事業所外観

1．事業所の概要、障害者雇用の経緯

（1）事業所の理念・概要

＜　理念　＞
～オーダーシャツ～
それはお客様一人ひとりの体型や要望に合わせて一着ずつ作る究極のシャツ
～新たなチャレンジ～
当社の製品にかかわる皆様に最高の満足を感じていただくため、究極のシャツ作り25年以上の経験とMADE IN JAPANにこだわった新たなものづくりへのチャレンジ
～従業員第一主義～
新たなものづくりには優れた縫製技術が必要、優れた縫製技術の向上と継承のために、従業員の更なる成長と向上が求められる

＜　概要　＞

当社は新潟県村上市に位置し、敷地面積9,900㎡・建坪2,131㎡のオーダーシャツ工場で年間約100,000着のシャツを作る日本有数の規模の工場。

シャツなどの薄手繊維製品以外にも、さまざまな素材でオーダーから既製品まで、幅広い製品を国内生産の利点を活かし短サイクル納期で届けることができる。

立ちミシンを取り入れ、お互いの作業を助け合い、シャツ一枚ずつをスムーズに作業工程に流せるよう縫製ラインを構築。これにより多様化するニーズにも応え、仕様・素材・ロット・納期に柔軟な対応ができる。

平成29（2017）年7月より工場内にショップを開店。オーダーシャツはもちろんオーダースーツから小物まで幅広く販売している。

（2）障害者雇用の経緯

平成24（2012）年7月に会社の求人募集をしたところ、聴覚障害のある人を紹介してもらったことがきっかけだ。それまで障害のある社員の雇用に関する知識は全くなく、障害者がどの程度の仕事ができるのか分からなかった。しかし、実際に仕事をする様子を見ると障害のない社員とほとんど変わらずに業務を行っていたことから障害のある社員にも仕事を任せることができると実感し、その後も障害のある社員の雇用を進めていった。

平成26（2014）年に精神障害のある社員2名、身体障害のある社員1名、知的障害のある社員1名を雇用する。そして同年11月から車いす使用の身体障害のある社員1名を雇用するにあたり、事前準備として新潟県の「障害者雇用促進プロジェクト助成金」を活用し、社内トイレの改修、自家用車通勤のためのカーポート・スロープ設置等を行い働きやすい職場環境整備ができ、車いす使用の障害のある社員の雇用をスムーズに行うことができた。

そして翌年、平成27（2015）年は精神障害のある社員1名、身体障害のある社員1名を雇用し、平成28（2016）年には精神障害のある社員1名をトライアル雇用から始め現在は正社員として活躍している。

そして直接的な雇用だけでなく、就労移行施設の利用者が利用できる作業所を増築し、糸きり、箱折り等の施設外作業所として利用している。現在、村上市内の3施設が利用している。

（3）障害のある社員の業務内容・勤務時間

ア.

業務内容

• 身体障害のある社員：入荷管理・受注処理、芯地裁断
• 知的障害のある社員：芯地延反・芯地型抜き、芯地棚清掃、ボタン仕分け
• 精神障害のある社員：芯地プレス、製品仕上アイロン、芯地裁断、PC使用し革製品等レーザー加工

イ.

勤務時間

正社員	8時30分～17時00分（7.5時間勤務）　6名
パート社員	8時30分～14時00分（4.75時間勤務）　1名 12時45分～17時00分（4.0時間勤務）　2名

ウ.

福利厚生　障害のない社員と同様

上記のように業務についているが同じ障害名、同じ障害者手帳でも性格はもちろん、能力も人それぞれ。障害特性だけでなく障害のある社員一人ひとりを理解することで作業適性が見えてくる。障害別で分けず実際に作業しながら一人ひとりに合った作業を提供することが大切だ。

2．取組の内容と効果

（1）取組の内容

• 障害のある社員がいつでも相談できる窓口を総務課に開設し総務に担当者を配置。（平成29（2017）年5月より障害者支援員（以下「支援員」という。）を専門職として雇用）主に精神障害のある社員からの相談が多く、内容は仕事、人間関係、プライベートなど様々だ。
• 個人実績を付け毎日提出することで日々の変化をお互いに確認する。また、特定の障害のある社員数名は障害者支援員が1日数回、作業確認・巡回指導等をして様子の観察や声かけを行っている。
• 定期的に障害者就業・生活支援センター（以下「支援センター」という。）の就業支援ワーカーによる面談と必要に応じてジョブコーチの支援を受けている。

（2）取組の効果

相談窓口や担当者が明確になったことで障害のある社員にとって相談しやすい環境になった。聞いてくれる・見てくれているという安心が生まれ、欠勤が多かった障害のある社員は欠勤が大幅に減り表情も極めて良好になった。

また、作業確認によりミスが減り、他の仕事もやってみたいというチャレンジ精神も芽生えている。作業中にイライラすることがある障害のある社員には声かけや多少の雑談で気持ちが安定し笑顔が見られ作業効率も向上したように思われる。

障害者支援員も支援センターに利用登録をしている障害のある社員に関して、過去の状態や障害特性を聞き、対応に困ったときに相談やアドバイスを受けるなどの連携を図っている。

（3）知的障害者（以下「Aさん」という。）の具体的事例内容

• 入社日：平成26（2014）年
• 雇用形態：パート社員　
• 勤務時間：8時30分～14時00分（休憩　45分）
• 公休日：土曜日・日曜日・祝祭日
• 従事業務：裁断班にて芯地の延反・芯地の型抜き・清掃・釦の仕分け

●課題点

口頭での作業指示では作業途中で分かることが多い
分からないまま作業続行し不良品につながる
裁断班の仕事だけでは疲れもあり集中力が途切れやすい
他者とのコミュニケーション不足でお互いの話しがかみ合わず誤解を招くことが多い
体調不良時、精神状態に波があるとボーっとしてしまう

●対策

1日単位の作業指示表を作成

• 一度に1日分記入すると混乱するため、その都度記入し指示する
  作業前・作業中・作業後に支援員の確認
  裁断班の作業を軽減し単純作業を取り入れる
• ハンディクリーナー使用し芯地保管棚のホコリ除去
• ボタン仕分け（シャツ製造であまったボタンを色・柄・サイズ等の種類別に分ける）
  作業に関することでの意見・人間関係等、支援員を通し周りに伝えやすくする
• 体調や心境など上手く聞き出しAさんの不安を軽減させる
  始業前5～10分程度、聞き取りをしながら雑談入れ会話をする

●効果

不良品を出すことが少なくなり、作業確認をすることで自分も確認する習慣がつき間違った際は自ら気がつき報告できるようになった。

不良が減ったことでAさんはとても自信がつき他の仕事もやってみたい、時間も増やしてみようかなど今までにはなかった意欲的な言動も聞こえる。

以前Aさんは欠勤が多く支援センターの就業支援ワーカーからもまず朝、会社に来ることが目標と言われていたがここ数か月、急な欠勤はほとんどない。

笑顔がとても増え表情、声に張りが出できてコミュニケーション能力も高まってきている。また、体調不良時は無理のない環境を整えて体調確認をこまめに行い、必要であれば早退し明日からの仕事に備えてもらっている。

3．今後の課題と展望

今より働きやすい職場環境を作りたい、個々に応じた作業を提供していきたいと思っている。このための一つとして、「企業在籍型職場適応援助者（ジョブコーチ）」の有資格者を配置することも考えており、このことで障害の有無に関わらず良い仕事、良い関係につながっていくのではないかと考えている。

そして、人間は誰もが感謝されること、褒められる（評価される）こと、役に立つこと＝生きがいとなり豊かな感情が生み出されて行くのではないか。また、どの観点から見ても安全な職場環境の整備を会社全体で取り組んでいけるよう一人ひとりの意識を高めていくことが最も重要である。

フェールムラカミは将来を見据え村上市を中心に障害者雇用の拠点となり、障害のある子供たちが大人になったとき、安心して社会に出られる体制を整えて行きたいと考えている。

執筆者：株式会社フェールムラカミ　総務経理課
障害者支援員　中山　郁枝