忠恕の実践 社員の笑顔であふれる職場を目指して
- 事業所名
- 岡山交通株式会社
- 所在地
- 岡山県岡山市
- 事業内容
- タクシー・ハイヤー部門・観光バス部門・不動産部門・派遣部門
- 従業員数
- 510名
- うち障害者数
- 5名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚・言語障害 肢体不自由 5 タクシー運転業務 内部障害 知的障害 精神障害 発達障害 高次脳機能障害 難病等その他の障害 - 目次
![]() タクシー ![]() ハイヤー 夢・笑顔・思いやりを大切に |
1. 会社概要と障害者雇用の経緯
(1)会社概要
当社は昭和19(1944)年7月に発足し、創業70余年の信頼と実績がある企業である。タクシー・ハイヤー部門を中心に観光バス部門・不動産部門・人材派遣部門等の事業展開をしている。東京から尾道までの広い範囲で事業展開をする両備タクシーグループ11社のリーディングカンパニーでもある。
両備グループの経営理念として、「忠恕(ちゅうじょ) = 真心からの思いやり」を掲げ、広い意味を持つ「思いやり」をそれぞれ次の3つに展開をした両備グループ経営方針のもと、社員全員が忠恕の気持ちを持って、日々の業務に励んでいる。
ア.社会正義(社会への思いやり)
イ.お客様第一(お客様への思いやり)
ウ.社員の幸せ(社員への思いやり)
また、当社は安全・安心への取組を推進しており、日本一「安全・安心」な交通運輸事業を目指している。両備グループ独自の取組としてSafety(安全)、Service(サービス)、Productivity(生産性)をUp(向上)させるSSP-UP運動を行っている。SSP-UP運動の一環として、その能力を競い合う「SSP-UP技能コンテスト」をグループ全体で定期的に開催し、技能の向上に努めている。
(2)障害者雇用の経緯
当社は「社会正義」のもと、「企業として社会のためになることとは何か」を常に考え事業を展開している。障害者雇用についても、社会貢献の一つとして考え、積極的に取組を行っている。
過去10年の実績としては、平均5人以上の障害者雇用を続けている。現在在職中である5人の障害者の勤務内容については、全員タクシーの乗務社員であるが、過去には、運行管理者や配車オペレーターなど様々な職種の勤務で雇用していた実績がある。
また、障害者雇用に関する当社の実績に対して、平成24(2012)年7月に岡山高齢・障害者雇用支援センターより平成24年度障害者雇用優良事業所表彰の推薦を受け、平成24(2012)年9月に厚生労働大臣より表彰状をいただいた。これは厚生労働省が、障害者の職業的自立の意欲を喚起するとともに、障害者の雇用に関する国民、とりわけ事業主の関心と理解を一層深めるため、障害者を積極的に多数雇用している事業所に対して毎年行われる表彰である。平成24(2012)年度は全国で35件が対象として選ばれ、その中の1社として表彰された。
![]() 障害者雇用優良事業所 厚生労働大臣表彰 (平成24(2012)年度) |
2. 取組の内容(障害があっても安心して勤務できる制度)
(1)乗務社員の作業の軽減
現在、当社の障害者は5人全員がタクシーの乗務社員であるが、タクシー車両に関しては全車両にGPS連動のカーナビを搭載し、迎車先や目的地がよくわからない場合でも安心して乗務することができるようになっており、また、日々のタクシー乗務記録についても自動日報システムを導入することで、乗務社員の行う作業を軽減する仕組みを構築している。
(2)教育制度も充実
教育制度も充実しており、当社では教育室を有し、新人社員研修では、入社した乗務社員に対して3人の専門指導員が1ヶ月~2ヶ月間の長い時間をかけて指導を行っている。
それは当社が目指す「質で日本一」の交通運輸企業になるためには、当社の乗務社員全員が質の高いプロドライバーとして、安全・サービスを提供することが必要不可欠であり、高い質を徹底させるためには、入社時に一貫した教育や研修が必要であると考えるからである。
教育内容は両備タクシーグループ独自で作成したドライバーズマニュアルが教本となる。身だしなみから始まり、車の清掃や挨拶の仕方、お客様への接客方法や待機の仕方、ドライビングテクニックや健康管理方法などの内容は詳細にわたり、全部で101個のケーススタディーをわかりやすく記載している。ケーススタディーについて自然にできるようになるまで一項目ずつ実践を繰り返し行い、新人研修が終了するころには、全員が同じレベルの安全・サービスが提供できるようになるように徹底的に教育をする。また賃金支給額の元となる生産性を上げる方法や、事故の多い危険箇所、地理に関しても同時に教育をする。
同業他社と比べても、非常に長い教育期間をかけてじっくり教育することで、不安材料を取り除き、自信を持って実践に臨めることで、新人乗務社員の定着率も年々伸びてきており、新人社員研修終了後、数ヶ月でトップに近い成績を上げる乗務社員もいる。
新人社員研修については、障害者も障害がない人も区別なく同様の教育を行う。新人社員研修が終了するころには同じ質のサービスを提供することができる乗務社員となっているため、障害者であっても運転業務に差支えがなければ、問題なく採用することができる。
![]() 教育室入口 | ![]() 教育室内部風景① |
![]() 教育室内部風景② | ![]() 教育室内部風景③ |
(3)幅広い勤務体系を用意
勤務形態については、次の3つの時間で1ヶ月単位の変形労働制を基本パターンとしているが、昼間だけに限定をした勤務(7:00~19:30)や、夜の勤務(20:00~5:00)など乗務社員の希望の沿った勤務時間を選択できるように幅広い勤務体系を用意している。
ア.6:00~21:00
イ.8:00~23:00
ウ.16:30~2:00
また、年齢が高くなりそれまでの通常勤務が体力的にも難しくなってきた場合、短時間勤務(6:00~14:30または7:30~16:00など)に勤務形態を変更して、無理なく長期にわたり勤務を続けてもらえるよう柔軟な対応をしている。
実例として、基本パターンで勤務をしていた乗務社員が腎不全のため人工透析をすることとなり、週に3回の通院を余儀なくされた。人工透析は非常に体に負担がかかり、体力を使う治療となる。そこで本人と話し合った結果、週に3日、6:00からタクシー乗務を行い14:00で勤務を終了する。勤務終了後、病院へ通い人工透析を行い、翌日は休みという勤務を作成し、引き続き勤務を続けてもらったことがある。このように、当社でできるだけ長く勤務を続けてもらうため様々な工夫をこらした対応をしている。
(4)チームリーダーへの登用
当社では現在5人の障害者が在籍しているが、その内2人は「チームリーダー」の役職を持ち業務を担っている。チームリーダーとは、乗務社員が10人前後で構成されるチームのまとめ役として統率する責任者のことである。障害者であっても障害がない人であっても、熱意があって問題に対して真剣に取り組む人であれば、分け隔てなく役職につくことができ、みんなの模範としてより一層頑張ってもらうような仕組みとなっている。
3. 今後の課題
今後についての取組としては、現在新しく特別な対策は考えていない。それは現段階において勤務形態については乗務社員個人ごと、状況に応じた対応をしており、更にハード面については、他社と比較しても劣ることのない最先端の装備を導入しているためである。当社は、運転業務に支障がなく、思いやりを持ってお客様への応対ができる人であれば、障害者であっても障害がない人であっても区別なく採用を行い、新人社員研修で乗務社員として「安全・サービス」を提供できるようにしっかりと充実した教育を行う体制作りができていると自負している。
現在、当社では乗務社員が不足しており、採用の強化が大きな課題となっている。ハローワークや求人広告雑誌などを利用して、乗務社員募集をかけ年間50名前後の採用はしているものの、乗務社員の高齢化により退職者の数も多いため、ここ数年は乗務社員総数が増えることはなく横ばい状態である。
障害者ではタクシー乗務は務まらないのではないかと、世間一般で思われがちだが、決してそんなことはない。当社でも5人の障害者が活躍をしており、そのうち2人は責任者としてチームの乗務社員をまとめている。また、他業種と比べて自分のペースで仕事ができ、無理をすることが少ないので、障害者に向いている業種であるとも言える。
これからは採用に関して、「障害者でもタクシー乗務はできる」「障害者でも活躍できる」といった現状をもっと積極的に情報発信をして、乗務社員の確保につなげていく。
障害者だからと区別することなく、両備グループ経営方針「社会正義」のもと、障害者雇用について今後も積極的に取組を続けていく。
執筆者: | 岡山交通株式会社 総務部人事課 福永 一史 |
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