1．総務グループに所属し、主に給与、経理、施設管理、庶務等の業務を担当。

2．会計システムへのデータ入力、会計書類のファイリング等の事務作業、施設等の清掃、食堂・湯沸し室の整理整頓等に従事

1．広汎性発達障害

2．コミュニケーションの取り方が苦手で対象者に伝わっているか判りにくい。単調な作業をコツコツと続けることができるが、同時並行の作業は困難。　順序立てて具体的な作業指示が必要。

募集・採用時の合理的配慮

面接時に、就労支援機関の職員等の同席を認めること

1．面接時に支援機関の担当者の同席はなかったが、事前に各支援機関から以下のとおり採用面接時における留意点等の助言を得ていたため、先入観を持たずにこれらの助言に基づき安心して面接時の対応を行うことができた。

（1）地域障害者職業センター（以下「職業センター」という。）の担当者からは、対象者から障害特性等について説明してもらったうえで、対象者本人が自己の障害特性等を正しく理解していないと就労が上手くいかないことが多いので、対象者本人自身の障害特性の理解度を良く確認するよう助言を受けた。

（2）就労移行支援機関からは、採用前後において配慮して欲しい事項について書面による情報提供を受けた。

2．また、対象者からも「私の障害特性と配慮していただきたいこと」を書面で提出してもらい、事前にその内容を把握したうえで面接時の対応を行うことができた。

3．また、面接時に重視する点として、（1）対象者が自分自身の障害特性を把握していること、（2）事前に把握していた障害特性の内容と面接で受けた印象が近いことの2点とした。
面接時の対象者の印象が事前に把握していた内容と良くマッチしており、仕事をする上で支障がないと判断し採用した。

面接・採用試験について、文字によるやりとりや試験時間の延長等を行うこと

1．選考書類として、履歴書と職務経歴書に加えて書面による「私の障害特性と配慮していただきたいこと」を事前に提出してもらった。そして、書面内容を踏まえて、対象者が発言し易い面接場面を設定したことで、自分が希望する通院等の配慮事項について丁寧に安心して説明することができた。

2．面接時の出席者は、上司と人事担当に加え職場で一緒に仕事をする作業指示者（以下「パートナー」という。）も同席した。そのうえで、パートナーは、対象者の就労に対する不安を少しでも解消するために予定している担当業務について対象者がイメージし易いように判り易く丁寧に説明するなどの配慮を行った。

3．面接に際して、対象者の体調に留意したが特段支障はなかったため、予定通り30分程度で面接を終了し、その後職場見学を行った。職場見学により対象者の就労イメージを具現化させ、少しでも不安を取り除くよう配慮した。また、事業所としても、対象者の反応を観察し採用の判断に役立てることができた。

その他の配慮

対象者を採用するに当たり、事業所内の受入れ体制作りについて職業センターに相談し助言を得た。また、発達障害（者）の障害特性や就業上で配慮するポイント等を理解するための勉強会を職業カウンセラーを講師として実施した。その結果、対象者の障害特性や事業所として、今後何に取り組めばよいかを理解することができ、落ち着いて受入れ準備を進めることができた。

採用後の合理的配慮

業務指導や相談に関し、担当者を定めること

1．業務指導と相談担当をパートナーに一本化し明確化したことにより、対象者も「いつ何をするのか」「誰に指示を仰げばよいか」が判り、安心して担当業務を遂行でき且つスムーズに行動することができるようになった。

2．日常の業務についても業務日誌を活用し、改めて1日を振り返り不明な点を質問し回答を得ることができるので、業務内容を着実に習得でき仕事に自信を持てるようになり、職場定着も促進された。

3．「業務日誌」の活用により、対象者の日々の体調や疲労の把握が可能となり、上司だけでなくパートナーも対象者の体調管理に配慮して担当業務に対する指示対応ができるようになった。

4．パートナーはメインの指示者とサブの指示者の2名を選任し、作業指示者が休務の場合にも対象者が安心して担当業務を行うことができる体制とした。　
また、対象者の座席の両隣にメインとサブの作業指示者の席を、対象者の座席の前に上司の席を配置し、上司や業務指導・相談者といつでも容易にコンタクトが取れるよう配慮した。

5．パートナーが指導する場合に対象者に配慮することとして、（1）対象者との窓口を一本化すること　（2）一度に複数の作業指示は出さないこと　（3）分からないことは聞いてくださいなどと、その都度一言声掛けをすること　（4）話を聞くときは、最後まで良く聞くことなどが重要であることを徹底させた。

業務指示やスケジュールを明確にし、指示を一つずつ出す、作業手順について図等を活用したマニュアルを作成する等の対応を行うこと

1．ジョブコーチからの助言もあり、まず「作業スケジュール表」を対象者に明示し、1日の作業の流れを把握してもらった。また、このスケジュール表には、「作業指示者」「質問等の相談者」等を明記するとともに、電話対応の必要がないこと、来客者への対応方法等についても明示されており、対象者が安心して総務担当の業務を行えるよう配慮している。

2．「業務日誌」を活用し業務に関する対象者からの質問・感想等の把握に努めるとともに、パートナーからも毎日回答・コメントを記載することで双方のコミュニケーションが取れるようになった。その結果、担当業務について、対象者に対して日々着実に作業内容を理解させ、円滑に遂行できるように配慮することができた。なお、「業務日誌」の活用は、発達障害者の障害特性である日常会話の苦手意識に配慮したものである。

3．複雑な作業や作業工程の長い業務については、工程の細分化を行い具体的な作業内容及び作業手順を「作業シート」に記載して、そのうえで作業内容を口頭で説明し対象者に「判りましたか？」と一声かけ、理解の程度を確認しながら実際の作業を進めている。

4．「ファイルの作成」のような業務においては、対象者に対して、先に完成形を提示し全体像を視覚的に把握できるよう作成手順等を示すなど配慮した。また、簡単な作業の場合でも、「作業メモ」を活用し「文字情報」として見える化を図りながら対象者が判り易いように配慮をしている。その結果、手順書や作業メモを都度確認しながら作業を行うようになり、一つひとつの作業内容を着実に習得し、作業ミスも少なくなった。

スケジュール表

業務日誌

作業シート・メモ

出退勤時刻・休暇・休憩に関し、通院・体調に配慮すること

1．対象者の勤務時間は、午前9時から1時間の休憩時間を挟んで午後4時までの1日6時間である。この勤務時間は入社前の就労移行支援機関にいたときに近いもので、会社の勤務に早く慣れてもらうことを優先し決定した。なお、対象者の体調は入社後現在に至るまで特に大きな変調もなく安定していることから、勤務時間等の見直しは行っていない。

2．入社当初は、対象者が休憩時間中に気分転換をしているかどうか声掛けするなどの配慮をしていたが、現在は休めている様子であることから、特段の対応はしていない。

3．対象者は月に1度通院しているが、業務の繁閑時期を把握しながら主体的に業務の空いている日に休暇を取り通院している。上司も毎月の通院日は気にかけており、対象者に声掛けしている。

4．「業務日誌」の活用により、上司だけでなくパートナーも対象者の日々の体調や疲労を把握することが可能となり、対象者の体調管理が可能となった。

本人のプライバシーに配慮した上で、他の労働者に対し、障害の内容や必要な配慮等を説明すること

1．職業カウンセラーによる勉強会を開催することで、対象者の障害特性や配慮事項等の事業所として取り組む課題について理解を深めることができた。勉強会は、配属部署の職員だけではなく役員、他の関係部署の職員も対象としたことで、職員全体の意識向上が図れた。

2．対象者が総務担当であることを考慮し、他部署の職員や新入職員に対しても（1）会社として障害者雇用の取組を行っていること（2）対象者はコミュニケーションが苦手であり配慮が必要であるなどの説明を行い情報の共有を図った。

3．職業センターのジョブコーチによる支援状況については、上司、人事担当者及びパートナーにフィードバックされ「新たな課題」「進捗状況」等について関係者間での情報共有化が図られた。

その他の配慮

1．対象者の雇用開始と同時に、職業センター作成による「支援計画書」に基づくジョブコーチ支援をフォローアップ支援も含め約1年間受けることとした。ジョブコーチ支援の実施により、対象者の障害特性や就労状況をより適切に把握することができ、必要な配慮を実施することができた。

2．ジョブコーチとパートナーとの打合せでは、「対象者に対する適切な指示の出し方」や「対応の仕方」を確認することができ、パートナー自身のストレス軽減にも繋がり、安心して指導を継続することができた。

3．入社当初、対象者の行動や反応でよく判らない場合には、対象者が以前通っていた就労移行支援機関に「行動特性」や「反応の仕方」等の確認を行いながら、適切な配慮を行うようにした。