1. 主な症状は不眠・食欲不振等である。現在は幻覚・妄想等はなく、安定している。月1回（土曜日）通院である。
2. 生理の日に体調を崩しやすい。体調を崩したときは1～2日休むことで回復する。体調を崩して休んだ後の休み明けの出勤は対象障害者にとって大きなプレッシャーとなる。
3. 疲れやすい。疲れたときは5～10分程度別の部屋で休憩を取ることで回復する。
4. 新しいことを憶えるときや、作業場面で3つ以上のことを同時に指示されること、きつい注意を受けると落ち込み、ストレスがたまる。ストレスが高じるとパニックになり、慌てたり、手の震えが出たり、トイレが近くなる。対処法として、深呼吸・冷たい水を飲む・5～10分程度休憩を取り気持ちを落ち着かせる、がある。
5. 調子を崩すときの前兆として、不眠（入眠が遅くなる、24時頃中途覚醒する）、食欲不振（のため体重減少）、他人と会うのが嫌になる。調子を崩したときの対処法としては、かかりつけの病院を受診する。
6. 作業を「しっかりとやらなくてはいけない」「すべてこなさないといけない」と考える傾向があり、ストレスになると自覚している。対象障害者はこうした考えになりそうなとき、深呼吸や冷たい水を飲む等してリラックスするようにしている。
7. 初対面や未経験のことに対して尻ごみすることがある。人間関係に慣れていないときに対象障害者から話しかけることは苦手である。また、予想外の事態に直面すると不安が大きくなることがある。
8. 作業の抜け（もれ）がところどころで見られるため、スケジュール表を作成しつつ、内容も加筆修正し、作成後も対象障害者の理解度を確認する必要がある。
9. 報告・連絡・相談・質問は本人からできるが、報告の際要点を絞って上手く伝えられないことがある。
10. 対象障害者がメモを取る際、指示されたことをそのままメモする傾向があり、ポイント順に記載できず、振り返りの際に何について書いてあるかわからなくなることがある。

募集・採用時の合理的配慮

面接時に、就労支援機関の職員等の同席を認めること

面接時に、対象障害者が当時利用していた就労継続支援B型事業所の支援員の同席を認め、対象障害者の症状や配慮事項、就労継続支援B型事業所の通所状況を把握した。

採用後の合理的配慮

業務指導や相談に関し、担当者を定めること

1. 面接を行った本人の配属先である総務の上司（課長職、障害者雇用担当経験4年、男性）を業務指導や相談の担当者とした。また、総務の上司が出張等で不在の場合は同部署の別社員（女性）が担当し、担当者が不在になる状況を回避した。
2. 採用後1～2週間は担当者がOJTで業務指導を行った。対象障害者が業務内容を習得し、単独で業務遂行ができることを実際の業務のなかで確認してから、対象障害者に業務を任せていった。
3. 相談は随時担当者が受け付け、即時応答することを基本とした。また、事業所が以前から他障害者に活用していた体調管理チェック票を活用し、対象障害者が日々の体調や悩みごと等を記載する欄で対象障害者がその場で言いにくいことや言い忘れたことも見逃さないようにし、悩みごと等が確認された際は即時相談場面を設けた。さらに、担当者からのコメント欄を活用し、担当者が不在のときも文面にて対象障害者に返答できるようにした。
4. 体調管理チェック票を二人の担当者間で回覧し、対象障害者の状況を共有した。

業務の優先順位や目標を明確にし、指示を一つずつ出す、作業手順を分かりやすく示したマニュアルを作成する等の対応を行うこと

1. 対象障害者は新しいことを憶えるときや、作業場面で3つ以上のことを同時に指示されるとストレスに繋がることを二人の担当者間で共有した。
2. 業務指示をするときは、ひとつずつ具体的に説明し、説明後には対象障害者の理解度を必ず確認した。商品管理の際は見本となる商品を提示した。対象障害者がメモを取った内容を担当者が確認し、メモの仕方（ポイント順の記載等）を助言した。
3. スケジュール表を作成し、業務の優先順位を明確化した。マニュアルを作成し、対象障害者の理解度に応じて内容を加筆・修正した。
4. 業務の区切り（清掃→梱包→印刷等）で対象障害者から担当者に業務終了を報告することとし、その際担当者からフィードバックを行った。

出退勤時刻・休暇・休憩に関し、通院・体調に配慮すること

1. 通院日が土曜日であることや、対象障害者が採用前に利用していた就労継続支援B型事業所が平日通所であった経緯を考慮し、平日勤務（週5日）とした。
2. 体調不良時（対象障害者の場合、生理等）は無理せず休むように指示した。
3. 対象障害者は「体調不良時の休み明けの出勤の際に大きなプレッシャーを感じる」という特徴があるため、休み明けの出勤時に「体調不良で休んでも気にしないで」と声かけし、プレッシャーを軽減するよう努めた。生理を理由に休んだ際は、女性担当者が声かけをするようにした。
4. 疲れたときやストレスがたまったときに5～10分の休憩を取ることや、深呼吸、冷たい水を飲むことについて、採用前に対象障害者と共有し、採用後も適時担当者から声かけを行い、対象障害者が対処法をとりやすい雰囲気を醸成した。

できるだけ静かな場所で休憩できるようにすること

休憩は対象障害者の希望を踏まえ他従業員と同様事務所内で取るようにした。

本人の状況を見ながら業務量等を調整すること

対象障害者の「業務量を増やさず、安定して勤務することを優先したい」との要望により、採用時の勤務時間（4時間）を継続した。

本人のプライバシーに配慮した上で、他の労働者に対し、障害の内容や必要な配慮等を説明すること

面接時やジョブコーチ支援開始時に共有した対象障害者の症状や必要な配慮等を、対象障害者の了解を得たうえで、担当者が、対象障害者が業務遂行上関わる従業員（対象障害者の場合事務所内従業員全員、10名程度）に説明した。

その他の配慮

対象障害者の「人間関係に慣れていないときに自分から話しかけることは苦手である」という特徴を踏まえ、採用後しばらくの間は担当者や他従業員から話しかけるように努めた。話しやすい内容（対象障害者の場合、趣味である音楽や料理、気楽に話せるTV番組の話題について等）を採用前に確認し、他従業員と共有した。