障害者雇用を通じて、元気で明るく生き生きと働ける職場づくりと
社員一人ひとりが自己実現できる風土を目指して
- 事業所名
- 株式会社 ナショナルメンテナンス(法人番号 9160001008547)
- 所在地
- 滋賀県彦根市
- 事業内容
- 建築物(店舗・事務所・工場・公共施設)の総合ビルメンテナンス業務、 施設保全事業・電気管理事業・警備保安事業・清掃管理事業・環境衛生事業・人材派遣事業・資材販売事業
- 従業員数
- 1,213名
- うち障害者数
- 29名
障害 人数 従事業務 視覚障害 1 清掃業務 聴覚・言語障害 3 清掃業務 肢体不自由 13 清掃業務 事務 警備業務 内部障害 5 清掃業務 設備業務 知的障害 5 清掃業務 精神障害 1 清掃業務 発達障害 1 清掃業務 高次脳機能障害 難病 その他の障害 - 本事例の対象となる障害
- 知的障害(発達障害)
- 目次
-
事業所外観
1.事業所の概要・企業理念
○事業所の業務概要
昭和45(1970)年、(株)平和堂の清掃管理を主業務の子会社として滋賀県彦根市に設立。平和堂の成長とともに培った豊富な技術力と長年蓄積されたノウハウにより、幅広くビルメンテナンス事業を展開。大型ショッピングセンターの『お客様のお客様(エンドユーザー)」にまで行き届いたサービスの向上に務め、現在200件以上の施設を管理。行き届いたサービスの向上を常に考え、多くのユーザーから支持を得、滋賀、京阪、東海、北陸地域を中心に200件以上の物件を手がけている。既存クライアントからの新たな依頼案件も増加中で、商業施設・学校・病院・レジャー施設、大規模公共施設などの管理物件に対し、きめ細かなオペレーションとメンテナンスにより、最適なコストで建物の機能を最大限に発揮させるビルマネージメントサービスを提供している。
○企業理念
- 平和堂グループ憲章
- 全従業員の物心両面の幸福を追求するとともに お客様と地域社会に貢献し続ける企業となる
- 社是
- ビル管理を通じて、清潔で安全・快適な環境づくりに貢献し、 自然にやさしい企業としてなくてはならない会社になる
- 経営理念「真価の創造」
- 実践項目1、私たちは、品質の高い商品を提供します。
2、私たちは、価値を創造し提供します。
3、私たちは、新しい提案と情報を提供します。
4、私たちは、最大限の能力を発揮します。
5、私たちは、自らの可能性を信じ成長します。 - 平和堂グループのことば
- 「平和堂では「売上高」のことを『ご奉仕高』、「粗利益高」のことを『創造高』といいます。」
- 「二羽のハト・・・世の中は対立ばかりでは争いとなり、破壊をまねき、調和ばかりでは沈滞し進歩がありません。二羽のハトは、対立しながら調和を生むところに真の進歩があることを意味しています。」
○業務改善の取組
「お客様・協力会社様・当社で働くすべての人々の満足度の高い会社の実現」、「地域社会と共生をはかる社会貢献度の高い会社の実現」、そして「お客様に喜んで頂き、社会に貢献する会社」であり続けるため時代の急激な変化に対応し変化を先読みできる力を養うための社員の教育に力をいれている。最近では若いスタッフの広い視野にたった提案も増え、業務に反映させている。
創業者は「社員と同様に店舗を大切に思ってくれる人に清掃業務を任せたい」、「これからの時代はどんどんビル化していき建物の清掃が業種として育っていく」と考え、『メンテナンス業は労働集約型産業』、人員配置とシフト管理をしっかりやれば平和堂以外の企業にもお役に立つことができるという思いがあった。
現在は、この思いを受け継ぎ、労働力不足が更に深刻さを増してくる中、従業員の負担軽減に目を向け、清掃用洗剤の見直しで作業効率をアップさせ、清掃用ロボットの導入で省力化を行うことで、労働力不足に対応している。
清掃業務は、機械化が進んだ現在でも人の手による作業が大半を占め、契約時の仕様も漠然とした作業内容であったり作業区域も曖昧に表現されていたりで、当初の人員計画では回り切れなくなり作業時間が増加して利益率の低い現場となることが多い。そういった事態を改善すべく『作業内容を時間で管理する労働プログラム』を導入。製造会社での「作業標準」「作業マニュアル」と同様、一つひとつの作業に対して標準作業時間を設定し、誰が作業しても同じ時間で同じ仕上がりが提供できるというシステムを構築した。これにより、スタッフが今どこでどういう作業をしているか、そして、毎日の人員配置が明確に把握できるようになり、作業範囲やスタッフの行動を瞬時に提示し安定した品質を提供することが可能となった。
2.障害者雇用の経緯
上記の様な企業の取組の中、障害のある人を初めて採用したのは平成7(1995)年8月。知的障害のある人を契約社員として採用し、現在も清掃業務に従事してもらっており、配属部署の店長をはじめ店舗の従業員の信頼も厚い。当初は周囲のスタッフも担当責任者(チーフ)にも不安はあったが、その真面目な仕事ぶりが評価され、平成27(2015)年に優秀勤労障害者表彰、県知事表彰を受賞。
また、その過程で、「障害者に優しい仕事場は、高齢者他、みんなに優しい仕事場であること」に改めて気づかされた。また、その採用をきっかけにして障害者の雇用が進んだ。
3.採用の取組内容と効果について
ア)取組の内容
- ア.
- 募集・採用
会社として「障害者求人」は行わず、一般求人の形でハローワークや地域の障害者就業・生活支援センター経由での採用が主となっている。また、ビルメンテナンス協会と県内の高等養護学校の二者による紹介を受けて職場実習(以下「実習」という。)に入る場合や、ハローワークの一般求人で応募された人が障害のある人である場合もある。
本社で採用はするものの、実際の業務は現場の各担当の責任者に負うところが大きいため、現場責任者(チーフ)が実習をするか否かをまず判断し、本人の希望と障害が職務にもたらす影響等をかんがみ仕事ぶりを見て採用を判断することになる。特に、現場責任者(チーフ)の理解があり、本人に謙虚さがあれば採用している。肢体不自由のある社員が約半数近くとなっており、これは、技術を持っている人が応募し、その人が結果的に障害のある人であったという結果である。
新卒採用は、ビルメンテナンス協会の紹介で滋賀県立愛知高等養護学校(以下「愛知高等養護学校」という。)2年生の職場体験学習(以下「体験学習」という。)で生徒を受け入れたのが最初である。少子高齢化、労働力人口の減少で清掃業務従事者の採用も厳しくなってきており、将来性のある若い清掃従事者を求めていたこともあり、実習を通じて意欲ある人材を確保することができた。今後も、ハローワーク、障害者就業・生活支援センター、高等養護学校との連携を強化しつつ人材確保に努めることとしている。
採用後のバックアップ体制としては、現場でのOJT教育を中心に、入社2か月後、本部で集合研修を実施している。ここでは、清掃器具の機械化に対応するため、安全教育・取り扱い方の教育指導を中心にフォローアップを実施している。
障害者の雇用については多種多様な人材の一つとして捉えているが、管理している施設は滋賀県をはじめ京都府、東海、北陸地域を中心に200以上あり、施設が各地に点在しているため、研修は本社管轄の事業所での取組としている。まずは各所の現場責任者(チーフ)を対象に、障害特性等の理解を深め、就業中の不安を払拭し対応方法などを理解するための勉強会を開催するなど障害者雇用の環境を整えている。なお、この一環として、今年度も地域障害者職業センターの職員を招き研修会を行った。
- イ.
- 障害者の業務・職場配置
Tさんは、平成28(2016)年4月入社。愛知高等養護学校の依頼により体験学習を計3回25日間実施した。体験学習を通して仕事内容を充分理解し、本人の希望を踏まえ常用雇用とした。採用内定後も体験学習を適宜行い更なるスキルアップに努めた。
所属は、株式会社ナショナルメンテナンス滋賀第二業務部 草津・大津・湖西地域 大津地区アル・プラザ瀬田清掃担当。社員区分は「パートナー社員」で勤務時間は8時~15時で実働6時間、年間休日110日、月間所定労働日数は平均21.25日となっている。障害の程度は、知的障害(発達障害)(療育手帳B1)。
ショッピングセンターの2F~4Fを担当し、自動床洗浄機(搭乗式)による床清掃およびゴミ回収と灰皿の清掃を担当。搭乗式の自動床洗浄機での事故などはなく、なんなく乗りこなしている。入社以来、無遅刻・無欠勤で真面目な作業態度で丁寧な仕事をしている。担当チーフは、真摯に作業する姿を見て周囲が教えられている。また、嫌なことは嫌とはっきり言うことで判断がしやすいと話している。
本人は当初、長く続けられるか心配していたというが、今までもそして、今後も見守って育てていく体制が整えられている。趣味は特撮・アニメを見るのが好きとのことで休日は、ほとんど外出はしないで身体を休めている。
チーフは、Tさんに対して、わからないところは自主的に質問して聞くようにすること、仕事時間の使い方などについて指導を行っているとのことであった。
入社して1年3か月が経ち、精神的に弱いところがあるが、周囲も大目に見てしまっているところもある。今後は、仕事は厳しいものというところを教えていきたい。所属が変わっても担当チーフが替わっても、順応していける力を身に付けるとともに、他店への応援等もこなして行けるようなリーダー的存在になってくれることを期待している。今の作業は勿論のこと、計画的に「床ワックス作業」、「トイレ掃除」ができるように指導・教育を行っていきますとのことであった。
Tさんの搭乗式自動床洗浄機による作業の様子
4.今後の展望と課題
同事業所では、清掃業は人材がすべての業種(業界)であり、技術力は勿論のこと、社会人としてのマナーも身に付けていることが必須であることから、従業員教育の重要性に着目し、階層別教育、社外研修会への参加を通じて信頼される人材の育成を続けている。現在、教育面および障害者の支援等が弱いので、長く働いて頂くための環境の整備に力を注いでいく予定とのことである。
「信頼される人材の育成を重視し、100年企業を目指す」、この目標に向けて従業員教育に力を注ぎ、作業者一人ひとりの技術向上と、作業効率・改善を一層進めてこそ、高い品質の提供が継続・維持できるので、より高い労働力と業務に必要な有資格者を確保できるかが現在の課題であり、待遇面にも配慮しつつ職場環境の向上に努めながら、技術力アップや各種資格の取得、社会人としてのマナー講座などを行い、階層別教育、ビルメンテナンス協会を始めとする団体の研修会にも参加し、社内全体のスキルアップ、人材育成を続けて行きたいと考えている。
併せて、本社以外の北陸、東海、京阪地域でも定期的な研修等を実施できる体制を作るべくマニュアル作りを始め、作業標準、作業マニュアルを作成し、各地での研修会、勉強会などを実施することも考えている。現場のチーフへの研修を徹底して行っていくことで、障害者雇用に関するハードルを下げて採用と長期継続した雇用につなげていけると考えている。
また、同事業所では、「顧客の信頼と期待に応えられる企業」であるためには優秀な人材を育成することによるビルメンテナンス業界のレベルアップを目指し、スタッフ全員が才能を発揮し、結集した大きな力でお客様のニーズに応えられる誠実な業務の実現と「信用できる」と感じて頂ける人材をいかに育てるかを命題に、中期経営計画を進め、2年後に迎える創立50周年が実りある年であるよう会社経営を行っている。
パート人口が減少していることから多様な人材を採用し、障害のある従業員も働き続けられる環境をつくることで、大きな戦力として人員不足も解消できるだけでなく、「障害者に優しい=全ての働く人に優しい」環境づくりが、社是である「ビル管理を通じて、清潔で安全・快適な環境づくりに貢献し、自然にやさしい企業としてなくてはならない会社になる」を実践していくことにつながると考える。
執筆者:公益財団法人 滋賀県国際協会 理事 林 元三
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