障害者の労働を応援できる職場づくり
- 事業所名
- 西徳木材株式会社
- 所在地
- 徳島県三好市
- 事業内容
- 製材業
- 従業員数
- 32名
- うち障害者数
- 4名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚・言語障害 肢体不自由 内部障害 知的障害 4 機械前取り、耳そぎ前取り、プラスチックパテ埋め、パテ塗り、選別、選別補助 精神障害 発達障害 高次脳機能障害 難病等その他の障害 - 目次
![]() 事業所外観 |
1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯
(1)事業所の概要
西徳木材株式会社は、昭和39(1964)年2月に設立され、今年(平成26(2014)年)で50周年を迎えた。創業当時は樹種を問わず木材を製材する工場であったが、20年ほど前(平成6(1994)年頃)からは、国内杉板専門メーカーとして事業を行っている。創業当時より、「品質の管理こそが、お客様の絶対的信頼に繋がる」を企業方針とし、近年では消化原木量を年間約11,000㎥、フローリングや壁板を月に約5,000坪を、九州や名古屋方面へ出荷している会社である。年々用途に応じて機械の導入を行い、社長方針である「製材はシンプルだからこそ難しい。零細企業が多いこの地域で生き残っていくためには、時代と共に変わる必要があり、様々な情報を取集しながらチャンスをきっちりと掴んでいくという機敏さがなければ、残る企業になることができないし、ましてや、都会では勝負ができない」との考えを基本に、オンリーワン(=お客様にとって、なくてはならない会社)になることを目指して日々躍進している。
(2)障害者雇用の経緯
平成19(2007)年に特別支援学校の生徒の現場実習を受け入れたことが障害者雇用のきっかけとなった。その時に採用した障害者Aさんは勤続7年目となった(平成26(2014)年現在)。
その後、障害者就業・生活支援センター「はくあい」からの支援を受けて平成24(2012)年、平成25(2013)年、平成26(2014)年の各年に1名と、現在では4名の障害者を雇用している。
製材業の仕事内容は多様であるため、雇用に当たっては、現場実習を通して障害者一人ひとりができる仕事を見極めたうえで行ってきた。また、障害者を初めて受け入れるにあたり、障害の特性について受け入れ側が対応できるのか、障害者が仕事内容を理解可能か否か等、不安があったが、特別支援学校や障害者就業・生活支援センター、障害者職業センターからアドバイスを受け、解消していくことができた。そうした経緯から、障害者の適性・能力に応じた仕事を見出し、社会や仕事に対する適応力を養っていければ良いとの考えに至っている。
2. 取組の内容と効果
(1)支援機関との連携による職場定着
事業所では障害者職業センター、障害者就業・生活支援センターからの支援を受けながら障害者の職場定着を図っている。業務については従業員が指導をしているが、障害者に対する接し方や指導方法等は、支援機関から助言を受けられる体制を整えている。
障害者就業・生活支援センターは定期的に事業所を訪問し、障害者の現状確認や事業所からの相談を受け、アドバイスも行っている。アドバイスの内容は、仕事面だけではなく、生活面についても指導をしているが、特に路線バスや自家用車で通勤している障害者には交通マナー等、社会的マナーの支援をしている。万が一障害者が通勤途上で事故等にあった場合は、障害者就業・生活支援センターにも事業所より連絡が入るような仕組みにしている。以上のように障害者就業・生活支援センター職員が問題に対して、即時対応を行うことで障害者も迷うことはなく、事業所としても安心して雇用を進めていくことができ、定着に繋がっている。
(2)職場配置
職場配置に当たっては、現場実習を通じて、個々の障害者にいろいろな仕事を経験してもらうことにより、障害者の適性を見極め、配置場所を決定している。時間をかけて少しずつできる仕事を増やしていき、多岐にわたる仕事に携わることができるよう指導している。そして仕事ができたときには従業員が誉めたり、時には厳しい言葉をかけることで信頼関係も築かれ、仕事に対して自信を持つことができるようになった。
![]() 工場内の様子 |
(3)作業効率の向上について
業務についての説明をしても仕事内容が理解できていない場合は、実際にやって見せたり模型を作ったりして、本人にわかりやすく指導した結果、少しずつ理解が進み効率化も図れるようになった。また、材木が重たいために作業スピードが遅くなることがあるが、その時には「慌てず慣れることが大切」と声かけして、気持ちを和らげ効率を上げるように働きかけている。
(4)取組み事例
ア.Aさん
Aさんは平成19(2007)年に特別支援学校からの現場実習を終え、卒業後1年間の職場適応訓練を経て平成20(2007)年4月に雇用となった。
訓練中は、業務として「製材の下手間・製材の選別・板が機械から出てきたところでの板の受け取り」等を行なっていた。製材の選別に関しては、機械から流れてくる平らな4メートルの木材をサイズで分けて並べていく作業で、細身で体力がない本人には、辛い仕事であった。木材をサイズ別に分けることができず、置き場所を間違えることが多々見られるので、メモを取ることを実行させたことによりサイズの分別はできるようになったが、連休が続くと教えたことを忘れることがあり、再度声かけが必要となることもあった。
現在は、新しい仕事に関してもその都度アドバイスをすることで、要領よくこなせるようになってきた。そうしたやりとりを重ねてきた結果、業務において不明な点が生じた場合は、本人から一緒に作業している従業員に聞くこともできるようになり、ミスが少なくなってきた。まだまだ細かい指示は必要とするものの、いろいろな作業内容をこなすことができ、周囲からは、仕事面では「一人でも任せられるようになってきた」、体力的には「身体つきもしっかりしてきた」と聞こえるまでとなった。
![]() Aさんの作業風景 |
イ.Bさん
Bさんは、平成25(2013)年に現場実習を経てトライアル雇用後、正式雇用になった。以前に働いていた経験もあり、出勤すると誰よりも早く持ち場に着き、仕事に取り掛かっている。現在は「プラスチックのパテ塗り」の担当となり、背板の節を抜いた穴に裏からガムテープを張り、そこにパテを流し込む仕事をしている。Bさんはコミュニケーションが苦手でこだわりが強く、人からの指示を素直に受け入れることができないため、他の従業員と良好な関係が築けず孤立していた。この状況を改善するために障害者就業・生活支援センター担当職員から、社長はじめ従業員にBさんの性格を説明し、障害特性の理解を求めた。
障害者就業・生活支援センター担当職員が、直接仕事の手順の「節が抜けているか」「裏からテープが確実に張れているか」などを本人と再確認し、確実に仕上げていくためにモデリングを実施した。また、パテ塗りについては、従業員が前もって仕事が分かりやすいように背板にチョークで印をつけて、それを目印にパテを流し込み、入れ忘れがないかどうかを最後に確認するよう指示をした。
自分のミスを認めることができない点については、どこができていないかを繰り返し説明をし、本人に理解してもらうことで、徐々に反応も素直なものとなっていった。こうした取組の積み重ねにより従業員も、Bさんの性格への理解が深まり、円滑なコミュニケーションを築けるようになった。その後は冗談を交えての声かけも諸所で聞けるようになった。
障害者が一般事業所で働く場合には、事業所の方々が障害者個人の性格や障害程度を十分理解することが必要である。現場実習を通じて個々の適性を見極めた上で、仕事を担当させることにより、障害者の働きたいという意欲に繋がり、長期の就業が可能になると考える。支援する側としては、同様の障害を持つ場合であっても、個人の性格や特性は違うので、支援は障害者全員同じ支援ではいけないということを強く感じた事例であった。
仕事を通じて誉めることや叱ることで、同僚とコミュニケーションがとれ、自分の仕事に責任を取れるようになり、実績にも繋がる。何よりも「社員の一員である」ということが、従業員全員に浸透していることが障害者にとって働きやすい職場であろう。
3. 今後の展望と課題
同事業所は現在障害者を4名雇用しているが、さらに人材を募集する方向である。その理由として、「出勤率の良い、真面目な障害者は会社としての強力な戦力になる」という認識が事業所全体に定着したことが挙げられる。今後は機械の導入等を考えていることから、それらの機械操作ができることを目指し、障害者の能力向上に向け、少しずつ高度な業務をこなせるように指導を行っている。
事業所の課題である障害者雇用の増加及び継続雇用のためには、今後もハローワーク、障害者職業センター、障害者就業・生活支援センターの三者が一枚岩となり、同事業所の援助に注力することが必要となろう。これらの関係機関が同事業所と良好な関係を築き、必要とされる体制づくりを強化することで、新たな職域の開発と職場生活への適応が進むことを目指して行く必要がある。
執筆者: | 障害者就業・生活支援センターはくあい 中川 友江 |
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