リネンサプライ業における障害者雇用の取組 (職場実習、トライアル雇用・支援機関との連携)
- 事業所名
- 東邦セールス株式会社(法人番号 5480001003313)
- 所在地
- 徳島県徳島市
- 事業内容
- リネンサプライ事業
- 従業員数
- 170名
- うち障害者数
- 10名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚・言語障害 肢体不自由 内部障害 知的障害 10 タオル類の仕上げ業務、寝具の選別、病院用タオル類・おしめ類等の荷造り 精神障害 発達障害 高次脳機能障害 難病 その他の障害 - ■本事例の対象となる障害
- 知的障害
- 目次
事業所外観
1.事業概要
東邦セールス株式会社は昭和37(1962)年の創業以来、リネンサプライを基幹事業とし、地域に密着した“存在感のある企業”として医療・福祉・レジャー産業などの現場に高品質できめ細かなサービスをスピーディーに提供してきた。
また、東邦セールス株式会社はワタキューグループ企業として、全社員が感謝の気持ちと謙虚な姿勢を持って仕事に取り組み、地域の人々の暮らしや社会に貢献することを信条にしている。
基本方針は以下の通りである。「私たちは創業当時の原点にたち還り
- お客様には仕事をさせて頂いている
- 仕入れ先には売って頂いている
- 協力企業の方々には仕事をして頂いている
- 会社のみなさんには働いて頂いている
という感謝の気持ちと謙虚な姿勢で何事にも接する社風を醸成するとともに、誰もが思いやりの心を持ち、互いに協力し、人に誇れる立派な会社に勤めてよかったと思えるグループにする。」
以上を礎としてワタキューグループの強固な石垣を構築するため社是を「心」とする。
2.取組内容と効果
(1)雇用までの流れ
当初は障害者雇用に関する社会的条件整備も不十分な状況であったが、地域貢献と共に働く喜びを実感してもらいたいという思いから、地元の知的障害者施設から職場実習の受入れを開始した。
実習後は社員として雇い入れ、現在は障害のある社員を10名雇用している。(うち4名は重度判定あり)
また、近年は就労支援機関から実習を受け入れ、障害のある人に企業実習の場を提供している。
(2)福祉機関との連携
当初は地元の知的障害者入所更生施設や知的障害者通勤寮と連携し、その後障害者就業・生活支援センターや就労移行支援事業所が加わり、より一層関係機関との連携が深まっている。
定期通院を行っている精神的に不安定な人・てんかんを持っている人に対しては、通院前に支援機関と相談し、通院付き添いの依頼や会社での近況を情報交換することによって、支援者を通し医療機関との連携を図っている。
また、事業所の一部を企業実習の場として提供しており、就業前のトレーニングの機会として福祉機関に活用してもらっている。これにより、数十名の人が訓練後一般企業に就職したとのことである。地域の人々の暮らしや社会に貢献していくため、今後も継続して、柔軟な形で働く場を提供していきたいと考えている。
(3)障害のある社員の担当業務
障害のある社員の担当業務は、以下のとおりである。
ア タオルホルダー機械にタオルを通し、汚れなどのチェックを行う業務。
毎日1人当たり約2500~3000枚のタオルを機械に通している。一定のペースを保つことが求められる。
イ タオルの仕上げ(結束作業)
タオルホルダーから出てくるタオルの品質に気を配りながら、繰り返しタオルチェックをする。必要枚数で結束する業務であるため枚数を間違えないよう、正確性が求められる。毎日約1万枚のタオルを確認している。
ウ タオルの畳み
タオルホルダーから出てくるタオルの品質や衛生面に気を配りながら指定枚数を積み重ね、袋詰め及び結束作業を実施している。特に衛生面への配慮が必要な業務であり、加えて枚数を間違えない正確さが求められる。
- タオル類
- 1日1,200~1,250枚/人
- おしめ類
- 1日350~360枚/人
- ベビー用品
- 1日80~90枚/人
エ 寝具の選別
ホテルや病院などで使用された寝具類を種類ごとに分別していく。種類が多いため、確認しながら行う必要がある。工場では 1日 26~30トンの処理を行っている。
オ 寝具類のさばき
洗濯後の寝具類を仕上げ処理する前に、機械に通しやすいようシーツの塊を1枚ずつほぐし、所定の場所に置く。仕上げ処理に間に合うようにするためスピードが求められる。
(4)重度障害者の雇用への取組
現在、事業所には重度障害のある社員が4名いる。業務内容のマッチングを判断し本人に合う仕事があれば雇用を進めている。
ア Tさん(知的障害・重度判定あり・女性・29才)の場合
業務内容:タオルホルダー
雇用の経緯:支援学校を卒業後、就労継続支援B型事業所を利用していた。自分の後からB型事業所の利用を始めた弟が先に就労移行にステップアップして就職をしたことにより、「就職したい」という気持ちが強くなり、就労移行支援事業所を利用することになった。その過程で事業所の実習を経て平成25年に採用された。タオルの種類や数字などを覚えるのは苦手であったが、タオルを通す仕事は他の社員と見劣りしなかったためタオルホルダー業務の担当となった。
取組内容:就職して2年ほど過ぎた頃、精神的に落ち着かず、同僚への不適切な態度が増え始めた。また、Tさん自身の仕事量も落ち、周囲との関係も悪くなったことから就業・生活支援センターに相談した。この相談を契機に、今まで一人で通院していたTさんの通院に就業・生活支援センターの支援スタッフが通院同行をすることになった。
同行することで、医師に仕事の内容と現在の状況を伝えることができ、服薬調整をすることができるようになった。Tさんが一人で通院していたときは、医師に上手に説明できていなかったようだが、支援スタッフが関わることでTさん自身も障害について少しずつ理解していき、忘れず服薬できるようになり症状も落ち着いてきた。
通院後、事業所と支援スタッフがTさんの今後について相談を行った。支援スタッフからTさんの通院結果や障害特性に対しての説明があり、事業所からTさんに関わる社員に障害の特性を説明し、理解をしてもらえるよう配慮を求めた。また、Tさんの仕事量が落ちていることから、ジョブコーチ支援を利用し人間関係も含め支援してもらえるよう事業所へ依頼した。
仕事面だけではなく、支援機関と連携を密にしながら、生活面の支援を行うことも大切だと感じた。
イ Hさん(自閉症・重度判定あり・男性・40才)の場合
業務内容:シーツのさばき
雇用の経緯:Hさんは、平成26(2014)年職場実習及びトライアル雇用の後、常用雇用として採用された。
事業所はハローワークの紹介でHさんとの面接を行った。面接には就業・生活支援センターと相談支援事業所の支援者が同行した。Hさんには、コミュニケーションに不安があり、事業所としては初めて受け入れるタイプの障害者であったため、支援者から職場実習の提案があり、まずは実習で様子をみることとなった。
取組内容:職場実習において、Hさんには洗濯の終わったシーツのさばき業務をしてもらうこととした。当初は周囲とのコミュニケーションに不安があったものの実習中は上司に報告・相談をすることができた。事業所は、Hさんの作業スピードに課題があるものの、真面目に作業する姿を見てトライアル雇用をすることとした。トライアル雇用の期間中はHさんの作業スピードに課題があったため、目標(1時間に280枚)を立て、本人に意識を促した。
トライアル雇用終盤に、Hさん本人と関係機関(ハローワーク、就業・生活支援センター、ジョブコーチ、相談支援事業所)が集まり振り返りを行った。事業所は、Hさんの「継続して働きたい」という意思を確認し、真面目な勤務態度を考慮して、トライアル雇用後は常用雇用として採用することにした。常用雇用後は、作業スピードに係る課題は減りつつあり、仕事量やスピードに課題が発生したときは、事業所がジョブコーチや就業・生活支援センターに声をかけ、連携を密にしている。
3.今後の展望と課題
当事例から、事業所側が対応できない生活面や医療面のサポートについては、支援機関と密接に連携することが重要であることが分かる。事業所は、障害のある人の生活の乱れを支援機関へ相談し連携して支援をすることでいち早く対応でき、障害のある人は、仕事面や人間関係で悩んでいるときに支援機関を利用して事業所との間に入ってもらうことで解決につながる。
事業所は、事業所全体の障害者雇用に対する理解を深めるため、年に1~2回の頻度で、外部から講師を招き人権研修や障害に関する講習を行っている。また、社員同士の親睦を深めるため、事業所で企画している懇親会や旅行、スポーツ大会に、障害のある人にも積極的に参加してもらい、事業所内での障害者雇用に係る理解を進めている。
事業所は今後、企業内ジョブコーチの配置も検討し、さらに障害のある人が働きやすい環境を目指し社員の人材育成を行っていきたいと考えている。また、障害のある人が力を発揮できる場所を作り、障害者雇用をより一層進めていきたいと考えている。
執筆者:社会福祉法人愛育会
障害者就業・生活支援センターわーくわく 中平 秀徳
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