2016年6月1日現在

事業所外観

1.事業所の概要

当社は平成14（2002）年8月設立。『介護を必要とする「その人」が、自分らしく満ち足りた生活を過ごす「そのために」』を意味する「その人 そのために　Care For Each One」を企業信条として掲げ、静岡県を中心にグループホームなどの介護福祉施設を運営し、利用者一人ひとりに向き合った、個別ケアを提供している。

• グループホーム　静岡県内18か所
• 介護付き有料老人ホーム　静岡県内1か所、神奈川県内1か所　

また、当社は、比較的年齢の高い従業員が多く在籍しており、その豊富な人生経験と利用者の心に寄り添うことが求められる介護の仕事はマッチする部分が多く、その結果、勤続年数の長い従業員も多い。1割強の従業員は10年以上、6割の従業員は3年以上の勤続年数となっている。

2.当社における障害者雇用全般に関する取組

当社における障害者雇用全般に関する取組状況は次のとおりである。

（1）募集・採用

ハローワークの紹介によることが多い。採用面接時において障害や病気について確認することとしているが、あくまでも、本人の能力や職業適性を踏まえて採用を判断している。

（2）日々の留意点・配慮事項

対象者の顔色や体調管理に注意しており、日常での声掛け、コミュニケーションなどを最も大切にしている。

（3）スキルアップ

70歳まで勤務することができることが、従業員のモチベーションを上げている一因となっている。

（4）支援機関の活用状況

静岡県中部地区にあるグループホームにおいて精神障害者を採用。

同施設において障害者の雇用が初めてであったため、静岡障害者職業センターからジョブコーチを派遣してもらい、各種のアドバイスを得ながら職場定着に繋げている。

3.難病患者（Aさん）の雇用事例

（1）疾病名：サルコイド－シス

症状としては、視界に小さなゴミのようなものが見える、皮膚、筋肉などの腫れとともに、発熱、倦怠感、体重減少などを起こすことがある。

（2）募集・採用に至る経緯

Aさんは平成26年（2014）年6月に入社。現在61歳。

ハローワーク経由で応募。採用面接の際、Aさんから病気についての説明があり、2～3か月に一度の通院に関する配慮の申し出があった。

対象者の経歴や介護ヘルパーの有資格者であること、また、穏やかで明るく正直な人柄で、何よりも仕事に対する意欲が決め手となり採用となった。

正社員での採用後、静岡県中部地区にあるグループホームに勤務。60歳で定年を迎え、現在は契約社員として同施設で勤務している。

（3）勤務形態・勤務内容

ア．勤務形態

Aさんの勤務する施設の勤務形態は、以下の4つの勤務シフトとなっており、Aさんは何れのシフトにも入り、（エ）の夜間業務も率先して勤務している。

また、極力残業は発生しないようにしているが、シフト勤務により担当者間での申し送りが必要な際に1時間程度の残業をお願いすることもある。

（ア）

7時～15時30分

（イ）

8時30分～17時

（ウ）

10時30分～19時

（エ）

16時30分～翌日8時30分（夜勤は基本1人）

イ．勤務内容

当施設における業務は、以下の3つに分類され、Aさんは介護ヘルパー2級の資格を有していることから、（ア）の利用者への直接介護を担当している。

（ア）

介護業務（利用者に対しての入浴等直接介護）

（イ）

介護のアシスタント

A

利用者に対する介護職員の補助

B

見守り介護

C

食事・洗濯・清掃の補佐

（ウ）

清掃、リネン業務（利用者から離れた業務）

（4）Aさんに対する配慮事項

入社後、約3年近く経過したが、Aさんは病気により体調を崩すこともなく、他の従業員と同じ形態で勤務している。病気に関し、特別な雇用管理を行うというよりも、自然体での配慮を基本としている。

当社では、Aさんの健康管理面に最も留意しており、採用面接時に申し出のあった通院に対する配慮はもとより、1週間に一度は本人と面談し体調の確認をしている。また、日常におけるコミュニケーションの場面、特に出勤時において、「顔色や表情に変化はないか」、「汗をかいていないか」といった点を必ずチェックしている。

また、これまでAさんからは病気を理由とする突発的な休暇の申し出はないものの、必要があれば、他の従業員と勤務を交代するといった、職場全体でフォローしていく態勢を整備している。その他、必要に応じては、勤務時間や休憩に関する配慮、体調に合わせた業務調整も検討している。

なお、体調を悪化させずに働いている「サルコイド－シス」のある人は、「寒すぎない」、「暑すぎない」、「埃が舞っていない」などの空調管理が整っている職場で働いており、逆に、空調管理が不十分な場合は、風邪や肺炎などの感染症にかかりやすく、体調悪化により離職する人が少なくないとされている。

この点に関しては、元来、高齢の利用者が健康で快適に過ごせる環境が整っている「グループホーム」での勤務が、結果としてAさんが体調を悪化させることなく、働き続けることができる大きな要因と考えている。

Aさんは日々大変な業務を担当しているにもかかわらず、遅刻や早退、欠勤もなく勤務している。

Aさん自身が病気であることを周りの従業員や利用者に感じさせない努力とともに、事業所側においても通院や勤務に際して、本人の希望に十分配慮するといった病気に対する理解がある。このような相互の努力と信頼関係が十分に構築されていることが、本人が気遣いなく仕事に従事できるポイントとなっている。

また、施設を管理するホーム長を中心としたアットホームで風通しの良い職場の雰囲気も、Aさんがストレスを抱えることなく仕事ができる大きなポイントである。

4.今後の展望と課題

当社では、全ての従業員にモチベーション高く仕事をしてもらい、人生を楽しんでもらいたいとの思いがある。

Aさんはこれまでの経歴の中で調理業務の経験があったことから、現在、利用者及び従業員の食事の用意も担当してもらっている。このように、本人のキャリアを有効に生かすことで、仕事がより楽しく思え、ここで長く勤めていきたいというモチベーションを維持・向上できるのではと考えており、更にはこのモチベーションをバネとして、病気と仕事の両立に繋げてもらいたいと思う。

今後においては、これまでと同様にAさんと良く話し合い、本人の体調や希望を十分に尊重して、できる限り、Aさんが無理なく働ける環境の整備や担当業務の調整を行いたいと考えている。

当社では、本人の「おおらか」な性格を大切にし、Aさんに仕事を楽しんでもらいながら、雇用を継続していく予定である。

いきいきと働くAさん

<参考文献>
1）障害者職業総合センター　難病就業支援マニュアル　2008年3月
2）障害者職業総合センター　難病のある人の就労支援のために　2016年6月

執筆者 ：静岡支部高齢・障害者業務課　大石　光彦