平成28年12月26日現在

事業所外観

事業所ロビー

執務室内観

1．事業所の概要、障害者雇用の経緯

（1）事業所の概要

平成元（1989）年12月に株式会社博報堂の特例子会社として東京都千代田区に「株式会社博報堂アイ・オー」として設立。翌平成2（1990）年6月に認可を受ける。平成15（2003）年、博報堂、大広、読売広告社が経営統合したことを契機として、平成18（2006）年、株式会社博報堂DYホールディングス傘下の特例子会社として「株式会社博報堂DYアイ・オー（以下「アイ・オー」という。）」に社名を変更。平成20（2008）年5月に江東区豊洲に本社移転し現在に至る。

なお、博報堂DYホールディングス、博報堂、大広、読売広告社、博報堂DYメディアパートナーズ、博報堂プロダクツ、TBWA＼HAKUHODO、博報堂DYキャプコと当社の9社でグループ適用制度の認定を受けている。

事業内容は親会社グループ各社から受託する各種事務系サービスが主体。経理系事務業務、広告媒体取引系業務、情報システム開発系業務、名刺作成業務、契約書関連業務、データ入力業務など。

（2）障害者雇用の経緯

ハローワーク、区市町村就労支援センター、地域障害者職業センターと連携をとりながら障害者を雇用してきた。設立当初は聴覚障害者3名、障害のない社員4名でスタート。平成28（2016）年現在同所で業務を継続中。社員数は144名で、うち障害のある社員73名、障害のない社員71名となる。

2．アイ・オーの目指す合理的配慮

アイ・オーでは障害の有無や種別に依ることなく、社員各人の能力、適性、志向を加味した上で人材配置をすることを理想に掲げている。このため処遇については障害の有無にかかわらず同一の資格報酬制度を敷いている。

また、『障害を軸にして多様な人材が混在する会社であり、異なる価値観を有する人々のコミュニティ』であり『相互理解を通じた有効な協働』を目指すことが重要課題として捉えている。

平成28（2016）年度から施行された合理的配慮提供義務を始めとする障害者就労に関する一連の法改正を踏まえ、全社員を対象に社長が講師となって「合理的配慮に関する説明会」を昨年度実施した。この説明会においてアイ・オーでは障害を特性と捉え、いわゆる障害者を‘障害という特性がある人’と改めて定義した。社員それぞれの特性に応じた適切な合理的配慮の提供を通じて、各人の最大限の能力発揮を期待し、それによって会社もまた発展するという経営管理スタンスを明確にした。アイ・オーで働く全ての社員を「能力がある人、価値を編み出せる人」として、職務における自己成長を目指す社員一人ひとりに必要な支援し、継続していくことを合理的配慮の提供という名の【人材への投資】とみることにした。

社員自ら自身の働く人生に責任を持ち『キャリア自律』していくことにより、職務に必要な知識やスキル習得に向かうことが、企業の成長、ひいては会社の成長につながっていく。その際に必要とされる支援こそがアイ・オーの目指す合理的配慮である。

また、合理的配慮の‘配慮’ということばの解釈についても共有した。すなわち‘配慮’ということばから日本人が抱きがちな‘おもてなし’とか‘気遣い・心配り’というイメージではなく、想定される様々な場合に対する対処方法を考え、行うことであるとした。

3．各障害者に対する合理的配慮への取組

『ダイバシティ・インクルージョン推進委員会』の設置

特例子会社として27年という比較的長い歴史があるがゆえに、普段なにげなく見過ごしてしまっている対応すべき合理的配慮事項があるかもしれないという問題意識から同委員会を設置した。

また、多様な人材が混在する当社の特性において、相互の利害を調整し、会社全体の一体感や相互理解形成に資する有効な在り方や手段を適宜検討し開発することも視野に入れている。特に障害のある社員の合理的配慮に向け、絶えず変化する新しい手法やテクノロジーの進化に注目しながら、当社らしい先端的な取組について継続的に探求し、より有効な手段の活用について必要に応じて会社に提案している。

（1）視覚障害

視覚に障害のある社員には、パソコンに「音声読み上げソフト」を用意し、弱視用には「拡大読書器」を導入。また、執務室内の場所が判断できるように、一部フロアのクッションの素材を変えて目印にするようにしている。

通勤経路上の公共の歩道箇所に点字ブロックを設置できるよう東京都へ要請、実現に至った。

（2）聴覚障害

聴覚に障害のある社員が多い当社では、障害のない社員が手話を使えるように手話勉強会を実施するほか、会議など、正しい情報共有が必要な局面においては、申請ベースで外部手話通訳者の帯同を許可しており、そのための費用を年間予算の中に組み込んでいる。

また、音声をテキストに変換するIT機器について絶えず情報収集に努めつつ、最先端機器の導入によりコミュニケーションの充実を図っている。

災害、火災などの緊急時の対応として、パトライトを天井に設置。

（3）肢体不自由

車いすの社員には自動車での通勤を承認している。

執務室の入口は自動扉になっており、IDカードをかざすことで入出が可能になっている。また、車いすで移動しやすいよう通路の幅を広くしている。社内にはケアルーム（静養室）を設置しており、褥瘡（じょくそう）予防の体位変換を行う際にも使用できる。

（4）内部障害

心臓に疾患のある社員には残業が発生しにくい業務担当にしたり、重量物を扱う作業や激しい運動を伴う作業はさせない。また、ペースメーカーを装着している社員には、フードコート（食堂）にある電磁調理器具の場所を伝えて本人が近づかないよう注意を促している。

（5）精神障害・発達障害

精神障害者保健福祉手帳を所持している社員への配慮として、疲れやすいという特性への配慮から本人の負担を考慮しながら短時間勤務での雇用契約もできるようにしている。

振り返りの面談を行い業務や人間関係の問題など消化不良のままにして過度なストレスの蓄積とならないように対応したり、体調の維持と管理者が異変に気付きやすいよう体調管理票で日々の体調について報告を受けるようにしている。

精神疾患の治療では、特に主治医との関係性も重要なことから、主治医の診察日に合わせて通院できるよう通院休暇の取得を認めている。また、支援機関との連携を図り、仕事の場面以外の生活面のサポートも充実させている。

執筆者：株式会社博報堂DYアイ・オー　代表取締役社長　田沼　泰輔