ダイバーシティ感覚に富んだ組織作りを目指して
- 事業所名
- 住友電工プリントサーキット株式会社
- 所在地
- 滋賀県甲賀市
- 事業内容
- 携帯電話、スマートフォン、コンピューター本体・周辺機器等用フレキシブルプリント回路(FPC)の開発、試作、製造事業
- 従業員数
- 648名(平成27(2015)年1月末現在)
(注)障害者雇用率算定上の常用雇用労働者数 459名 - うち障害者数
- 11名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚・言語障害 1 一般製造 肢体不自由 3 CADオペレーター、一般製造 内部障害 1 一般製造 知的障害 5 プリント基板製造(CL貼合、検査) 精神障害 1 一般製造 発達障害 高次脳機能障害 難病等その他の障害 - 目次
![]() 水口事業所外観 |
1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯
(1)事業所の概要
住友電工プリントサーキット株式会社(以下「当社」)は、住友電気工業株式会社の100%子会社でフレキシブルプリント基板(FPC)事業を行っている。当社は、平成2(1990)年、滋賀県甲賀郡石部町(現、湖南市)に「住電サーキット株式会社」を設立(現、当社石部事業所)、平成12(2000)年に事業のセンター機能を滋賀県甲賀郡水口町(現、甲賀市)に移し(現、当社水口事業所)、社名を「住友電工プリントサーキット株式会社」として、親会社からFPC事業を分離・独立させ、滋賀の地に同事業を集約した。
現在当社では事業のグローバル化に伴い、国内3拠点(滋賀県甲賀市、湖南市、静岡県裾野市)、海外5拠点(中国(蘇州、深圳)、フィリピン、タイ、ベトナム)にて事業を展開している。
企業理念の「グローバルな視野と独創的な発想を以て、住友事業精神に則り公正かつ適正にフレキシブルプリント基板の生産事業活動を行うことで社会に貢献する。」のもと各方面のステイクホルダー(顧客、納入企業、従業員、地域等々)からの強い信頼を得るべく事業を行っている。
当社の生産品であるFPCとは、絶縁フィルム上に銅箔の電気回路を形成した配線材料で、その主な用途は携帯電話、スマートフォン、タブレット、コンピューター本体や周辺機器、OA機器、ゲーム機など多くの電子機器に利用されている。
(2)障害者雇用の経緯
現在の障害者雇用体制ができあがるまでには、次の5点が欠かせないものであった。
- (ア)企業トップの障害者雇用に対する強い意志
- (イ)受け入れる職場の努力
- (ウ)長期的視点に立った計画性
- (エ)障害者自身の努力
- (オ)行政機関や支援機関との連携
- ア.障害者雇用への取り組み開始平成2(1990)年に現石部事業所において事業を展開し始めた頃、当時はまだ一般企業では知的障害者に対して受入れが難しいと考えられていた時代であったが、トップからの指示で知的障害者の受入れを開始した。定着や安定した就労に至るまでは、支援機関との連携を日々行いながら受入れ職場の仲間が諦めず熱意をもって定着に取り組んだ結果、勤続20年に達する知的障害者が出るところまでに至っている。これらから学んだことは、幾らトップの指示であっても実際に受け入れる職場の仲間の理解と熱意がなければ定着や安定した就労はあり得ず、受入れ職場の声をよく聴き必要な職場改善などを継続的に取り組んでいかなければならないと考えている。
- イ.障害者雇用の拡大平成12(2000)年に水口事業所がスタートした頃、行政機関から障害者雇用に関する表彰のお話をいただいた。しかし、その時点で新設した水口事業所においては障害者の受入れができておらず、会社として表彰されるには石部事業所だけでなく水口事業所にて受入れができて初めて評価されるべきものと考え、そのありがたいお話を保留させていただき、ハローワークと連携して水口事業所にて障害者雇用を進めるべく取組を開始した。以後、事業の拡大に伴い助成金の活用をさせていただきながら車いす利用の障害者の受入れや知的障害者の受入れを計画的に進め現在に至っている。その過程で人数だけでなく長期就労に対して行政機関から企業や社員ともに評価いただいたが、これら全ては各受入れ職場の理解と努力によるものである。
2. 当社の目指すべきところ
グローバルに事業展開している当社においては、様々な人材が活き活きと活躍できるダイバーシティ感覚に富んだ組織作りを目指して取り組んでいる。つまり個を尊重し、違いを認め合い、チームで成果を感じあえる組織を実現するために次のことに取り組んでいる。
- 社会的責任を果たすため障害者法定雇用率の達成と更なる雇用機会の提供
- 障害者と共働することにより、社員一人ひとりの人権意識の向上とダイバーシティ感覚の醸成
- 障害者を雇用する以外の方法で障害者に働く場所の提供(※)
これらを通して当社の企業理念にある「住友事業精神」を実現していくべく取り組んでいく。
ダイバーシティ感覚に富んだ組織を実現することにより、世界に通用する企業を実現するとともに社員一人ひとりが自己実現を体感できる活き活きとした企業として成長していく。まだまだ実現には課題の多いところではあるが、長期的視点を持ち積極的に取り組んでいく。
(※)障害者に就労する場所の提供
- 平成2(1990)年後半より現在まで障害者共働作業所に事業所内清掃や緑化業務を委託
- 水口事業所内に定期的な障害者共働作業所による売店の設置
- 社員福利として誕生日にプレゼントするクッキーを障害者共働作業所から購入
3. 長期雇用に向けた取組、今後の課題と取組について
(1)長期雇用に向けた取組
障害者雇用を行うに当たって本人の経験、能力、考えなどを確認しながら職場に定着し長期に就労してもらえる環境作りをしていくことが必須と考えている。その考えのもと新規で障害者雇用を行う場合は次のステップを踏んで受入れを進めている。
- ア.身体障害者に対する取組
ステップ:障害者職業訓練校→トライアル雇用→嘱託雇用→正社員登用正社員として就労いただく前提としてスキルの向上と業務能力の拡大が求められるが、それぞれの障害程度などによりこれらの対応力が個々に異なる。そのため、上記のステップを踏んで社員として仕事の幅や習熟が継続的に拡大できるかどうかを見極めていく。平成14(2002)年に嘱託として入社した肢体不自由者(車いす利用)はトライアル雇用後、嘱託としてCAD業務に従事した。同業務に従事3年経過後、業務修得状況や当人の向上意欲などから勘案し正社員に登用した。以後、同職場の障害のない者へ技術指導など行うほどに職務の幅を広げて活躍している。
作業環境 作業エリア前室→作業エリア作業エリア周辺作業用端末周辺機器等CAD作業 - イ.知的障害者に対する取組
ステップ:作業実習→嘱託雇用
知的障害者の受入れ可能職場及び作業の選定を行い、その職場(作業)に適応できる人材の紹介依頼をハローワークや障害者職業センター、養護学校などに対して行い、対応可能な障害者の紹介を受ける。その職場で作業実習を通して作業適応能力だけでなく、通勤面や職場規律面などへの適性を確認し関係機関と相談しながら採用可否を判定。採用となれば嘱託社員として雇用開始する。
検査作業
(2)今後の課題と取組について
いまのストレス社会で様々なハラスメントを防止し、関係する一人ひとりにとって活き活きとして働くことのできる組織を作っていきたいと思っている。
現時点で必ずしも全従業員が障害者と共に働く機会があるわけではないため、長期的・継続的な障害者雇用に積極的に取り組み、共に働く機会を提供し関係する一人ひとり及び会社組織においてダイバーシティ感覚を醸成していきたいと考えている。その他、従業員研修の充実や会社制度の新設や見直しなどを行い、人権尊重はじめダイバーシティ感覚に富んだ活き活きとした組織作りを行い、継続的な会社発展と社会貢献に寄与していきたいと思っている。
執筆者: | 住友電工プリントサーキット株式会社 総務部 岸野 幸廣 |
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