食品製造業における難病のある者の雇用の取組
- 事業所名
- 株式会社 山形南生活総合センター(法人番号 3180001103236)
- 所在地
- 山形県山形市
- 事業内容
- 食品製造業
- 従業員数
- 20名
- うち障害者数
- 1名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚・言語障害 肢体不自由 内部障害 知的障害 精神障害 発達障害 高次脳機能障害 難病 1 野菜加工 その他の障害 - ■本事例の対象となる障害
- 難病(IgA腎症)
- 目次
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事業所外観
1.事業所の概要、難病のある者の雇用の経緯と対応
(1)事業所の概要
株式会社山形南生活総合センターは、昭和51(1976)年に山形大学医学部付属病院の入院患者食用食材供給として会社設立。その後、生鮮食料品及び加工食料品を業務ルートに販売、昆布巻きの製造加工を開始し、平成20(2008)年には主力となる日配惣菜の製造を始めている。
日配惣菜は、地元の食材を使用し四季を通じた旬の野菜を中心に、ぜんまいの煮物や金平ごぼうなどの煮物が中心となっており、少量多品種を手作りで毎日製造し、東北地方のスーパーなどで販売している。日配惣菜の他には、佃煮や甘露煮、魚の切身・漬け魚などの魚介類加工、生鮮野菜加工も行っている。また、県産品を使用した商品について食品製造業者(当社)、農林漁業者(原材料の生産)、流通・小売り業者(販売)の異業種と共同開発を行い、第六次産業化にも取り組んでおり、県内各地から地域の特産品を活かした商品開発を依頼されている。
(2)難病のある者の雇用の経緯と対応
- ア.Aさんの取組
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Aさんの就労したいとの希望により、家族の協力のもと求職活動を行うこととなった。これまでの職歴と求職活動を通して、人とつながりのある職業を希望し、特に、調理関係の就労経験があることから、調理関係の職種で午前9時から午後5時までの間の勤務と、特定曜日の休日にこだわらないことを条件に求人検索と職業相談を行った。
また、求職活動に際し、自分の障害に関する的確な情報提供を行うため、体調を悪化させることなく長期に渡る就業生活を送るために留意すべき点をまとめるなどの準備をすすめた。面接では病名(IgA腎症)、状況(月1回の定期検査のための通院が必要になること)、要望(定期通院以外に特別な配慮を必要としないこと)などを伝え、採用へと至っている。
- イ.ハローワークの支援
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Aさんがハローワークの専門援助部門へ求職登録を行ったことがきっかけとなり、難病患者就職サポーターとの職業相談が始まった。
難病患者就職サポーターは継続した職業相談の中で、就労に関するAさんの希望の他、難病に関する状況を聞き取り、求人情報の中からマッチングする企業を検討し、食品加工のパート求人に関する情報を提供するとともに、応募に向けて更に詳細な相談を行った。
具体的には、求人条件のもとで就労した場合、Aさん及びその家族の生活パターンを大きく変えずに就労が可能であるか、不都合な点などが生じないか、また、月1回の検査通院に際し、合理的配慮が得られるかなどを検討し、支障がないと判断した求人に応募することとした。
ハローワークからの紹介連絡時、Aさんには腎・泌尿器系疾患の難病があり、定期的な検査と診察が必要になるが、普通に働くことが可能であることなど、採用した場合に必要となる配慮事項が最初からイメージできるよう具体的な情報提供を行うとともに、「発達障害者・難治性疾患患者雇用開発助成金」が該当となることを伝えた。
- ウ.事業所の対応
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事業所の採用条件は、「指示通りに業務を遂行できること」、「長期に渡り就労が可能であること」であり、年齢や性別などその他の諸事情等は問わない方針であった。また、これまでの従業員募集に際し障害者の応募がなかったこともあり、障害者雇用について考えたことはなく、障害者を雇用した経験もなかった。
そして、ハローワークに食品加工のパート求人を出していたところ、難病のあるAさんの応募と難病に関する情報提供があった。
これまで障害者の雇用や障害そのものに対する対応方法について、検討する機会がなかったことから、難病が調理業務に支障をきたす心配はないのか、長期に渡る就労が可能なのかなどについて不明であり障害者を採用するということに消極的となっていた。
しかし、その状況に対しハローワークから更に詳しい情報提供やAさんの難病に関する詳しい説明を行ったことにより、面接を行い、Aさんから直接説明を受け判断することとした。
面接では、事業所として求める技能や労働条件、職場環境などについて説明し、また、Aさん本人から難病の状況、配慮が必要な事項などについて聞き取りを行った。その上で事業所ができる対応とAさんからの要望についてすりあわせを行いミスマッチがおこらないように対応した結果、就労に問題がないと判断し採用することとなった。
雇用後は体調面や作業の進捗状況等を適宜確認することとしており、また、従事している業務内容や就業に対する不安や不都合などが出てきていないこと、Aさんの適性と業務内容のマッチングが良く継続雇用の見込みがたったことで、事業所及びAさんの双方が安心することができた。
2.Aさんの業務内容と事業所の取組
(1)勤務態勢
現在、週5日、1日5~6時間の勤務となっている。また、月1回の検査のための定期通院が必要となっており、毎月のシフトを組む際に、通院予定日と自身の休日を合わせるとともに、他の従業員と休日が重ならないよう調整を行っている。
(2)Aさんが従事している業務内容
Aさんは、野菜加工を中心とした業務に従事しており、少量多品種の食材の洗浄、カット、できあがった惣菜の盛りつけや袋詰めなどを行っている。その他、使用した調理器具の洗浄、水回りの清掃も行っている。これらの業務は全て厨房での立ち仕事であり、冬場など非常にきつい作業となるが、業務に対する取組み姿勢は良く、スキルや適性があったことから、特に、限定的な作業内容とはしておらず、能力にあわせた業務内容を適宜配分している。
(3)定期的なヒアリング
事業所の方針として、従業員には長く働いてもらいたいとの考えがある。このことはAさんに対しても同様に考えており、そのため通院後の報告、就業における不安や不都合等、問題の把握と改善のために、定期的にヒアリングを実施している。
(4)体調不良時、その他の対応
障害者に限ってのことではなく、体調不良になり入院となった際には、病気欠勤扱いとしている。体調不良だけではなく、家庭の事情(家族の入院など)についても、欠勤としての扱いにはなるが個別の配慮がなされている。事業所としては「心身ともに落ち着いてから職場復帰してほしい。」と考えており、欠勤することとなった従業員にその旨を伝えている。
(事例)
難病に係る定期検査の際に、検査数値が悪化していることが判明し、原因把握のため2週間の検査入院が必要となった。入院前に今後の対応について事業所と相談を行い、検査入院期間中は病気欠勤扱いとすること、落ち着いてから職場復帰することを打ち合わせた。そして検査入院が終わる頃、今度は家族が体調を崩し、退院したAさんが家族の介護・見守りをすることとなった。この際も、Aさんは家族の状況を事業所に報告・相談し、引き続き異なる理由で欠勤が継続される扱いとなった。この場合でも落ち着いてから職場復帰を求める旨をAさんに対し伝えている。事業所では職場復帰に伴う調整としてAさんの体調を第一に考慮しなければならないと考え、復帰時には勤務日数や勤務時間、業務内容などの検討を行う予定である。
(5)関係機関による訪問
「発達障害者・難治性疾患患者雇用開発助成金」が対象となることから、ハローワークによる事業所訪問が実施され、事業所内でのAさんに対する雇用条件や配慮事項の確認など、就業状況等の確認が行われている。また、現時点では雇用管理や配慮事項などについて問題は出ていないが、問題があればハローワークに相談できる体制となっている。
3.取組の効果と課題
- Aさんの難病について事業所から他の従業員に説明していないが、Aさんが自ら定期的な通院が必要になっていることなどを知らせている。これまでの勤務態度や就業状況から既に事業所になくてはならない存在となっており、また、業務に対する姿勢は、他の従業員の士気向上にもつながっている。
- 定期的なヒアリングを行うことで毎月の通院に対応したシフトや体調面に関する配慮など、事業所から合理的配慮を受けられることとなり、雇用継続を不安に思うことなく安心して就労することができている。また、事業所としては、Aさんの不安や不都合の確認が取れ、定期的なヒアリングの他、勤務態度や就業状況等を通した情報から急に離職してしまうなどの不安がなく、互いに円満な雇用関係と信頼関係が成り立っている。
- 相談の段階から難病患者就職サポーターが介入したことで、求人への応募問い合わせ時点から的確な難病に関する情報提供を行うことができた。また、「発達障害者・難治性疾患患者雇用開発助成金」が対象となっていることから、ハローワークとのつながりも得られ、難病のある者の雇用管理に関する不安を事業所のみで抱え込むことなく、関係機関と適宜情報の共有を図ることが可能となり、適切な雇用管理をすることが可能となった。
- 体調不良による急な休みや長期にわたる病欠は誰にでも起こり得る。そのために全ての業務について複数名が対応できる仕組みを構築している。一時的な休みであれば出勤している他の従業員で短期的に業務を分担することも可能であるが、休みが長期に渡れば、他の従業員が長期間カバーしなければならなくなり負担が重なっていくことから、人員手配の検討、求人募集も考えなければならない。
執筆者:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構
山形支部 高齢・障害者業務課
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