2014年度作成

事業所名

株式会社TBエンジニアリング

所在地

愛知県豊田市

事業内容

自動車用内装部品・フィルター・パワートレインの設計・開発

従業員数

197名

うち障害者数

7名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害
聴覚・言語障害
肢体不自由	2	シート設計
内部障害
知的障害
精神障害	1	材料調査
発達障害	4	材料調査、技術管理、出図管理、コピー機管理
高次脳機能障害
難病等その他の障害

その他

障害者職業生活相談員

目次

1. 事業所の概要
2. 障害者雇用の取組み
3. 雇用・定着のポイントと今後の展望

事業所外観

1. 事業所の概要

当社は平成14（2002）年12月に自動車内装部品メーカーであったタカニチ株式会社の子会社として設立（社名：株式会社タカニチエンジニアリング  本社：名古屋市名東区一社）され、親会社への技術者の派遣業務からスタートした。

その後、親会社がアラコ株式会社、豊田紡織株式会社と合併し、「トヨタ紡織株式会社」が誕生すると、その子会社として社名を「株式会社TBエンジニアリング」に変更した。また、平成24（2012）年には本社を豊田市に移転するとともに事業を派遣から請負事業主体へと転換している。

現在は、世界トップクラスの自動車内装サプライヤーであるトヨタ紡織（TB）グループの一員として、自動車内装部品・フィルター開発の一翼を担い、高度な技術と知識、培ったノウハウにより、常に進歩し続ける技術集団として、世界のお客様の信頼と期待に応えるモノづくりを行っている。

【事業内容】

• 自動車内装部品開発設計
• 自動車フィルター開発設計
• 自動車パワートレイン開発設計
• 設計支援業務（出図管理、法規認証など）

2. 障害者雇用の取組み

（1）平成23（2011）年まで  ～進まない障害者雇用～

当社の平成23（2011）年度末時点での障害者雇用者数は、軽度の身体障害者1名のみといった状況であり、障害者の雇用は遅々として進まない状況が続いていた。

• ア．障害者雇用が進まない理由
  当時は採用ターゲットを軽度の身体障害者のみとしており、多くの企業が同じような層の障害者雇用を考えているため、この層の採用は困難な状況であった。【募集職種】設計または設計補助
  【採用条件】障害のない人と同等の成果を出すことができる
  【採用ターゲット】軽度の身体障害者
• イ．採用を軽度の身体障害者のみにこだわる理由
  • （ア）会社トップの理解不足と不安
    • 設計会社に障害者ができる仕事はない。⇒障害者の能力に対する偏見
    • 障害者は収入分の仕事をしない。⇒障害者の能力に対する偏見
    • 障害者は障害をたてにわがままを言う。⇒障害者の性格に対する偏見
    • 障害が悪化しても解雇できない。⇒障害への知識・理解の不足
  • （イ）職場の理解不足と不安
    • 障害者への接し方、仕事の与え方への不安
    • 業務効率悪化への不安

（2）採用を見直すきっかけ  ～一人の発達障害者との出会い～

平成23（2011）年2月、愛知労働局、ハローワーク、愛知県主催の「障害者就職面接会」で一人の発達障害者と出会い、当社の障害者雇用は転機を迎えた。

• ア．身体障害以外の障害者との出会い障害者就職面接会で一人の障害者が当社の設計補助職に応募してきた。応募者であるAさんは、見た目は障害のない人と変わらない。しかも、本人から障害名やその特性について説明を受けたが、面接会で話をした20分の間では、その障害特性すら感じることはなかった。 【障害名】高機能広汎性発達障害（精神障害者保健福祉手帳取得）
  【障害特性】
  
  • 不注意・物忘れが多い
  • あいまいな指示を理解しづらい
  • 焦りやすい
  • 複雑な計算・数値管理が苦手    等
  当社に応募する前に、発達障害者支援センターでの訓練、障害者職業能力開発校での技能習得に努め、障害特性に対する対策と技術を身に付けていた。そのため、面接会では、Aさんから障害を感じなかったのだ。障害のない人と変わらない様子に採用を前向きに検討したが、身体障害以外の障害について全く知識がなかった当社は、「採用」に踏み切れないでいた。
• イ．愛知障害者職業センターとの出会いそのような時、愛知障害者職業センターの存在を知り、訪問する機会に恵まれた。そこでは、様々な特性を有する障害者と接することができ、障害に関する知識が深まった。さらに、職場実習という制度の存在を知り、Aさんについて「採用」の判断はできないが、雇用を前提としない職場実習からならやってみても良いのではないかとの結論に至った。
• ウ．職場実習（企業内訓練制度）の実施職場実習の期間は3週間。実習内容は「CAE（Computer Aided Engineering）メッシュ作成業務」と決定した。当初の本人希望は機械製図であったが、本人の障害特性を考慮して上記業務としたのだ。しかし、結果的には、業務の複雑さと人間関係が原因で職場から逃げ出すという結果になってしまった。障害者採用の難しさを痛感し、障害者採用を諦めかけた当社に、本人から謝罪を添えて「もう一度チャンスを下さい」との手紙が届いた。この一通の手紙が当社の障害者採用に転機をもたらした。これに心を打たれた社長から「もっとハードルを下げて、確実にできる業務を検討するように」との指示が人事にくだった。
• エ．2度目の職場体験実習（職務試行法）の実施前回の結果を踏まえ、以下の事柄を行いながら、再実習の職場を検討した。検討や再実習の実施には愛知障害者職業センターの支援を受けた。
  • Aさんとじっくり話し、本当にできること、得意なことを探る。
  • 人事担当者が様々な業務を一つ一つ現場まで出向き作業内容を確認し、Aさんができる作業を探す。
  • 職場社員、職場責任者、人事で、本当にAさんができる作業なのか確認するとともに、作業の与え方をしっかり話し合う。
  再実習先はコピー機管理業務を主体に複数の業務から単純業務を切り出すことで1人分弱の業務を創出した。そして、実習開始前に職場見学と職場社員との顔合せを行った。また、愛知障害者職業センターのジョブコーチに実習中のサポートに入ってもらう体制を整えた。結果、実習を終えたAさんからは「技術の仕事ではないが、人の役に立っていると実感できることがうれしい！」、職場の社員からも「前向き且つ一生懸命業務に取り組んでくれた。今後も是非一緒に働きたい」との言葉があり、準社員（フルタイム勤務）としての採用が決定した。
• オ．採用後その後は着実に業務実績を積み正社員に登用され、より多くの業務をまかされるようになった。現在は担当業務を後輩に引き継ぎながら、さらにステップアップした業務を担当するとともに、自身が障害を克服してきたからこそできる後輩の障害特性への気付き、分析をしながらの指導も行っている。

（3）障害者の積極的採用  ～採用事例紹介～

Aさんとの出会い～採用を経て、障害者採用の見直しを行い、積極的に障害者採用に取り組むようになった。

• ア．見直し後の採用条件
  

  【募集職種】

  設計補助、技術事務等
  ※職種は上記であるが、実際は特定しない。

  【採用条件】

  働く意欲があり、採用前の実習に同意できる方

  【採用ターゲット】

  すべての障害者

• イ．採用条件見直し後の採用事例
  • （ア）精神障害BさんBさんはストレスからの、鬱症状・睡眠障害・体調不良で突発的に休んだり、休みが長期化する場合があるといった特性のある精神障害者で、2週間に一回の通院も必要という状況であるが、事務系職種の正社員を希望して応募してきた。しかし、今までの勤務経験は1日4時間の夜勤アルバイトしかなく、フルタイム勤務には本人自身が不安を持っていることから、以下のように職場定着に向けたステップを踏むこととした。まずは、実習開始前に起床時間を少しずつ早めることから始めてもらい、職場体験実習は10時から4時間としてスタートした。不慣れな労働時間に起因する体調不良の不安がありつつも、主治医・ジョブコーチ・職場の障害者職業生活相談員の支援等を受けながら、職場体験実習を乗り切り、アルバイトとして9時からの6時間勤務、8時30分からの8時間勤務を経て、現在は準社員（フルタイム勤務）として正社員を目指して着実に業務実績を積み上げている。
  • （イ）発達障害CさんCさんは、予想できない突発的な事柄への対応ができず、パニックになってしまうという障害特性を持ち、コミュニケーションが苦手で、特に電話対応への極度の恐怖心を持っていた。事務系職種を希望してきたが、当社の事務系職種はコミュニケーションを必要とするため、採用は難しいかと思われた。しかし、コツコツと同じ作業を繰り返すことが得意で、「千羽鶴を折り続けるのが好き」という話から、燃焼試験業務をやってもらうことにした。障害のない人であれば、単純作業の繰り返しに飽きてしまいがちな作業内容であるが、彼女は飽きるどころか並外れた集中力で業務をこなし、障害のない人より作業スピードも速く、正確性にも優れていた。3カ月間のフルタイム勤務のアルバイトで採用し、準社員に登用。現在は試験業務からPC打ち込み業務に移ったが、変わらぬ集中力で活躍し続けている。

職場の様子

職場の仲間

3. 雇用・定着のポイントと今後の展望

（1）雇用・定着のポイント

障害者の採用活動を進めていく中で、大切なことは以下の通りであると学んだ。

• 会社経営陣の理解と全社で取り組む体制の構築
• 「できる」「得意」の見極めとそれを活かせる作業の切り出し
• 多様で柔軟な雇用形態
• 職場の理解と協力
• 本人のやる気と向上心
• 家庭の安定

そして、これらを実行していくためにも、地域の障害者就業・生活支援センター、愛知障害者職業センター（カウンセラー、ジョブコーチ）、ハローワーク、主治医そして障害者職業生活相談員からの適切な支援が得られる体制を築いておく必要がある。

また、「職場体験実習」は、障害者には職場環境を知り、その仕事の適性を確認する機会を得ることができ、会社にとっても障害特性の見極め、職場適合力の確認そして必要な職場環境を整えるために大変有益なステップである。

（2）今後の展望

当社の雇用障害者数は平成26（2014）年4月時点で7名、内1名は重度の身体障害者である為、障害者雇用率は4.1％となり、法定雇用障害者数を大きく上回ってはいるが、障害者雇用は企業の社会的責任（CSR）の一つと捉え、障害者就職面接会への参加等により、今後も障害者雇用を継続的に実施していく予定である。

また、採用した障害者の支援活動として、次のような活動を継続していくことで、更なる障害者の職場定着を目指す所存である。

• ア．ジョブコーチ支援 <
  • 支援が必要な対象者に必要な頻度で実施
• イ．障害者職業生活相談員支援
  • 職場巡回：1回/週
  • 個別相談：1回/週
  • 職場ミーティング：1回/月
• ウ．振返り会
  • 頻度：月1回
  • 参加者：本人、指揮命令者、チームリーダー、障害者職業生活相談員、人事、カウンセラー、ジョブコーチ
• エ．その他
  • 必要に応じての、家族との面談
  • 支援センター等との情報交換

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