事業所外観

1．事業所の概要、障害者雇用の経緯

（1）事業所の概要

ア．会社の沿革

• 平成15（2003）年7月設立　資本金2,130万円　
• 宮城県栗原市に燻煙乾燥プラントを開始。
• 平成25（2013）年1月：事業受入により木材製材業・山林業を開始
• 平成26（2014）年4月：チップ工場を新設、ペレット設備導入事業開始。
• 製材JAS認定事業取得。

イ．事業目的

• 木材の燻煙（くんえん）乾燥業務　
• 植林及び立木の管理育成業務
• 立木の伐採及び買取り
• 木材の販売、加工及び加工品の販売

ウ．生産商品

• 燻煙木材製造（燻煙の効果、強度と耐久性、防虫、防カビ、防腐）
• 一般建築材、造作材、羽目板、フローリング等、木質チップ（製紙用）、木質ペレット（燃料用）

（2）障害者雇用の経緯

社是として「すべてにおいて安全を追求する。」また、経営理念として「木の仕事を通し、環境型社会の構築を行い社会に貢献するとともに社員の幸せな暮らしの実現を目指す。」を掲げ、社会貢献を通して従業員にも幸せな暮らしをしてほしいと願っている。

社員の募集についてはハローワークに依頼しており、日頃から連絡を密にしていることでハローワークの担当者とは気軽に相談ができる関係であった。

また、障害者雇用については、障害者雇用促進法の改正、企業の社会的責任などを背景に進んできていることは理解していた。

そんな中でハローワークの担当から難病患者の採用の話があり、社長をはじめとして人事担当者が前向きに捉え、Aさんと面接を行った。

Aさんはこれまで販売店での接客サービスやパン工場での勤務などを経験していたため就労意欲が旺盛であり、社会人としてのマナー、人柄的にも協調性があるように感じられた。

また、Aさんが正社員での就職を希望していたこと、当社においても正社員の採用を検討していたことから、面接において当社での勤務を強く希望したAさんを採用することとした。

なお、当社においては、過去に障害者のある社員を雇用した際に、作業中のミスで危険を伴う事案を経験したことで、障害者雇用の必要性については理解していたものの慎重になっていたが、ハローワークからの的確な情報提供と採用のタイミングが一致したことがAさんの採用に至った大きな要因と考えている。

2．病状の特徴及び取組の内容と効果

難病患者の採用は初めてであったことからこの病気の症状（特徴）について、社長、人事担当者が理解することから取り掛かった。特に、クローン病がどんな病気か、どんな経過をたどるかなど心理的な面も含め情報の収集を行った。

その結果、クローン病が小腸・大腸を中心とする消化器官に慢性の炎症を起こし潰瘍を生じる疾患であること、腹痛や下痢、血便などが生じトイレの回数が頻繁になること、定期的な通院が必要であることなどを理解することができた。

また、採用に当たっては、社内全体として理解をすることが不可欠であると考え、「会社としての考え方」、「症状の特徴」、「周囲の心構え」などについて、従業員に対して説明を行った。具体的な症状として、体調が変わりやすいことやトイレの回数が多くなることなどについて会社全体として理解し、バックアップが必要との共通認識を得ることができた。

採用後の具体的な取組として、当初はAさんの健康状態を考慮し、軽めの仕事から従事してもらい徐々に何ができるかを探っていった。仕事内容にかなり慣れてきたことと、入社当時から比べると体力が付いてきたことから他の従業員とほぼ同じ内容の仕事に従事してもらいつつ長時間の継続的な業務に関しては、無理をしないように休憩時間をしっかり取るなどの工夫をした。

また、病気の特徴として1度に通常の食事の量が摂れないことを考慮し、1日に複数回（5～6回）に分け、食事の機会を設けるなど弾力的に対応するとともに、定期的な通院（頻度としては2か月～3か月に1回程度）に際しては、有給休暇で対応するなどの配慮を行ったが、これらの配慮に関しては現在も継続中である。

採用後のAさんの勤務状況としては、新人研修が長野県において3泊4日で実施された際には食事は自炊で行うなど健康管理に気を付けていることを窺い知ることができた。

また、休憩時間には休憩場所で他の従業員と交流を行っているなど、コミュニケーションが十分に図られている状況にある。Aさんの勤務態度はまじめであり、この仕事は障害のない従業員でも離職者が多いため、仕事が続いていることで会社として一定の評価をしている。

就労風景

3．今後の展望と課題

今後については、Aさんに就労意欲があり仕事の覚えも良く、順調にできていることから体力的に就労可能な限り会社としては継続して雇用したいと考えている。

コミュニケーションや健康の状況については引続き管理職が気を配っており、何かあれば相談は所属のリーダーが担当することとなっている。

また、燃料用木質ペレットは、おがくずを圧縮して製造するために埃がたくさん舞う作業環境であることから、Aさんの体調管理に配慮し会社で防塵マスクを購入し配布している。

Aさんの意向を踏まえ、さらに、このような配慮を可能な限り行うことで継続雇用を図りたいと考えている。

執筆者：宮城支部
高齢・障害者業務課　石田　正弘