本部棟外観

1．事業の内容、障害者雇用のこれまでの経緯

（1）事業所の概要

当金庫は、大正12(1923)年に高岡信用組合として創業し、昭和26(1951)年信用金庫法の制定により高岡信用金庫に改組された。創業以来、一貫して金融業務を通じて「地域社会の繁栄に貢献すること」を目的に、協同組織の地域金融機関として歩み続けている。高岡市のほか、射水市、砺波市、富山市にも1店舗ずつ配置し、26店舗で業務展開している。平成28（2016）年3月末日では、預金残高は3,644億円（前年対比37億円増）、融資残高1,413億円（前年対比48億円増）となり、自己資本比率は14.21%と、厳しい環境のなか、預金・融資ともに前年を上回り、健全な経営を行っている。『いつもこの街と、これからもこの街と』というキャッチフレーズを掲げ、「地域の皆さまに感謝し、ともに新しい未来へと進んでいきたい」との思いで営業している。昨年、50年に亘って拠点としていた本店本部棟を解体し、今年3月に先行して本部棟が完成し、来年度には本店営業部も新店舗で営業を開始する予定である。

（2）障害者雇用のこれまでの経緯

平成28（2016）年10月現在、5名の障害者を雇用している。2名は、新卒採用後に障害者となったが、以前と変わらず障害のない従業員と同じように働いている。加えて当金庫では、平成25（2013）年4月の障害者雇用率2.0％への引き上げに伴い、障害者の雇用を積極的に行った。障害者の雇用に当たっては、ハローワーク主催の「障害者合同就職面接会」への参加や障害者就業・生活センターからの紹介を通じて行っており、平成25（2013）年に聴覚障害者、知的障害者を各1名、平成26（2014）年に精神障害者を1名採用した。採用の際には「障害者トライアル雇用」を利用し、3か月程度の試用期間を設け、職業適性を見極め、職場配置に役立てている。

障害者5名は、本部の5部署に配属し、多様な業務に従事している。障害の程度を考慮する傍ら、得意分野の職業適性を見極め、適所に配置している。

また、当金庫には「障害者職業生活相談員」が4名在籍しており、障害者の相談にのっている。

2．障害者雇用の取組と効果

（1）取組の内容

ア．

精神障害のあるAさんの取組

Aさんは新卒で金融機関に就職し、窓口業務を担当した。接客は苦とせず、順調に業務を習熟していたが、結婚を機に退職し専業主婦となった。その後、不調を感じ受診したところ「統合失調症」と診断されたため、通院や服薬などの治療に専念した。これにより症状が安定し、就労意欲が出てきた。

就労にあたっては、経験のある金融機関での就業を希望し、ハローワークへは「一般枠」で求職の申込みをしたが、就業の間口を広げるため「障害者枠」に切り替えるようアドバイスを受け、「障害者合同就職面接会」を紹介されて当金庫の面接を受けた。

試用期間を経て、職業適性を見極め人事部に配属した。現在の業務は当金庫への訪問客の受付業務、事務補助として同僚・上司からの指示・助言を受けて書類の整理を行っている。書類の整理では、業務改善につながる提案を行ったこともあった。

採用当初は9時から16時までの1日6時間勤務であったが、体力の回復と症状の安定もあり、現在は8時30分から16時30分の7時間勤務に延長した。また、職場の配慮もあり、病院への定期通院も可能となっている。

なお、「統合失調症」の生涯罹患率は1%と推計されるが、国内で受診中の患者数は約80万人（2008年度厚生労働省調査）となっていて、希な病気ではない。

Aさんの就業の様子

（ア）

同僚の話

Aさんが試用期間中には、業務を終了後に人事部へ業務報告などで来ることがあり、その際によく世間話をしていた。その後、人事部へ異動させたが、これまでの経緯があって気軽に話しかけられる関係ができていた。

Aさんは営業店から届く書類の整理や各種データの入力を主に行っており、仕事を依頼する際には、次のような配慮を行っている。

• 一度に多くの依頼をせず、判り易いようにゆっくりとした口調で話をする
• 口頭で説明するだけでなく、要点をメモ程度にまとめ依頼する
• 疑問があれば遠慮しないで何でも聞いてもらう

などの工夫をしている。

自ら業務の繁忙日を判断するなど周囲への気配りもでき、通院は計画的に行っていて、業務に支障はない。
Aさんからは「手が空いたので何かしましょうか？」といった申し出があり、新しい仕事に対して積極的な姿勢を感じる。

イ．

下肢障害のあるBさんの取組

Bさんは「先天性股関節脱臼」との診断を受け、幼少期より長距離歩行を禁じられていた。学生時代は、障害をほとんど意識することがなく、卓球やバスケットボールなどのクラブ活動にも参加していた。しかし、年齢を考慮し脚への負担を軽減するため、今は日常的には運動をしていない。

当金庫への採用後は、営業店と本部の両方を経験し、現在は事務部で、システムの開発、導入、運用にあたっている。終日、着座にて業務を行うことができ、体への負担はなく、本人も安心して仕事を行えている。今後も、体への負担に配慮した配置を行う予定である。

Bさんの就業の様子

（2）取組の効果

ア．

Aさん

仕事を依頼する際にはいくつかの留意点を意識することで、正確に伝えることができ、出来映えも徐々に向上している。本人にとって非常に働き易い職場であるらしく、今後も継続して働きたい意向が強い。

イ．

Bさん

通常業務は、着座にて可能であり、本人も自分の得意分野を十分に活用できる環境に満足し、業務に前向きに取り組んでいる。

3．今後の課題と展望

障害者の積極的雇用は企業の社会的責任でもあり、当金庫も地域密着金融機関として積極的に取り組む必要があると考えている。障害の有無にかかわらず、いきいきと働き、活躍できる職場づくりが目標である。

障害者5名は所属部署に慣れ、ルーチンワーク作業は滞りなく行えている。今後も可能な限り、現所属部署に配置し、業務遂行量や質の改善が図れるように指導方法を工夫していきたい。

そして今後も、人事部だけではなく、他部署とも連携して、障害のある従業員が安心して働ける職場環境の整備を継続的に行っていかなければならない。障害のある従業員とコミュニケーションを図り、お互いに信頼関係を築くことで、障害のある従業員が仕事にやりがいを持って働き、その能力を発揮して活躍する職場にしていきたい。

執筆者：高岡信用金庫　人事部