事業所外観

1．事業所の概要

新鮮で安全な石川県産の魚介類をいち早く、しかも適正な価格で、各家庭の食卓に届けるため、石川県の漁民が考え抜いた末、平成18（2006）年9月1日に県内にある27の漁業協同組合が合併し、石川県漁業協同組合を設立した。

石川県漁業協同組合は、地域の水産振興を旨として、単に素材提供産業だけではなく商材開発にも力を入れ消費者のニーズにあった商品の提供を行っている。

組合員数は、正組合員2,879名、准組合員5,304名、職員数220名（平成29（2017）年3月31日現在）。相互扶助の精神に基づき、協同して組合員の事業及び生活のため、その経済的・社会的地位の向上を図ることを目的として、漁獲物等の販売、保管などの販売事業、漁業用燃油・資材や生活物資の安定供給のための購買事業、漁業経営の基盤強化を目指し、豊かな資源を守るため環境対策・食育活動などの指導事業、そのほか各種の共済事業を行っている。

2．障害者雇用の経緯

障害者の雇用については、平成23（2011）年3月まで一人も雇用しておらず、法的にも社会的責任においても障害者の雇用が急務であるとの認識のもと、同年4月に初めて障害のある職員を雇用したが、その障害のある職員は、残念ながら種々のトラブルや本人事情により5月に解雇することとなった。

その後、障害者雇用がないことから、同年8月、ハローワーク金沢から、現状の状態が続くのであれば、障害者雇い入れ計画書の作成や事業所名の公表となることを含め注意喚起、指導を受けることとなった。そうした状況から、ハローワークや関係機関に採用の相談、求人募集を行うとともに職員に対し障害者雇用に向けて情報提供の協力依頼を行った。現在は4名の障害のある職員を雇用し、法定障害者雇用率には今一歩達してはいないものの、引き続き積極的な雇用に向け取り組んでいる。

3．支援制度活用と取組

【各種支援制度について】

今回初めて精神障害者を雇用するにあたって、平成28（2016）年9月から1か月間は、石川県障害者職場実習制度（以下「実習」という。）を利用し、まず実際の職場で実習を行うことにより職場適応に必要な職務経験から就業に対する自信をつけてもらうこととした。

続いて、実習終了時から障害者トライアル雇用を利用し、3か月間の試行雇用を行って、就業に向けた本人の不安軽減や職場内の障害者雇用に対する理解を促すことができた。

ジョブコーチ支援においては、実習段階から支援を受け、障害者に配慮した指導方法や接し方、細分化されたスケジュールの設定、仕事の手順やペース配分等の助言や支援を受け円滑な就労につながることとなった。

【雇い入れ、仕事の取組状況】

組合としては、すぐに雇用したい旨をジョブコーチに伝えたところ、初めての精神障害者雇用となることから、障害特性に対する理解を図り、対象者の状況も踏まえて準備を整えてから雇用した方が良いのではとのアドバイスを受けた。

それを受け、スケジュール調整や担当する仕事の内容、段取りのほか対象者との接し方を確認し、ジョブコーチ、対象者、組合の担当者や管理者がお互いに話し合い情報共有したうえで雇用開始となった。

同じ清掃業務を聴覚障害のある職員とペアで担当することから、お互いが意思疎通を図り、食事や休憩をするための場所を建物の5階に確保し利用は障害のある職員のみとした。

そういった中で、休憩室での会話も弾み二人は共通する趣味を知り、人間関係も良好で和やかな雰囲気で仕事に励んでいる。また、体調不良の際には、休憩室で休むことも可能である旨を伝え、必要があれば休憩している状況にある。

休憩場所

当初の清掃業務は廊下、トイレ、階段を中心に建物内の共有部分を担当しており、現在、順調に作業を行い、少し作業時間の余裕もできたことから、清掃する範囲を会議室、研修室も含めたスペースに拡大して清掃を行っている。

そうした仕事を見た他の職員が障害のある職員に励ましの手紙を送り、休憩室にその手紙を貼付し仕事に対する励み、モチベーションアップにつながっている。

職員からのお礼
励ましの手紙

4．今後の展望

同組合は、法定障害者雇用率が未達成であることから、まず雇用率の達成を目指すため、求人募集のエリアを石川県内全域に拡大し、県内全域にある漁協の職員による口コミや人的ネットワークをフルに活用し積極的な募集活動を行っている。

また、障害のある職員が担当する仕事については、現行の担当業務以外にも事務的業務、軽作業等可能な限り仕事の切り出しを行い雇用につなげていきたいと考えている。

そのほか、今年度特別支援学校から、通学バスのルート変更により同組合付近にあった乗降場所がなくなることから、乗降場所の確保に関する協力依頼があり、同組合前や直営店の駐車スペースを提供したことを機に、今後は特別支援学校との関係を密にして採用につなげていきたいと考えている。

執筆者：独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構
石川支部　高齢・障害者業務課　徳田　弘明