地域一番店を支える仲間たち ~障害者と共にあゆむ~
- 事業所名
- 株式会社ウシオ
- 所在地
- 島根県出雲市
- 事業内容
- 小売業・スーパーマーケット
- 従業員数
- 302名
- うち障害者数
- 12名
障害 人数 従事業務 視覚障害 1 精肉の商品化・加工 聴覚・言語障害 肢体不自由 1 レジ業務 内部障害 2 精肉の商品化、製造・青果加工、品だし 知的障害 3 精肉のパック詰め・値付け、惣菜の製造・パック詰め 精神障害 3 精肉の加工・製造、パン製造補助・袋詰め 発達障害 2 商品陳列、野菜の袋詰め、清掃 高次脳機能障害 難病等その他の障害 - 目次
![]() 事業所外観 |
1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯
(1)事業所の概要
株式会社ウシオは、昭和21(1946)年5月創立である。島根県で最も古い歴史をもつスーパーマーケットの一つであり、営業品目は一般食品・精肉・鮮魚・青果・菓子・雑貨・日配食品・惣菜・衣料・米・タバコ・花・各種ギフト券等である。現在は出雲市内に営業本部を置き、出雲市内5店舗、精肉センターと惣菜センターの2つのセンター、大田市内に1店舗、雲南市内に1店舗を展開している。
縁があって共に働くことになった仲間に、「明るく豊かな人生」を与えることが経営目的であり、お客様に楽しさと感動を与え、食卓に笑顔と健康を提供する企業である。
株式会社ウシオでは、Relianceリライアンス(安心)・Safetyセーフティ(安全)・Cleanlinessクリンリネス(清潔)・Freshnessフレッシュネス(鮮度)・Qualityクォリティ(品質)の5つの柱を基本とし、地域の皆様の食卓がより豊かな笑顔あふれる場となることを願いながら、小粒でもきらりと光るスーパーマーケットを目指している。
地域貢献活動の一環として、食品トレーのリサイクル、食品トレーの軽量化、レジ袋無料配布の中止、ゴミ減量化、天ぷら油・精肉残さのリサイクル、魚のアラのリサイクル、新聞紙・雑誌・ダンボール箱のリサイクルのための収集場所の提供等を行っている。
(2)障害者雇用の経緯
元々障害者雇用に対しては、法定雇用率を守る程度にしか考えておらず、最低限の雇用をしていた。平成20(2008)年~平成21(2009)年にかけて法定雇用率は未達成であり、平成20(2008)年には新店出店、競合出店による労働力不足が深刻な経営課題となった。労働力不足の課題解決策として「積極的な新卒採用」「短時間労働者の戦力化」「高齢者の採用・雇用延長」「障害者の有効的雇用」を考え、積極的に障害者雇用に取り組むようになった。
平成19(2007)年に特別支援学校からの実習を受け入れたことをきっかけに、平成20(2008)年に特別支援学校卒業生を1名採用した。その後はハローワーク、障害者就業・生活支援センターなどの支援機関との連携により積極的に実習を受け入れ、今年度(平成26(2014)年)までに12名の雇用をすることができ、いずれも定着をしている。
2. 取組の内容
採用までの取組としてハローワーク、障害者就業・生活支援センターからの紹介を受け、職場見学・面談を行う。その後に職場実習を10日間程度行ってもらい、面談をし、双方がよければ、トライアル雇用制度を利用する。3ヵ月後に再度面談をし、常用雇用に移行するというステップを踏んでいる。業務については、適性と職種を考えた時に「スピードを求めない業務」、「リピート業務」、「短時間で完結する業務」、「コミュニケーションの比重が軽い業務」を考えている。
当社では、店舗での接客業務よりセンターでの製造業務が適していると思われ、センターでの受入れに積極的に取り組んだ。また、障害者雇用に向けての体制として、ハローワーク、障害者就業・生活支援センター等と連携し、就労支援、助言、アドバイス、フォローアップをしていただいたことが、職場定着につながっている。
精肉センターのAさん(知的障害)、ベーカリーセンターのBさん(精神障害)、店舗のCさん(発達障害)の取組についてご紹介する。
- ア.精肉センターのAさんAさんは特別支援学校在学時に精肉センターにて実習を行い、平成20(2008)年卒業後に採用となった。このときから特別支援学校、ハローワーク、障害者就業・生活支援センターの支援を受けている。
入社当初は4時間勤務であり、鶏肉のパック詰めを行い、空いた時間に冷凍・半調理品のトレー詰めをすることが主な仕事であった。平成23(2011)年4月に9:00~16:00の6時間勤務になった。この頃にはパック詰めに加え、値付けの補助的な作業も行えるようになった。欠勤、遅刻、早退が一度もなく、パック詰めは1人で任せても大丈夫な状況であり、残業もできるようになっていた。
平成26(2014年)8月に8時間勤務の準社員に登用、1人で機械を操作し、値付けをメインで行えるようになっており、最終の重要な部分を任せられるようになっていた。
勤務態度はとても真面目であり、従業員からの信頼も厚い。入社当初に比べるとスピードがアップし、値付けについては誰よりも速い。間違いがあっても一度の注意ですぐに改善できている。
配慮している点は、その日の顔色、体調を確認しながら声がけをすることである。指示したことについて曖昧な返事をされた場合は、分かりやすく再度説明をするようにしている。
今後は、鶏肉だけではく、牛肉、豚肉の製造ラインにも入ってもらい、どこのラインでも対応できるようになってほしい。そのことにより生産効率が上がることが期待されている。また値付けについてはプロとして、できない人の指導ができるよう教える立場になり、更に責任感を持って仕事をしてもらいたいと期待をしている。
![]() バーコードを読み取り、売値・産地・トレー指定を行っている。 | ![]() 設定終了後にコンベアに同じ間隔で商品を流す。大きな声を出して、間違いをなくす努力をしている。 |
- イ.ベーカリーセンターのBさんBさんは、平成24(2012)年3月にベーカリーセンターにて障害者就業・生活支援センターの実習制度を利用し、実際の業務を体験してもらい、ハローワークからの紹介により採用となった。
入社当初は、4時間勤務であり、仕込み作業、あん玉作りの計量などの業務であったが、現在はゴミ捨て、洗い物、パン袋へのシール貼り、掃除、片付けなども時間の合間にこなすことができるようになった。無断欠勤や遅刻などは今までになく、とても真面目で坦々と仕事をこなし、少しずつ他のスタッフとのコミュニケーションが図れるようになり、今では、自分の意見をきちんと伝えられるようになった。
ベーカリーセンターでは、今まで障害者と仕事をする機会が少なく、最初どのように接し、仕事を教えてよいのか大変悩んだ。Bさんはあまり感情が表にでないので、言動、態度、表情から何を考え、思っているのか察することが難しかった。
取り組んだこととしては、事前に障害者就業・生活支援センターよりBさんの特性等の情報をいただいてBさんにとって最も適切な業務配分を考え、まずは単純作業が確実にできるかを確認することとした。例えば、作業の中で数を数えたり計量を行ってもらい、間違いがなくできることが確認できた。
次に誰が仕事を教えるのに適任かを考えた。適任者として業務経験が長い年配の女性に依頼した。コミュニケーションを図るために、パンの試食会等に参加してもらい、感想を言ってもらうことから始めた。平素の仕事の状況を見て、できるであろうと思う仕事について打診をしてみて、Bさんができないと思った仕事は避けるようにしてきたが、徐々にできないと言われることが少なくなってきた。入社後しばらくは、ハローワーク、障害者就業・生活支援センターの訪問で定期的な振り返り会議を開催したことにより、本人の思いを確認することもでき、コミュニケーションもとりやすくなってきた。
![]() パン袋のシール貼り |
- ウ.店舗のCさんCさんについては、平成26(2014)年9月に店舗での採用となった。主に商品補充の仕事をしてもらっている。実習の受け入れ時には、発達障害の特性が理解できておらず、指導、声がけにも戸惑うことがあった。実習中の障害者就業・生活支援センターの支援と採用後のジョブコーチ支援を利用したことにより、Cさんの能力を引き出すことができた。
特に配慮した点は、分かりやすく指示を出すことを心掛けるようにしたことである。その結果もあり、指示された仕事は丁寧に確実にこなしてくれている。入社後数ヶ月しか経っていないが、商品の配置場所が分かるようになり、商品補充のスピードが上がった。また入社当初はお客様が近くを通られるとお客様から離れた場所へ移動していたが、従業員とのコミュニケーションが取れるようになるとお客様に売り場のご案内ができるようになってきた。
![]() 商品を確認し、陳列場所に移動中 | ![]() 商品補充・陳列 |
3. 取組の効果、今後の展望と課題
(1)取組の効果
障害者雇用が進んできたのは、ハローワークからの紹介ですぐに雇用するのではなく、まず実習として受け入れることで、業務適性の見極めができたり、受入れ体制の準備を整えることができるようになったからである。
そして、継続して雇用することで、できる仕事が増えてきている。特別な存在ではなく、一従業員として十分戦力になっていることは確かである。障害者を雇用することにより、労働力不足の課題解決につながっている。
また支援機関との連携により、会社として対応できない生活面の支援をしてもらうことで、安定した勤務状況になっていると考えている。
(2)今後の展望と課題
障害者の雇用について、まだ「障害のない人より能力が劣る、他の社員の足手まとい、任せられる業務がない」など障害者に対する偏見がある。これからも従業員に対する教育や情報提供を継続的に行なっていくことが必要であると考えている。
今後、障害者の雇用を増やしていこうと思っているが、障害者雇用を通して、社内での偏見をなくし、職場風土を良くすることで、今以上に従業員皆が働きやすい職場になっていくと考えている。
障害者の積極的な雇用に向け、今まではセンターでの製造関連業務を中心に進めてきたが、今後は、店舗での仕事を切り出すとともに、店舗で働ける環境についても模索していきたいと考えている。
執筆者: | 出雲障がい者就業・生活支援センターリーフ 所長 高木 加津枝 |
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