1. コミュニケーションが苦手で幼いころから必要最低限のこと以外はほとんど話をせず過ごしていた。
2. 作業場面では具体的な指示を受ければ、作業手順を覚えて遂行することができる。
3. 作業終了時の報告や指示が分かった、分からないの返事はできる。但し、指示内容が分からない場合、「分かりません」とは言えるが、具体的にどこが分からないかは言えない。

募集・採用時の合理的配慮

面接時に、就労支援機関の職員等の同席を認めること

面接では本人は頷く程度しかできなかった。面接には、障害者職業センターの職員が同行し、本人の特性について説明を行った。同職員からは、コミュニケーションが苦手で、面接などでほとんど喋ることがない点に理解をいただきたいこと、その他、次のことなどについて説明を受けた。

1. 真面目に作業に取り組むこと
2. 職業準備支援の中で作業は一回の説明で間違いがほとんどなく進められること
3. 分かりません、分かりました、できましたなど必要最低限のコミュニケーションが取れること

その他の配慮

採用前において、事業所側では、対象障害者の作業として紙折機や裁断機などを使用しての、より専門的な作業を考えていた。しかし、それらの作業は当日の温度や湿度によって設定を変える必要があり、高度な技術力が要求された。このため、事業所側では本人の能力に合わせて、コミュニケーションが少なくとも進められる補助的な業務を用意した。
一方、障害者職業センターからは、本人は当初製造職種を希望していたので、事業所側が用意した補助作業が気に入るかどうかを職場体験を踏まえ、本人が考えられるように、職場実習（職務試行法）を設定することの提案があり、事業所側ではこれを受入れた。

採用後の合理的配慮

業務指導や相談に関し、担当者を定めること

配属先の副部長が指導担当者となり、作業手順の説明やその日の作業内容の指示をするようにし、細かな指示や、不明な点については、現場の主任又は3名の程度の現場の従業員が教える体制を作った。

業務指示やスケジュールを明確にし、指示を一つずつ出す、作業手順について図等を活用したマニュアルを作成する等の対応を行うこと

1. 製品包装作業
   • 具体的な指示体制

     作業手順や一日の作業内容の指示は所属部の副部長か部長が出し、細かな指示や、不明な点については、現場の主任が教える体制を作った。当初、作業手順などについて、マニュアルが必要と思われたが、職場実習をする中で口頭でも十分作業が行えることを確認したため、マニュアルや、指示書などの作成は必要なかった。

   • 配慮事項

     事業所は、コミュニケーションの部分については問題は感じておらず、黙々と作業を行うことについて評価をしている。ジョブコーチ開始当初は本人の様子を見ながら、本人がわかっていないようであれば副部長や主任から「どうしたの」等本人の発語を促すような質問をしている。
     そのうちに、本人の方から主任に近づいて作業結果の確認や、作業終了の報告などが行えるようになった。本人は主任のすぐそばで仕事ができるように配慮しており、本人が主任に報告しやすい環境になっている。

2. 製本作業
   • 指示体制

     基本的な指示は副部長が出す。作業の確認などは3名程度の従業員とともに行う。

   • 配慮事項

     他の従業員にも本人のコミュニケーションの特性が共有されており、作業手順の確認などは、他の従業員も本人から何も言わなくても、横目で確認を行いながら必要に応じて注意や承認を与える指示方法を取った。日を追うごとに本人も作業環境に慣れてきており、必要な報告などはできるようになっている。

その他の配慮

社内イベントが盛んに行われている会社で、本人にも声をかけているが、本人が嫌がるようであれば、無理に誘わないという配慮をしている。これにより、忘年会などは出席し、ボウリング大会などは断るなど、イベントへの参加、不参加を無理なく選べている。