事業所名

合理的配慮事例・27101

業種

情報通信業

従業員数

50名

職種・従事作業

キーパンチャー
データベースへの入力、スキャンデータの作成、架電カード枚数チェック

障害種別

発達障害

障害の内容・特性

• 定型的に作業をこなすことは問題ないが、臨機応変・突発的な対応や、判断を要するポイントが多い作業を求められることは苦手としている。
• 口頭による指示や説明に加えて、視覚的に指示や説明を行うとスムーズに理解ができる。
• 周囲の状況を踏まえた対応が難しく、自分のペース・タイミングで質問したり話してしまいがちである。
• 温和な性格であるが、これまでの職歴で周囲と円滑なコミュニケーションが図れず、対人関係の構築に関して不安を抱いている。

募集・採用時の合理的配慮

面接時に、就労支援機関の職員等の同席を認めること

企業担当者と対象障害者（以下「Aさん」という。）だけでなく、支援機関担当者（障害者職業センターの障害者職業カウンセラー）が同席して面接を実施した。

その他の配慮

Aさんの採用までに3名の発達障害者を雇用した経験から、以下の配慮を行っている。

1. 穏やかな雰囲気での面接の実施
   一般的な面接は、発達障害者が苦手なコミュニケーション面を重視したものであること、また計画どおりにやりとりが進みづらい場面であることから、極力緊張を和らげるために雑談を交えながら穏やかな雰囲気を創出することを心がけた。
2. 職場実習の実施
   当社は社内従業員間の協調性を重視しているため、一般的な中途採用面接では2次面接またはそれ以上面接を行うこととしているが、面接だけではコミュニケーションが苦手な発達障害者の性格・思考傾向が把握しにくいこと、またAさんにとっても面接だけで当社で従事する職務内容や職場環境を把握し長く働けるかどうかを判断することは難しいことから、1週間程度の職場実習を行い、Aさんが従事する予定の職務における技能の習得レベル、採用した場合の習熟レベルを確認した。またAさんにとっても当社で長く働けるかどうかを見極めてもらう期間とした。

【補足：発達障害者を雇用することに至った背景等について】

• 従業員規模が増えるにつれて、障害のある方についても雇用する必要が生じてきたが、全国13拠点のうち比較的定型的な業務が創出できる支店で一括的に雇用を進めることとなった。
• 定型業務とはいえ、PCによるデータ入力業務やスキャン業務などの事務的作業が主となり、一定の職務スキルが求められることから、結果的に発達障害者の雇用が進んだ経緯がある。
• Aさんについては平成26（2014）年7月に採用している。

採用後の合理的配慮

業務指導や相談に関し、担当者を定めること

1. Aさんをはじめ障害のある従業員が配属される営業所の管理職（次長）が雇用管理の担当者となり、次のような指導・相談を実践した。
   • 職業生活場面における指導：（例）職場での1日の流れの理解、周囲との関わり方
   • 職務内容のマッチング：（例）データ入力をメインにしながら、障害のある従業員それぞれの特性を踏まえた職務内容の設定
   • 障害のある従業員からの相談を受ける：（例）不安や悩みを聞く。
   • 日頃の声かけや雑談をすることによって緊張の緩和を図る。
     これらの他、Aさんから事前に聞いていた前職での辛い出来事（終わりの時間が読めない、一度に複数の指示を出される）に対して、当社では辛い思いをさせないよう、スケジュールを明確化する、作業の指示は一つずつかつAさんが理解しやすいように説明するなどを実践した。
2. 業務の指導については、上司に当たるセンター長が主となり、その日その日の作業指示を出したり、作業面での疑問や質問に対応している。また、Aさんより先に雇用されていた発達障害のある従業員複数名が細かい作業のやり方などの指導に当たった。

1日の活動イメージ

業務指示やスケジュールを明確にし、指示を一つずつ出す、作業手順について図等を活用したマニュアルを作成する等の対応を行うこと

Aさんについては、次のような対応を行ってきた。

1. 業務の習得状況に応じた職務の調整の実施
   当初、Aさんは他の発達障害のある従業員と同様にデータ入力業務をメインとした業務に従事していたが、習得するまでに時間を要したこと、これによりAさん自身の気持ちに落ち込みが見られたり、集中力の低下が見られたことから、職務内容を一部変更することとした。
   具体的にはデータ入力業務の割合を減らし、データ入力業務よりも判断要素が少なく、より定型的な作業であるスキャンデータの作成とカード枚数チェック作業を導入した。
2. フィードバックの実施
   Aさんは自己肯定感が低かったため、できるようになったことやできていることについてフィードバックし、褒める・認めることを繰り返し行い、自信を持てるように働きかけた。
3. 作業マニュアル等の作成等
   Aさんの特性でもある視覚優位性を重視し、スケジュールや作業マニュアルなどを整備したり、実際にやってみせる、全体像を示すなどの対応を図った。作業マニュアルについては障害者の雇い入れに当たり事前に整備していたものであるが、実際には作業の特性上、作業マニュアルよりも実際にやってみせて経験を積み重ねながら個別に指導・指示を行うことにより定着が図られていった。
4. 見通しを持った業務の実施に当たって
   Aさんをはじめ障害のある従業員が、作業の判断・見通しを持って業務を進めることができるようにするため、毎日担当する作業分が当日中に終了できそうかを報告してもらうように指導した。ただし、見通しを持って報告することが難しい場合には、その都度アドバイスをするなどサポートすることを心がけている。

業務の様子（データ入力）

業務の様子（カード枚数チェック）

出退勤時刻・休暇・休憩に関し、通院・体調に配慮すること

1. 就業時間の調整等
   採用当初は10時から19時までの8時間勤務であったが、データ入力業務の習得に時間がかかったことによる気分の落ち込み、勤務時間が長時間にわたることによる疲労や集中力の低下が見られたため、14時から21時までの勤務形態に変更するとともに就業時間を7時間に短縮した。これと併せて、上記にも記載したとおり当初のデータ入力業務の割合を減らし、スキャンデータの作成や架電カード枚数チェックも業務に組み込み、集中力の低下を防ぐ工夫をした。
2. 休憩への配慮
   1時間に1回程度、休憩スペースで休憩する時間を設定したり、作業中トイレに立ってもよいことを説明した（当該説明を行うことにより、適度な休憩を取ることの重要性を認識してもらった）。

本人のプライバシーに配慮した上で、他の労働者に対し、障害の内容や必要な配慮等を説明すること

1. 受け入れに際し、障害者職業センターの障害者職業カウンセラーが従業員に対して障害に関する社内研修を行い、障害の内容や特性、職場において必要な配慮は何かなどについて理解を深める機会を設けた。
2. 当社と支援機関でカンファレンスを行い、指示の仕方やコミュニケーション面についての対応方法を整理し、対応事例表を作成、特にポイントとなる部分については社内で共有した。
3. 従業員に対して、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が発行している障害者雇用マニュアルを紹介し、障害者雇用に関するノウハウを身につけることを奨励した。

対応事例表

その他の配慮

1. 障害者職業センターが、職場実習や面接の段階から関わり、雇用してからはジョブコーチ支援を実施した。当該支援の中で、Aさんと個別に相談する機会を設けて不安や緊張を緩和したり、上記に記載している職務内容や就業時間の変更に際して、Aさんの思いと事業所側の考えを擦り合わせながら適切な対処を検討していった。また必要に応じて、職場における対人技能面へのアドバイスを行った。
2. 事業所においては、月に1度程度レクリエーション（食事、カラオケ、小旅行等）を行い、リラックスできる職場環境づくりに努めている。

障害者への配慮の提供にあたり、障害者と話し合いを行った時期・頻度等の配慮提供の手続きの詳細

配慮を受けている障害者の意見・感想等