誰もが働ける、共に助けあえる職場環境を整え
すべての働く人にとって働きやすい職場を目指す
- 事業所名
- 株式会社シーエックスカーゴ(法人番号 4030001042118)
- 所在地
- 埼玉県桶川市
- 事業内容
- 運輸業
- 従業員数
- 3,376名
- うち障害者数
- 132名
障害 人数 従事業務 視覚障害 聴覚・言語障害 4 庫内作業 肢体不自由 15 一般事務、庫内作業 内部障害 5 庫内作業 知的障害 68 庫内作業 精神障害 36 一般事務、庫内作業 発達障害 高次脳機能障害 難病 その他の障害 4 庫内作業 - 本事例の対象となる障害
- 聴覚・言語障害、肢体不自由、内部障害、知的障害、精神障害
- 目次
-
事業所外観
1.障害者雇用の経緯
株式会社シーエックスカーゴは(以下「当社」という。) 、日本生活協同組合連合会(以下「生協」という。)の物流子会社として平成3(1991)年に設立。埼玉県桶川市に本社を構え、現在、全国22の事業所で約4,500人(パートタイマー、アルバイト等の短時間労働者を含む)の社員が生協の物流を支えており、主な事業内容は、宅配センターや店舗向けに、コープ商品の発注・在庫管理、入庫・在庫保管、集品・仕分け、出庫・流通加工、輸配送業務となっている。
<参考> 全国22の事業所一覧
本社 埼玉県桶川市 北海道・東北 2事業所 関東・甲信越 9事業所 東海・北陸 2事業所 近畿 2事業所 中四国 1事業所 九州 5事業所 安全・安心を届ける会社として、安全で安心して長く働ける職場づくりを基本姿勢とし、性別、年齢、国籍、障害などの多様性を受け入れる雇用形態の整備を進め、定着率の高い会社を目指している。(平成29(2017)年3月現在の男女構成比は、54%:46%。年齢構成比は、10代3%、20代11%、30代16%、40代29%、50代23%、60代18%)
障害者の雇用に関しては、「社会的使命に誇りを持つ」との経営理念に則り、15年程前から本格的に雇用に取り組み始め、当初は、法定雇用率を上回ることを目標に社内報等による啓発活動に取り組みはじめ、平成29(2017)年12月現在、障害者の雇用者数は会社全体で132名(内訳:肢体不自由15名、聴覚・言語4名、内部5名、知的68名、精神36名、その他4名)、うち勤続年数が5年以上の者は43名、企業全体の実雇用率は5.30%と非常に高い水準となっている。
本稿では、全国の事業所のうち、本社及び併設する桶川流通センターの取り組み事例を中心に紹介する。
2.適性に応じた職務への配置・作業環境の整備
障害のある社員の主な仕事は、以下のとおりであるが、職務内容や障害特性に応じた作業環境の整備や配慮を取り入れている。
(1)生協宅配で使用するオリコン(通い箱)の選別・洗浄業務
オリコンの汚れ、異物混入、破損の有無を点検・選別し、ラベルを剥がしラインへ投入する選別業務と、汚れがあった場合に洗浄機へ投入するオリコン洗浄業務があり、主に知的障害者が担当している(桶川流通センターで働いている障害者22名のうち13名が本業務を担当)。
<配慮事項>
- ア.
- 本人の希望や様子を見て、面談を実施
各現場の班長などが班員である障害者の働きぶり等を日々確認すると共に、企業在籍型職場適応援助者(以下「ジョブコーチ」という。)が各作業現場を巡回し、班長などから障害者の課題の有無について聞き取りを行う。課題が生じている場合は、必要に応じ適宜、ジョブコーチとの面談の場を設けている。面談で聞き取った内容については、業務に関連することであれば障害者本人の了解の上、各班長などにフィードバックされ、業務指示の改善などに役立てている。
また、各作業現場には、ジョブコーチ直通の電話番号が掲示されており、障害者本人から直接相談することも可能な体制としている。ジョブコーチにかかってくる相談のほとんどは、仕事上のちょっとした悩みや不安等であるが、話をすることで、障害者が安心感を持てるようにしている。
- イ.
- 社員の状況に合わせ、作業箇所の変更
上記アの聞き取りの際に把握した職場環境のミスマッチ等については、各現場内の対応可能な範囲で、担当作業を調整、変更等で解消することを心がけている。具体的には、腰に痛みをかかえている者について、オリコン選別業務の中でも、容量が小さく軽いものを担当させるといった対応をとっている。
また、人員体制や本人の希望等を考慮し、通常、オリコン選別業務を担当している者に対し、スポット的に洗浄業務の支援をさせることもある。
オリコン選別作業
オリコン洗浄作業
(2)生協宅配向け商品仕分け業務(別積みライン)
生協の宅配で、組合員から注文された商品のうちオリコンに入らない商品や、基準以上の重さの商品を、納品先の宅配センター・配達コース別に仕分け、カゴ車に積みつける業務で、主に知的障害者・身体障害者が担当している。
本業務には重い商品を運び続ける体力や、指示書に基づいて仕分ける判断力などが求められること、また、フォークリフトが走行する現場で安全性の確保が難しいことから、かつては障害者は配置されていなかったが、上記(1)のオリコン選別作業、洗浄作業での働きぶりなどを踏まえ、本人の能力や意欲に応じてステップアップできるように、会社内で職域拡大された。
<配慮事項>
- ア.
- モチベーション維持のため、前向きな言葉掛け
本業務は肉体的に負荷が高く、担当している障害者も、日によって調子に波があることが少なくないため、現場の班長などが、日々できていることを褒めるなど、障害者個々の仕事に対する評価を具体的に伝えると共に、課題や目標を再確認するように心がけている。
- イ.
- 毎朝、必ず安全確認の唱和
商品仕分け業務の現場は、重い荷物が積み上げられ、それを運ぶためのフォークリフトが走行しているため、安全性の確保が何よりも重視されており、毎日の朝礼で安全確認事項を繰り返し確認することで、安全意識の向上、定着を心がけている。
また、現場の作業の動線が入り組んでいることもあり、危険を未然に防ぐ警告表示を要所に設置している。警告表示には、写真等を取り入れ、障害者や、初めて現場に入った人をはじめ、誰にでも分かりやすいように工夫している。
商品仕分け作業
警告表示
(3)一般事務(本社)
PC入力や書類整理、会議資料の準備等の一般事務を精神障害者・身体障害者が担当している。一般事務に職域を拡げたことにより、本社では、入口はスロープで自動ドアとなっており、階段の手摺り設置、多機能トイレの増設等を行った 。
PC入力作業場面
増設した多機能トイレ
3.職場定着に向けた配慮など
(1)配属先の調整
特別支援学校の卒業生を採用した場合、最初の配属先は、同じ特別支援学校の出身者同士のグループとし、先輩・後輩の関係を作ることで、スムーズに職場に溶け込むことができるようにしている。また、障害者が孤立感を抱かず、共に情報交換できるように、複数の障害者を可能な限り同じ職場に配置している。
(2)各現場での体調などの把握
桶川流通センター内の作業は、定型の繰り返しが基本となることから、精神的、肉体的に負荷がかかりすぎないよう各担当の管理者が日常的な見守りを行い、状況に応じて面談の実施、勤務時間や勤務日数を柔軟に調整している。
(3)企業内での支援者の配置
ジョブコーチ、障害者職業生活相談員を配置し、定期的な巡回等での声掛けや必要に応じた面談、外部支援機関との連携を行い定着支援を実施している。
(4)外部支援機関の活用
特に生活面で課題を抱えていると思われる障害者については、課題が会社として行える支援の範囲を超えることもあるため、上記(3)のジョブコーチ、障害者職業生活相談員が中心となり、障害者就業・生活支援センター等の支援機関の担当者と積極的に情報共有し、適宜、ケース会議(障害者本人、家族、支援機関担当者、会社担当者が必要に応じて参加)を実施して、会社と支援機関で仕事面と生活面の役割分担を明確にした上で対応している。
4.支援機関などとの連携状況
障害者が安定的な職業生活を送れるよう支援機関との連携を図り、各種支援制度も活用している。
(1)特別支援学校からの職場実習の受け入れ
各事業所では、地域の特別支援学校からの依頼に応じて、職場見学や職場実習生の受け入れを積極的に行い、新卒者をほぼ毎年採用している(尾道流通センターは、「尾道特別支援学校キャリア・サポーター」の提携事業所となっている)。
(2)トライアル雇用の推進
各事業所では、ハローワークの一般求人から手帳所持者の採用を進めていくなかで、トライアル雇用を通じての本採用も行っている。トライアル雇用は、求職者である障害者と事業所の採用担当者の双方が職務への適性を見極める場として役立つものと理解している。
(3)支援制度の活用
独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構の「業務遂行援助者の配置助成金」を活用し、桶川流通センターでは、現在、知的障害者2名、精神障害者1名について、各ラインの班長・副班長1名を業務遂行援助者として配置し、対象障害者の雇用継続を図るための支援を行っている。また、過去においても、同助成金を活用し、知的障害者5名(うち重度3名)、精神障害者1名についても、同様の支援を実施している。
(4)支援機関の協力のもと社内講習を実施
高い障害者雇用率、定着率となっている当社において、これまでは実際に障害のある社員と共に働く現場社員のナチュラルサポートにより、障害者への支援が自然と行われてきたが、障害特性に応じた接し方等に戸惑う場面が少なからずあった。
そのため、障害のない社員に、障害に対する知識や支援方法への理解を深めてもらい、お互いがより働きやすい職場環境を整えることを目的として、現場の班長以上を対象とした社内講習を実施した。
埼玉障害者職業センターの障害者職業カウンセラーに講師を依頼し、カウンセラーと当社の担当者が共同で会社の現状に合った講習用資料を作成する等のオーダーメイド型の講習を行った結果、受講した社員からは「障害にどこまで配慮が必要かといった、これまで曖昧だった部分が明確になった」、「ジョブコーチの役割がよく分かった」などの感想・評価があり、社内の障害者雇用の推進に役立つものであった。
また、埼玉県独自の支援機関である埼玉障害者雇用サポートセンター協力のもと、「精神障害者の方の支援」についての社内講習についても計画中である。
5.今後の取り組みについて
当社は、障害者を率先して雇用し、その能力の活用を積極的に進めてきたことに加え、障害者が長く働けるために行った環境の整備等が高く評価され、平成29(2017)年度の障害者雇用優良事業所等全国表彰式において、障害者雇用優良事業所として厚生労働大臣表彰を受賞した。
全国に事業所を抱える当社では、各事業所で蓄えた障害者雇用のノウハウを集約し、定期的に開催される各事業所幹部のマネジメント会議にて水平展開し、更なる障害者雇用の推進、充実を図っており、当面は、事業所単位で障害者雇用ゼロをなくす取り組みを積極的に進めている。
また、実雇用率は高い数値にあるが、障害者をサポートする人員が少ないため、ジョブコーチ、障害者職業生活相談員を中心として現場社員の理解を深め、定着支援等、更なる社内の支援体制の整備を進めることとしている。
執筆者:株式会社シーエックスカーゴ 総務人事部人事課
企業在籍型職場適応援助者 當郷 綾香
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