ともに歩んできました
- 事業所名
- 特定非営利活動法人佐世保自立支援センター
障害者就労継続支援A型事業所「チャレンジ」 - 所在地
- 長崎県佐世保市
- 事業内容
- 障害福祉サービス事業(食鳥処理加工受託業務)
- 従業員数
- 22名
- うち障害者数
- 16名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚・言語障害 肢体不自由 内部障害 知的障害 13 食鳥処理加工業務 精神障害 3 食鳥処理加工業務 発達障害 高次脳機能障害 難病等その他の障害 - 目次
![]() ![]() 事業所外観 |
1. 事業所の概要と障害者雇用の経緯
(1)事業所の概要
特定非営利活動法人佐世保自立支援センター就労継続支援A型事業所「チャレンジ」(以下「当事業所」)は平成25(2013)年10月22日に設立し、平成26(2014)年2月1日に指定障害福祉サービス事業者(就労継続支援A型事業所)の指定を受けた。
当事業所の障害者雇用は、下記の3で後述しているように昭和43(1968)年8月に設立した佐世保ブロイラーセンター株式会社に雇用されていた障害者全員を当事業所の設立に伴い雇用したものであり、当事業所の業務は、同社の食鳥処理加工業務の一部の受託業務である。
食鳥処理加工工場における作業は(ア)食鳥の加工前処理作業(イ)中抜ラインにおける副産物(内臓関係)処理(ウ)解体レーンにおける加工作業(エ)パック詰め処理(オ)工場内清掃及び鳥肉搬入のためのカゴ洗浄等と区分される。そのうち当事業所では、長崎県を中心とした北部九州の契約農家で飼育された若鳥ブロイラーを当日の朝入荷して(ア)の食鳥加工前処理作業が終わった食鳥の(イ)から(ウ)での手捌き加工、(エ)の加工商品のパック詰め工程まで、その日に長崎県内のスーパーや精肉店に卸しできるまでの全ての業務を行っている。
(2)佐世保ブロイラーセンター株式会社の障害者雇用の経緯
受託業務の委託元事業所である佐世保ブロイラーセンター株式会社の障害者雇用の経緯は、平成元(1989)年5月、佐世保市内にある社会福祉法人が運営する就労移行支援事業所(現在の名称)で支援を受けていた知的障害者を紹介され、職場見学、実習を行った後に雇用した。食鳥加工工場内での清掃等の雑用業務を担当した。これがはじめての障害者雇用となった。
翌年(平成2(1990)年)、食鳥処理法が変わったのを契機に、従来の手作業による処理加工手法から機械化された処理加工生産ラインの導入を行った。その結果、同ライン機械の導入により業務内容が変更になり各工程が流れ作業となったが、当初在職していた職人気質の強い従業員は同ラインでの流れ作業には向いていないとことごとく退職した。このため、当初受け入れて雑用等業務に従事していた知的障害者を加工生産ラインのうち当人の身長体格を生かした作業に配置転換した。
そして、当人への作業内容の指導、教育等は毎日繰り返し行い、指導補助の必要がなくなるまでに5年の歳月を要した。それでも、当初の雇用から順次雇用数を伸ばし、平成8(1996)年では雇用障害者(知的障害)が7名となり、加工工場における雇用障害者は重要な戦力となっていた。同時に障害者多数雇用事業所となり「障害者の雇用の促進等に関する法律」に基づき同年に障害者職業生活相談員資格認定講習を受講し修了証書を取得した。
![]() 作業風景1 |
![]() 作業風景2 |
![]() 作業風景3 |
2. 障害者雇用の取組
(1)就労支援機関との連携(障害者A君の事例)
障害者A君は、佐世保ブロイラーセンター株式会社に入社5年経過後に突然出社しなくなり連絡が取れなくなった。音信不通になり、やむなく保護者と相談の上退職の手続きを取った。様々な事情があり、その2年後、突然会社に姿を現し工場責任者に再就職を懇願した。工場責任者はこれまでの無断欠勤、無連絡等を十分に反省し、今後は真面目に勤務する確約を取り、社長に嘆願し再雇用することになった。再雇用した後も父親が他界し1人暮らしを2年程続け家賃等の支払支援を会社が続けてきた。本人は金銭管理、健康管理等が苦手でその対処方法にも苦慮していた。
そのような中、ハローワークの障害者雇用担当官へ相談を行った。その結果、県北地域障害者就労・生活支援センターの紹介を受けて通勤寮に入寮した。寮生活に馴染まないことや過去の金銭トラブルの未解決問題の処理があったが、トラブル等は会社、施設担当者及び本人を交えて問題解決に向け話し合いの結果全て解決した。通勤寮での生活は人間関係、自立に関すること等を習得することができた。
その後、通勤寮を卒業しグループホームでの新たな生活に入った。生活も安定し金銭管理は出納帳の記入をグループホームの世話人より習得し自分で記入できるまでになった。過去の諸問題も解決し就労に対しての自信、意欲、同僚部下への業務指導等事業所内での重要な地位までに人間的に成長し、加工工場において重要な戦力となった。
(2)保護者・障害者・地域住民とかかわり
ア.毎月、チャレンジ会議を開催し業務内容、私生活等のテーマを設けて全員参加の話し合いを開催している。種々の問題点がでてくるが短時間にて解決できる事案、時間を要する事案と振り分けて問題解決の場としている。
イ.保護者会の開催は随時開催して保護者からの要望、意見等を集約して業務に反映している。
ウ.ボランティア活動として地域の清掃作業に参加している。毎日の業務を離れ地域住民とのふれあいが目的である。
![]() チャレンジ会議風景 |
![]() ともにボランティア活動風景 |
3. 就労継続支援A型事業所設立までの経緯
佐世保ブロイラーセンター株式会社では障害者を雇用して25年が経過して、雇用されている障害者は入社当時の年齢に勤務年数が加わり高齢になってきた。各障害者の背中が丸くなり、老けた感じが容姿に現れてきた。業務が終了しタイムカードを押すために事務所に入ってくるとき、やっと仕事が終わったと大きなため息をついている姿が目に留まることがたびたびだった。
厳しい食肉業界の環境下、高齢になり体力、能力等が衰退している状況で継続雇用できるか、また新規雇用障害者の1人立ちまで5年位の年月を要するための育成経費も課題であった。加えて、これらの課題を緩和するために新規設備投資を行うべきか等課題が山積みであった。
このような中、長崎県重度障害者雇用地方相談協力員であるA社代表取締役とお会いする機会があり、その地方相談協力員とは雇用障害者の種々の問題点を話し合った。特に、雇用障害者の高齢化に伴う作業効率の低下、体力の衰退等問題が共通課題として多数でてきたが、雇用障害者の生活基盤を守るためには継続就労が基本であることが共通認識となった。A社は、その事業所内に別法人で就労継続支援A型事業所を設立し、その課題に対応していることも大いに参考になった。
これが、当事業所を設立する経緯になったものであるが、当事業所の設立準備に際しては、佐世保ブロイラーセンター株式会社の雇用障害者全員及び保護者等に対して設立趣旨を説明し賛同を頂いた。特に、当事業所における雇用条件である就労時間の短縮、就労可能年齢65歳等が賛同の要因となった。
当事業所は障害者総合支援法に基づき、当事業所を利用する障害者とは雇用関係をもちつつ、一般就労に向けての支援も行うこととなる。そういった意味からも障害者雇用への取組みとしては地元公共職業安定所、特別支援学校、地域障害者就労・生活支援センター等及び保護者会との連携を密にし地域に根付いた活動を行っていく。
![]() ![]() 保護者会の様子 |
4. 今後の取組
佐世保ブロイラーセンター株式会社では雇用障害者を「障害者」と呼ばず「チャレンジさん」と呼んできた。当事業所の加工処理工場にて受託業務に従事している従業員は22名であるが、うち16名が障害者であり重要な戦力となっている。多くが当初の入社時と比較して業務能力の低下、体力等の減退が顕著に現れてきている。
当事業所の名称の「チャレンジ」は全てにチャレンジし続ける意味からこの名称をつけた。毎月、チャレンジ会議を開催して業務内容、私的内容等の話し合いを行う場を設けている。
知的障害者は業務内容等の習得には時間がかかるが一旦習得したらひたむきに頑張る特性を持っている。勤怠関係に関しては欠勤、遅刻、早退等はなく人一倍業務に従事する。障害のない従業員に対して模範となるところが多々ある。
当事業所の開設により就労時間が30分の短縮となりプライベートに時間を費やしたり、体調管理(通院等)に向けられる余裕ができた。
初めてのチャレンジさんとのかかわりを持って26年となり多くのヒントを頂いた。今後は、各関係機関、特別支援学校及び各施設と連携をとり就労希望チャレンジさんの皆さんへ就労の場を提供したい。
執筆者: | 特定非営利活動法人佐世保自立支援センターチャレンジ 相談専門員 林 順子 |
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