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1．事業所の概要 、障害者雇用の経緯

（1）事業所の概要

平成20（2008）年10月、株式会社テレパーク（三井物産子会社）と株式会社エム・エス・コミュニケーションズ （住友商事と三菱商事の合弁会社）の対等合併により誕生した企業で、携帯電話等の販売及び代理店業務等を主要業務としている。

社名の由来は「Tomorrow」のTと「ガイア」（ひとつの巨大な生命体として考えられた地球）を組み合わせたもので、『明日（未来）に向かって誠実に挑戦し、全世界の人々の生命を育む、地球のような雄大な企業を目指す』との意味が込められている。

本社のほかに3つの支社（西日本、東海、九州）と7つの支店（北海道、東北、新潟、長野、北陸、中国、四国）を持ち、店舗数は1,200を超える。

積極的にダイバーシティを推進するという全社スローガンのもと、障害者雇用のみならず、女性活躍推進、外国人採用等にも取り組み、門戸を広げている。

（2）障害者雇用の経緯

以前から常に法定雇用率を上回るよう障害者雇用に取り組んできたが、雇用者数が特に増えることになったきっかけは、平成25（2013）年に法定雇用率が2.0％に改定されたことである。

平成20（2008）年の会社合併以降、新卒採用による増員計画に伴い、今後企業全体の従業員数は増加する見込みであり、法定雇用率改定後も雇用率を達成し続けるために障害者の雇用についても拡大する必要があった。そのため、本社だけでなく、全ての拠点において法定雇用率以上の障害者を雇用することを目標に、全社で取組を進めてきた。

2．取組内容

（1）募集・採用

以前は、ハローワークの合同面接会や支援機関からの紹介により採用することが多かったが、最近では民間企業が主催する面接会やイベントにも積極的にブースを出展することにより募集・採用を行っている。また、今後は、特別支援学校からの受け入れについても検討している。

採用面接においては、現場担当者だけでなく人事部門の担当者が対応することとしているほか、本人の障害特性や対処の仕方等をより的確に把握するため、支援機関の担当者に必ず同席してもらっており重要なサポーターとなっている。また、面接時に採用後の労働条件等の詳細を確認し、現場担当者とその後のフォローを含めて調整を行い、定着を重視して本人の要望も踏まえて業務内容を取り決めている。

募集の際は障害の種別を限定せず、精神障害者・発達障害者からも多数応募があり積極的に採用している。この結果、精神障害者・発達障害者の割合は、障害のある社員数のうち40％近くを占めている。

（2）障害者の業務・職場配置等

障害のある社員の担当業務は、管理部門や営業部門での営業アシスタントの補助的な役割が主であるが、本社では、ワード・エクセルでの文書・資料作成、データ入力、ファイリング等の事務処理作業、店舗では、店舗内外の清掃、店内のカタログ補充、入荷した商品の補充や在庫管理、大型ポスターのカッティング等と、多岐に渡っている。また、社員向けマッサージルームでのヘルスキーパーとして採用しているケースもある。

なお、障害のある社員75名のうち事務所勤務が54名、店舗等（携帯電話販売店等）での勤務が21名となっている。

勤務時間については、本人の希望も聞きながら設定しており、契約社員として週30時間勤務（1日6時間、週5日勤務）からスタートすることが多い。段階的に時間数を増やし、フルタイム（1日7.5時間、週5日勤務）で安定して勤務できている者については、正社員として登用する制度も導入している。特に、平成29（2017）年4月からは、新たに地域限定正社員制度を取り入れ、積極的に正社員登用を行ったため、現在、障害のある社員のうち約60％が正社員として勤務している。

（3）職場定着のための工夫等

職場定着・就労継続等のための対策として、以下の取組を行っている。

○職場実習の実施

正式採用前に、必ず2週間程度の職場実習を実施し、仕事とのマッチングを図っている。特に精神障害者・発達障害者の場合、面接だけで障害特性を判断することが難しいため、長く働いてもらうためにも職場実習というかたちで一緒に働く機会をつくることが、雇用の定着（安定）に繋がっている。

○ハートフル社員という呼称

企業内では、障害のある社員をハートフル社員と呼び、障害のない者と障害のある者がともに仕事をすることが当たり前の風土が醸成されている。なお、こうした風土が若い世代の社員にも受け継がれるよう、新入社員を対象に障害（者）への理解を深めるための社内研修を実施している。

○ハートフル社員交流会の実施

本社内においては、年2回ハートフル社員同士の交流会（約2時間、希望者は終了後、昼食会にも参加）を開催し、毎回テーマを決めて、お互いに意見交換等ができる機会をつくり、仲間意識の醸成につとめている。

この交流会には、人事部門等の社員も必ず参加しており、障害のある社員同士の交流だけでなく、障害のない社員との交流を深める機会としても効果が出ている。

ハートフル社員交流会の様子

○定期面談（四者面談）の実施

特に精神障害のある社員については、本人、支援機関担当者、現場担当者、人事部門の四者による面談（1人30～60分）を定期的に実施し、業務上の悩みの軽減等を図っている。

○作業指示書、手順書の整備

知的障害のある社員や長い文章を理解することが苦手な発達障害のある社員に配慮し、できるかぎり「文字を少なく」、「簡潔に分かりやすく」まとめ、知的障害のある社員用にはふりがなを付けるなどの工夫をしている。

作業指示書1

作業指示書2

作業指示書3

作業指示書4

○合理的配慮の取組等

上記の取組に加え、業務指導に関する担当者（チームリーダー等）を決めているほか、人事担当者を直接相談窓口とすることを可能とする専用ダイヤルの設置等、就業環境や業務を行ううえで困ったことを相談しやすい体制を整備している。社内のみで解決できない事案がある場合は、外部のジョブコーチによる支援を活用するなど、支援機関との連携を図っている。

また、休憩場所や通院等に関してもきめ細かな配慮を行っており、休暇や休憩を取りやすいよう、本人に了解を得たうえで、他のチームメンバーに対して障害特性や通院予定日の情報等を伝えている。

（4）雇用事例

精神障害のあるAさんは、現在人事・総務部に所属しているが、イラストレーター等のソフトを使って絵を描くことが得意で、本来の業務に加えて、他の部署からも様々な資料用のイラスト作成や、資料レイアウトを依頼されることが多い。このイラストが職場内で非常に好評であり、本人のモチベーションにも繋がっている。上記職場定着等のための様々な工夫をし、本人の特技を活かしてハートフル社員が職場の中にあたり前に溶け込んでいる一例である。

今後は、できるだけ多数のリクエストに応えられるようにするためにも、現場担当者が管理表等により業務量の調整を図り、本人に必要以上の負荷をかけない工夫を取り入れていきたいと考えている。

Aさん作成イラスト付き資料
（育児・介護・ハートフル相談窓口）

3．今後の展望と課題

ハートフル社員という呼び方が象徴しているように、上記の取組効果もあり、以前から障害のある社員と障害のない社員が共に働くことに抵抗感がなく、「障害者を受け入れることはあたり前」という意識・風土になっている。このため、「意識して障害者のための職務を創出する」というよりは、全体の「生産性向上」という視点から必要な業務を切り出し、各ハートフル社員の障害特性に合わせて、仕事をマッチングしていくという発想が定着している。

今後も、このような意識や考え方を大事にして、さらに高めていくことが目標となっている。

また、新卒採用の増員計画は今後も進んで行くため、これに伴い、当然、障害者の採用を増やすことになっていくが、ただ雇用人数を増やすだけではなく、定着率を高めていくことを重要視している。

そして、定着率向上とあわせて、障害のある社員一人ひとりのキャリアアップ（できる仕事を増やし、パソコンのスキルを向上させるなど、難易度の高い仕事にも挑戦すること）を実現することが今後の課題である。

執筆者：独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構
東京支部　高齢・障害者業務課　金杉　文昭