「働きがい」のある職場環境を整備しノーマライゼーションの実現を目指す
- 事業所名
- ポラスシェアード株式会社(法人番号 2030001106948)
- 所在地
- 埼玉県越谷市
- 事業内容
- ポラスグループ各社の運営に伴う設計補助業務や事務などの代行業務
- 従業員数
- 39名
- うち障害者数
- 29名
障害 人数 従事業務 視覚障害 9 聴覚・言語障害 肢体不自由 内部障害 知的障害 3 精神障害 17 発達障害 高次脳機能障害 難病 その他の障害 - 本事例の対象となる障害
- 視覚障害、聴覚・言語障害、肢体不自由、内部障害、
知的障害、精神障害、発達障害、高次脳機能障害 - 目次
-
事業所内
1.障害者雇用の経緯
住宅建設・不動産開発事業を行うポラスグループの統括会社である、ポラス株式会社(本社:埼玉県越谷市)では、以前からグループ各社にて障害者の雇用促進に努めてきたが、より多くの障害者の方々に能力が発揮できる環境や安心して働ける場を恒常的に提供するためには、「障害者の雇用の促進等に関する法律」に基づく特例子会社を設立することが最善と判断し、平成27(2015)年2月6日に『ポラスシェアード株式会社』(以下「当社」という。)を設立し、3月16日より事業を開始した(同年4月15日に特例子会社の認定を受ける)。越谷市としては初めての特例子会社である。
2.実施業務の概要
当社は、「ローンサポート課」及び「ビジネスサポート課」の2課体制で業務にあたっており、障害のある従業員はビジネスサポート課に在籍している。同課では、ポラスグループ各社の運営に伴う設計補助業務や事務等の代行業務を主な事業としており、同課には当社の障害のある従業員29名全員が在籍している(平成30(2018)年1月現在)。
ビジネスサポート課の業務は、「管理係」(運営全般)、「テクノ係」(技術系サポート業務)、「ビジネス係」(事務系サポート業務)、「固定資産係」(固定資産サポート業務)に大別され、障害のある従業員の業務担当状況等は以下のとおり。
(1)テクノ係:技術系サポート業務(担当者:障害のある従業員7名、障害のない従業員5名)
- ア.
- 住宅の設計補助業務
ポラスグループの顧客に渡す完成記念図面の作成や製本、環境に関する計算書作成補助等を行う。CADの操作や計算知識といった専門的なスキルを習得する必要がある。
- イ.
- 書類の電子化業務
図面や契約書類をスキャンニングし、ポラスグループの管理システムに登録し、不要となった書類をシュレッダーで破棄している。
書類のスキャニング
(2)ビジネス係:事務系サポート業務(担当者:障害者のある従業員21名、障害のない従業員1名)
- ア.
- 貸与品等の発送・在庫管理業務
ポラスグループの名札、社章、制服などの貸与品の在庫管理、受発注を行っている他、会社案内などのパンフレット類の発送、在庫管理などを行っている。
- イ.
- データ入力業務
ポラスグループの顧客情報や物件情報をポラスグループの管理システムに入力している。
データ入力業務
- ウ.
- その他総務、人事に関わる事務業務の代行
ポラスグループ職員の名刺作成、福利厚生施策の一部(勤続旅行の手配)等を行っている。
(3)固定資産係:固定資産サポート業務(担当者:障害のある従業員1名、障害のない従業員0名)
- ア.
- パソコン、機密書類などの廃棄に関する業務
グループ会社の古くなったパソコンや機密書類などを回収し、廃棄業者の手配や資産除却に係る事務処理等を行っている。
- イ.
- ポラスグループの電話料金や倉庫利用に関する業務
グループ会社の電話料金に係る支払い等の経理事務、グループ会社共用の倉庫スペースに係る利用状況の管理を行っている。
3.適性に応じた職務への配置・職場環境の整備
(1)担当職務の選定
当社では、障害者のある従業員を採用してから担当業務・職務を選定するのではなく、採用面接の際に、実際に任せたい業務を具体的に提示し、本人が納得の上で採用することを徹底している。これは、会社設立当初、採用した障害のある従業員が、本人の抱いていた業務イメージと、実際の担当業務に乖離があった結果、早期離職となってしまった経験があったためである。
そのため、採用に至るまでには、パソコンスキルを把握するための簡易テストや職場見学、希望があれば職場実習を経験することで業務イメージを持ってもらうことや、本人の能力や特性の把握に努めている。
採用選考の段階において、実際の業務内容をイメージしてもらうことは、本人の希望と実際の仕事との乖離・ミスマッチを未然に防ぎ、スムーズな職場定着の一助となっているものと思慮される。
また、当社では、特別支援学校や就労移行支援事業所などからの要請を受け、職場実習を積極的に受入れている。
(2)複数名での業務実施
上記(1)のとおり、障害のある従業員一人ひとりの障害特性や希望に配慮し、主となる担当業務を任せているが、主担当業務以外にも各自が2~3つの業務について副担当となり、一つの業務に対して複数の従業員が対応できるような体制とし、業務負担が偏らないよう留意している 。
こうした体制づくりは全社的に行われているが、障害のある従業員にとっては、通院や体調不良で休む際に、業務自体が滞らないことはもちろんであるが、「自分が休んでもメンバーが仕事を進めてくれる」という安心感を持ち、無理せず休みやすい環境作りの一助となっている。
また、各係にはそれぞれチームリーダーを選任しており、各業務担当の進捗状況などを把握の上、適宜サポートしている。現在、2名のチームリーダーは障害のある従業員が担当しており、本人の能力や意欲に応じて、より責任のある立場にも就いてもらっている。
(3)情報の共有、見える化
事務所壁面に大型のホワイトボードを設置し、各従業員の出勤状況や、受注している仕事の進捗状況、来客情報などを記載し、管理・共有している。ホワイトボードの情報は管理担当職員だけではなく、従業員各自が随時更新し、毎朝の職員ミーティングの際の情報確認及び伝達ツールとしても活用されている。
こうした情報共有をあえて電子化せず、かつ誰もが見やすい場所で集約して管理することにより、各自が自ずと会社全体の状況を知り、自身の担当している業務の繁閑等について、見通しを立てやすい職場環境となっている。
情報共有のための大型ホワイトボード
(4)ヘルプ業務制
上述のとおり、主となる担当業務以外にも、複数の業務ができる体制をとっている他、毎日、各自が自身の業務進行状況をチェックし、自己申告制で、担当業務の応援を他の従業員に依頼できる“ヘルプ業務”制を導入している。
ヘルプ業務について(業務の流れ)
- ア.
- 各自が自身の業務進捗状況をチェックし、毎日の始業ミーティング開始前までに、上記(3)のホワイトボードに備えてある“ヘルプ業務”欄に、応援を依頼する者の氏名、業務内容、期限、緊急度を書き込む。
※ 導入当初は、書き込まれたヘルプ業務の優先順位(緊急性)が判りにくいといった声が上がったことから、緊急度が高い案件は赤、中程度の案件は青、低い案件は黒字で書き込むこととした。
- イ.
- 自身の担当業務で手の空いた者は、ヘルプ業務欄を確認し、応援を要請している従業員と役割分担などを本人同士で直接調整の上、当該業務を行う。
- ウ.
- 完了した業務については、ホワイトボードのヘルプ業務欄から消す。
→上記ア~ウを毎日行っている。
ホワイトボードの活用について
ホワイトボードをコミュニケーションツールとして活用することにより、障害特性上、自らの状況を伝えるといったコミュニケーションを苦手としている障害のある従業員にとっても、情報の共有化、ヘルプ業務を円滑に実施しやすい環境が整えられているものと思われる。
なお、会社として緊急を要する業務が生じた場合等は、管理担当職員が始業ミーティングにおいて必要人員の調整をする等、適宜サポートしている。
4.職場定着に向けた配慮
(1)月1回の定期面談と支援機関との連携
障害のある従業員に対しては管理担当職員が毎月末に1回の定期面談を実施している。1回の面談は通常30~60分程度で、各自が毎月作成する目標管理シート(※)を基に、各月の業務の振り返りや今後の目標設定、職場環境、体調面などの確認、意見交換などを行い、状況把握や今後の方向性についての共通理解などを図っている。
また、支援機関との連携が重要であることから、本人や支援機関からの要望や、必要性に応じ、三者面談(本人、管理担当職員、支援機関の担当者)や、二者面談(本人、支援機関担当者)の機会を設定し、支援機関と連携して職場定着に向けた体制を構築している。
※目標管理シート
目標として、“担当する業務の1件あたりの処理時間”などの客観的な数値指標を、本人と管理担当職員が話し合いで設定する。設定にあたっては、他の従業員と比較するのではなく、以前の自分と比較し向上できているかを重視している。
面談では、管理担当職員から各自に「期待している働き」を明示し、これを客観的な数値指標を設定し、定期的に確認することで、働くことに対するモチベーションの維持、キャリアアップに向けた意識向上などにつなげるべく取り組んでいる。
また、客観的な数値指標の設定は、管理担当職員からの評価において曖昧さがなくなり、障害のある方本人にとっても納得されやすく、次に目指すところが分りやすいというメリットもあるものと思われる。
目標管理シート
(2)臨床心理士・産業保健師との面談
ポラス本社で配置している臨床心理士又は産業保健師との1対1の面談により、仕事だけではなく生活全般の悩みを相談できる場を設けている。面談は、本人の希望に応じて随時、予約を受け付けている他、前項(1)の定期面談の際に、管理担当職員から本人に利用を勧め、面談につながる場合もある。
面談の内容は守秘義務が課せられており、本人が安心して相談できる場となっている。
(3)ビジネスサポート課内の勉強会(年6回程度)
コミュニケーションの円滑化などによる「働きやすい職場」を目指し、2か月に1回程度の頻度でビジネスサポート課全員が参加する勉強会を開催している。
勉強会は1回1時間程度で、内容は、基本的には管理担当職員が中心となって企画し、支援機関に依頼しての障害に関する講習会、ビジネスマナー、個々の従業員の障害等に応じた配慮事項等についてのグループディスカッション、手話講座等を行っている。終了後には、感想や今後の希望テーマについてのアンケートを取り、次回以降の参考としている。
また、手話については毎週、始業ミーティングの際に、「仕事上でよく使う表現・やり取り」を想定した手話を学ぶ時間を設けている(学ぶ内容・方法の選定等は、聴覚障害のある従業員が担当している)。
(4)月間GOODJOB賞
ポラス株式会社で、互いに認め褒め合う風土を醸成するために行っていた取組みを同社でも取り入れており、毎月一人ひとりが業務以外で良い行いをした人に対して「GOODJOBカード」を作成し、月初の朝礼で発表している。
※当初は対象を業務内容に限定していたが、その場合に、自ずと難しい業務を担当している者にカードが集中してしまったことから、業務そのものではなく、業務を円滑に進めるためのコミュニケーション面、業務に取り組む姿勢などを評価の対象としている。
(5)業務の実施体制と、育成・フォロー体制
上記3の(2)のとおり、各業務については、主担当と副担当を置き、基本的には主担当と副担当で業務の処理方法などを相談、調整、実施している。特に、新卒者が配属される場合には、主担当に同じ出身校の先輩を充てる等、より円滑に業務に取り組める体制となるよう配慮している。
また、主担当・副担当だけでは判断が難しい場合などには、チームリーダーや、予め選任してある管理担当職員に相談するなど、困ったときに相談しやすく、フォローしやすい体制作りに留意している。
5.今後の取り組みについて
ポラスシェアード株式会社では、ポラスグループ各社と連携し、業務プロセスの見直しや新たなサービス、健全な労働環境を追及することで、ポラスグループ全体の「業務効率向上」に貢献しつつ、将来的にはグループ企業以外からの受注も視野に入れ、組織運営の向上に日々取り組んでいる。
加えて、当社で蓄積した障害者の採用や雇用管理に係るノウハウに基づき、ポラスグループ各社の障害者雇用を支援する役割も担っており、ポラスグループ全体の障害者雇用の推進にも積極的に貢献している。
また、「働きやすい」職場の整備だけではなく、「働きがいのある」職場を目指し、障害のある従業員のキャリアアップにも積極的に取り組んでいる。当社には、正社員、契約社員、パート社員と、様々な雇用形態で働いている方がいるが、本人の能力や希望に応じ、正社員、契約社員への登用や、各業務のチームリーダーの役割を与える等、仕事に対して責任を持って取り組める職場環境を整えている。
執筆者:ポラスシェアード株式会社
ビジネスサポート課係長 阿部 ゆかり
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