良き介護は、良き職場環境からを基に、障害者雇用にもその活用を
- 事業所名
- 株式会社あおぞらケアセンター(法人番号 3170001005383)
- 所在地
- 和歌山県和歌山市
- 事業内容
- 介護事業
- 従業員数
- 141名
- うち障害者数
- 10名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚・言語障害 肢体不自由 内部障害 知的障害 8 介護業務(5)・清掃業務(3) 精神障害 1 介護業務 発達障害 高次脳機能障害 難病 1 介護業務 その他の障害 - 本事例の対象となる障害
- 知的障害、精神障害
- 目次
-
事業所外観
1.事業所の概要
事業所のモットー「お一人おひとりを大切に笑顔と真心でお手伝い」
平成13(2001)年に訪問介護事業を開始。その後、施設にて介護事業を始める。
3社体制で、地域密着の上、利用者に喜んでもらえる介護事業を展開する。
本社、訪問介護事業
- ア.
- (株)あおぞらケアセンター
事業内容:介護事業全般 本社機能 - イ.
- ケアサービスあおぞら
事業内容:訪問介護事業
ヘルパー、介護福祉士などによる24時間体制での訪問介護事業。在宅介護の他、福祉車両での送迎サービス業務 - ウ.
- (株)あおぞらケアセンター紀ノ川
事業内容:訪問介護事業
ヘルパー、介護福祉士などが自宅に伺い、24時間体制での訪問介護事業。在宅介護の他、福祉車両での送迎サービス業務
施設
- ア.
- 住宅型有料老人ホーム
あすか苑 平成18(2006)年開設
快適な第二の人生をお送りいただけるよう配慮した施設。暮らしやすさと安全面を考えた設備と環境の良さが特長。全室個室のプライバシーの確保された部屋で、生涯、心豊かな日々を送るための住環境を提供している。 - イ.
- 介護付有料老人ホーム
第2あすか苑 平成20(2008)年開設
安らぎのあるシルバーライフを提供する施設。豊かな自然に恵まれた環境に立地している。 - ウ.
- グループホーム
あおぞら 平成21(2009)年開設
閑静な住宅地にあり、5~9人の認知性高齢者が専門の介護スタッフと共同生活をし、家庭的な雰囲気の中で、一日を通して食事と団らんを行う居住空間。 - エ.
- デイサービス
デイサービス夢 平成24(2012)年開設
送迎、食事、入浴などのデイサービスを提供し、安心で自立した在宅生活をサポートする施設。
2.障害者雇用の経緯、背景
(1)障害者雇用までの経緯
同社では、知的障害のあるAさんを雇入れたことが、障害者雇用を進めるきっかけとなった。当初は、Aさんに知的障害があることを知らずに雇入れを行ったが、仕事をする際の様子に気になる点があったため確認したところ、知的障害があることが判明した。同社としては、それまで障害者雇用の経験がまったくなかったことから、どうするべきか戸惑いを覚えたが、Aさんの保護者と話し合ったところ、家族の強い希望とジョブコーチの支援もあって、雇用を継続することとした。
Aさんは、平成18(2006)年12月に入社し、今年、平成28(2016)年の12月で、勤続10年になる。雇用区分としては3時間の短時間勤務ではあるが、施設「グループホームあおぞら」で主に清掃業務を担当し、元気に明るく働いている。
その後、同社の障害者雇用において大きなきっかけになったのは、さらに1年6か月が経過したころである。
平成20(2008)年6月に、中途採用で、知的障害のあるBさんを採用した。Bさんは、採用当時から常に前向きであり、また、「ヘルパー2級」の資格を取得したいとの向上心もあって、介護の仕事に取り組み始めた。Bさんの勤務ぶりは、いつも元気で明るく、職務に精励している。また、念願の「ヘルパー2級」の資格を見事に取得することができ、現在では、第2あすか苑において、介護の仕事に熱心に取り組んでいる。その仕事ぶりは、第2あすか苑の主任からも厚い信頼を得るところとなっている。
これらの障害者雇用は、同社にとって大変大きな経験となり、また、大きな自信を得ることとなった。
その後も順調に障害者雇用を進め、今現在では、9名の障害のある従業員が、それぞれの職場で頑張っている。
(2)会社としての姿勢
障害者雇用を初めたころは、全く経験がなく対処方法が何も分からない同社にとって、障害者雇用は試行錯誤が連続する日々であったが、平成20(2008)年6月のBさんの採用を契機に、障害者雇用の大切さを大いに実感したところである。
そのBさんの雇用後、平成23(2011)年に1名、平成24(2012)年に1名、平成25(2013)年に2名、平成26(2014)年に1名、平成27(2015)年に1名、平成28(2016)年に1名と、コンスタントに障害者の雇用を進めてきた。
障害者雇用のスタンスでは、担当業務としてまずは、施設の清掃作業や窓ガラス磨きから始めてもらい、習熟できたところで徐々に次のステップに移行し、最終的に介護現場での仕事に就いてもらうように計画している。
また、次のステップに移行する際には、各施設の主任、副主任、ジョブコーチの意見を取り入れて、無理のない作業経験を積み上げて行くことを心掛けるとともに、短時間勤務から始めて、徐々にその業務の難易度を上げていくようにしている。その際、各施設の主任、副主任が、個々の障害特性を十分に把握し、きめ細かな支援を行いつつ、障害のある従業員のキャリア形成を図っている。
また、障害のある従業員働いている各職場の周りのスタッフの温かい見守りと協力が必要であることを大いに感じているところである。
3.取組の内容
(1)各施設での障害者の構成
施設 在籍障害者数(障害内訳) 担当業務(人数) ア 第1あすか苑 4名(知的障害者3、精神障害者1) 介護業務(2)清掃業務(2) イ 第2あすか苑 2名(知的障害者2) 介護業務(2) ウ グループホームあおぞら 2名(知的障害者2) 清掃業務(2) エ デイサービス夢 1名(知的障害者1) 介護業務(1) (2)各障害者の業務
- ア.
- Aさん(女性) 入社:平成18(2006)年12月
現在、グループホームあおぞら勤務(清掃業務)
同社において最初に雇用した障害のある従業員
勤務時間 3時間
約半年間、ジョブコーチ支援を受け、階段の清掃、廊下清掃をマスターし、現在に至る。 - イ.
- Bさん(男性) 入社:平成20(2008)年6月
現在、第2あすか苑勤務(介護業務)
同社には、中途採用にて入社。
入社当初から常に意欲的であり、かつ、向上心も強い。
介護業務に熱心に取り組んでおり、「ヘルパー2級」の資格取得をするべく、猛勉強も同時に行う。その甲斐あって、「ヘルパー2級」資格を見事に取得する。
現在は、同施設の重要なスタッフの一員として、8時間勤務に精励する。
完了した仕事の報告もきっちりと主任に報告し、主任、副主任の信頼も厚い。
また、Bさんは、介護業務が大変よくでき、Eさんにとっても、心強い良き先輩である。 - ウ.
- Cさん(男性) 入社:平成23(2011)年3月
最初は第2あすか苑であったが、現在では、第1あすか苑勤務(介護業務)
仕事ぶり(介護業務)は、大変良く、利用者からの評判も高い。
自宅から勤務先(同該施設)まで、通勤距離は長いが、辛抱強く、現在もその通勤を続けている。
仕事中のCさんの様子
- エ.
- Dさん(男性) 入社:平成24(2012)年1月
現在、デイサービス夢勤務(介護業務)
介護職として、デイサービス業務を行う。同該施設では、Dさんが唯一の障害のある従業員であるが、周りのスタッフとの、チームワークも良く、仕事に励んでいる。 - オ.
- Eさん(女性) 入社:平成25(2013)年4月
現在、第2あすか苑勤務(介護業務)
介護職として、他の1名の障害のある従業員(Bさん)とともに、同該施設で、業務に精励する。 - カ.
- Fさん(女性) 入社:平成25(2013)年9月
現在、第1あすか苑勤務(清掃業務)
介護業務も行うが主に清掃業務を担当している。他の3名の障害のある従業員(Cさん・Hさん・Iさん)とともに、同該施設で、業務に精励する。
仕事中のFさんの様子
- キ.
- Gさん(男性) 入社:平成26(2014)年3月
現在、グループホームあおぞら勤務(清掃業務)
従来、中途採用が多かったが、Gさんは特別支援学校の体験学習を経て、採用となり、主に清掃業務に従事しているが、ステップアップを図っている。また、勤務時間は5時間であるが、徐々にその能力を高めており、活躍が期待されている。 - ク.
- Hさん(男性) 入社:平成27(2015)年6月
現在、第1あすか苑勤務(介護業務)
同社で唯一の精神障害のある従業員。6時間勤務で、昼からの勤務形態(12時から18時まで)としている。
Hさんは、以前に同社に勤務していたが、一度、退職し、転職先で上手く続かずに、再度同社に入社した。同社としては、再入社の前例がなく、Hさんの希望に沿うべきか否か、躊躇したが、結果として再入社を認めた。現在では、「ヘルパー2級」の資格取得に意欲をもって、介護業務に励んでいる。また、Hさんは、レクリエーション指導が得意であり、そのレクリエーション指導が行われる時間帯(午後2時から4時)の勤務となっている。
今は、得意のレクリエーション行事の企画・立案にその能力を発揮している。 - ケ.
- Iさん(女性) 入社:平成28(2016)年10月
現在、第1あすか苑勤務(清掃業務)
現在、一番、入社から日が浅い従業員である。主に清掃業務を担当している。他の3名の障害のある従業員(Cさん・Fさん・Hさん)とともに、同該施設で、業務に精励している。良き先輩方が多い中で、着実にキャリアアップを図っている。
4.就業以外のフォロー
同社では、年に2回「食事会」を催しており、障害のある従業員全員が参加して、同僚との連帯感を強めている。
また、障害のある従業員の家族とは、基本的に年2回、面談の機会を設けており、自宅での様子などを聴取して、接し方の参考にしている。障害のある従業員が入社したての頃は、かなりのストレスがたまるものの、自分自身のストレス解消法がよく分からない場合が多いことから、この時期の見守りを特に大切にしている。
5.労働条件
雇入れ当初は、「時間給制」が基本であるが、徐々にその業務能力を高めていき、「ヘルパー2級」などの有資格者となり、また、8時間勤務の就労が可能になれば、「月給制」への移行も考えている。なお、現在、「月給制」への移行として、数名の実績がある。
6.今後の課題と展望
同社としては、今後とも障害者雇用を推進し、現在の10名から20名~30名へと雇用の拡大を図りたいと考えている。障害者のある従業員は、真面目な勤務態度の者が多く、各施設の主任、副主任は、個々の障害特性を的確に把握し、それぞれの仕事ぶりを判断し、無理のない形で、障害のある従業員の仕事の質・量の向上を図っている。また、職場全般を見渡し、良い職場環境を作っていくことが障害者雇用の「第一」と捉えている。
「良い介護」は、「良い職場環境から」をモットーとしている同社としては、障害者雇用の基本的理念も、このモットーを達成するための一つと心得、引き続き障害者雇用の推進を考えているところである。
執筆者:赤津社会保険労務士事務所 所長 赤津 秀夫
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