福祉の町 吉備中央町にある会社の使命
- 事業所名
- エヌイーシール株式会社
- 所在地
- 岡山県加賀郡吉備中央町
- 事業内容
- 工業用ゴム製品製造業
- 従業員数
- 793名
- うち障害者数
- 13名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚・言語障害 肢体不自由 4 製造補助 内部障害 1 製造補助 知的障害 6 製造補助 精神障害 1 製造補助 発達障害 高次脳機能障害 難病等その他の障害 1 検査作業 - この事例の対象となる障害
- 知的障害
- 目次
![]() 事業所外観 |
1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯
(1)事業所の概要
エヌイーシール株式会社は、昭和54(1979)年に創業し、自動車をはじめ産業機械などに用いられるガスケット・シール材の生産を行っている。
エンジンや車軸からオイルやグリスが漏れるのを防ぎ、また外部からの水や泥が浸入するのを防ぐのがシールやガスケットの使命、役割である。併せてこれらはゴムの特性を活かし、防音や防振にも大きな効果を発揮している。
高精度、高機能でお客様に信頼される製品づくりを行うには、材料の研究、設計の高度化はもちろんのこと、工場での製造の精密化、厳しい品質管理など、すべてが高い次元で融合しなければならない。こうした工程から出来上がった製品は、国内だけでなく、海外においても高い評価と信頼を得ている。
当社の経営方針である「信頼・進歩・実践」の基、信頼関係の大切さを念頭におきながら常に前に進む情熱を持ち、目標にむけて確実な行動を起こして行きたいと考えている。豊かな自然環境に恵まれていることに感謝し、人と技術を大切にしながら明日への絶え間ない前進を続けている。現在は従業員数793名、吉備中央町に2工場、久米南町に1工場稼動している。
経営理念は次のとおりである。
会社を愛する人間集団として、将来に向かって挑戦するとともに、 |
地球的感覚を養い、世界に誇れる製品を提供し、 |
そしてお互いに助け合い、信頼し、幸福への道を開拓する為に積極的な行動を取り、 |
温かい心を持って、いつまでも発展することを目指します。 |
(2)障害者雇用の経緯
当初は企業の義務として障害者雇用率を達成するために取り組んでいたが、平成13(2001)年吉備高原都市(吉備中央町)へ工場が進出したことをきっかけに、福祉の町として位置づけられた吉備高原都市の中で企業として何ができるかを考えるようになった。障害者が自立して地域で幸せに暮らせるように会社としても願っている。社会福祉法人「吉備の里」との出会いもこのころのことだ。工場内で障害者に作業してもらうにはどのような作業ができるか社内で話合いをした。休憩室の清掃、コンテナの片付け、グリスの注入など障害の状況に合わせ職種を選定した。
また、近年では新規学卒者の採用を進めている。支援学校より職業体験実習の受入れを行っている。実際に安全な通勤が可能か、工場内での業務に無理はないか、作業内容をしっかり確認してみることから始まる。
採用決定には本人がこの工場で働きたいという意思があるかが大事である。毎日同じことの繰り返しだが、やりがいがあり達成感があるとモチベーションが上がる。これは障害者も障害のない人も同じである。
また、久米南工場の近隣には誕生寺支援学校があり、数年前より毎年授業で、当社から提供した材料で「製品のバリ取り作業」を実習している。毎年同じように繰り返す中で企業と学校の信頼関係も深まった。そして、体験実習を行った。
障害のある人方が安心して働けるには、工場でのサポートが必要である。職場内で困ったときにすぐに声をかけることができる人を作った。困った時に声をかけやすい環境造りである。障害者は入社当初は緊張している。いかに職場内に溶け込んでゆけるかである。まず声をかけることができる存在を作り、後は時間が経ち自然に職場に慣れ会社にも慣れてくる。
また、障害者を自然にサポートできるような風土造りも大切である。障害者と共に働く工場の従業員は自然に温かい心を持ち接することができるようになる。特別な教育を行っているわけではないが、自然にいたわりの心を持って接している。まだまだ障害者雇用に対して、勉強不足、理解不足であるが、少しずつ共に育っている今日この頃である。
2. 取組の内容
(1)雇用事例 機械が大好きなA君
A君は平成26(2014)年4月1日付けで、新入社員として岡山瀬戸高等支援学校より入社した。初めて会ったときは少し恥ずかしがりやの印象があった。入社までに2回実習し、実作業を経験した中での採用となった。採用前にはハローワーク、生活支援センター、学校、家庭、企業と支援移行会議を経ていたので、比較的スムーズに職場の中に溶け込んだ。
知的障害はあるが、機械が好きで当初から是非機械に携わった仕事がしたいとの希望があった。当社を選んだのもその理由からである。とても確実に一つ一つの作業を、文句も言わず粘り強く実践することができ、また今では時間当たりの生産高を上げようと自分なりに工夫して作業を行ってくれている。集中して作業する為、障害のない人と同じくらいかまたはそれ以上の生産数を上げている。
さらに機械に興味があるため、アッセンブリー(組立)の機械が故障した場合、保全が修理するが、A君はどうしてそうなるのか尋ねたりして機械を理解しようとしている。同じ事象が発生すると対応できることがあるそうだ。このことに関して言えば、障害のない人より優れている点である。
A君が苦手とするところはコミュニケーションである。自分から話をすることはあまりないので、職場リーダーは定期的に話しかけるようにしている。
工場全体の活動として、毎週月曜日に全体朝礼を行う際に、経営理念と品質方針の唱和を行う。この時も必ず「社員心得」を見ながら口を動かしており、そういった細かい行動についても、集団としてのルールを守ろうと努力している姿勢には好感がもてる。
現在従事している職場は、自動車用エンジンに使用される樹脂の部品に、金属をアッセンブリー(組立)したり、ゲートをカットする作業を行っている。今後多種多様に製品群が変化している中でも、A君は変化に十分追随することができる社員と期待している。またA君自身も色々な機械に挑戦したいと希望している。
一部には障害はあるが、工場の仲間として共に成長したいと考えている。
![]() ![]() 機械が好きなA君の作業風景(アッセンブリー)
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(2)職場リーダーの声 吉備高原工場
ア.障害のある人が入社した当初感じたこと
- 何の仕事をしてもらったらよいか。
- 障害がない人と上手くやっていけるか不安。
- どうやって指導していけばいいのか。
- 誰の指導が適切か。
- 確認ができず、クレームが流出したらどうしようか。
イ.障害者を受け入れたとき
- 作業を確実に指導する。
- 異常時、作業の完了時には指導者に連絡することを徹底した。
ウ.現在では
- できたことに対しては「ありがとう、助かる」と声をかけると素直に「頑張ります」と返事が返ってくるようになった。
- 障害のない社員より早く作業ができるようになった人もいる。
- 機械修理(ポンプ)も一人でできる人もいる。
- 分からない箇所は指導者に尋ねて作業ができる。
- パイプで作業台、棚を作成できる人もいる。
エ.社員とのコミュニケーションとしては
- サークル主催のボーリング大会、ふれあい行事、工場忘年会など多岐に渡って参加している。このような交流により従業員はもちろん、外国人実習生(ベトナム生)とも交流ができている。入社当初は色々困難なことはあったが、現在は職場に溶け込んでいる。
- また、障害者は挨拶が大変気持ち良くできているので、障害のない社員も自然に挨拶ができるようになった。できて当たり前の挨拶が工場内でできていなかったが、障害者に後押しされた形となり浸透した。
オ.今後は
- 作業は分かっているだろうと思いこまず、きちんと伝わっているか確認することが大切である。
- 一つでも多くの種類の作業ができるように指導する。
- 私達の仲間として活動して輪を広げていきたい。
3. 今後の取組と課題
福祉の町 吉備中央町にある企業として、今後も障害者の自立に対する支援を大切に考えていきたい。障害者にお願いしたい業務を職場より選定し、障害者が働きやすい職場に整備したいと考えている。
グループ企業を含めると6工場ある。工場外回りの草刈、草取り、花壇の花植えなどが、今後障害のある人へお願いをしたい業務である。吉備高原工場ではすでに外回りも社会福祉法人「吉備の里」に依頼している。自動車メーカーの来客も多い工場なので、きれいに花の咲いた時期には、「きれいですね」とお褒めの言葉も頂いている。
まだまだ障害者雇用に関して未熟な我々だが、障害者と共に成長できる会社となれるよう、日々努力を積み重ねたい。
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