事業所外観

1．事業所の概要、障害者雇用の経緯

（1）事業所の概要

株式会社富山資源開発は、昭和49（1974）年4月に設立された。木造家屋、鉄骨構造物等の解体工事、アスベスト除去工事、産業廃棄物収集運搬・処分・リサイクル製品加工まで一貫した、資源循環型の産業社会の形成の一翼を担い、優しい環境つくりに取り組んでいる。

また、ハウスメーカー、建設会社、一般製造会社等から排出される木くず、コンクリートくず、がれき類、廃プラスチック等の廃棄物を自社で収集・運搬し、分別・選別を経て破砕・圧縮等で減量縮減化している。その中で再生可能なものは、リサイクル製品、木質燃料等に加工・製造し、大手製紙メーカー、セメント工場へ出荷している。再生できないものは、自社のダイオキシン対応済焼却炉で処理している。

リサイクルセンターの様子

（2）障害者雇用の経緯

平成26（2014）年4月頃、若年者の採用のため求人していたがなかなか応募が少ない中、同業者から障害者を採用して定着しているとの情報を得た。

社内では高齢化が進んでおり、若い人の新規採用の必要性から、ハローワークに求人票を出し、障害者支援事業者、障害者就業・生活支援センター（以下「支援センター」という。）から精神及び知的障害者を紹介してもらった。身体障害者以外の雇用については、どのように向き合えば良いのか、どのような仕事をしてもらうのか、仕事の指示の方法はどうすればいいのかなど不安ではあったが、支援機関からの熱い要望や、指導、助言に支えられながら、富山県の「チャレンジトレーニング事業」実習等の雇用支援制度を利用し新たな分野での雇用を見出すことにした。

「チャレンジトレーニング」実習中は支援センターを始め支援機関の職員が来社され実習の様子の確認や相談に乗っていただいた。

実習を通じて社内からは、障害者との接し方、相互理解も徐々に深めながら、採用に至った。

2．取組の内容と効果

（1）取組の内容

発達、精神、知的障害のある作業員を3名採用し、リサイクルセンターで業務にあたっている。個々の病気や、性格の特性を把握し、仕事を任せることはかなり困難であるが、障害を理由に特別扱いはしないこととしている。また、周囲の作業員には障害者とはどのようなものか、障害者それぞれの障害特性を伝え理解を促すとともに、障害のある作業員が安心して働ける職場環境の整備に取り組んでいる。

業務内容については、様々な廃棄物を分別し、異物を除去、また有価なものを選別し、製品原料にしていく。最初の工程では人手に頼らざるを得ない。ある程度まで人が区分けした後に機械で破砕し、分級篩（ぶんきゅうふるい）し、製品化している。

主に木くずからは製紙原料やバイオマス燃料となる木質系チップ、がれき類からはリサイクル砕石を製造している。また、一口に廃棄物といっても建物の解体からのもの、一般製造会社からのものなどがあり分別、選別作業の指導をマニュアル化することは難しい。そのため、新規雇用者には実際の作業現場で行っている作業を繰り返し体験し、覚えてもらうやり方を採っており、これは障害の有無にかかわらず同じである。作業現場はほとんどが屋外での作業であり、高所で足場の悪いところもある。そのため、責任者を中心に同じ作業を行う作業員が常に見守っており、障害のある作業員の状況をいつでも連絡できる体制を取っている。トラブルが起これば責任者がすぐに対応している。

• Aさんの場合

  Aさんには発達障害があり周囲に対して笑顔で接し、気遣いしてとても好印象である。しかし、その反面、ミスや、間違いなどで注意されると反省はしているように見えて、そのときは返事を返してくれるので理解しているようだが、本当に認識しているかが、不安に感じるときもある。特に安全にかかわる場合には、繰り返し注意し周囲も見守るように配慮している。

  Aさんは、木くずの選別ライン作業で異物の除去作業を担当している。異物除去では、木質燃料として不適なスクラップ、非鉄、がれき類、廃プラスチック等の不燃物等に注意して分別・選別作業にあたっている。当初は月に1度程度、受診しながらフルタイムで就労していたが、障害に起因する頭痛で休みがちになり、そのためラインメンバーとトラブルもあったものの、その後落ち着きを取り戻し、現在は試験的に午前中のみの勤務で様子を見ている。最近では休むようなこともなく、本人もフルタイム勤務ができるよう希望しており、勤務状況を観察しながら次第に勤務時間を長くしたいと考えている。

  

  Aさんの作業の様子

• Bさんの場合

  Bさんは精神障害に加え聴覚・失語障害がある。

  Bさんは、コンクリートくずからの異物除去作業を担当している。この作業も実際の作業で繰り返して覚えていった。今では、責任者からの指示だけでなく、率先して作業に取り組み、残業依頼も協力的で業務を順調に進めており、社内からは期待され、頼りにされている存在である。通勤は家族に送り迎えをしてもらっているが、車の免許を先日取得し、次は自分の車を購入して、通勤したいという目標をもって頑張っている。

• Cさんの場合

  Cさんは30代半ばで、知的障害があるがとても社交的であり、積極的に会話することが好きで、障害を抱えている感じがないように思われる。以前はプラスチック工場で成型の仕事をしていて、フォークリフトの運転資格を取得しており、現在は廃棄物ボックスの運搬、その他の雑用もこなしている。明るい性格ゆえ皆から慕われ、他の障害のある作業員にも良い影響になっており、彼の存在感は大変大きい。

• Cさんの話

  前の職場で仕事をしていたときに、資格の取得を薦められてフォークリフトの運転資格を取った。現在の仕事は、廃棄物の選別ラインにある、分別された廃棄、異物のボックスが満杯になったことを確認し、廃棄物の集積場へ運搬することであるが常に現場に注意を払っている必要がある。手順や段取りなどの判断が難しく、周囲から指導されることもあるものの、やりがいを感じている。自宅から職場までは、40分ほどかけて自家用車で通勤している。

  

  Cさんの作業の様子

• 飯島工場長の話

  廃棄物処理の業務は、解体現場や一般企業から出される廃棄物を、価値のある物と価値が無い物に分別することから始まる。廃棄物としてリサイクルセンターへ納入される物は、木材、コンクリートなどであるが、そのほかに金属、樹脂等様々であり、その形状、材質や大きさは常に異なっている。

  そのため、一律にマニュアル化することは、困難であると考えている。そこで当リサイクルセンターでは、新規採用者には実際に現場を見せ、実際に作業を行ってもらっている。これは障害の有無にかかわらず同じである。

  このような過程の中で、本人の特性や得手不得手を見ている。その後、本人と話し合い、担当業務を決めるようにしている。現在は3名の障害者と一緒に仕事をしているが、本人たちはそれぞれ目標を持っており、自主的に仕事に取り組んでいる姿勢が見える。

  

  責任者：飯島工場長

（2）取組の効果

高齢化が進む中で、若い障害のある作業員が働くことで職場に活気が出ている。また当初、障害特性により自分勝手な言動・行動による傾向が強く前に出ていたが、ライン作業や共同作業において、他の作業員との連携作業が重要であること、また機械操作であり危険を伴う作業のため相互の気配り目配りが大事であることなど、以前より理解できるようになってきている。また、本人が希望すれば残業もお願いしている。

障害のない作業員の障害のある作業員に対する理解度はまちまちであるが、自然に障害のある作業員と接し、特別扱いしていないことで職場全体に一体感が生まれ、生産性の向上や働きやすい職場作りにつながっていると考えている。

3．今後の課題と展望

昨今の労働環境、特に廃棄物業界として作業員不足、特に若年層作業員の採用が難しいのが現状である。これまで、3名の障害のある作業員を雇用することで、「職場全体の一体感」「生産性の向上」「働きやすい職場作り」などの取組の効果があったことから、この経験を生かし障害のある作業員が今よりもさらに働きやすい職場環境にするために、個々の障害特性などに応じた指導方法、職場環境づくりなどを検討・改善し引き続き積極的に障害者雇用を図りたいと考えている。

執筆者：株式会社富山資源開発 環境事業部長　西村　和紀