事業所外観

1．事業所の概要、障害者雇用の取組

（1）事業所の概要

株式会社クリーニング白洋舎は平成3（1991）年1月の設立である。当社は一般衣類や寝具、ユニフォームやリネンなどのクリーニングサービスを主事業とし、取扱う製品により3か所の専門工場に振り分け、経費削減、効率化、精度の高い物品管理などを展開し、クリーニングサービスにおける技術、品質向上を推進している。また、施設や在宅での介護、療養における家族、スタッフの負担軽減につなげるべく、洗濯代行サービスも行っている。

（2）障害者雇用の取組

障害者雇用に係る会社の理念として、障害者本人の経済的な自立への支援と、それによる障害者の家族の負担軽減への貢献が障害者雇用のポイントであるとの考えのもと、障害のある従業員も障害のない従業員とともに従業員は皆家族であるとの思いで雇用管理、労働環境改善に取り組んでいる。

また、採用に際しては、対象者の障害特性を上司がよく理解し、障害特性に合った業務への配置、作業内容を選定している。また、障害のある従業員が働きやすい勤務シフトとして、ストレスのない、余裕のある出社時刻の設定、および体調に合わせた早退への配慮を行っている。あわせて、障害のない従業員へも障害特性の説明を行い、理解を求めている。

さらに、約2か月に1回の頻度で障害のある従業員と上司（社長）との間で食事会という形での意見交換の場を設定し、コミュニケーションを深め、就労の継続に努めている。

2．難病患者雇用の取組内容と効果

（1）取組内容

ア．

募集・採用

平成26（2014）年従業員募集に際し、ハローワーク、障害者就業・生活支援センター（以下「支援センター」という。）より難病患者（間脳下垂体機能低下症）であるAさんの紹介を受けた。支援センター職員同席のもと、Aさんの面接を行い、健康状態、経歴、就業に対する考え方、普段の生活状態などについて聞き取りを行った。まずは4月より2か月間の試用期間とし、就労継続への配慮、対応を図りながら6月本採用へと至った。

イ．

取組内容

Aさんの障害による症状としては、ホルモンバランスの崩れからくる疲れ、集中力の低下、倦怠感などが表れるものであった。また、Aさんはこれらのことより対人関係にも苦しむことがあり、過去2回程度就職したことがあったが、長くは続かず退職した経歴があった。これらの事情を考慮し、採用当初は外回りルートなどの対人業務は避け、入社後約半年から1年間は1日6時間程度の軽作業に配置することとした。また、朝の出社時刻を余裕のある時間で設定したこと、体調不良時の早退に配慮するなど、まずは“働くことのリズムづくり”を目的とし、働く習慣を身に付けてもらうことに努めた。また、この間、支援センターにも職場定着のための助言を得た。

一方、障害のない従業員に対して、Aさんの障害特性を説明し、理解促進を図った。

さらに、約2か月に1回の頻度で継続的にAさんと社長との間で食事会を行い、健康状態、職場環境、業務内容などについて、問題点や今後への意欲、また、家庭のことなどについて本人の思いを聴く機会を継続的に設けている。

洗い作業を行うAさん

（2）取組の効果

採用当初は、仕事に意欲がなく、責任感に乏しく、全体的に覇気がないAさんであったが、現在のAさんは毎週日曜日のスイミングや、週1回の通院を継続し、生活のリズムも安定しており、現在まで2年6か月以上の継続就労となっている。

就業時間においては採用当初の6時間程度から現在は9時から18時、10時から17時のシフト帯に入り、業務範囲、労働時間も拡大している。業務内容も採用当初の軽作業から主要工程の洗い作業、検品を任されるようになった。最近ではAさんから、勤務時間の延長、賃金アップの申し出があるなど、非常に意欲を持って、明るく業務に励むようになってきている。

なお、採用時当初は110㎏あった体重が、現在では70㎏弱と肥満が解消され、大変健康的になっており、業務や私生活面においても意欲的かつ積極的な行動へとつながっている。

3．今後の展望と課題

Aさんについては数年後には、入荷、仕分け、洗い、検品などの全ての工程を任せることを考えており、最終的には工場内の管理を全て任される人材となることを期待している。ただし、業務範囲の拡大や人間関係の複雑化などに伴って、過度のストレスを与えることにもつながりかねず、症状悪化となることのないよう、会社側としても継続的なフォローと配慮が必要と考えている。

また、障害のない従業員も含め従業員全体が“大家族”であるように、会話、コミュニケーションを十分行うことが、障害のある従業員とともに働く上で、最も大事なことと考えており、皆で支えあう支援体制を今後も継続する必要があると考えている。

執筆者：株式会社クリーニング白洋舎　代表取締役社長　佐々木　幹夫