2016年6月1日現在

事業所外観

1.事業所の概要、障害者雇用の経緯

（1）事業所の概要

• 設　立：平成20（2008）年
• 資本金：500万円（グループ全体）

（2）経営方針

■スローガン：私らしく　あなたらしく

各事業所にある「えいむ（AIM）」という言葉は、“志”という意味である。志をもって、その人らしい生涯を送っていただけるように日々寄り添いケアを行っている。

介護は人の力である。そのため従業員を大切に、いつまでも魅力ある会社であるために、従業員のモチベーションアップや維持に力を入れている。介護職員初任者研修、介護福祉士、ケアマネージャーなどの資格取得や研修参加時には、勤務の調整・費用の補助を行い、スキルアップの補助も行っている。

（3）組織構成

• 訪問看護ステーション　エイム
• 居宅介護支援事業所　エイム
• グループホーム・小規模多機能型居宅介護　えいむの杜
• グループホーム・看護小規模多機能型居宅介護　えいむの丘
• 通所介護事業所　えいむデイサービス
• 地域つながり隊　えいむの幹

（4）障害者雇用の経緯、背景

平成20（2008）年の事業所設立当初は人員に比較的余裕があったが、事業拡大に伴い現在は恒常的に従業員が不足している状況である。そのため、業務を遂行できる者であれば、病気や障害の有無にかかわらず雇用している。

2.取組の内容と効果

（1）難病者（Aさん）について

ア．疾病名

クローン病

イ．クローン病の主な症状

腹痛、下痢、発熱、下血、腹部腫瘤、体重減少、全身倦怠感、貧血など

ウ．勤務施設

グループホーム・小規模多機能型居宅介護　えいむの杜

エ．業務内容

グループホーム利用者の食事介助、入浴などの身体介助、送迎など

（2）取組の具体的な内容

ア．日々の業務（留意点・配慮事項）

当該事業所は24時間365日年中無休で営業しているため、従業員の勤務は夜勤を含む3交代のシフト制となっている。シフトは月ごとに従業員の希望により決めており、翌月分のシフトは前月までに申告することとしているが、Aさんは月1回の定期的な通院が必要となるため、優先的にシフトを組めるよう配慮している。

グループホーム利用者の介助業務については、基本的にはAさんも他の従業員と同じ業務を行っているが、特に大きな力を必要とする作業は行わせないよう留意している。

病気の特性上、Aさんは勤務時間中に比較的頻繁にトイレに行く必要があるが、当該事業所はグループホームのため、利用者用に複数のトイレ（1階：4か所、2階：1か所）が設置されており、Aさんも利用しやすい職場環境となっている。また、社用車でグループホーム利用者の送迎を行う際は、事業所周辺の巡回ルートとなるよう配慮している。

会社の方針として、全従業員に残業は原則行わせないこととしており、体調管理にも万全を期している。

イ．スキルアップ

「会社が人を育てる」という社長の方針のもと、病気や障害の有無にかかわらず、会社として介護福祉士やケアマネージャーといった資格取得を積極的に推奨している。また、介護・福祉関係の研修・講習などへの参加勧奨も行っている。

資格取得や研修・講習会参加時の勤務時間の調整や費用負担も会社が行っており、従業員のスキルアップについて非常に意欲的である。

ウ．職場定着

病気や障害の有無にかかわらず、資格取得や各種研修会などへの参加、昇格昇給の機会が平等に確保されているため、Aさんのモチベーションアップにつながっている。

また、通院や病気に伴う疲労などへの対応として、勤務シフトの変更を柔軟に行い、定期的に休憩が取れるよう配慮されているため、長期に働きやすい職場環境となっている。

（3）活用した制度や助成金

発達障害者・難治性疾患患者雇用開発助成金

（4）取組の効果

上司や管理者が病気について正しく理解しており、「仕事や対象者自身の健康状態を気軽に相談できること」、「通院や休憩・体調管理に十分配慮されていること」、「病気や障害の有無にかかわらずスキルアップ・キャリアアップの機会が確保されていること」、「病気の特性に合わせた職場環境となっていること」など、Aさんの就労に必要なソフト面とハード面が整っており、安心して長期に働くことができる職場環境となっている。

また、同僚は病気の特性に配慮しつつも特別扱いすることなく、一緒に仕事をする仲間として受け入れている。Aさん自身も病気を感じさせない勤勉な働きぶりによって周囲からの信頼も厚く、明るい性格も相まって同僚との関係も大変良好である。

会社として難病患者や障害者を特別視せず、様々な事情（子育て、家族の介護など）を持った他の従業員を同じようにとらえていることで、従業員の間でも自然な形で「お互い様」の精神が根付いている。

3.今後の展望と課題

今後も恒常的な従業員不足は続くと思われるため、短時間勤務の導入や業務の細分化も視野に入れた勤務形態・採用計画を検討している。

それによって、誰もが個々の事情に合わせて働ける勤務形態・職場環境をさらに充実させ、今いる従業員の長期雇用と更なる新規雇用の確保を目指している。

また、難病患者や障害者の雇用については、現在Aさんは病状が比較的安定しており、関係機関の支援は特別必要としていないが、今後は事業拡大に伴い、難病患者や障害者の雇用も増加するものと思われるため、関係機関の支援策を有効に活用することが必要になってくると思われる。

ハローワークのトライアル雇用制度や各種助成金制度、障害者職業センターのジョブコーチ支援といった就業・職場定着における支援、難病相談支援センターや障害者就業・生活支援センターの生活面における各種支援を有効に活用することで、病気や障害の有無にかかわらず、誰もが安心して長期に働ける職場が実現するものと思われる。

いきいきと働くAさん

執筆者：静岡支部高齢・障害者業務課　有田　真