精神障害者の倉庫内作業における合理的配慮事例
- 事業所名
- 合理的配慮事例・27257
- 業種
- 卸売業・小売業
- 従業員数
- 448名
- 職種・従事作業
- 医療機器の倉庫内作業(ピッキング、荷受)
- 障害種別
- 精神障害
- 障害の内容・特性
- 統合失調症:強いストレス状態が高じると幻聴を覚え、自分の悪口を言われていると感じることがある。
これまで、職場環境の変化や業務上のストレス等から精神が昂ぶり、パニックになったり過呼吸を起こしたりしたことがある。
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募集・採用時の合理的配慮
面接時に、就労支援機関の職員等の同席を認めること
採用面接時に、対象となる障害者(以下、「対象障害者」という)を支援する障害者職業センターのカウンセラーに同席してもらい、対象障害者の受け答えを補足する形で、障害特性や就労上の配慮の必要性等について説明を受けた。
その他の配慮
対象障害者の職場定着を目指すため、慣れるまで勤務時間は実働4時間/日から始めることとした。
採用後の合理的配慮
業務指導や相談に関し、担当者を定めること
- 対象障害者が所属する現場(ピッキング)のリーダーを指導担当者と定めた。
当社において、障害者雇用は対象障害者が初めてであり、経験が皆無であったためトライアル雇用を活用して取り組むとともに、障害者職業センターからジョブコーチを派遣してもらい、現場の指導担当者へのアドバイスを受けながら対象障害者への作業指導、職場定着に向けたフォローを行っていくこととした。 - 対象障害者の作業面以外の悩みや相談については管理本部長が当たることとし、切れ目のないサポートを常時提供できるようにした。
業務の優先順位や目標を明確にし、指示を一つずつ出す、作業手順を分かりやすく示したマニュアルを作成する等の対応を行うこと
- 就労時に、ジョブコーチから配置表(倉庫内棚および商品)と商品管理ノート(商品内容・説明等)を整備するようアドバイスを受け、業務に関する理解がスムーズに進むよう準備した。
ジョブコーチには、当初3ヶ月間は週3~4回の頻度で訪問してもらい、対象障害者の不安や焦り等の解消に努めた。また、3ヶ月経過後の1年間は月1~2回の頻度で訪問してもらい、対象障害者の業務面での習熟や体調面の安定に寄与できるよう心がけてもらった。 - 対象障害者が担当している業務は比較的簡易なピッキングであるため、特段の手順書は作成していないが、指導担当者が、ピッキングリストを見ながら、やって見せて、その後対象障害者にやってもらう、さらに注意点を説明しながらコミュニケーションも図るというマンツーマンの指導を徹底した。
また、現場リーダーを中心に全員で対象障害者に対し、「つらいことはないか?作業は焦らず、ゆっくりで良い」との声かけを常々行い、仕事の安定・定着に向けたフォロ-を続けることとした。
出退勤時刻・休暇・休憩に関し、通院・体調に配慮すること
- 雇用当初は慣れないことによる焦りや緊張を除くため、勤務時間は実働1日4時間から始めた。
対象障害者は、週30時間以上の勤務をしたいとの希望を持っており、雇用後9ヶ月後には実働5時間に、雇用後1年3ヶ月後には実働7時間にと徐々に延長するとともにジョブコ-チの再支援を受けた。その後、実働7.5時間まで順調に時間を伸ばしてきた。 - 対象障害者は4週間に2度の通院をしているが、幻覚などがあり体調が思わしくない場合は、休暇を取ってもらい会社としてできる限り柔軟に対処するように心がけている。
できるだけ静かな場所で休憩できるようにすること
同僚従業員から対象障害者に対して気軽に声かけを行い、コミュニケーションをとるようにした。
本人の状況を見ながら業務量等を調整すること
業務スケジュールを書面で作成しているわけではないが、ジョブコ-チからのアドバイスもあり、業務上の混乱を来たさないよう対象障害者が取り組むべきピッキング対象の取引先とその作業時間帯を特定・固定化して提示した。
ピッキングの作業現場
事業所外観
本人のプライバシーに配慮した上で、他の労働者に対し、障害の内容や必要な配慮等を説明すること
当社では、初めて障害者雇用に取り組むことによる不安は大きかったが、対象障害者の職業の安定、職場定着を図るため、職場の上司、指導担当者を含む同僚に対して、「障害のある状況や配慮すべき点等について伝えたい」旨を丁寧に説明し、本人の了解を得た。
以下の内容について同僚に伝え、協力を求めた。- プライバシーに配慮した上で、対象障害者の障害種別、内容、特性、従事作業などについて説明し、配慮、支援を願うこと。
- 定期的な通院をしているが、主治医からは就労に問題はないと診断されていること。
- 強いストレス等が継続的にかかると症状が悪化する場合があること。
- 現場リーダーを含む全員で対象障害者に対し、「焦らず、ゆっくりで良い。つらいことはないか?」などの声かけを常々行い、フォロ-を願いたいこと。
その他の配慮
障害者職業センターのジョブコーチには、対象障害者の就労当初から支援を受けている。対象障害者の相談に乗ることを通じて、職業の安定、職場定着に協力してもらうとともに、事業所にとっても適切なアドバイスを得て、対象障害者の雇用管理に上手く取り組むことができた。
その後、事業所の移転、拡張、人員の増加等があり、対象障害者には従来のピッキング作業に加えて、荷受作業も担当してもらうようになったが、これらの環境変化が対象障害者のストレスとなり、体調を崩す結果となった。再度ジョブコーチ支援を受け、現在は勤務時間を短縮しながらではあるが安定して出勤している。 - 対象障害者が所属する現場(ピッキング)のリーダーを指導担当者と定めた。
障害者への配慮の提供にあたり、障害者と話し合いを行った時期・頻度等の配慮提供の手続きの詳細
- 面接時の配慮として、ハローワークから対象障害者の支援機関である障害者職業センターのカウンセラーを同席させたいとの要望があり、対象障害者が不安なしに面接に臨めるのであればということで了承した。
- 採用決定に至るまで、カウンセラーから対象障害者の障害特性について説明を受け、続いて、ジョブコーチの就業支援を受けることになった。ジョブコーチとは、対象障害者も交えて就労上の特性を把握協議し、雇用管理上の配慮点等について相談を行った。当事者間の意思疎通を図り、安定就労に向けた取組とした。
- 就労後にはジョブコーチ支援を週に3~4回と高頻度で受け、指導担当者、対象障害者を交えてのOJTで適切なアドバイスを得ることができた。これをもとに雇用管理上の修正点を認識し、対処改善を進めたところ、対象障害者は比較的スムーズに就労生活に入ることができた。
配慮を受けている障害者の意見・感想等
体調を崩して約1ヶ月休職したが、その間、精神的に辛い状態が続き、職場復帰できるか不安が大きかった。しかし、ジョブコ-チに付き添ってもらって出社してみたところ、上司、同僚の方が大変温かく迎えてくれ、励ましの言葉もたくさんいただいたことで不安な気持ちは払拭できた。
また、作業してみると体もよく動き、久しぶりであるが楽に感じることができた。
その後、短時間勤務で就業再開したが、自分としては早く元の勤務時間(短時間以外)での就労に戻りたいと考えている。そのことを相談すると上司、指導担当者から「まだ早い」「焦らず少しずつ前進で良い」「症状改善がまず第一」と私の体調面、精神面を気にかけてくれていることが大変ありがたい。
無理をしないでゆっくりと体調管理を行い、精神的にも安定するよう心がけたいと思っている。
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