事業所入口

1．事業所の概要

東都クリエート株式会社（以下「同社」という。）は、平成3（1991）年に創業し、リサイクル商品の買取り販売を行うリユース・リサイクル事業を展開している企業である。「オーディン」、「エコ市場」、「エルミタージュ」などの直営事業店舗及び「ブックオフ」、「ゴルフパートナー」等のフランチャイズ事業の店舗を東北4県（岩手県、宮城県、山形県及び福島県）及び関東1都3県（茨城県、埼玉県、東京都及び千葉県）に出店しているほか、タイ、ラオス、カンボジアなど海外にも店舗を展開している。

「お客様の物・心両面の満足度をUPする」、「全従業員の物・心両面の幸せの追求」、「地域社会への貢献（CSR）」及び「リユース・リサイクルを通して地球温暖化防止に貢献する」を企業理念とし、個人だけではなく法人向けのリユース事業の展開や、インターネットを通じたリユース商品の売買分野の強化、ハウスクリーニングや土地建物などの資産活用などのニーズにも応えることができるような次世代型のリユースショップの確立を模索するなど、「社会から必要とされる企業集団」になることを目指し、日々取組んでいる。

2．障害者雇用の経緯及び背景

同社では店舗における来客対応が主な業務（職種）であることから、障害者雇用はあまり進んでいない状況であったが、障害者の法定雇用率などの法令遵守の観点や社会全体で障害者に対する理解が進む中で、社として取り組むこととし、ハローワークや就労支援機関と連携するとともに、障害のある従業員の従事する事業内容を広げるなど、平成23（2011）年より積極的に進めている。

3．障害者の従事業務、職場配置

社内の各業務部門において、障害者が従事することのできる職域開発・業務開拓を行い、障害者が従事する部門を積極的に広げている。

現在、障害者が行っている業務は次のとおりである。

（1）身体障害者

販売可能な中古衣類の仕分け、品出し作業など（各店舗など）

（2）精神障害者・発達障害者

本社、倉庫及び店舗の清掃、各営業所から送付される書類の仕分け、書類のスキャンとパソコンへの取り込み、商品の出張買取、ネット販売・海外販売用食器の清掃・梱包・発送、店舗への品出し（本社総務部、EC事業部、海外事業部及び各店舗）

本社の清掃場面

書類のスキャン

書類のファイリング

車内外の清掃

4．障害者の職場定着への取組

（1）一日のチェックシートを活用した状況把握

安定した日常生活や勤務状況などに関する状況把握のため、入社時の面談にて希望した障害のある従業員を対象に、始業時と終業時にチェックシートへの記入をしてもらっている。始業時には睡眠時間、前日の夕食及び当日の朝食の摂取の有無やモチベーションなどについて、終業時には昼食の摂取、一日の疲労度や自己評価、感想などについて、本人がシートに記入し、担当者は状況を把握するとともに、記載状況に基づいた一日の振り返りを本人と行い、タイムリーな状況把握と対処に取り組んでいる。

なお、業務や職場の雰囲気にも慣れてくる入社後3ヶ月を目途として本人へチェックシート継続の可否を確認している。

（2）ジョブコーチを活用した取組と効果

当初はジョブコーチを活用せず、同社が整備していたマニュアルを障害特性などに応じて一部修正するなどの方法により採用した障害のある従業員への業務指導を行っていた。

しかしながら、障害のある従業員の障害特性などに対する周囲の理解が十分進まなかったことなどにより、結果として退職に至ってしまうことがあり、職場定着の取組みをより進める必要があると同社は考え、障害者本人の希望も確認したうえで、地域障害者職業センター（以下「職業センター」という。）のジョブコーチ支援制度を活用した業務指導と人材育成を行うこととした。

業務指導などに当たっては、作業手順に関するマニュアルをもとに、職業センターの障害者職業カウンセラーとジョブコーチにより、同社の担当者、障害者就業・生活支援センターの就労支援員と支援方法等についての情報を共有したうえで支援計画が定められ、障害者本人との相談・確認もしながら進められ、効果をあげている。

ジョブコーチを活用した2事例の具体的な取組内容は以下のとおりである。

イ

Aさん（発達障害）

（従事業務）

• 事業所及び倉庫内での書類の仕分け、文書のスキャン業務

（課題）

• 作業指示についてはしっかりメモを取っているが、覚えるのに時間がかかる。
• 想定外の出来事があるとパニックになることがある。

（取組内容）

• 「作業が確実に遂行できるか」、「職場におけるコミュニケーションがとれるか」といった点で本人が不安を感じていることなどをはじめとする情報を共有し、それらに配慮したジョブコーチによる支援を実施。
• 本人の不安が大きくなった際にとる軽減・解消方法について、本人・関係者が共有。
• 担当者は、作業指示を受けた際に本人がメモしている内容を作業工程の順番通りになっているか等を確認し、必要に応じて修正するなどのサポートを実施。
• 毎日、作業手順及び進捗を確認。

（現在）

上記取組を継続して実施することにより、事業所及び倉庫内での書類の仕分け、文書のスキャン業務に加え、各営業所へ送付する書類のコピー、封筒の作成、POP作成時のラミネート加工業務、お客様へ配布する資料や物品の仕分け等担当業務の幅が広がっている。

（本人の声）

「入社したときは、初めての就職だったこともあり緊張しました。ノートやメモを取って自分なりにまとめて要点を整理し業務を理解するようにしています。初めての作業などは大変ですが、わからないことがあったら他の人に聞いて仕事を進めています。いろいろ経験して学んでいる最中ですが、ジョブコーチの支援を受けたこともあり、1人で仕事を進めることができるようになってきていると思います。」

ロ

Bさん（精神障害）

（従事業務）

• 事業所内及び敷地の清掃

（課題）

• 担当業務に対し、「しっかりやらないといけない」、「全てこなさないといけない」という意識が強すぎるあまり、ストレスとなることがある。
• 作業指示についてメモを説明順にとるが、ポイントがわからず混乱してしまうときがある。
• 業務がうまく進まないときパニックになるときがある。
• 同時に複数の指示がある場合、優先順位がわからなくなる場合がある。

（取組内容）

• 業務の目的、清掃する場所と使用する清掃器具の選別及び清掃時の注意点等について、写真を交えて記載した業務マニュアルを作成し、清掃する箇所、清掃の順番、メモを取る際のポイントを説明してフォロー。清掃場所については、「事務所」といった場所の指示ではなく、「床」、「ソファー」、「流し台」といった細部項目ごとの清掃方法を記載。
• しっかり業務を行うことができているかという不安・ストレスに対応するため、清掃作業の完了すべき水準を明確に伝えたうえで、それ以上の作業は行わなくてよい旨を説明。
• 担当者の業務指示に当たっては、指示内容に優先順位をつけて指示。
• 担当者は指示を行った際には、本人がメモしている作業内容を確認し、作業工程の順番通りになっている等を確認し、必要に応じて修正するなどのサポートを実施。

（現在）

上記取組を継続して実施することにより、事業所内及び敷地の清掃に加え、配送品の受け取り、お茶出し、応接室への案内などの来客対応、事務用品の仕分け、整理整頓業務、各種書類のファイリングなどに業務の幅が広がっている。

（本人の声）

「初めは清掃からでしたが、現在は清掃業務を主として、お茶だしや簡単な接客もやっています。業務説明をメモしながらマニュアルも見て、周りの皆さんのサポートを受けながら業務を進めています。他の社員の皆さんもやさしく、仕事を続けることができています。」

5．障害者雇用の効果

障害者の障害特性やペースに合わせた上記の取組などを推進することにより、会社全体の障害者への理解が深まった。また、結果的に障害者の短期の離職が減少しており、雇用促進が図られ、法定雇用率を達成する状況になっている。

6．今後の展望・課題

同社では、障害者雇用について積極的に進めているところであるが、現時点での展望と課題は以下のとおりである。

（1）更なる障害者の雇用促進

法定雇用率の上昇を控え、一層の障害者の雇用促進が必要と考えている。業務は多岐にわたっていることから、障害者が行うことのできる業務の洗い出しを更に進め、障害者の採用を増やしたいと考えている。

（2）身体障害者の採用

業務の特性上、視覚障害者等をはじめとする身体障害者についてはこれ以上の採用が難しい面があるため、今後検討が必要であると考えている。

執筆者：独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構
福島支部　高齢・障害者業務課