個々にあわせた適材適所の配置により、職場に欠かせない人材活用を実現
- 事業所名
- アビリティーセンター株式会社
- 所在地
- 愛媛県新居浜市
- 事業内容
- 人材派遣業、人材紹介業、研修事業等
- 従業員数
- 100名
- うち障害者数
- 9名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚・言語障害 肢体不自由 2 データ入力、ファイリング業務 内部障害 知的障害 1 総務人事業務 精神障害 5 データ入力、スキャン業務、資料発送、給与業務 発達障害 1 データ入力、経理業務 高次脳機能障害 難病等その他の障害 - 目次
![]() 事業所外観 |
1. 事業所の概要、障害者雇用の経緯
(1)事業所の概要
アビリティーセンター株式会社(以下「当社」という。)は、労働者派遣法が施行された昭和63(1988)年に総合人材サービス会社として設立された。新居浜に本社を置き、松山、高松、高知、徳島の四国四県に拠点がある。
当社の障害者雇用の方針は、自立を目指す障害者の就業を支援することである。障害者雇用だけに関わらず、ダイバーシティーの観点から大切にしている。働くすべての人に魅力ある舞台を提供し、地域社会の発展になくてはならない存在になることが当社の使命である。
(2)障害者雇用の経緯
平成19(2007)年に初めて障害者を1名雇用した。その後、障害者雇用率の改善・向上のため比較的受け入れやすい身体障害者を積極的に採用した。しかしながら、障害者雇用のノウハウがないままの受け入れであったため、雇用の定着が困難であった。
平成23(2011)年7月より、本社総務人事グループ内に障害者就労支援事業として障害者3名と管理者1名からなる同グループの事務補助を中心に行う「事務センター」を立ち上げた。ノウハウは蓄積されつつあったが、身体障害者の採用が難しくなり、平成24(2012)年より精神障害者の雇用を行うようになった。
精神障害者の雇用を行うようになった背景は、当時の新居浜市障害者就労支援ネットワーク(現:新居浜市障害者自立支援協議会はたらく部会)に一般企業として唯一参加させていただいていたが、このネットワークに参加していた新居浜市内の就労支援機関との連携を早期に築くことができたため、地域資源を活かした障害者雇用を促進することができたことにある。また当該就労支援機関からの要請に応じて障害者の実習も積極的に受け入れ、就業経験としての実習から採用を視野に入れた実習まで可能な範囲で行ってきた。
そのうち障害者の増員により、「事務センター」という小さな部署に配置するだけでは業務量が不足するようになった。そこで平成26(2014)年7月に事務センターは発展的に解消し、派遣スタッフに関するいろいろな業務を障害者と障害のない社員がともに行う「スタッフサポートセンター」を設置し、10名を越す大所帯で再スタートしている。
2. 取組みの内容と効果
(1)受け入れ体制の変遷
平成23(2011)年7月に立ち上げた「事務センター」では、入社時の業務に関して本人の特性をあまり理解することなく、事務補助的な業務に配置した。障害者の就業場所を1ヶ所に集めることにより、業務の進捗管理、体調管理などを管理者が把握しやすくなった。また、業務の遂行に戸惑ったり、手順どおりの作業ができていない場合も早めの対処ができた。しかしながら、こちらが簡単な仕事と思っていても、思いもかけないようなところでつまずいたり、遂行できなかったりすることが起きた。
そこで障害者の雇用を始めるに当たって、翌平成24(2012)年より、入社前に愛媛障害者職業センターで職業評価を受けてもらい、障害特性や作業の得意不得意、障害のためにできないこと、障害であってもできる場合の支援・配慮方法など、事前に知識として得るようにした。そして、職業評価の結果と社内の仕事を組み合わせて、入社直後の仕事を決定するようになった。その結果、精神障害者の雇用もはじめることができた。
現在の「スタッフサポートセンター」では職業評価の結果に関係なく、入社直後の業務として3、4種類が用意されている。職業評価の結果を把握しながら、その用意された業務(以下「入社直後の業務」)に配置することで、各々の特性、強み・弱みが分かるようになってきた。入社直後の業務が当社のアセスメントツールとして出来上がったと考えている。したがって、どのような障害の人でも、まずは入社直後の業務に配置し、適性を考慮し次の仕事に配置するようにしている。入社直後の業務を決定したことで、採用時に障害者に対しての過剰な期待も過小評価も必要なく、入社直後の業務がどの程度遂行できるかを推測するだけでよく、採用側としても負担が減り、ミスマッチも減少できるようになった。
(2)採用方法
求職者はハローワーク、障害者就業・生活支援センター、福祉施設、愛媛県立高等技術専門校、特別支援学校などの関係機関からの紹介とともに、当社が人材派遣業であるため各営業所からの登録スタッフや、ホームページより求職者が来る場合がある。
どのような場合でも、まず社内の見学を行っている。働くことが具体的に想像できない方、従事する仕事は○○業務でなくてはならないと考える方、職場のにおい・音を気にする方、通勤に不安な方などいろいろな場合があるため、ミスマッチを防ぐために、当社に足を運んでもらっている。
採用側としては、職業準備性(生活の安定、服薬状況、家族の援助、仕事に対する姿勢、作業能力の確認など)を見学中に把握させていただいている。見学後本人より就業の意志があれば、ハローワークを経由して紹介状持参の上、正式に面接を行っている。
当初は、面接後に採用となるものは、9割以上であったが、採用後の定着がなかなか上手くいかなかったため、現在では5割程度になっている。
(3)フレキシブルな勤務時間を設け、安定した継続就労を実現
当社では、正社員がフレックス制度、契約社員が9時から18時までの就業時間となっているが、障害者に対しては、採用時に安定した生活リズムとなるよう就業開始時間を話し合っている。その結果、9時30分から、10時から、午後出勤などさまざまな勤務時間で働いている。
トライアル雇用では、週10時間からスタートする場合もあったが、会社全体がフレキシブルな出退勤であるため、本人たちが当初心配していた特別な出勤・退勤時間とは感じられなかった。そのため、徐々に勤務時間を延ばして、いつでも特別扱いには見られず、会社全体として気がつくと週30時間勤務になっていたという状況が実現している。
(4)業務体制の工夫・改善
<キーワード:チームづくり、1人2役、分担>
業務の多くは、派遣スタッフの就業開始・契約・給与関係・退職に関する書類のデータ化・整理・発送・ファイリングである。前述の入社直後の業務はこの中の一部の業務である。当社では、随時障害者を受け入れているため、最初に入社した人(例えばAさん)が、まずは入社直後の業務を行う。次に入社した人(例えばBさん)は、入社直後の業務をAさんから教えられ、AさんがBさんを育てながら、Aさんは新しい業務を覚えるという流れであった。
新しい業務への配置に当たっては、入社直後の業務を通じて個々の特性が把握できるため、新しい業務はそれぞれにあわせた仕事を行えるように工夫した。すなわち、入社直後は決まった業務でも、データ入力の正確さ、スキャンの手際のよさ、PCスキルの高さ、接客スキルなどを考慮して次の業務に配置した。また、入社直後の業務からの移行は同じ仕事を2人で行えるように配置した。その結果、1人が2つ以上の仕事を持つことになり、仕事の幅を広げるチャンスと仕事をより理解できる環境を作ることができた。
![]() ![]() 作業風景 |
(5)相談・コミュニケーション
入社当初は、入社1週間後、2週間後、4週間後に面談時間を設けて、困っていること、分からないこと、体調面など何でも話してもらうようにしている。
また、全員3ヶ月に1度面談時間を設け、仕事の遂行状況の確認、業務に対してのフィードバックを行ったり、今後の希望なども聞くようにしている。業務で分からなくなったり戸惑ったりした場合は、できるだけその場で混乱を整理するよう努めている。オフィス内での話し合いが本人にとって適切ではないと判断した場合は、会議室やカウンセリングルームなど別室でじっくり時間をかける場合もある。
(6)社内研修
当社では、接遇研修を社員全員に行っている。一般社員は半年に1度3時間程度行うが、障害者に対しては、ゆるやかな特別プログラムで対応している。
障害者に対しては1~2ヶ月に1度30分程度で立ち居振る舞い、発声練習を少しずつ行っている。あいさつ場面をビデオで取り、その映像を全員で確認し、フィードバックを行っている。研修講師は産業カウンセラーの資格も持っている社員で、全体研修ではあるが、個々にあわせた研修が行われている。声が小さかったり、自信のない姿勢で仕事をしていた人たちも、研修を受けることにより、前向きな態度が現れてきていると感じる。
また、社内電話、社外電話の研修も適宜行っている。電話応対のマニュアルをもとに電話の練習機を使用して、実際の応対の声を確認しながら自信につなげている。
![]() 社内研修風景 |
(7)ナチュラルサポート
平成23(2011)年7月の「事務センター」設立後1年経過し、障害者の雇用が始まった頃より障害者数が5名を越え、管理者1名だけで管理することが難しくなってきたが、この頃には、障害者が社内で働いている姿に特別視する人もいなくなり、確実・丁寧な仕事ぶりが社内に認められ、誰もが会社にとってなくてはならない存在と感じられるようになった。障害者と一緒に働く社員は、ぎこちなさが取れ、自然と配慮や言葉かけをする姿が見られた。障害の有無に関わらず、仕事を通じて、教え、教えられる関係ができ上がっていった。
現在の「スタッフサポートセンター」においては、次のステップとして、社内の数名がサポーターとなりきめ細かい障害者への配慮を行ってもらうようにした。サポーターが気になるところは、管理者に伝えてもらいながら、障害者の理解が社内により浸透していくためのキーパーソンとして位置づけた。障害者職業生活相談員の資格取得者も増員しながら職場環境を整えている。
(8)支援機関との連携
募集、採用、定着、退職など就業におけるすべての場面で支援機関とは連携を密に行っている。企業で就業するための社会的スキル、職務遂行スキルの向上は、障害者に対し企業内で支援を行うが、生活面の問題(服薬、生活リズム、通院、家族問題など)は支援機関に一任している。
当初は社員の問題は、会社のみで解決できると考えていたが、障害者雇用はそれほど簡単ではなかった。そのような中で、支援していただける関係機関が多数存在することを知り、肩の力を抜いて障害者雇用における会社の役割を明確に分けることができた。仕事の問題で生活に支障をきたしたり、逆に生活の問題で仕事に支障をきたす場合があるため、支援機関とはしっかりと連携しながら障害者雇用を進めていく方針をとった。
3. 今後の課題と展望
入社時には、会社に慣れるために時間をかけて見守っていた。しかし予想を大きく上回る仕事ぶりに新たな仕事を任せる際には、教える側が障害者であることを忘れてしまい、丁寧でゆとりのある伝え方ができていない。このように業務や組織が変わったりすると、体調に支障をきたす場合も散見されている。会社では必ず起きてしまう仕事の変化、環境の変化に対してどのように安定した状態で継続かつ定着していけるかが今後の課題である。
障害者への指示の出し方、業務の切り出しを通して、このような支援は障害のない社員にとっても有益であると感じている。分かりやすい指示は、誰にとっても分かりやすく、業務の切り出しは、業務の効率化の足がかりとなる。また、ダイバーシティーの観点からも、誰もが働ける環境が整っていくと信じている。今後とも働くすべての人に魅力ある舞台を提供し続けるよう、職場環境をよりいっそう整えていきたい。
執筆者: | アビリティーセンター株式会社 総務人事グループ 上甲 智子 |
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