相互理解でより良い職場定着を目指す
- 事業所名
- オリックス・ゴルフ・マネジメント合同会社 浜田ゴルフリンクス
- 所在地
- 島根県浜田市
- 事業内容
- ゴルフ場運営
- 従業員数
- 28名(浜田ゴルフリンクス)
- うち障害者数
- 2名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚・言語障害 肢体不自由 内部障害 知的障害 1 レストラン厨房 精神障害 発達障害 1 コース管理 高次脳機能障害 難病等その他の障害 - 目次
![]() 事業所外観 |
1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯
(1)事業所の概要
当事業所「浜田ゴルフリンクス」は、オリックス株式会社の100%子会社として地元に設立されたオリックス浜田開発株式会社が、平成9(1997)年7月にオープンしたゴルフ場である。その後、オリックスグループ内のゴルフ場の一本化に伴い、オリックス・ゴルフ・マネジメント合同会社に統合された。
全国に40コースを有するオリックス・ゴルフ・マネジメント合同会社は、オリックスグループの一員として、一般プレーヤーやアスリートプレーヤー、接待需要やカジュアルニーズなどあらゆるスタイルに応えるべく、幅広いカテゴリーのゴルフ場を運営しており、「先進」・「安定」・「満足」を企業理念に掲げ、質の高いサービスを提供することにより、ゴルファーの皆様から愛されるゴルフ場を目指している。
当事業所「浜田ゴルフリンクス」(以下「事業所」という。)は、オープン以来「ゴルフを気軽に!楽しく!」をモットーに運営が行われ、プレースタイルはセルフプレーのみとなっている。コースは7,077ヤードの距離、高速グリーン、戦略的なコースレイアウト、海からの風と、プレーごとにその表情を変え、ゴルファーの挑戦意欲をかき立て、地元はもとより県外のゴルフプレーヤーにも多く利用される。また、充実した練習場設備とプロショップ、一般の方々にも好評なレストランでのランチバイキングなど、ゴルファーだけでなくその目的に応じた顧客が利用している。
(2)障害者雇用の経緯
オリックス・ゴルフ・マネジメント合同会社では「企業として障害者の法定雇用率を達成し、地域貢献やCSR(企業の社会的責任)を果たすこと」を会社方針の一つに挙げており、このことが、事業所においての障害者の雇入れを検討する機会となった。
折しもその機会と相まって、タイミングよく当事業所の近隣にある養護学校高等部の教諭から生徒の実習受入れの依頼があった。これまでも地元中学生の職場体験実習や学校教員の企業体験実習などを受け入れていた経験もあったため、この実習依頼に関してもスムーズに受け入れることができた。
この実習受入れがきっかけとなり、障害者雇用制度や支援機関の仕組みを知ることができ、養護学校や支援機関との繋がりも構築され、障害者雇用に対する理解と安心を得ることができたため雇用に至ることになった。
2. 取組の内容
当事業所では、養護学校や支援機関からの実習の受入れを経て、Aさん、Bさんの雇用を行っている。その2人の取組を紹介する。
(1)Aさん・Bさんの作業内容
部門 | 作業内容 | |
Aさん | コース管理 | バンカー均し、除草、集草、清掃等 |
Bさん | レストラン厨房 | 盛り付け、調理補助、洗浄等 |
(2)事業所内共通の配慮について
Aさん、Bさん共に、全く手探りの状態であったため、まずは養護学校・支援機関が事業所に提供した、それぞれの「プロフィールシート」の内容に着目しながら実習を通して接し、一つ一つの仕事ぶりを見ながら現場でできることを判断し、状況・場面等の配慮を行っていった。
また、個々の成長度合いに合わせ、負荷が掛かり過ぎないように徐々にスキルを上げていくことに気をつけて取組を行った。
(3)Aさんについて
養護学校からの依頼で2回の実習を行なった。1回目の実習はレストラン厨房で洗浄作業を中心に取り組んでもらったが、Aさんの体力面や適性などを考慮し、2回目の実習では施設外でのコース管理の除草等の作業を行ってもらうことにした。
この2回目の実習では実習中から元気もあり、活き活きと働いている様子が伺え、結果コース管理の作業でトライアル雇用制度を活用し採用となった。
雇用後1ヶ月経過した頃、周囲の発達障害の特性理解の不足から、Aさんの作業手順や指示の理解等にも課題が生じるようになった。このため発達障害者支援センターの支援員に事業所に来ていただき、発達障害の特性についてのアドバイスを受けた。本人に対しては業務日誌の導入を行い、その日に行う作業の見通しを持ってもらうことと、振り返りができるなど、目で見て理解しやすいよう工夫を行った。
また、さらに日常業務において特性理解を進め、コミュニケーションや作業遂行を円滑に進める為に、障害者就業・生活支援センターへ相談し、ジョブコーチ支援事業の活用を行った。ジョブコーチより事業所側からの指示の出し方や上司・同僚の本人への関わり方などのアドバイスをいただいたこともあり、順調に仕事に慣れていくことができた。
現在も事業所と支援機関、本人との定期的な面談から振り返りを行い、相互理解を確認し合い、就労環境を作っている。
(4)Bさんについて
Bさんは、養護学校卒業時に木工関係の工場に就職したが、1年で離職した経歴があった。離職後、障害福祉サービスの「就労継続B型事業所」が運営するレストラン厨房にて4年間の調理補助の訓練を受け、その後、再就職を目指して「就労移行支援事業所」を利用していた。離職後しばらくの間、再度就職へ挑戦する気持ちがなかったBさんであったが、結婚し子どもが生まれたことを継起に、再挑戦のため就労移行支援事業所の利用に至った。
Aさんの支援を行っていた障害者就業・生活支援センターからBさんの実習依頼を受け、経験もあり本人の希望でもあるレストラン厨房で体験実習(5日間)を行なった。この体験実習で職場環境・作業内容とも本人に適していると判断し、更に臨機応変に対応することが必要な業務を体験するため、島根県が行っている「障がい者チャレンジ事業」を使い、さらに10日間の実習を行った。
Bさんの熱心な仕事振りと、働くことに対する明確な目標や就労意欲もあって、15日間の実習を終了した後に、レストラン部門での採用となった。現場で対応できる部分等は現場上司・同僚が支え、その他不安な事柄は障害者就業・生活支援センターも交え面談等を行い、本人が力を発揮出来る環境を協力して整えていくようにしている。
Bさんは、約4年間障害福祉サービス事業所(就労継続B型・就労移行支援)を利用していたため、就業・生活支援センターだけでなく、利用していた障害福祉サービス事業所にも休みの日や仕事帰りに立ち寄るなど、仕事や人間関係、生活面に関する相談なども、沢山の相談先があることで、課題を抱えることなくお互いに協力して対応することができている。
3. 取組の効果
(1)Aさん…コース管理部門
採用当初は、家族の協力で送迎をしてもらっていたが、通勤に必要な車の免許を取得するなど前向きであり、ゴルフ場ではカートを使用して現場の移動を行っている。
18ホールあるコース内のバンカー均しを主軸に、除草・清掃を行っているが、バンカー均しは平坦な箇所はバンカーを均す機械に乗り、斜面は手作業で均している。どちらも仕上がりは素晴らしく、コース景観向上に一役を担っている。
除草作業は、刈払機が使えない場所では手作業で行ない、集草・清掃で刈った草をブロアーで飛ばし、手作業で刈込箇所を整えている。進入路からコース内までの広範囲を行っているが、利用客が気持ち良く来場できるよう心掛けた仕事をすることができている。
![]() コース管理作業をするAさん |
(2)Bさん…レストラン部門
レストランにおける厨房内作業(盛り付け・調理補助・洗浄)を行っている。ゴルファーだけでなく一般客の利用も多いレストランは、月・火曜日のみバイキング形式、水~日曜日はオーダー形式で営業しているため、状況に応じた臨機応変な対応が求められるが、そのような変化のある状況でも、調理補助ではシェフの指示に従い素早い料理の提供を心掛け、見た目にも美味しく見えるよう気を配る盛り付けができるようになっている。
また、洗浄作業においては、ホールの利用客の回転状況も考えながら作業場面の移動を行うなど、現場の期待に沿った仕事をこなしてもらっている。
仕事が休みの日には子供さんも連れ、家族でレストランに食事に来るなど、仕事と生活をバランスよく両立させている様子も伺え、今まで以上に仕事に対しての意欲も出てきている。
(3)Aさん・Bさんの成長
Aさん、Bさんの2名はどちらも現在は必要人員配置数内の一戦力になるまでに成長している。できること・できないことはあるが、経験を重ね作業スキルも次第に向上し、事業所が期待するレベルの段階の仕事を十分にこなしている状況となった。事業所側としても日々の作業計画を実行するためにも欠かせない存在になっている。
![]() レストラン厨房で作業をするBさん |
4. 今後の展望と課題
ゴルフ場という事業所の立地条件のため、通勤に関しては自家用車もしくはバイク通勤となってしまい、人員の問題で事業所側から送迎を出すことが難しい為、その条件にあてはまる人材であれば、今後も臨機応変に対応して受け入れたいと考えている。
現在雇用している2名は、本人達の能力の高さもあり、障害があることを忘れさせてくれるだけの仕事ぶりからつい配慮を忘れてしまうことがあるが、現場職員も配慮が必要であることをしっかりと意識する必要がある。この意識が薄くなると、現場職員と本人達とのすれ違いや行き違いが出てしまう。事業所と支援機関、本人との定期的な面談から振り返りを行い、相互理解を確認していくことが必要と考えている。
今後も継続して働くなかで、事業所側が予想しない課題に直面することも考えられる。支援機関によるアフターフォローや支援制度の活用は、雇用する事業所側にとって大変有り難いものであるため、お互いの理解を深めながら職場定着を目指していきたい。
執筆者: | 浜田障害者就業・生活支援センター レント 所長 小倉 広文 |
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