障がい者雇用の積極的な取組と環境づくり
![]() 事業所外観 |
1. 事業所の概要
当ヘルスケアフードサービスセンター米子(以下「当センター」とする。)は平成19(2007)年2月に開設し、現在8年目を迎えるセントラルキッチンである。
セントラルキッチンとは、複数の病院・介護施設など常に大量の料理を提供する必要がある施設(以下「施設」とする。)の調理を1ヶ所で行うことで規模のメリットを追求することを目的とするセンターである。調理コストの低減、安全衛生管理の徹底、専門の栄養士の効率的配置を行うことにより、一定の品質の商品を安全かつ安定的に提供することが可能となる。
当センターでは、加熱調理(クック)した食品を急速に冷却(チル)し冷蔵(チルド)保存したものを、施設利用者に提供する時再加熱する、“クックチル”というシステムを導入している。このシステムを活用すれば均一で高品質な食事の提供、衛生管理の徹底、煮物等味がよくしみ込むため食種の増加、作業時間の平準化などの利点がある。
厳しい安全衛生管理基準のもと、日清医療食品の全社品質方針である“お客様の信頼と満足を得る、心のこもった食事サービスを提供する”を徹底し、より良い製品を提供するため、日々の業務に取り組んでいる。また、平成23(2011)年10月には食品安全に関するマネジメントシステム『ISO22000』の認証を取得し、当センターで製造する製品の品質管理の徹底、衛生管理体制も整備し、製品を安全にお客様までお届けするマネジメントシステムを構築している。
日清医療食品株式会社(以下「当社」とする。)は本社を東京都千代田区丸の内におき、全国に16支店16営業所・4つのセントラルキッチンを有し、平成27(2015)年10月には5つ目のセントラルキッチンを京都に操業予定である。京都のセントラルキッチンでは、ペースト状の形態を用意。嚥下調整食の基準に準拠し、施設側が選択しやすくするとともに、喫食者に応じて固さやトロミをカスタマイズできるようにする。
また、当社は全国約5,200ヶ所の病院・医院・介護老人福祉施設・介護老人保健施設において給食の受託業務を行っている。平成24(2012)年4月からは「栄養バランスのとれた、おいしく、食べやすい食事」を自宅でも手軽に楽しみたいという人々のニーズに応えるために、食事を自宅までお届けする新規事業「食宅便」を開始している。
2. 障がい者雇用の経緯
平成19(2007)年2月の当センター開設当初の障がい者雇用は、知的障がい者と精神障がい者の2名であった。雇用後、精神障がい者が体調をくずし、状態が安定しない時期が長引き、止むを得ず退職に至る。この時に障がい者雇用(特に精神障がい者雇用)の難しさと、受け入れる側の理解の必要性を痛感する。
その後、平成22(2010)年まで新規の障がい者雇用はなかったが、平成23(2011)年4月に障害者就業・生活支援センターの支援協力を得て、精神障がい者を5時間勤務のパート社員として採用し、洗浄部門に配属した。
就労当初は仕事を覚えるのも難しく、また、特有の考えやこだわりを持っており、継続していけるか不安であったが、一緒に働くパートナーや周囲のフォローもあり、半年後にはある程度一人で業務ができるまで仕事を習得した。結果、約1年後に嘱託社員へ変更し、現在も継続して洗浄業務に従事している。
平成24(2012)年には鳥取障害者職業センターからジョブコーチ支援を受け、1名の精神障がい者を5時間勤務のパート社員として採用し、包装部門に配属した。支援期間中にはジョブコーチの定期的な訪問があり、本人の心のケアや、スタッフとのコミュニケーションのとり方、仕事の面についてなどいろいろな支援を受けた。不安はあったが、ジョブコーチ支援終了後も安定した業務継続ができ、半年後には業務についての効率化や衛生面について、本人からアイデアや意見を提案するようになった。業務については清潔かつ丁寧で確実な仕事をすることができるため、包装部門には欠かせない、全社員にとっても手本となる存在となっている。
障害者就業・生活支援センターや鳥取障害者職業センター(ジョブコーチ)からの協力・支援(障がい者の雇用管理についての知識や方法)のおかげで、障がい者雇用の促進が実現できた。加えて、障がい者雇用の取組当初は、単純作業に従事させることしか考えていなかったが、実際に支援を通して採用活動を行った結果、個々によってはレベルの高い仕事をすることができると実感し、視野も広がり積極的に障がい者雇用に取り組むきっかけとなった。
3. 障がい者雇用の取組
(1)トライアル雇用の活用
平成25(2013)年には、ハローワーク米子から精神障がい者1名の紹介を受け、トライアル雇用制度を活用して雇用した。配属は段ボールの組立及び軽作業とした。
平成26(2014)年には、1名の方に、短時間トライアル雇用制度を活用し、その適性や業務遂行可能性を、段ボールの組立及び軽作業などで見極めている。
短時間トライアル雇用制度は、短い労働時間(1日3時間、週4日)から始め、徐々に週20時間勤務に労働時間を増加していくもので、本人が少しずつ業務や職場環境に慣れることが可能になり、仕事も少しずつ覚えることができる。また、トライアル雇用期間中にはハローワークの紹介を通じ障害者就業・生活支援センターの支援を受ける制度を積極的に活用している。
(2)高校生による現場実習の受入れ
平成26(2014)年には、1人でも多くの生徒に、多くの体験をしてもらいたいという思いで障害者就業・生活支援センターからの紹介により、県内の西部・中部の高等学校(養護学校、特別支援高等学校、普通高校)に通っている生徒の現場実習を積極的に受け入れた。
現場実習での経験が、生徒が卒業時に決める進路の参考になることと、当センターで勤務を希望した際の採用可否の判断にしたいと考えている。
(3)障がい者合同面接会への参加
平成26(2014)年10月には障害者合同面接会に参加した。面接会の結果3名の方を職場実習に受け入れ、うち1名を採用し洗浄部門に配属した。この面接会では15名を超える方と話すことができ、非常に有意義な時間であった。今後も継続して参加を検討している。
(4)障害者就業・生活支援センターとの連携
平成20(2007)年から障害者就業・生活支援センターとの連携を行い、支援員の方に当センターの業務内容を熟知していただき、業務対応可能者の推薦を得ている。また、月1回程度勤務者との面談を行い、問題が起きた場合は対処法の指導を受けた。
障害者就業・生活支援センターからの推薦で障がいがある一般の方の職場実習も受け入れ、職場実習の経験を経て当センターを希望された際には採用可否の判断に活用している。
以上のような取組を鳥取障害者職業センターや、障害者就業・生活支援センターによる支援を活用しながら行っている。
(5)現在の雇用状況
現在は以下のような雇用状況となっている
障がいの種類 | 配置人数 | 配置部門 | 主な職務内容 | 写真番号 |
知的障がい | 1 | 洗浄 | 主に調理器具などの洗浄作業 洗浄作業に係る一連の作業 | (ア) |
精神障がい | 2 | 洗浄 | 主に調理器具などの洗浄作業 洗浄作業に係る一連の作業 | |
精神障がい | 1 | 包装 | 製品のパック投入 真空パック作業 | (イ) |
精神障がい | 1 | 包装 | 冷却後製品の整頓・他補助作業 | (ウ) |
精神障がい (トライアル雇用) | 1 | 軽作業 | 段ボール組み立て 保冷剤の移し替え作業 | (エ) |
![]() (ア-1)洗浄機による器具洗浄 洗浄済器具を台車へ積み、 蒸気消毒殺菌庫へ入れる | ![]() (ア-2)蒸気消毒殺菌後器具の 定位置保管 殺菌後器具を定位置へ戻す |
![]() (イ-1)製品のパック投入 入り数毎に計量しながら投入する | ![]() (イ-2)真空包装機にて真空包装 真空包装後ラベル内容と中身 内容が一致するのを確認する |
![]() (ウ-1)冷却後製品の 整頓・他補助作業 冷却完了済製品を 一時保管庫へ移動する | ![]() (ウ-2)冷却後製品の 整頓・他補助作業 番号順に詰替えや整頓する |
![]() (エ-1)ダンボール組み立て作業 底3辺をテープで止める | ![]() (エ-2)ダンボール組み立て作業 クッション材を敷き積み上げる |
![]() (エ-1)保冷剤移し替え作業 段ボールから保冷剤を取り出す | ![]() (エ-2)保冷剤移し替え作業 保冷剤を専用番重へ並べる |
4. 今後の展望
当社の障害者雇用は、平成25(2013)年度は全社で703名の障がい者を雇用し、実雇用率は2.03%であった。日清医療食品では「感謝の気持ちと謙虚な姿勢を忘れずに『心』を社是とする」という基本方針のもと、多彩な人材が活躍している。「障がいのある人もない人も、お互いに特別区別されることなく、社会生活をともにするのが正常なことであり、本来の望ましい姿である」という理念に基づき、障がいのある方の雇用に努めるとともに、誰もが快適に働くことができる環境づくりを目指している。
当センターでは、障がい者雇用の担当者は鳥取高齢・障害者雇用支援センター主催の障害者職業生活相談員資格認定講習を受講し、障がい者の職場適応の向上を図るとともに、できるだけ多くの方々が働くことができる環境づくりを常に心掛け、各関係機関から今まで同様の協力、支援を受けながら、今後もより一層の障がい者雇用を進めていきたいと考えている。
執筆者: | 日清医療食品株式会社 ヘルスケアフードサービスセンター米子 センター長 石川 正人 |
アンケートのお願い
皆さまのお役に立てるホームページにしたいと考えていますので、アンケートへのご協力をお願いします。
なお、事例掲載企業、執筆者等へのお問い合わせや、事例掲載企業の採用情報に関するご質問をいただいても回答できませんので、あらかじめご了承ください。
※アンケートページは、外部サービスとしてMicrosoft社提供のMicrosoft Formsを使用しております。