障害を個性ととらえ、同じチームとして共に成長する事例
- 事業所名
- 株式会社ミュゼプラチナム(法人番号 3011001092832)
- 所在地
- 東京都渋谷区
- 事業内容
- 美容サロンの運営、化粧品・美容商材の企画・開発、Eコマース運営、メディア企画・開発
- 従業員数
- 3,887名
- うち障害者数
- 80名
障害 人数 従事業務 視覚障害 3 店舗内清掃洗濯、事務 聴覚・言語障害 8(※1) 店舗内清掃洗濯、事務 肢体不自由 6 店舗内清掃洗濯 内部障害 1 店舗統括業務 知的障害 40(※2) 店舗内清掃洗濯 精神障害 17(※3) 店舗内清掃洗濯、事務 発達障害 2 店舗内清掃洗濯、事務 高次脳機能障害 3 店舗内清掃洗濯 難病 その他の障害 ※1 うち肢体不自由との重複2名
※2 うち肢体不自由との重複1名
※3 うち知的障害との重複1名- 本事例の対象となる障害
- 発達障害
- 目次
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事業所外観
1.会社概要
平成15(2003)年、福島県郡山市に1店舗目となる美容脱毛専門サロン「ミュゼプラチナム」をオープンした。現在は店舗数・売上6年連続No.1(※1)、顧客満足度4年連続No.1(※2)を獲得するなど、たくさんの女性から支持を受けている。また、化粧品・美容商材企画・開発、Eコマース(電子商取引)運営、メディア企画・開発など様々な事業をトータルに手がけている。
平成29(2017)年には親会社である株式会社RVHがなでしこ銘柄に東証二部上場企業として初めて選定された。RVHグループの主力である美容事業を営むミュゼプラチナムでは、女性活躍の具体的な施策として、法定を大きく上回る育児休業制度や育児短時間勤務制度をはじめ、成長に合わせた研修制度の導入などに積極的に取り組んでいる。今後も充実した研修制度やワーク・ライフ・バランス向上のための環境整備などを通じて、すべての従業員が充実した毎日を過ごしながら活躍できる職場づくりに取り組んでいく。
※1 平成29(2017)年7月調査時点(美容脱毛売上比率50%以上を専門店と定義)
※2 平成29(2017)年7月調査時点 いずれも東京商工リサーチ調べ
2.障害者雇用の経緯・状況
現在、企業の社会的責任と実質的な戦力として障害者雇用を進めているが、雇用が大きく伸びたきっかけは、成長する会社の規模に雇用が追いつかずハローワークより指導を受けたことだった。また、当時、常用雇用労働者数が301人以上で法定雇用障害者数を下回る事業主は障害者雇用納付金を申告納付する義務があったため、まずは当時福島県にあった本社内にて1名の雇用を行った。
会社はその後も成長を続け平成20(2008)年4月約400人だった社員数は、平成23(2011)年には2,400名程度まで増加した。障害者の雇用についても本社内にて継続的に増員し、年間10人前後を採用していたが、正社員の増員に追い付くことができず、本社以外での雇用について向き合わなければいけないタイミングを迎えることになる。
サービス業というお客様と接する店舗内での障害者雇用は難しいのではという概念にとらわれ、店舗以外での業務を中心に検討を進めていた。しかし、特例子会社の設立や、別事業所1か所に障害者を集めてできる作業も考えたが、実現には至らなかった。そんな時、創業者の「障害のない者と障害者が同じ環境で働くことに意味がある。同じ会社、チームの仲間としてお互いの仕事を認め合い、雇用形態にかかわらず会社と社員が一緒に成長することが望ましい」という発言がきっかけで、店舗内での雇用を考え始めた。
第一の関門として、現場の理解を促すことが必要であった。障害者を雇用する義務があるとはいえ、その理由だけで社内に理解してもらうのはハードルが高かった。そこで、まずは店舗内での業務の洗い出しと、その業務に名前を付けることから始めた。当時、店舗内に在籍するのはエステティシャンのみで、接客やお手入れを行いながら備品管理や店舗内清掃、庶務すべてを行っている状況であった。そこで、それらの業務=店舗の状態を管理する職種を採用しようと「店舗管理係」という職種名をつけた。各店舗の責任者が集まる会議で、社員の業務負担を改善するために店舗管理係の採用を始める旨、併せて障害者雇用の義務について話し、理解を促した。
とはいえ、初めての試みであったので人事側も不安が多く、まずはつながりのあった支援機関に相談したところ、精神障害のあるTさんを紹介された。Tさんはとても気がつく人で、積極的に店舗の業務を行い、残念ながらすぐに体調不良のため退職となったが、実際に入ってもらった店舗からは「彼女がいてくれると接客に集中することができて大変助かった、また同じような人を入れてほしい」という声をもらうことができた。そこからは、私たちの店舗にも入れて欲しいという要望が徐々に出てきて平成23(2011)年には雇用率を達成することができた。
今では社内全体で約80人の障害者が活躍している。
3.本社におけるSさんの雇用事例
発達障害のあるSさんは平成23(2011)年に本社で採用した。前職ではプログラマーとして働いていたが、社内の環境になじめず退職した。その後、広汎性発達障害の診断を受けて障害者手帳を取得し、初めての障害者枠での応募が当社の求人であった。本社で発達障害者を雇用したことはあったものの、まだ受け入れ体制に不安があったが、Sさんは履歴書や面接のときに自身が配慮して欲しい事項を具体的に説明してくれた。今まで雇用した障害のある社員は、時間や曜日に配慮が必要なこともあり、パートでの雇用であったが、Sさんについては経歴等も考慮して初めて契約社員で採用し、入社後、人事系システムの関連業務の担当とした。
Sさんへの配慮としては、面接時に聞いていた配慮事項を元に、できるかぎり曖昧な指示をせず、実際に見本を見せながら説明するということを実践し、Sさんから質問があるときは後回しにせずその場ですぐに答えるようにした。また、時間的な余裕がないと早く仕上げることばかりに意識が行ってしまうため、納期なども予め余裕をもって明確に伝えるようにした。Sさんにとってはその指示の出し方がとても分かりやすく、ありがたかったと聞いている。
その後、入社から3年後の平成26(2014)年に、初めて契約社員から正社員へとステップアップし、今は店舗からの問合せも電話やメールで直接受けている。入社当初から行っている人事システムの業務については、ほとんどを自分自身で判断して業務にあたることができている。
今後は、入社時にSさんの上司であった社員のように、社内でもっと頼れる存在を目指したいと、目標をもって仕事に取り組んでいる。
Sさんの作業の様子
Sさんの質問の様子
4.店舗におけるKさんの雇用事例
Kさんは本社とも近いE店に平成23(2011)年に店舗管理係(パート)として採用した。Kさんの業務は、店舗内の清掃や洗濯、お手入れ後に使用する冷やしたタオルの準備である。忙しい時期は冷したタオルがすぐになくなるが、Kさんがいる日は常に補充をしてくれるので社員が在庫を意識せずに接客に集中することができる。また、清掃においても社員の目が届かない細かい部分まで積極的に掃除を行ってくれており、店舗の床はいつもピカピカである。
Kさん清掃風景
Kさんお冷やしタオル作成
Kさんが長く安定して勤務できている理由として、店舗内でのコミュニケーションが上手くいっていることがあげられる。この店舗はチームワークを大切にしており、店舗の社員とKさんでは年代や雇用形態は違うが、同じ店舗の同僚として分け隔てなく接するように意識している。入社間もなくKさんにニックネームをつけたところ、本人もそれをとても喜び、また、Kさんに美容脱毛の練習をさせてもらったこともあった。Kさんは、毎日の朝礼にも参加し、直接自分の業務と結びつかない事柄であっても共有している。このようなコミュニケーションの秘訣をKさんに聞いたところ、まずは挨拶することを意識していると答えてくれた。実際にKさんの挨拶は、社員だけでなくお客様に対しても元気ではきはきとしているので、時には社員の見本となっている。
当社では来店されたお客様にアンケートを実施しているが、Kさんの挨拶やお店の清潔さについて何度かお褒めのことばも頂いている。
勤怠に関しては、精神障害があるということで入社当初は勤務時間や休みについて心配をしていたが、杞憂に終わり、最初から1日実働6時間で週30時間を勤務した。様子を見ながら徐々に時間を延ばし、平成29(2017)年現在は1日実働8時間のフルタイムで勤務している。今回時間を延長したきっかけは、他店舗で働く同じ障害のある社員の店舗管理係が時間延長すると聞いたので、自分も頑張ってみたいと思ったとのことだった。店舗内だけでなく社内全体の繋がりを大切にして、励みにしている。
当社の店舗では出勤日をシフト制とし、お客様の対応も担当制ではないのでどのスタッフからでも安心してお手入れが受けられるように、情報の共有をこまめに行っている。Kさんへの対応についても同じで、責任者任せにするのではなく常に同僚が同じチームの仲間として積極的に関ってきた。そのためKさんが入社してから店長やスタッフの異動もあったが、異動の際に特別な引き継ぎは行わなくても残ったスタッフから自然と情報共有することができている。
Kさん談笑風景
5.雇用後の改善
雇用を進めながら、様々な改善を行った。まず、初めに店舗管理係の業務について、タオルのたたみ方など共通の作業については写真付きのマニュアルを作成し、勤務(実習)初日に渡している。マニュアルには作業だけでなく、職場のルールや日々の約束事なども記載し、水作業をしながらでも見られるようにラミネート加工してから配付している。また、漢字が苦手な人にはふりがなを振ったものも用意した。
マニュアル
二つ目に、雇用当初は極力店舗の手を煩わせないということに注力したため、面接や入社初日の研修は本社社員が全国へ出張して行っていたが、今は実際に一緒に働く店長やエリアマネージャーに担当してもらっている。初めは何を聞いたらよいのかという質問も多かったが、配慮事項の確認や一緒に働く人が面接することで、より就業場所の雰囲気を理解してもらうことができている。
三つ目に支援機関の活用がある。初めは支援機関の存在を知らなかったが、雇用を進める中で、ある就労移行支援機関の発表会(支援対象者自身による体験発表)を見学したことが支援機関を知ったきっかけである。そこでスカウトした発表者は今も本社で働いているが、安定するまで支援機関担当者が週に一度面談に来て、本人と会社の間で困ったことがあると相談にのってくれた。また、その機関の紹介でジョブコーチの存在も知り、新たに依頼をして就業上の細かい指導をしてもらうことができた。これらの支援機関が間に入ってくれたおかげで、不安定なときや困りごとがあるときに会社がつきっきりで対応する回数が減り、本人も会社以外に相談できるということで不安が減り、長期間の勤務につながっていると感じる。今は、支援機関に登録がない人であっても、極力勤務開始時に登録をしてもらうか、期間限定ではあるがジョブコーチ支援をお願いするようにしている。
四つ目に週報を導入した。周囲が忙しくて質問ができない、社員ともっとコミュニケーションを取りたいという要望になかなか答えることができず、孤独感を感じる人もいたので、週に一度文字でやり取りを行う週報を作成して配付した。週報には、一週間の業務内容や聞けなかった質問、プライベートのことなど自由に記載をしてもらっている。それに対して社員は返事を書き、エリアマネージャーはできるだけ月の最後にコメントをいれている。週報によりコミュニケーションの補完を行うことができている。
業務週報
6.今後の課題と展望
一つ目として、対応方法の共有がある。全国の店舗で様々な障害のある社員が働いているが、各人にあった配慮はそれぞれその店舗に任せている。結果、柔軟な対応ができているのだが、基本的に事例は共有されていない。これを共有することで、受入れ体制を安定させて、より快適に勤務できるような環境にしたい。
二つ目に勤続年数が長い障害のある社員への目標設定がある。現在最も長く働いている社員は勤続年数が10年程となる。変化を望まない社員が多いが、その一方でモチベーションの維持が難しくなる事例も出てきており、個々の状態にあった目標を決めることが必要だと感じている。
三つ目に障害のある社員の独り立ちを支援したい。就業に関してご家族の支援がある者ない者様々ではあるが、高齢化によって親を頼りにできなくなるときが来る。そのときになって困ることがないように、まずは一職業人として自分でできることは自分で行う、分からないことは自分で質問できるように指導していきたい。
また、本社の課題として、店舗と比べるとチームではなく個人で業務を行うことが多いため、障害のある社員と関わりをもとうとする社員が限られてしまっている。特定の限られたメンバーだけでなく、課や部の誰とでも関わることができる業務を任せ、職場の同僚と関わりながらお互いに成長できるような環境づくりが目標である。
現在の障害のある社員の在籍人数は約80名と人数も増えたが、当社は障害者を迎え入れてまだ10年未満と歴史が浅い。まだ対応できていない部分も多いが、これからも支援機関などと連携しながら、障害(特性)を個性ととらえ、各店舗の社員が同じチームとして共に成長し、活躍できるよう、一人ひとりに向き合った対応をしていきたい。
執筆者:株式会社ミュゼプラチナム 人事部 人事企画課
主任 村田 亜聖
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