募集・採用時の合理的配慮

面接時間について、体調に配慮すること

今回の事例の本人は、事前に重症筋無力症（症状は、朝と夕方で症状が異なる日差変動や日により差がある日差変動が見られる）であることを把握していたため、本人の直前の体調を優先し、サポートの必要がない体調の良好な日に面接を行った。

面接時に、就労支援機関の職員等の同席を認めること

1. 事前に、本人が通っていた難病相談支援センターから難病の特性と就労上の配慮事項に関する説明のほか、面接資料として本人の手記（公開されている相談者記述の本）の提示を受けた。
2. 本人の申し出により、サポートの必要がない体調の良好な日程において行い、本人の緊張や疲労の蓄積を軽減するために、同性の面接担当者と事業所内のキャリアコンサルタントを同席させた。

採用後の合理的配慮

業務指導や相談に関し、担当者を定めること

1. 直属の上司は、年齢の近い先輩社員（同性）を業務面や健康面等社内生活全ての指導、相談の担当者（以下「担当者」という。）として定めた。
2. 突発的な症状悪化、事故等の状況下においては、緊急電話連絡網に従って連絡することが難しいと想定されるため、もう一方の正規連絡網として担当者や他の社員を含めたLINE（ライン）グループを結成し活用している。

出退勤時刻・休暇・休憩に関し、通院・体調に配慮すること

1. 入社から2年間の勤務形態は、週3日、隔日勤務の10:00～16:00であったが、体調が一定になってきたことから、本人の要望により勤務時間を10:00～17:00に変更した。
2. 正規の休憩時間は60分であるが、体調に異常が認められたときなどは柔軟に休憩をとらせることとしている。自ら体調の異変を感じながらも休憩を申し出ない状況であると認めたときは、周囲に在籍している社員が休憩するよう促すこととしている。
3. 定期通院日は、有給休暇として取り扱うこととしており、また通院日をきちんと確保できるよう月間計画に組み入れている。
4. 高温の夏場や気圧変化の多い台風接近時に変調をきたすことがあるため、休暇を取得する機会が多いが、体調の変動を理由として突発的な遅刻・早退・欠勤をする場合は、本人の不利益にならぬよう雇用契約を結んでいる。

本人の負担の程度に応じ、業務量等を調整すること

1. 入社当初は、負担の少ないと思われる仕事と、期限のない仕事を主に行わせていた。
2. 疲労が蓄積されると会話することが困難になったり、表情が硬くなったりする場面が多く見られるため、体調の安定を前提に、本人の意欲とモチベーションの維持を図りつつ、相談しながら徐々に量、質を増やしてきた。

本人のプライバシーに配慮した上で、他の労働者に対し、障害の内容や必要な配慮等を説明すること

1. 職場環境として、長きにわたり障害者と障害のない社員が空気のような存在で交わっているため、自然と配慮することが定着していることが前提としてある。
2. これまで当社が進めてきた障害者雇用の経緯を踏まえ、新規採用者の障害特性は、当然の処置として社員全員で共有し、サポートできる体制を整えてきた。今回の場合においても、採用決定後、難病相談支援センターから提供された資料と本人記述の手記（主に病状について記載）を回覧した。

その他の配慮

1. 本人は、性格的にも前向きで責任感も強く、また前職を病気により断念した経緯があるため、任された仕事に対し要求以上の結果を出そうと取り組む傾向がある。精神的、心的満足度を向上させることが病状悪化を抑えることに繋がるのではないかと考え、これまで整備できなかった総務系の文書類（就業規則、社内社外文書等）の構築改善、入社教育担当や研修会への参加等の打診を行った結果、現在精力的に取り組んでいる。
2. 担当者やその他の社員は、疲労が蓄積していないか、無理を重ねていないか、常に仕事量と体調に配慮している。
3. 病気の特性上、感染症から呼吸困難を併発することがあるため、乾燥を防ぐため本人の側に加湿器を設置している。