事業所外観

1．事業所の概要

（1）創業

昭和23（1948）年　沼津市上土に紳士服店創業

昭和29（1954）年　有限会社ゴトー洋服店設立

昭和50（1975）年　株式会社ゴトー設立（有限会社ゴトー洋服店より組織変更）

（2）経営理念

心豊かになる生活提案を続け、お客様の感動と従業員の成長と幸福を追求します。

【障害者雇用について】

「企業の任務として、障害者雇用率は守らなくてはいけない。」

企業のトップが、この「企業の任務として、障害者雇用率は守らなくてはいけない。」ということに深い理解と積極的な姿勢を示すことで、社員はだんだんと障害者雇用に対する理解が深まっていった。

こうした日頃の取組により、「障害者雇用優良事業所」として平成28（2016）年度独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長努力賞を受賞したことは、まさに労使が一丸となって障害者雇用に臨む励みとなっている。

（3）組織構成

紳士服の専門店から始まり、時代の変化に対応しつつ業態を変化させ、保有していた自社物件をツタヤや、ブックオフ等のフランチャイジーとして展開するカルチャー事業及びファッション（レディース）事業に転換し、沼津バイパス総本店他静岡・神奈川・埼玉・京都に45店舗にて営業中。

（4）障害者雇用の経緯

当初は障害者雇用率達成を目指して採用を行っていたが、現在は雇用率を大幅に上回る9名の障害のある従業員を雇用している。勤続13年が1名、9年が2名、6年が4名、4年が1名、3年が1名と長期勤続の従業員が多い。

過去に雇用した障害のある従業員が定着したことにより、現場の障害者雇用に対する理解が深まり、結果的に多数の障害者雇用につながった。

2．取組の内容

（1）障害のある従業員の人件費について

通常、従業員の人件費は各店舗の負担としているが、障害のある従業員の人件費は本部管理としている。

障害のある従業員は、レンタルDVD等を主体とするツタヤ及びリユース事業のブックオフ等に配属されており、各店舗の店長が雇用管理責任者となっている。

ツタヤの業務では、レンタル商品の加工（シール貼りやシール剥がし等）、新刊本の仕分け及び清掃作業等、ブックオフの業務では、買取・加工・補充・販売他、ホビ－・アパレル業務等を行っている。

（2）店長へのフォローアップ

ア．

店長会における基本講習の実施

年に1回の店長会の際、障害者雇用に関する情報を共有し、法定雇用率の周知、障害者について理解を深め雇用を継続するための基本講習等を実施。（別添1）

イ．

半年に1回の人事部担当者と店長のヒアリングの実施

採用後のフォローアップ調査として、障害のある従業員一人ひとりに「フォローアップ調査用紙」（別添2）を用いて、トラブルや無断欠勤等具体的な案件を確認している。店長をフォローする目的で実施している。

また、人事部担当者を、障害者職業生活相談員に選任している。人事部担当者は店長として実際に障害のある従業員の雇用管理経験者でもあるため、双方の状況が理解できる。

ウ．

月に2回の現況確認

人事部担当者は、月に2回障害のある従業員の出退勤状況を各店舗と共有しており、人事部ではこの出退勤状況を基に障害のある従業員の状況を確認し、不調がある場合には早期にフォローアップできる体制が整っている。

店長会資料（別添1）

フォローアップ調査用紙（別添2）

（3）人事考課制度の導入

障害のある従業員も他の従業員と同様に、年に2回の人事考課を実施、評価結果により時給改定、昇降格する。

3．取組の効果

（1）障害特性に合わせた配置の実現

障害のある従業員の人件費は本部管理とすることにより、店長は店舗の人件費コストを気にすることなく、障害のある従業員の障害特性に合わせた仕事の割り振りや一緒に働く従業員へのきめ細かい配慮が可能となった。

（2）本部と現場（店舗）の連携

障害者雇用については、障害のある従業員への配慮のみを考えがちであるが、その雇用管理を行う現場の責任者（店長）をしっかりフォローすることが重要である。

障害のある従業員の雇用管理について、本部は各店舗の店長に丸投げすることなく、定期的な現状確認及びフォローアップを実施しているため、店長が悩みを一人で抱えることもなく、また、障害のある従業員が不調となった場合でも早期に対応することができた。

（3）障害のある従業員の向上心アップ

人事考課制度は障害のある従業員にも適用され、他の従業員と同じ基準で評価されるため、障害の有無にかかわらず時給改定・昇降格することから、障害のある従業員の向上心アップにつながった。

このような取組の積み重ねが、障害のある従業員の長期継続雇用につながっていると考えられる。

4．雇用についてのポイント

（1）ジョブコーチ

人事担当者は、店長当時を振り返り、ポイントになった点としてジョブコーチの存在をあげた。

毎日、毎週、毎月、3か月に1度の支援の際、障害のある従業員と担当者の面談にもジョブコーチが同席してくれた。「こういう障害のある人には、こういう所に配慮してください」と周囲のスタッフにもアドバイスしてくれたことは大きかった。

新任の店長にとって障害のある従業員の雇用管理は、気持ちの面で大きな負担であったが、最初の3か月間ジョブコーチが付いていてくれたことが、今の長期継続雇用につながったと思っている。

通常のOJTの場面では、「できるようになったね、じゃあ、次にこれをやってください。次はこれもやってくださいね。」と次々に仕事をさせてしまうことがあるが、ジョブコーチから「一つの業務が確実に定着してから、次に進んでください。」とアドバイスを受けたため、過度の負担をかけることなく、業務遂行能力の向上につながった。

（2）スタッフリーダー

各店舗の店長は定期的に異動があり、店長の異動により店の雰囲気も変わってくるが、これをつなぐ存在として「スタッフリーダー」が存在している。

障害のある従業員にとって変化は不安材料であるが、新店長と障害のある従業員とのかけはしとなる「スタッフリーダー」の存在が、長期継続雇用が実現している要因の一つである。

5．今後の展望と課題

障害者の働きやすい環境づくりを推進し、現在短時間で働いている障害のある従業員が常用雇用となるよう努める。

平成29（2017）年3月、人事制度の改正により障害の有無に関わらず無期雇用・社員転換制度が導入され、雇用の幅の拡大が実現となった。目標が明瞭になることで、向上心を高め、雇用の存続につなげていきたい。

執筆者：独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構
静岡支部　高齢・障害者業務課　大石　光彦