事業所名

丸長鍍金株式会社

所在地

静岡県静岡市

事業内容

電気めっき加工

従業員数

115名

うち障害者数

5名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害
聴覚・言語障害	1	プレス作業
肢体不自由
内部障害
知的障害
精神障害	4	めっき加工
発達障害
高次脳機能障害
難病等その他の障害

目次

1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯
2. 自然体でのサポート
3. 働く意欲とやりがいのある職場環境の構築
4. 今後の展望と課題

事業所外観

1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯

（1）事業所の概要

昭和25（1950）年、旧清水市で電気めっき加工業として創業した。自転車部品のめっきからスタートし、現在、自動車部品・電子部品の一般電気めっき、無電解めっき及び電鋳めっき関係など、多種類にわたる部品のめっき加工品を製造している。静岡市内に2工場のほか、浜松市、佐賀県佐賀市に工場を持つ。

平成16（2004）年に品質マネジメントシステムISO9001を認証取得した。「品質で最大の顧客満足の提供」を合言葉として、「提供製品が顧客要求事項、法令、規制の要求を満たすべく、品質マネジメントシステムの継続的改善の推進」を企業目標としている。

また、お客様満足の追求、技術の向上、取引先と地域への貢献を品質方針に掲げる一方、地球温暖化対応や有限資源の有効利用を視野に、環境への取組を効果的・効率的に行うことを目的とした環境省策定のガイドライン「エコアクション21」の認証・登録を平成23（2011）年8月に取得し、めっき加工業を通して、環境保全、循環型社会の形成、資源保護及び汚染予防へ積極的に取り組んでいる。

（2）障害者雇用の経緯

昭和55（1980）年に取引先から身内に障害のある若者の雇用を打診され、その雇用に向けて検討した。これが障害者雇用の始まりとなった。この時は、障害者と会社だけでなく、家族からの協力を得ながら対応することができたことで、採用した障害者はほとんど休むことなく勤務を続けることができた。

それ以降、取引先等から障害者の雇用についての相談が続き、受け入れられる範囲の中で障害者の雇用を増やしていったことが、障害者の雇用拡大につながった。

現在、静岡市内の工場では、言語障害のある身体障害者Aさん、精神障害者のBさんとCさんの計3名が勤務しており、浜松工場では精神障害者のDさんとEさんの2名が勤務している。

2. 自然体でのサポート

めっき加工は単純作業の比較的多い職場であるが、障害者が受け持つ仕事は、めっき加工の中でも危険性が少なく、且つ難しい機械操作が含まれないものを基本としている。入社後の作業指導は、職場リーダーが作業を理解するまで丁寧に指導し、また、肉体的、精神的に負担をあまり感じることのないよう、本人の取り組み具合等を考慮しながら勤務配置している。作業は、繁忙期、閑散期にもよるが、ひとつの作業だけを担当するのではなく、梱包作業等へ幅を広げている。

Aさんは言語に障害があるため、作成した作業工程マニュアルを使い、作業指示の伝達を行っている。最初は職場リーダーがAさんと一緒に作業を行い、作業の習得具合や本人の様子をみながら、徐々に一人での作業へと切り替えた。Aさんは言語に障害があるものの加工作業能力は障害のない人と変わらない。板金作業の仕事を手伝ってもらった際に、能力の高さが確認できたため、昨年からは静岡市清水区のグループ会社へ出向し、金型プレスの作業を担当している。

Bさんは精神に障害があるものの、季節の変わり目などに調子を崩すことはほとんどない。最初は、めっき加工前の部品をフックに吊り下げる作業を繰り返す単純手作業から始め、作業に対する理解の度合いや本人の調子を判断しながら、他のめっき加工へと仕事の幅を広げていった。

作業中のBさん

Cさんは、県立職業訓練校において訓練を受けてきたことと、在校中に職場実習を体験した経緯もあり、比較的スムーズに雇用につながった。スタッフとのコミュニケーション等に特に問題はなかったが、本人の希望から短時間の勤務としている。現在、めっき加工しない部品の一部を覆うマスキングと、めっき加工前の部品をフックにかける作業を担当している。

作業中のCさん

DさんとEさんは浜松工場で現地採用された障害者である。職場は異なるが二人とも、めっき加工前の部品をフックに吊り下げる作業を担当している。

3. 働く意欲とやりがいのある職場環境の構築

障害者を雇用し始めて30年以上の時間が経過してきたが、これまで職場でトラブルになるような案件が発生することもなく、ジョブコーチへ相談することや、外部に対応を求める事態に至ったこともない。また、定年まで勤め上げた障害者は今まで2名おり、勤続20年以上の障害者は現在3名いる。

会社、社員と家族を大事にしていきたい。そして障害者雇用は社会の責務というノーマライゼーションの考え方が、意識の高いベテラン職員から若い社員へと自然に引き継がれている。これが障害者雇用を長く続けられている理由だと思っている。

障害があるというだけで、一般的には雇用する側にとって大変ではないかと考える方もいるが、当社においてはそのような雰囲気はない。特に障害者であるからと意識した対応を図ってきたこともなく、自然体で接することを大切にしている。

雇用に関しては、最初の障害者を雇用した時から障害のない人と全く同じ条件で採用し、評価基準や待遇も同等としている。頑張れば障害者は障害のない人と同じ評価を得られるという労働環境をつくることで、障害者の働く意欲とやりがいを高めるようにしている。

障害者は障害のない人と同等の待遇を受けていることを認識しており、業務に自信を持って取り組み、職場によっては、障害のない人よりも生産性の高い障害者もいる。遅刻や欠勤もなく働いており、繁忙期には残業も惜しまずに業務に励んでいる。家庭の事情で中途退職する障害者も数人いたが、それ以外の理由での退職はほとんどない。

10年前から特別支援学校の依頼を受け、現場実習の場を提供している。めっき加工は、作業の種類も多いため、実施時期や人数などを総合的に勘案し要望があれば現場と相談しながら極力受け入れている。

4. 今後の展望と課題

特別支援学校やハローワークから障害者の紹介を受けることもあるが、厳しい社会情勢だけに近年障害者の新規雇用はできていない。新たな雇用に取り組んでいきたいと思っているが、企業の経営、運営を確保することが前提条件にある。

また、現在は障害者の勤務に伴う補助器具や作業設備等の対応は不要であるものの、今後、障害の特性に対応する設備の必要な雇用ケースも考えられ、どの様な設備が必要となるのか検討していきたい。

スタッフの方に障害者雇用について伺うと「特別に意識はしていない」という言葉が返ってくる。丸長鍍金株式会社の更なる発展を願う。