事業所名

シマネ益田電子株式会社

所在地

島根県益田市

事業内容

半導体製品開発・設計、組立、検査

従業員数

152名

うち障害者数

4名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害
聴覚・言語障害
肢体不自由	1	製品組立、検査
内部障害
知的障害
精神障害	1	製品組立、検査
発達障害	2	製品組立、検査、製品梱包箱作製
高次脳機能障害
難病等その他の障害

その他

障害者職業生活相談員

目次

1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯
2. 取組の内容
3. 取組の効果、今後の課題と展望

事業所外観

1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯

（1）事業所の概要

当社は、昭和59（1984）年創業以来30年間に渡り、高周波半導体デバイスを中心とした組立及び検査を行っている。創業当初より、大手半導体メーカーの量産協力工場として、通信用半導体の生産を行ってきた。その間、各種製造技術・高周波評価技術の蓄積と共に、マネージメントシステムなどの構築及び定着化を図り、現在に至っている。

理念は、次の3点である。

ア．和を以って社会に貢献する。

イ．和は社員の和、お取引先との和、そしてお客様との和。

ウ．貢献は雇用の創出と人づくり、そして地域の活性化と製品で社会に報いる。

平成25（2013）年3月にタイに子会社を設立し、島根県益田市とタイの二拠点で生産活動を行ない、事業拡大に取り組んでいる。

（2）障害者雇用の経緯

当社は、創業以来、「和」を理念に掲げ、中でも「社員の和」を第一として考え、この地での雇用を育むことを大切にしてきた。 ご本人の希望により短時間勤務となっているパート社員1名と、定年退職後の再雇用による嘱託社員の4名以外は、全て正社員として雇用し、社員の方が安心して働ける会社づくりに取り組んでいる。しかしながら、障害のある方の雇用については、法定雇用率を遵守してきたものの、積極的な採用には至っていなかった。

そのような中で、障害者雇用の機会を模索し、平成24（2012）年に新規学卒者の採用を決断し、翌平成25（2013）年4月より、2名の方に入社していただいた。さらに平成27（2015）年4月には、養護学校生1名が当社の新たな家族になる予定である。

2. 取組の内容

（1）インターンシップ実習の受入れ

当社では、中学生～大学生までのインターンシップ実習の受入れを積極的に行っており、養護学校からの依頼についても同様に受入れを行っている。

養護学校からの依頼による受入れは、平成24（2012）年に養護学校生AさんとBさん（どちらも発達障害者）の2名を受け入れたのが初めてで、社員にも指導役（以下「指導者」）をお願いした。

最初は、発達障害者への対応に社員も戸惑い、「指導や注意をして良いのか分からない」といった声が多く上がった。その都度、会社（管理部）は指導者から状況を確認し、助言を行なうと共に、指導者へのケアも行なっていった。

さらに、管理部から、適切な助言を社員へ行なう為にも、障害に対する知識が必要と考え、「障害者職業生活相談員資格認定講習」を受講し、管理部に相談員を設置した。社員からの相談窓口を設置することも重要と言える。

Aさん Bさん インターンシップ実習風景（左：製品特性検査  右：製品外観検査）

当社のインターンシップ実習は、実習計画を作成する段階から、養護学校の教員及び生徒本人と事前の打合せを行ない、障害の特性を事前に把握することで、生徒本人にマッチした職場体験実習を計画することができている。

社員からは「養護学校の生徒が実習に来られると、周囲の人が積極的に協力し、雰囲気も明るくなる」とコメントがあり、生徒自身の成長だけでなく、社員に対しても心配りや気遣いといった「心」の教育が行えている。

インターンシップ実習の受入れは「事前の打合せで解決」、受入れ後は「指導者から随時報告をもらい状況を把握」により、インターンシップ実習の不安は無くなると言える。

インターンシップ実習計画（生徒の特性に合わせた実習内容を検討）

実習の中では、生徒本人とコミュニケーションを取る場も大切にしてきた。実習終了の30分前から当日の日誌を書いていただき、指導者や管理部を交えて、反省や明日の課題を一緒に考える。勿論、褒めることも忘れず、時には指導も行なう。日々の繰り返しにより、実習最終日には日誌の文章量や内容に見違える程の成長を感じ、家庭や学校生活での「良い変化」もお伺いし、会社としても大変喜ばしいことである。指導者からも、生徒に対する「良い面・課題と思う面」を抽出・記載してもらい、学校側へも正直に伝えており、実習後の学校生活に活かしていただくようにお願いをしている。

実習日誌 （当日の実習を一緒に振り返り、理解度を確認）

（2）インターンシップ実習を経て新規採用へ

複数回のインターンシップ実習を経て、会社の雰囲気や社員に慣れた後、入社いただくことで、スムーズな職場への定着が図れる。

インターンシップ実習を終えたAさんとBさんは、幸いなことに当社への入社を希望してくれ、実習を行った翌年の平成25（2013）年4月に新規採用となった。入社後も、実習時と同様に、指導者や上司からの積極的な声掛けや、管理部による月に一度のストレスチェックで 、問題や悩みなどを早期発見・解決できる体制も取っている。

作業環境については、間近で仕事をする同僚からの意見が重要となっている。事例として、現場の同僚から「Bさんが、作業台に手が届かないので、踏み台を買ってあげてほしい」と声が上がった。会社側では気がつかないことを、直接関わる同僚から教えてもらっている。そういった意味では、管理監督者だけで障害者雇用に従事するのでは無く、現場で一緒に働く同僚の理解や協力が必須と分かる。

とはいえ、現場に任せきりも良くない。現場からの意見や提案に、管理監督者はきちんと耳を傾け、真摯に対応する姿勢が必要である。

採用時に提示した雇用条件は、本人の働く上での適応性や業務の遂行能力の見極めを行うために「契約社員」として雇用を開始した。そして、採用後1年が経過した段階で、業務成果や現場の同僚や上司から意見を貰い、「正社員への移行が可能」と判断した。その上で、本人とご両親へ正社員登用を提案し、了承を得ることができた為、契約社員から正社員への移行を行っている。

正社員となることで、本人としても、仕事に対するモチベーションが上がり、安定した収入の確保が行える。ご両親にとっては、子供の経済的自立への安心感が最も大きな喜びであろう。

2名の業務内容としては、設備のオペレートや製品の外観検査、出荷梱包用の箱作製など、障害のない者と遜色無い業務を行っている。業務の成果としても、周囲の同僚からは高い評価を得ており「仕事が丁寧であり、後工程の作業が楽になった」、「素直に仕事をしてくれて、感謝している」との声も上がる。

やはり、現場の同僚からの理解や支えがあるからこそ、こうした声も上がり、職場定着に繋がっているのだと実感した。

就業中のAさん（左：製品組立）とBさん（右：製品梱包）
インターンシップ実習で経験したことを入社後も活かす（即戦力）

（3）社外のイベントにも参加

当社では、業務上の取組だけで無く、社外でのイベントにも力を入れ、年間3回の環境美化活動、ボウリング大会、バーベキュー大会、忘年会等、多くのイベントを通じて、社員間やその家族との交流を深めている。今回、新規採用を行った2名については、初めはこうしたイベントには参加しにくい様子であったが、日を追う毎に社風が伝わっており、今では、そういった様子も無く、前向きに参加してくれる。

Aさんについては、入社する前から「ボウリング大会が楽しみだ」と言っており、入社して初めてのボウリング大会では、とても嬉しそうに参加をしてくれた。

Bさんは、会社忘年会で、料理を美味しそうに食べて、喜んでいたことが印象的だ。多くの人が集まる場所でも、問題無く一緒に時間を過ごせている。

環境美化活動（工業団地内を年2回、海岸清掃を年1回）

ボウリング大会

会社忘年会

3. 取組の効果、今後の課題と展望

（1）取組の効果

インターンシップ実習の受入れから採用、そして採用後の取組に対する効果は、様々あるが、もっとも効果として大きいのが、「社員の成長」である。

2名を採用後、社員は気づかい、コミュニケーションや作業環境等、会社側から依頼をせずとも、配慮をしてくれている。障害者雇用を行なう最大の効果は、「社員の心の成長」を育めることにある。今後もインターンシップ実習を行いながら、障害者の採用を積極的に行っていく。

また、AさんとBさん共に欠勤も無く元気に出社してくれることが非常に嬉しい。会社へ行くことを嫌がらず、毎日出社できる力は素晴らしいことである。これからも、ストレスチェックの実施や社内外のイベント参加による交流、業務上から得られる達成感・遣り甲斐も感じてもらい、更なる職場定着を図っていく。

ちなみに、2名に「仕事で楽しい時・辛い時」は何か、聞いてみたことがある。

Aさん：「教えられたことを覚えて、早く仕事ができる様になった時が楽しい」

Bさん：「色々な仕事を教えてもらい、一つひとつ覚えて、一人で仕事ができるようになった時が嬉しい」と言ってくれた。

Aさんについては、辛いことは「特に無い」とのことであったが、Bさんについては、「同じ仕事ばかりやる時は辛い」と 正直に答えてくれている。貴重な意見だ。

（2）今後の課題と展望

2名の採用後、作業中の居眠り、周囲とのコミュニケーション不足など、様々な課題はあった。今後も、新たな問題点が見つかるかもしれない。その課題をクリアし、障害者雇用を継続していく為には、以下のポイントがあると思っている。

• ア．管理監督者だけで対応しても駄目、指導者・社員の協力や気配りが必須であること。
• イ．管理監督者は、指導者・社員に全てを任せず、積極的に関わること。
• ウ．管理監督者は、指導者・社員・本人から、「生の声」を聴くことに徹すること。
• エ．指導者・社員・本人から、どんな些細なことでも、情報が上がるようにしておくこと。

「障害者だから無理」ではなく、「どうすればできるか」「何ができるか」を皆で考え、知恵を出せば、現場からの理解や本人の個性を活かした職場配置は可能と言える。障害のない者でも、向き不向きがあるように、誰しも「適性」がある。障害者も同じであり、その「適性」を見つけ出すのが、企業の役目だと思っている。

現在、雇用している障害者については、安定した就労を行っていただいており、これを継続させていくが、養護学校からの新規採用者については、現時点「発達障害者」のみであり、その他の障害を持った方は、新規採用を行えていない。

現在、日本人口の約6％が障害者であると聞いており、当社としても障害者雇用率6％を目指したい。その為には、発達障害だけでなく、その他の障害に対する理解や作業環境整備等も必要と言える。

今後も、理念の「和」を基軸に、就労支援機関からの援助や、国の様々な制度も活用させていただきながら障害者雇用を促進し、社員の成長も目的とした取組を継続していきたい。