特別支援学校と連携して障害者の雇用に取り組み、地域貢献につとめる事業所
- 事業所名
- 株式会社マルヤス
- 所在地
- 三重県津市
- 事業内容
- スーパーおよびレストラン事業
- 従業員数
- 600名
- うち障害者数
- 12名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚・言語障害 2 青果部門1名、精肉部門1名 肢体不自由 3 青果部門1名、惣菜部門1名、フロア部門1名 内部障害 1 精肉部門1名 知的障害 5 青果部門2名、惣菜部門1名、フロア部門1名、保安部門1名 精神障害 1 フロア部門1名 発達障害 高次脳機能障害 難病等その他の障害 - 目次
![]() 事業所外観 |
1. 事業所の概要
(1)概要
株式会社マルヤス(以下「当社」という。)は、昭和21(1946)年に津市内に創業されたマルヤス食料品店をもとに昭和44(1969)年に設立され、現在、三重県津市を中心に松阪市も含め、スーパーマーケット10店舗およびスーパーマーケットに融合させたレストラン1店舗の事業を展開している。
当社におけるスーパーマーケット事業は、「マルヤス」「コスモス」「コスモスプラス」といった店舗としての性格の異なる多彩なスタイルのスーパーマーケットを展開しているところに特徴がある。各店舗では家族で楽しんでもらえるように、もてなしの気持ちを込めたサービスや、店づくりを共通の目標とし、「質のいい物をお値打ちに提供すること」を大切にした経営に努めている。特に、基幹店である島崎店では、エンターテイメント性に力を入れ、お客様の笑顔をもっと大きく膨らませる、身近で楽しい店舗づくりを目指している。
(2)事業所の企業理念
当社では、基本理念として「地域の方々の健康的で豊かな暮らしづくりのお手伝い」を提唱している。地域に暮らす方々の健康で豊かな暮らしづくりを実現していくため、徹底した顧客第一主義をテーマに、商品、サービスの両面での高い品質を提供している。
2. 障害者雇用の状況
(1)雇用方針
当社は、社会に貢献できる仕事、人生を賭けて悔いのない仕事を求める人に対して、やりがいを与えることを基本方針として掲げ、この方針の下で従業員の雇用にあたってきている。
障害者雇用にあたっても、この方針に従い、また障害者雇用を通じて事業所として地域貢献を果たしていこうとの考えに立って、積極的に障害者雇用に取り組んできている。
(2)障害者雇用の経緯、背景
ア 障害者雇用の状況
当社の障害者雇用率は、平成24(2012)年度に2.67パーセント、平成25(2013)年度3.26パーセント、平成26(2014)年度は3.47パーセントを達成するなど、ここ数年は高い雇用率を維持している。
このような取組が評価され、平成25(2013)年度における障害者雇用優良事業所等表彰において、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長努力賞を授与されている。
イ 障害者雇用の経緯
当社には勤続30年を超える身体障害のある社員がいる。このことは、余暇活動を通じて風通しの良い職場環境づくりに取り組むなど同社の長年の創意工夫の成果であると考えられる。
また、当社は以前からハローワーク主催の障害者就職面接会に積極的に参加し、本人のやる気があれば進んで採用するとの方針で臨み、幅広く障害者の採用に取り組んできた。このような障害者雇用の姿勢が浸透し、三重県下の特別支援学校の中でも当社の障害者雇用への積極的な姿勢と雇用実績に対する評価が高まってきた。
最近では、特別支援学校からの働きかけにより学校と連携した取組を展開しており、その取組の成果として、特別支援学校高等部卒業生の雇用が増加している。
当社では現在、三重県下5校からの職場実習を受け入れている。この実習は、「産業現場等における実習」あるいは「現場実習」、「職場実習」と呼ばれているもので、特別支援学校の生徒たちが、学校の教育課程における授業の一環として、実際に事業所等で働くことを通して、生徒にとっては働くことの意義や喜び、職業人としての心得や態度など必要な資質について学習することができ、また、保護者や学校としては、生徒にとってどのような仕事に適性があるのか、また、将来の職業生活のためには今後どのような指導に重点を置くのかについて見極めることができる。
また、この実習は特別支援学校高等部学習指導要領において、「自立と社会参加に向けた職業教育の充実のための、産業現場等における長期間の実習などの就業体験の機会を積極的に設けるとともに地域や産業界等の人々の協力を積極的に得るよう配慮すること」が求められている。地域の事業所にとっては、特別支援学校の活動に対する協力あるいは貢献活動でもある。
当社では、このような観点から特別支援学校と連携し、高等部の生徒の職場実習に協力するとともに、高等部卒業後の雇用をも前提として実習生として積極的に受け入れ、障害者雇用につなげている。
この職場実習を通じての雇用は、平成23(2011)年4月1日に2名が入社し、平成26(2014)年現在では5名となっている。さらに平成27(2015)年4月に3名が入社予定となっている。
3. 障害者雇用に向けた取組
(1)障害者就職面接会への出席による雇用の開始
当社には勤続30年になる障害のある人がいる。この人は、身体障害(内部障害)があり、同社の障害者雇用としては、この方のみの雇用の状態が長く続いた。
しかし、事業所として雇用面でもより一層地域貢献を果たそうという方針を打ち出し障害者雇用に取り組むこととなり、ハローワーク主催の障害者就職面接会に出席し、採用に取り組んできた。その結果、3名の障害者の雇用につながった。
(2)特別支援学校との連携による雇用の取組
当社では特別支援学校高等部と連携して生徒の2年生時あるいは3年生時に、卒業後の採用を前提として、職場実習を受け入れ各店舗における業務を実際に体験させて卒業生徒の採用につなげている。
このことにより、生徒は職場実習で実際に働く体験を通して、働くことの大切さや喜び、就業するために求められる知識、技能、態度を培い、あるいは従業員らの姿から多くを学び、「あんな人になりたい」「同じように仕事をしたい」という生徒の将来の目標が持てるようになる。
また当社としても、実習を通じて、実習に取り組むそれぞれの生徒の特性を理解するとともに、どのような職種、どのような雇用形態が適切かについて判断し、高等部卒業後の雇用の可能性を探っていく。特に、3年生の実習では、生徒の適性や特質を把握し、具体的にどのような仕事を担当させることができるか、またそのためにはどのような職場環境が適切か、職場としてどのような支援が必要であるのかを見極める。見極めが不足する場合は定められた期間の実習が終了後も、さらに臨時の実習を受け入れることがある。そして、雇用の見極めのついた生徒については、実習終了後にハローワークを通じて改めて面接を行い、その上で雇用を決定することとしている。
職場配置については、本人の希望や障害の種類、程度を考慮し、また職場実習を通じて得られた当該生徒の適性や特質、さらに適性のある職種についての情報をもとに、本人の負担が軽減できるように当該生徒が実習時に体験した作業に従事できる部署に配置することから始めるような工夫を行っている。
![]() 作業風景(青果部門)
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(3)障害者雇用に当たって活用した制度や助成金
知的障害者の雇用に際しては、ジョブコーチ支援制度を活用し、本人が担当する作業を確実に遂行できるようになるまで、丁寧に指導を重ねることとしている。
(4)取組の成果や課題
一生懸命に仕事に取り組む障害のある従業員の姿を見て、従業員に障害者に対する理解が深まり、障害者とともに働く際の支援が自然に行われるようになってきた。たとえば仕事内容を指示する際には、具体的に指示した上で、作業の進み具合をみて必要に応じて声がけをするなどの細やかな対応ができるようになってきた。
また、障害のある従業員が来客対応でとまどっているときには、すぐに支援に入るなど、障害者とともに働くことが普通の姿になってきている。
さらに、障害者の雇用を通して同社への社会評価も高まり、このことが障害者雇用優良事業所表彰にもつながり、特別支援学校を始めとする関係機関等の評価にもなっている。ただ、スーパーマーケットにおける接客部門での雇用については、今の段階では実現ができていない状況で、この点を同社では今後の課題としている。
執筆者: | 前三重県立特別支援学校 玉城わかば学園 校長 鳥羽商船高等専門学校 講師 西世古 悌治 |
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