事業所外観

1．事業所の概要、障害者雇用の経緯

（1）事業所の概要

東北フジクラは、秋田市の御所野ニュータウン工業団地の誘致企業として平成元（1989）年に設立し、平成2（1990）年に創業を開始しました。株式会社フジクラ（本社東京）のグループ会社として多角化戦力の一翼を担い、フレキシブルプリント基板（以下「FPC」という。）、センサなどの電子部品を製造しています。

『顧客の価値創造』をモットーに製造だけではなく、開発、設計・試作も手掛け、さらにマザー工場としてグループの海外製造拠点（タイ、中国、ベトナムなど）に技術支援を行っています。

（2）障害者雇用の経緯

創業の平成2（1990）年から平成12（2000）年までの約10年間は、一般求人に応募してきた6名の障害のある社員に障害のない社員と同様の仕事をしてもらっていました。

特別なことをせずに一緒に働いていくことができたこの頃に障害のある社員を意識せずに働く素地ができたと思います。

平成12（2000）年頃から積極的に障害者雇用を検討し始め、平成15（2003）年には、聴覚障害者3名を含む計4名の障害のある社員を採用しています。

また、これまでは、すべて中途採用の社員でしたが、平成27（2015）年に初めて新卒者の採用を行ないました。

2．取組の内容と現状

（1）取組みの内容

ア．

募集及びインターンシップの受入れ

平成12（2000）年に養護学校（特別支援学校）の依頼によりインターンシップの受入れを開始し、年に1～2名を受け入れています。

平成24（2012）年以降は、毎年聾学校(現：聴覚支援学校)からインターンシップ生を受け入れ、平成27（2015）年にはインターンシップを経験した生徒が入社しました。

インターンシップで職場を体験したことで生徒自身の仕事（職場）に対する理解が深まるようです。

会社にとっても職場を理解してもらった上で採用することができ、大きなメリットとなっています。インターンシップだけでなく、会社見学も随時実施し、多くの生徒さんに会社を見てもらう機会を設けています。

また、ハローワーク主催の障害者雇用セミナーに参加し、障害者雇用について積極的に情報収集も行っています。

イ．

障害者の業務・職場配置

仕事は主に、FPC製造の自動検査装置操作や手作業による加工の他、顕微鏡・拡大鏡を使用した品質検査の作業をしてもらっています。

危険な薬品の使用や大きな装置の陰などで見えなくなる場所での作業を避け、特定の作業場所に集約することで安全に作業できること及び管理・監督者の目に付きやすいなどの理由で現在の部署で働いてもらっています。

最新の検査設備を操りながら、「精密な検査作業」、「細かな組み付け作業」を根気よく続けるなど、他の社員に劣らない仕事ぶりで会社の戦力となっています。

ウ．

安心して働ける職場環境作り

創業当初は、特に意識せずに障害のない社員と同じ職場環境で仕事をしてもらっていましたが、平成15（2003）年に多数の聴覚障害者を採用するに当たり、総務部門が中心となり、所属部署と協力して職場環境の整備を行いました。

具体的には、次のような職場環境の整備を行いました。

（ア）

全社集会では手話通訳を依頼して意思疎通を図り、社員研修では、専用の詳細な資料を作成して他の社員と同じように理解ができるようにしたこと。

（イ）

製造現場からの提案で説明用に電子メモパッドを導入し、従来の紙に筆記するより容易に意思疎通ができるようにしたこと。

（ウ）

事故や災害等が発生した場合、危険発生を目視で把握して迅速に避難できるように所属部署及びトイレ、休憩室などの各部屋に災害警報と連動したパトライトを設置したこと。

（エ）

肢体不自由の社員には、冬期間中、駐車場所と出入口を近くて安全な場所に変更して利便性を確保したこと。

（オ）

緊急連絡が必要な場合には、本人と所属部署間の連絡体制だけでなく、ご家族や人事担当も含めて迅速に連絡を取り合えるような体制を整備したこと。

これまで避難が必要な事故は発生していませんが、社員の安全を第一に考えた施策を今後も進めていきます。

機械操作を行うAさんの様子

機械操作を行うBさんの様子

組立作業を行うCさんの様子

組立作業を行うDさんの様子

（2）現状

現在勤務している障害のある社員は、新卒採用の社員を除き、全員13年以上継続勤務していることから、仕事のしやすい職場で無理なく仕事ができていると思います。

今後も、職場での社員同士のコミュニケーションを積極的に進め、障害のある社員及び周囲の意見を積極的に取り入れてより働きやすい職場環境を整え、障害のある社員が安心して働いていけるような体制作りを進めていきたいと思います。

3．今後の課題と展望

これまでの採用の経緯を見ると、障害の有無を意識せずに仕事をしていた初期(平成12（1990）年～)とその後の聴覚障害の社員を多く採用し、体制を整えた第2期(平成15（2003）年～)がありました。

今後、多様な障害のある社員が働ける職場にするためには、職場の仕組みや対応できる人の配置といったソフト面と、安全に作業できる設備・環境等のハード面の充実が課題になります。また、これまでは、製造現場での仕事が主体でしたが、設計などでパソコンを使用した業務など、より採用の幅を広げる可能性も検討していきたいと思います。

障害のある社員も、会社の発展の一翼を担い、貢献することで生き甲斐を持てるような生活の場となるようにしていきたいと思います。

執筆者：株式会社東北フジクラ　佐藤　光晴