは、障害者自身の声を聴くことである。Aさんからも「他の発達障害の職員はどのように悩みや疑問に対処しているか知りたい」という意見があった。日常の業務の中で障害者の声を聴くことはなかなか難しい。障害者の悩みや意見をできる限り汲み取れるよう、教育や研修を通して障害者職業生活相談員の機能を強化し、より一層の活用を図っていくことが重要である。

（3）最後に

当院には「患者さんの立場で考える」という理念がある。済生会の原点である施薬救療の精神に立ち返れば、困っている人に手を差し伸べるというのは当然のことであり、当院で働く障害者一人一人の仕事の悩みに対応している。

今後も引き続き、仕事の悩みだけでなく、生活に関する悩みも含めて障害者の特性に合った相談及び指導を行い、障害者が働きやすい環境づくりに努めていきたい。