地域一体型リサイクル会社をめざして
~地域に信頼され、地域になくてはならない会社へ~
- 事業所名
- 株式会社しんえこ
- 所在地
- 長野県松本市
- 事業内容
- 鉄、非鉄金属、廃プラスチック、廃家電、廃OA機器、廃自動車、古紙の収集運搬及びリサイクル
- 従業員数
- 47名
- うち障害者数
- 18名(平成27(2015)年2月末現在)
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚・言語障害 1(重度) 現場作業 肢体不自由 1 現場作業 内部障害 知的障害 5(うち重度2名) 現場作業 精神障害 10 現場作業 発達障害 1 現場作業 高次脳機能障害 難病等その他の障害 - 目次
![]() 事業所外観 |
1. 事業所の概要
(1)概要
株式会社しんえこ(以下「当社」)は、静岡県富士宮市に本拠を置く株式会社エンビプロ・ホールディングスを親会社とし、平成23(2011)年4月に設立。長野県松本市に本拠を置き、資源リサイクル事業を展開している。
当初は、金属スクラップに特化して事業を展開してきたが、松本平を中心とした長野県の皆さまに愛される「地域一体型リサイクル会社」を目指して、総合リサイクル業へ事業の転換を行った。
地域の皆さまにご利用して頂ける資源回収所「もったいないBOX」、松本山雅FCサポーターとの資源物回収事業「YELL」を展開し、好評をいただいている。
また、高齢者へのサービスとしてご家庭の大掃除や事業所の模様替えにご利用していただける「もったいないBOXかたづけ隊」をスタートした。
(2)企業理念
創造企業:つねに社会にとって必要な事業を創造しつづける
- 日々創業…初心を大切に日々創業精神で仕事をする
- 歴代創業…代々初代の志を持って新事業を創造する
- 全員創業…全社員が自分に合う第一人者の道を拓く
循環企業:助け合い、活かし合い、分かち合う喜びの環(わ)を回しつづける
- 快労…助け合い、補い合って気持ちよく働く
- 活財…あらゆるもののいのちを活かして使い回す
- 還元…利益や喜びを共に生きる人たちと分かち合う
求道(ぐどう)企業:永遠につづく企業の道、人の道を追求しつづける
- 選難の道…安易な道を選ばず求められる道を歩む
- 独自の道…特質を生かし人のやらないことをやる
- 感謝の道…生かされていることに感謝し慢心をしない
(3)品質方針
【地域一体型リサイクル会社】になる
(目的)
資源リサイクル事業を通して、環境保全・顧客満足を経営の重要項目として、地域の特性を生かした事業を展開します。ISO9001に準拠したマネジメントシステムを運用し、継続的な改善と環境汚染の予防を推進します。
- ア 環境に配慮した製品の提供
- イ 環境整備の徹底
- ウ 地域の方々への、安心、安全、信頼の向上
企業理念・品質方針は毎日の朝礼にて唱和を行っている。
![]() もったいないBOX(手前緑色の箱)
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2. 障害者雇用の経緯、制度活用等
(1)障害者雇用の経緯
平成24(2012)年に当社の新たなリサイクル品目として、古紙の回収事業がスタートした。古紙回収の市場獲得を目指す中、障害のある方とともに古紙の回収を行っている福祉事業所があることを知り、その事業所の見学をさせていただいた。その際に同福祉事業所では就労移行支援事業所の開設を検討していることを伺った。
その出会いの中で、当社の工場の一部と商材を使って障害者の一般就労への訓練ができないかを福祉事業所へ提案し、平成25(2013)年4月に同福祉事業所で就労移行支援事業が確立、当社工場内に施設外就労の施設が開設されることとなった
その訓練が行われる中で障害者とリサイクル業の相性の良さに気付かされた。それが契機になって最高のパフォーマンスが発揮できる職場づくり・環境づくりを目指すこととなる。直接雇用をするに当たり、リサイクル業のハードな環境の中で、障害者と一緒に働くことに戸惑い、否定的な意見やストレスを抱える社員も見られたが、障害のある方の仕事に対しての情熱や働くことの喜びを目の当たりにし、現在では、障害の有る無しに関わらず、全員が会社の貴重な戦力となっている。
(2)制度活用等
当社では下記制度等を活用している。
- ア 中小企業障害者多数雇用施設設置等助成金平成26(2014)年2月に長野労働局より助成金の受給資格の認定を受ける(認定番号0001)。多数雇用施設として、小型家電解体工場を平成26(2014)年6月に開設した。対象の雇用者数を当社では15人と設定し、平成26(2014)年7月に達成した。その7月から数えて半年後に助成金の申請ができる。対象者の名簿・工場建設にかかった費用等の内訳の提出を行うこととなっている。
- イ 障害者民間活用委託訓練「実践能力習得訓練コース」の受託障害者民間活用委託訓練「実践能力習得訓練コース」は、企業等の現場において、業務内容に沿った作業実習を通じ、より実践的な職業能力を習得するために行う職業訓練で、当社では地元の技術専門校から委託を受けたかたちで実施している。訓練中はお給料を支払わないので、ご本人・ご家族の同意を必ず頂いている。以前、ご本人の同意のみで訓練を開始したところ、訓練開始後にご家族よりお給料が出ないことに対してお問い合わせをいただいたことがあったので、ハローワーク、技術専門校の担当の方へご家族への説明、もしくは面談の際に同席していただけるようお願いをしている。3カ月の訓練が行えるため、初めての就職や社会経験の少ない方に対して利用。社会人としてのマナーも含め訓練を行う。
- 障がい者短期トレーニング促進事業は企業等で障害のある方がより実践的な短期のトレーニングを行う場合に、安心して行えるようにする長野県の事業で、対象となる方は、障害者就業・生活支援センターに登録している方となっている。そのため必ず同支援センターの方からご本人へ説明をしていただき、同意後、当社で実習を開始する。また実習は1カ月以内、計60時間上限の決まりがあるため、当社では2週間(1日6時間)の短期間の実習を行い、できるだけ多くの作業を経験していただき、作業のマッチングを図っている。
- エ 障害者トライアル雇用奨励金(短時間含む)常用雇用前のステップとして活用している。適性や業務遂行能力を見極め、相互理解を高める研修期間と位置付けている。障害者民間活用委託訓練・障がい者短期トレーニング促進事業・障害者トライアル雇用では、きちんと挨拶ができるか、休みなく出勤できるか、仕事への取り組みはどうか等を確認し、常用雇用前のマッチングを図る。当社では「安全に作業ができる」「分からない場合は分かる者に確認ができる」を重視している。
- オ 特定求職者雇用開発助成金対象者であればハローワークから申請書が届く。雇用契約の内容(就業時間等)で金額が変わってくるため注意する必要がある。
- カ キャリアアップ助成金(正規雇用等転換コース・人材育成コース)研修の一環としてキャリアアップ制度を活用している。平成26(2014)年10月から開始し、週1回外部講師を招いての講習を行った(6カ月間・24回)。内容は安全について、5S活動について、報告・連絡・相談についてで、作業の関係と障害の程度を含め2チームに分けて講習を行い、実務で役立つ様な形でOJTも行った。雇用は契約社員としてスタートするが、新たに限定正社員制度を取り入れた。
3. 作業内容、障害者雇用のメリット・課題
(1)作業内容
当社では、障害への配慮は欠かさないが、特別扱いしないことを基本とし、作業自体は障害のない社員と同じ作業を行っている。
具体例
- 古紙のひも切りビニールひもでくくられて搬入される古紙のひもをカッターで切る作業
- 解体電動工具等を用いて大型家電等の解体・分別作業
- ピッキング大型破砕機から出てくる鉄・非鉄金属のピッキング作業
- 分別お客様より搬入のあった金属等の仕分け作業
その他、資格を持っている者はフォークリフト作業等、資格に応じての作業も行っている。
(2)障害者雇用のメリット
リサイクル業の工場の環境は、決して快適で安全ではない。働く者にとって、労災事故等が起きる危険性がある設備や機械があちらこちらに設置されている。障害者を直接雇用することによって、工場内の環境整備の推進、社員の安全意識の向上が見られた。
作業前KYT(危険予知訓練)の実施、安全教育の実施等は障害者雇用のために始めたが、結果的に、一般社員が共に学び人に教えることによって気付かされることが非常に多くあるように思われた。
特性をつかみ、障害者に適した作業が見つかれば、障害のない者よりも作業効率を上げられることもある。また、障害者雇用の相乗効果として、社員全体の残業の減少が見られる。
(3)障害者雇用の課題
社員の大多数が今まで障害者と関わったことがなく、障害者雇用を開始して1年足らずということもあり、障害者の小さな変化を見逃してしまうことがある。また、一気に障害者の人数が増え18名に対して5名の社員で現場対応しているため、障害者同士のトラブルにもすぐに対応ができないことが多い。初めて就職する方や働く意識が低い方もいるので、一緒に働いている障害者から様々な相談をされることが多々ある。
まだ始まったばかりの障害者雇用で、対応のマニュアル化、統一化ができておらず、手探り状態ではあるが、障害のない社員も共に学び、障害者が長く勤められる環境づくりを今後も目指していきたい。
執筆者: | 株式会社しんえこ 生産部手解体チーム リーダー 高野 綾 |
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